2021年11月

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【てくさぽBLOG】IBM Power Virtual ServerのAIX環境とIBM Cloud x86環境を接続してみた

こんにちは。
てくさぽBLOGメンバーの村上です。

本ブログは、IBM Power Virtual Server をトライしてみた内容や感想をご紹介するブログです。

シリーズ化していますので、まずインデックスのご紹介をします。

 

インデックス

IBM Power Virtual ServerでAIX環境を作ってみた
IBM Power Virtual ServerのAIX環境にSWを導入してみた 
IBM Power Virtual ServerのAIX環境を日本ロケールにしてみた
IBM Power Virtual ServerのAIX環境をバックアップしてみた(Part.1)
IBM Power Virtual ServerのAIX環境をバックアップしてみた(Part.2)
IBM Power Virtual ServerのAIX環境とIBM Cloud x86環境を接続してみた ←今回

今回は、Power Virtual ServerのAIX環境を IBM Cloud の x86環境と接続する方法をご紹介します。

 

セクション

以下の1)~6)のセクションに分けてご紹介します。

1)  接続イメージの説明
2)  Direct Link Connect の説明
3)  Direct Link Connect の作成
4)  Caseを利用した接続依頼
5)  VSI for VC の作成
6)  AIX環境とx86環境の接続確認
最後に
お問い合わせ

検証はAIXのインスタンスで行いましたが、IBM i のインスタンスでも同等の手順で操作を行うことができます。

利用したクライアント端末(私のPC)は、Windows10 pro バージョン2004(検証当時)です。

 

1) 接続イメージ の説明

Power Virtual Server のAIX環境と IBM Cloud の x86環境 はロケーションが異なる別のサービスで、ネットワークは直接つながっていません(2021年11月時点)。
そこで、お互いの環境を接続する方法が IBM Cloud から提供されています。
Direct Link Connect を利用する方法です。

今回は、上記の図の青色の線「Direct Link Connect」 を作成し、オレンジ色のubuntuサーバ(仮想サーバ・インスタンス(VSI))とAIXサーバを接続することが目的です。IBM Cloud環境の「仮想プライベート・クラウド(VPC)」と「仮想サーバ・インスタンス(VSI)」は未作成だったので、新規に作成し手順もブログ内に残しました。

 

2) Direct Link Connect の説明

Direct Link Connect と Power Virtual Server は全く別のサービスですので、Direct Link Connect は新規に作成する必要があります。
Direct Link Connect は IBM Cloud のポータルから作成(契約)します。

1)でも記載した通り、Power Virtual Server は IBM Cloud の x86環境と異なるコロケーションサイトを利用しており、ネットワークも直接つながっていません。そのため、Direct Link Connect を 契約し設定することで x86環境と接続することが可能となります。

Direct Link Connect には、従来からある「Classic」と新しく提供が開始された「2.0」があり、どちらも無料で利用できるので、今回は新機能が充実している「2.0」を利用します

Direct Link Connect 利用条件(IBM Cloud 柔らか層本20211124版 p.85より)
・1データセンターあたり、10Gbps ポート x 2回線(HA) まで無料
・Global routing を利用しても追加費用は不要
・Direct Link Connect の申請時、「Network Provider」は「IBM Power Virtual Server」を選択すること(「3) Direct Link Connect の作成」 でも触れます)


 

3) Direct Link Connect の作成

では早速、Direct Link Connect を作成します。

IBM Cloud にログインし、左上にある「ナビゲーション・メニュー」→「相互接続性(Interconnectivity)」を選択します。
 

相互接続性(Interconnectivity) の画面に移動しました。

・「Direct Link」を選択します。

・「Direct Linkの注文」を選択します。

・「Direct Link Connect」を選択します

Direct Link Connect の構成パラメーターを選択する画面に移動しました。

・「リソース」情報は以下を入力・選択します。
> Direct Link 名:tok-powervs(任意の文字列)
> リソース・グループ:Default

ここから、Direct Link Connect の構成パラメータを設定していきます。

・「ゲートウェイ」では以下の順番で選択します。
> ジオグラフィー:APAC
> 市場:Tokyo
> タイプ:すべて
> サイト:Tokyo 4
> 経路指定:ローカル(グローバルを選択すると別リージョンへ接続可能)

プロバイダー:IBM POWER VS

速度は、50Mbps~10Gbps まで8種類から選択可能です。どの速度でも金額は変わりません。IBM推奨は1Gbps以上です。

・速度とポート(1つ)を選択します。
> 速度:1Gbps(10Gbpsにしようかと思いましたが、何となく遠慮してみました)
> ポート:SL-TOK04-POWERIAASLITE-1-1-(ASR1)

※ 選択するポートは「速度範囲」が当てはまるものを選びます。今回は、どのポートでも当てはまりますので一番上のポートを選びました。

・「請求処理」で「従量制」を選択します。

・「BGP」は以下の通り選択および入力します
> BGPピアリング・サブネット:「IPの手動選択」を選択
> 範囲:「169.254.0.0/16」を選択(169.254.0.0/16 から)
> 自分のIPv4 CIDR:「169.254.0.2/30」を選択
> IBM IPv4 CIDR:「169.254.0.1/30」を選択
> BGP ASN:「64999」を入力

※ BGPピアリングは「169.254.0.0/16 」から範囲を指定します。今回は特に決めごともないので自由に設定しました。
※ BGP ASNは Direct Link Connect の構成ガイドにある通り、「64999」を指定します。

・「接続」は初期状態のまま変更しません。

ここまで入力が出来たら構成パラメータの設定は完了です。

・画面の右側に表示されるサマリーを確認し「作成」ボタンをクリックします。

Direct Link Connect の作成が受け付けられたメッセージが出力されます。

暫く待つと Direct Linkの「状況」が「構成中」→「プロビジョン済み」に代わります。作成したDirect Link名「tok-powervs」 をクリックし詳細画面を表示します。

下記の詳細情報は「4) Caseを利用した接続依頼」で利用しますので、このまま表示させておくかコピペしておきます。

Direct Link Connect の作成が完了しました!

 

4) Caseを利用した接続依頼

次に、Power Virtual Server のAIX環境とDirect Link Connect の情報を紐付けるための作業を行います。この作業は、IBM Cloud のWEBポータル画面やIBM Cloud CLI 、API からは実施できません。Case を利用して、IBMのSEさん(?) へ接続のリクエストを出します。
Caseとは、IBMのサポートコミュニティの「問い合わせ」のことです

・IBM Cloud のWEBポータル画面の右上にある「サポート」をクリックします。

・「Caseの作成」をクリックします。

・「リソース」を選択します。

・「Caseの作成」画面で以下を選択し「次へ」をクリックします。
> トピック:「Power Virtual Server」をプルダウンから選択
> 名前:「Power Virtual Server-g5」にチェックを入れる

下記の画面に移動したら、依頼内容を記載することができます。

Caseに依頼する情報は、「3) Direct Link Connect の作成」の最後に表示した詳細情報を利用し、以下のように記載しました。Case は英語で記載する必要があります。
実は、日本語でCaseを依頼してしまったことがあったのですが(英語で記入することをすっかり忘れていました)、担当SEさんが丁寧に英語に翻訳してくださって「質問はこういう意味であっていますか?」と返信が来ました。優しいです。
Caseの記載方法はQiitaのブログを参考にさせてもらっています。

サブジェクト:PowerVS : Direct Link 2.0 Request 
説明:
<Inquiry regarding Direct Link Connect for PowerVS>
I ordered Direct Link Connect from IBM Cloud portal and its provisioning has finished.
The detail information is as follows.
Please proceed at Power VS side to establish Direct Link Connect. Thanks.

Data creaged : Tue,Mar 2,2021,13:49:39 JST
Resource group : Default
Provider : IBM POWER VS
Routing : Local
Speed : 1 Gbps
Billing : Metered
User CIDR : 169.254.0.2/30
IBM CIDR : 169.254.0.1/30
BGP ASN : 64999
IBM ASN : 13884
Port : SL-TOK04-POWERIAASLITE-1-1-(ASR1)
Location : Tokyo 4
Service key : (「サービス・キー」にある値を記載します)
BGP status : Idle
VLAN : 3921
Connected VLAN : CIDR
public-192_168_187_32-29-VLAN_2032 : 192.168.187.32/29

・記載が完了したら「Caseの作成」ページの一番下にある「次へ」をクリックします。

・記載した内容を確認し「Caseの送信」をクリックします。

下記のメッセージが出力されたらCaseによる申請が完了しています。

 

数日後・・サポート・センターよりPower Virtual Server 側の接続が完了されたお知らせが来ました。
依頼内容を間違えてしまったのと少しのんびりやっていたので、接続完了まで5日くらいかかりました。Advanced Supportに入っていないので、対応はクイックではない印象ですが、Caseの担当SEさんより私の方がのんびり返信しているので問題ないです。
修正がなければ、2日程度時間を用意していれば確実に接続してもらえそうです。

IBM CloudのWEBポータル画面ではBCPのステータスが「確立済み」になっていました。

Direct Link Connect とPower Virtual Server の接続が完了しました!

 

5) VSI for VPC の作成

Direct Link Connect がPower Virtual Server と接続できたので、IBM Cloud の x86環境とちゃちゃっと接続したいところではありますが、実はまだ仮想プライベート・クラウド(VPC)もIBM Cloud のx86環境(仮想サーバインスタンス(VSI)) もありません。。

そのため、この検証のためにx86環境を作っていきます。画面ショットを取得していない部分は文字のみで説明しています。

・「ナビゲーションメニュー」から「VPCインフラストラクチャー」を選択します。
> 左のメニューから「VPC」を選択し、「作成」をクリックします。

・「新規仮想プライベート・クラウド」の画面で以下のように入力・選択します。
> 名前:tok-vpc(任意の名前でOK)
> リソース・グループ:Default(変更なし)
> タグ:(記載なしのまま)
> Region:「東京」にチェック
> デフォルト・セキュリティー・グループ:「SSHを許可」「Pingを許可」にチェック
> クラシック・アクセス:「クラシック・リソースへのアクセスを有効にします」は無効
> デフォルトのアドレス接頭部:「各ゾーンのデフォルト接頭部の作成」にチェック

・「サブネット」の項目では「サブネットの追加」をクリックします。

・画面の左に「VPC用の新規サブネット」が表示されるので以下の情報を入力し「保存」をクリックします。
> 名前:tok-vpc-subnet(任意の名前)
> ゾーン:「東京1」(東京1~3まで選択できます)
> リソース・グループ:Default(初期値のまま)
> タグ:(記載なしのまま)
> IP選択範囲
>> アドレス接頭部:10.244.128.0/18
>> アドレスの数:256
>> IP範囲:10.244.1.0/24
> ルーティング・テーブル:(記載なしのまま)
> サブネット・アクセス制御リスト:(記載なしのまま)
> パブリック・ゲートウェイ:「接続済み」にチェック

保存が完了したらVPCの作成承認画面になりますので「仮想プライベート・クラウドの作成」をクリックしVPCを作成します。

仮想プライベート・クラウド(VPC)の作成が完了しました!

 

続いて、VPCの中に仮想サーバ・インスタンス(VSI)を作成します。

・「カタログ」に「virtual server」と入力するとリストに「Virtual Server for VPC」が出てくるので選択します。

「VPC用の新規仮想サーバ」の作成画面になります。

・「詳細」では以下の通り入力・選択します。
> 名前:tok-test-vsi(任意の名前でOK)
> リソース・グループ:Default
> タグ:(記載なしのまま)
> ロケーション:東京1(東京1~3が選択できます)
> 仮想サーバのタイプ:パブリック
>    プロセッサー・アーキテクチャー:x86

・「オペレーティング・システム」と「プロファイル」は以下を選択しました。
(SSH鍵はAIXインスタンス作成時に作ったものを利用します)

・「配置グループ」「ブート・ボリューム」「データ・ボリューム」は初期値のままとします。

・「ネットワーキング」では以下を選択します。
> 仮想プライベート・クラウド:tok-vpc (先ほど作成したVPC)

・「ネットワーク・インターフェース」は初期値のままとします。

ここまで入力と選択ができたら左画面に出力されているサマリーを確認し「仮想サーバ・インスタンスの作成」をクリックしてVSIを作成します。

下記のような表示となります。

「状況」が「稼働中」になったら作成完了です(2分くらいで稼働中になりました)。

仮想サーバ・インスタンス(VSI)の作成が完了しました!

 

次に、VSIをインターネット経由でアクセスできるようにするために、浮動IPアドレスを作成して割り当てます。浮動IPは、フローティングIPとも呼ばれています。

・IBM Cloud ポータル画面の左上にある「ナビゲーション・メニュー」→「VPCインフラストラクチャー」→「浮動IP」を選択します。

・「VPC用の浮動IP」の画面で「作成」をクリックします。

左画面に「浮動IPの予約」画面が出力されます。

・「浮動IPの予約」画面では以下を選択・入力します。
> 浮動IP名:tok-test-vsi-ip(任意の名前でOK)
> リソース・グループ:Default
> タグ:(記載なし)
>ロケーション:「東京3」を選択
> バインドするインスタンス:「tok-test-vsi」を選択(作成したVSI)
> ネットワーク・インターフェース:「en0」を選択
すべての設定ができたら「IPの予約」をクリック

浮動IPが割り振られました。

私のPCから作成した浮動IPに疎通できるか確認します。

疎通ができました。

浮動IPの設定が完了しました!

 

6)AIX環境とx86環境の接続確認

いよいよ、Direct Link Connect と VPC を接続します。

・「ナビゲーションメニュー」→「相互接続性(Interconnectivity)」→「Direct Link」で「Direct Link」の画面を表示します。
・左の3つの点をクリックし「接続の追加」を選択します。

・「接続の追加」で以下を選択・入力し「追加」をクリックします。
> 接続の作成:アカウントに新規接続を追加します。
> ネットワーク接続:VPC
> 地域:東京
> 使用可能な接続:tok-vpc
> 接続の名前:tok-powervs(任意の名前)

以下のメッセージが出力されます。

2分程度経つと、状況が「作動可能」になります。

これで、VPC と Direct Link Connect がつながりました。

AIX環境とx86環境間でPing疎通ができるかの確認を行います。

・AIXインスタンスにログインし、VSI環境にpingを投げます。

AIX環境とx86環境が疎通できました!

AIXサーバからVSIのubuntuサーバにssh でログインできることも確認できました。

 

今回で Power Virtual Server のブログは終了です。
検証を通して沢山の新しい知識を培うことができ、とても充実した機会でした!

 

最後に

2021年は多くのお客様が、Power Systems のオンプレミス更改の考え方を見直すと同時に、 クラウド化を本格的に検討されました。

特に、中小企業のお客様は、クラウド化を選択することで得るメリットがお客様ご自身の負担やストレスを減らす手助けになられたように感じます。

2021年10月から、Power Virtual Server は安価な新ネットワークサービスが開始になったり、IBM i  のライセンス移行オファリングが始まったりと、ユーザの目線に立った新機能が続々登場しています。
より身近なクラウドになってきました。

さて、2022年はアフターコロナが訪れるでしょうか。
海外旅行に行きたいです。

 

お問い合わせ

この記事に関するご質問は下記までご連絡ください。

エヌアイシー・パートナーズ株式会社
技術支援本部

E-Mail:nicp_support@NIandC.co.jp

 

その他の記事

2025年06月09日

安定の裏に潜む意外な悩み?HCLに聞く「HCL Domino」のバージョンアップにおける課題と意義(後編)

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他社製品への移行リスクや未知のコストも考えると、Domino を利用し続けるのがよさそうですね。 松浦: 異なる基盤でも併用して共存でき、互換性も担保されている ので最新バージョンアップでの利用をお勧めします。 ── ここまでの話以外で、他社製品への移行が検討される理由はありますか? 松浦: お客様から、Notesクライアントの強力な機能は変わらずご評価いただきながらも、そのインストールやセットアップなどの運用管理はやはり大変だ、という声もいただいております。 ── 最新バージョンでも同様でしょうか? 松浦: 最新バージョンでは改善されています。具体的には、V14 では ブラウザベースで Notesクライアントとほぼ同じようなことができる「HCL Nomad」という機能があります。特長は、専用Notesクライアントのインストールが必要ない点と、ブラウザベースなので複数の端末から使っていただける点です。 ── 「今までNotesクライアントでしかできなかったことが、Web でもできるようになる」ということでしょうか? 松浦: 例えば、Excelマクロを使った帳票の集計業務などですね。これまでは、Notesクライアント内でオフィス系のアプリケーションを起動するようなものは、ブラウザのセキュリティ制限によりブラウザからの利用ができませんでした。 しかし、2025年6月に出る新バージョン V14.5 は「HCL Nomad Web」が COM をサポートするのが目玉機能の1つで、Nomad Web から Excel や Word や PowerPoint を起動してマクロ実行などができるようになります。 ── V14.5 における進化の1つですね。 松浦: はい、バージョンアップの利点ともいえます。 すでに、以前から使用されているお客様がトライアルを始めている という状況です。 バージョンアップを推奨する理由 新旧バージョンの互換性を担保している。 コミュニケーション基盤が別製品でも、Domino を併用できる。 Domino IQ の実装/HCL Nomad Web の COMサポート HCL Domino について問い合わせる 今後の戦略 V14.5 は 描いたロードマップの答え合わせになるバージョン ── 今後の HCL の Domino のロードマップ、戦略はどのようになっているでしょうか。 松浦: この夏に出荷予定の V14.5 では実行環境のアップデートやスマホ・Web対応の進化や生成AI連携など、HCL になってから大きく描いたロードマップの答え合わせになるバージョンです。 アプリケーションを作り、うまく使ってもらう というのが、Domino の軸になっていると思います。Notesクライアントで動くアプリケーションから Webブラウザやモバイルで動くアプリケーションまで、様々なものがあります。それらを支えていくというのが Domino の DNA です。 ── 確固たる理念と設計思想があるのですね。支えるためには、Web対応や生成AI連携なども見越した拡張性も重要だと。 松浦: 作成したアプリケーションを拡張していくという方向性として API連携が挙げられます。Domino だけで全ての業務が回るとは考えていないので、周辺の製品サービスとの連携が簡単にできる というのがポイントの1つです。 兄弟製品に繋げる二段構えの展開 ── バージョンアップ以外での、ビジネス戦略は何かありますか? 松浦: アーキテクチャは異なりますが、開発環境の観点も含めれば兄弟製品といえるものがあります。 例えば Volt MX という製品には、モバイルOS を含む様々なプラットフォームのネイティブアプリケーションを作る機能があり、単一の開発環境で作成できます。 ── 開発するアプリケーションによって、戦略の幅が広がりますね。 松浦: Volt MX は一例ですが、プラットフォームを問わず使っていただけるような 本格的なアプリケーションについては兄弟製品 に繋げていく、という二段構えの戦略を考えています。 ── 兄弟製品への横展開…Domino が秘めるビジネスの可能性といえそうですね。 松浦: 今後のロードマップは、我々が描いた V14.5 の評価をユーザーから得ながらアプリケーションの軸はぶらさずに兄弟製品と補完しながら作っていく予定です。 ── Volt MX 以外に、どのような兄弟製品がありますか? 松浦: Nomad Web Designer、Domino Leap という製品があり、どちらもブラウザで動きます。 Domino Leap 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では最後に、Dominoユーザー様、パートナー様へのメッセージをお願いします。 松浦: Domino に限らず、バージョンアップの際は『どのバージョンにするか』を迷われるケースがよくあります。 今回のバージョンアップは V14.5 と刻まれたバージョンなので、V14 や V12 という実績があるバージョンを検討したいと思われるお客様もいるかと思いますが、この度 V14.0 の非互換検査をしたところ、12.0.1以上であればアップデートされたプラットフォームとして動作が変わらないことが分かりました。つまり、『14.5 もしくは 14 を避けて V12 にする意味はない』 ということなので、ぜひ最新バージョンを検討していただきたいと思います。 14.5 も新機能を使わなければ 14 と同じような挙動なので、保守期間が残っている新バージョンを使っていただいて、興味のある新機能にトライしていただくのが良いのかなと考えています。 ── 本日はありがとうございました。 HCL Domino について問い合わせる まとめ ここまで HCL Domino の新バージョンや今後の展開など、多岐にわたり HCLSoftware 松浦様にお伺いしてきました。 最後に、前半の話を含め HCL Domino の特長となる強みとバージョンアップを推奨する理由をまとめます。 HCL Domino の強み 高い開発生産性と堅牢性 簡潔で迅速なアプリケーションの開発。 長期的に使用されることに適した、運用の安定性。 優れた互換性と柔軟性 チェックツールにより、新旧バージョンの互換性を担保している。 古いバージョンのデータやアプリケーションも最新バージョンで動作可能。 コミュニケーション基盤が別製品でも、Domino を併用できる。 新バージョン V14.5 の新機能「Domino IQ」 セキュリティを確保しながら自社データを活用した生成AI の活用が可能。 過去のナレッジを活用し、業務改善を支援。 Domino の現状とバージョンアップを推奨する理由 Domino の現状 Domino は35年以上にわたり利用されている製品で、現在も市場は活況。 ユーザー数は多く、旧バージョンのまま利用される「塩漬け運用」も多い。 バージョンアップを推奨する理由 サポートが終了したテクノロジーへの脆弱性対応として必要。 新旧バージョンの互換性を担保している。 Domino は他社製品との共存が可能。 新バージョンは V14.5で、新たな機能が追加された。 (本ページは後半です[前半も公開中]) HCL Domino について問い合わせる このページを見ている人におすすめのページ 安定の裏に潜む意外な悩み?HCLに聞く「HCL Domino」のバージョンアップにおける課題と意義(前編) HCL Domino 製品紹介ページ Com-PASS Cloud|Domino Notes アプリのお預かりサービス .recommend-list{ margin-top: 0px; } ol.recommend-list li { color: #9b9b9b; } #recommend{ font-family: "Noto Sans Japanese"; font-size: 16px; font-weight: 700; color: #9b9b9b; border: none; padding: 0; margin-bottom: 10px; } .highlighter { background: linear-gradient(transparent 50%, #ffff52 90% 90%, transparent 90%); } .anchor{ display: block; margin-top:-20px; padding-top:40px; } .btn_A{ height:30px; } .btn_A a{ display:block; width:100%; height:100%; text-decoration: none; background:#eb6100; text-align:center; border:1px solid #FFFFFF; color:#FFFFFF; font-size:16px; border-radius:50px; -webkit-border-radius:50px; -moz-border-radius:50px; box-shadow:0px 0px 0px 4px #eb6100; transition: all 0.5s ease; } .btn_A 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2025年06月09日

安定の裏に潜む意外な悩み?HCLに聞く「HCL Domino」のバージョンアップにおける課題と意義(前編)

Domino が誕生してから35年以上が経過し、IBM から HCL に移管されて丸6年が経ちました。 Domino は、高い開発生産性と堅牢性を兼ね備えたアプリケーション基盤で、長きにわたり企業の業務効率化を支えてきた歴史ある製品です。一方、重ねてきた実績の分だけ、バージョンアップに対する課題も垣間見えます。 今回は、エイチシーエル・ジャパン株式会社 HCLSoftware のテクニカルリードである松浦光様に HCL Domino のビジネス状況や今後の展開など、多岐にわたり話を伺いました。前半では「Domino の現状」を中心に、後半では「新バージョンの登場と互換性」をテーマにバージョンアップについてより具体的に語っていただきました。(本ページは前半です[後半も公開中]) 対談者 【ゲスト】 エイチシーエル・ジャパン株式会社 HCLSoftware テクニカルリード 松浦 光 様 【インタビュアー】 エヌアイシー・パートナーズ株式会社 技術企画本部 ソリューション企画部 松田 秀幸 ※対談者情報は2025年6月9日時点 HCL Domino の現状 製品の変遷と現在のビジネス状況 ── Domino が誕生してから35年以上が経過し、IBM から HCL に移管(2019年7月)されてからも丸6年が経ちました。今、HCL としての Domino のビジネス状況はいかがでしょうか。 松浦: 現在も利用していただいているユーザーも多く、市場としては活況です。 見た目や使い勝手も含めた新機能が多く実装されてきた点、バージョンアップのサイクルが非常に良いペース で進んできている点が、ユーザー様、パートナー様から製品投資として評価をいただいてます。 一方、Domino のクラウドに対する対応が SaaS としてではなく Amazon や Google などのクラウドキャリアとの協業による提供に主眼をおいているので、その点が他の SaaS型コミュニケーションツールと比べてもう少しなんとかならないかという声は未だにいただいている状況です。 ── Domino のクラウドに対して、SaaS型コミュニケーションツールとしても期待もされているということですね。 松浦: 運用に関する負荷を下げたいということだと思います。 加えて人材確保やノウハウ継承などの課題に対し、生成AI との連携など新しい領域へのチャレンジがトレンドになっています。 旧バージョンでの利用も多い ── バージョンアップのサイクルといえば、多く利用されているバージョンは何でしょうか? 松浦: お陰様で現時点の最新バージョンである V14 が順調に立ち上がっています。ただ実は、特定のバージョンでいわゆる『塩付け運用』をされているお客様も多くいます。 そのような状況の中で1点、昨年末にあったケースについてお話しさせてください。 2024年12月13日に重要障害が発生し、多くのお客様と関係者の皆様にご迷惑をおかけいたしました。大変申し訳なく思っております。この場を借りて、お詫び申し上げます。 対応として修正モジュールの適用をお願いしておりますが、実はこの障害は35年前のコードに含まれていたもので、Domino のすべてのバージョンで発生していました。 そのような中で、Domino の塩漬け運用をされているお客様、他社移行の事例記事になっており HCL とまったくお取引がないお客様からもお問い合わせをいただいています。 ── 古いバージョンのまま Domino を利用され続けているユーザー様もまだまだ多くいらっしゃる、ということが分かったのですね。 松浦: はい、良くも悪くも先ほどお話したような状態で、HCL と最近お付き合いがないお客様からもお問い合わせをいただくケースがありました。 古いバージョンを利用する際の注意点 ── 古いバージョンのまま利用することへの懸念は何でしょうか? 松浦: Java など サポートが終了したテクノロジーへの脆弱性対応 が懸念されます。 また、旧バージョンでは DXに対して十分な役割を果たせるとは言い難いです。新バージョンでは Web対応やモバイル対応、AI対応での活用もイメージしています。 例えば、新バージョンである V14.5 には、Domino と生成AI を統合した機能もあります。 ──『塩付け運用』をされた場合、サポート面はどうでしょうか。 松浦: 多くの塩漬け運用されているお客様からの声をお聞きすると、サポートが終了したバージョンで安定運用ができていたというのが Domino に対する今までの理解だったと思いますが、今回のようなことだけでなく、脆弱性対応も必要になるので、やはり サポートを受けられるバージョンの必要性 を意識していただけたのではないかと考えています。 Domino が選ばれ続ける理由 情報系基幹システムとしての性能と安定性 ── 旧バージョンでの利用も含め、Domino が利用され続ける理由は何でしょうか? 松浦: 情報系の基幹システムとして必要十分な機能を備えている点が大きいですね。 Domino が誕生した当初から兼ね備えており、「バージョンアップをしなくても現状で満足」というユーザーがいらっしゃる理由になっています。 ── Domino が古いまま使用されるのはなぜか、この点をより詳しくお聞かせください。捨てられないけれどバージョンアップもしない、というのは、なぜでしょうか? 松浦: 例えば、四半世紀前のデータがそのまま最新バージョンでも読み込めるなど、下位互換、上位互換性が非常に高い。動いてしまうがゆえに、使えてしまう。 便利に使っていただけるのはいいことなのですが、やはり15年前、20年前に作ったアプリケーションなので、見た目が古くなってくるというのは当然あります。 Domino でのアプリ開発の優位性 ── 一般的な市場感として Domino はすでに別製品に移行されてしまったという風潮もありますが、いかがでしょうか? 松浦: Domino はアプリケーションの開発生産性が非常に高い製品 だというのは、市場の評価として強くあります。 同じようなアプリケーションを、例えば SaaS型の Webベースの他製品、ノーコードの製品やローコードの製品に切り替えることにチャレンジされているお客様はいらっしゃると思うのですが、なかなかうまくいかないということを伺っております。 ── うまくいかないというのは? 松浦: その製品が悪いとか機能が足りないという話ではなく、Domino だと簡単にでき過ぎてしまうということで、エンドユーザーの満足度を得られないというのが1つの原因だとお客様はおっしゃっています。 他社製品と共存できるメリット ── メールはもう SaaSメールに移行しているという話はよく聞きますが、アプリケーションについては Domino の利用を続けているということでしょうか? 松浦: コミュニケーション基盤に関しては、在宅勤務やリモートワークが一般的になったので、好みの Web会議サービスに付帯したものへ切り替えたというお客様はいらっしゃると思います。 ただ、先ほどの話にあったように、アプリケーションはなかなか切り替えるのが難しいというのがあります。アプリケーション利用のために Domino が残っているというケース、共存されているというケースなど、多々あると思います。 ── Domino 以外のコミュニケーション基盤とアプリケーション基盤としての Domino を併用し、いわば一つのシステムとして使えると。 松浦: はい、その通りです。コミュニケーション基盤は別の製品を、アプリケーション基盤としては Domino を使っている 事例を、弊社ホームページにも事例記事として掲載しています。 ── コミュニケーション基盤とアプリケーション基盤でそれぞれのいいいとこ取りをされているのですね。 松浦: Domino と他製品が共存ができることは、バージョンアップの観点でも大きなポイントだと思います。 ──「基盤が2つあると運用管理も2倍になるのか」という疑問も出そうですが、どのような運用が可能でしょうか。 松浦: コミュニケーション基盤では、例えば1人に1つメールアドレスを発行するのが一般的だと思います。その場合、そちらのディレクトリシステムをメインにし、Domino は二次ディレクトリとして運用することもできます。 また、LDAP(Lightweight Directory Access Protocol)参照で認証委託をさせることもできますし、Dominoディレクトリと他のディレクトリ…例えばAzure AD(Azure Active Directory)のようなディレクトリサービスと連携させて運用している事例も多くあり、各社のやりたいことと運用負荷のバランスを考えて様々な方法がとれます。 なぜ Domino のバージョンを上げないのか 高い互換性が仇になっている?「動いてしまう」ジレンマ ── 互換性が高いということは、バージョンアップの障壁が低いともいえますね。 松浦: 互換性の高さは、単に過去のデータが「動く」以上の価値を提供していると考えています。 もし他社製品に移行する場合、往々にしてデータ移行が膨大なコストや技術的課題を伴い、互換性の問題が原因で取り残されたデータが発生するケースも見受けられます。Domino の場合、こうした課題を意識することなく 過去の資産を活用し続けることが可能 であり、移行リスクや未知のコストを回避 できる点でも独自の競争力を持っています。 ── 一方で、見た目を新しくすることは、バージョンアップの動機にはならない。 松浦: 見た目を新しくする機能もリリースはしていますが、そこに手をつけるよりは塩漬けで使ってしまおう、その方がお金がかからずに済む、ということで、古いバージョンのまま使うという決断をするお客様もいるのかなと思っています。 ── 確かに Notesクライアントだけを見たら、そんなに大きく変わらないですよね。 松浦: アーキテクチャは変わらないですし、Windows で動いてしまえばクリティカルな障害もなければ、上げる理由も作れなかったというところです(笑)。 最新バージョンは、バージョンアップをする理由になるか ── 大きな障害がなく動かせる状況の中で、上げる理由は何かとなると「最新バージョン V14 で何ができるのか」でしょうか。 松浦: そうですね。お客様が最新バージョンに上げる理由としては DX が多い印象です。再投資をする際の Web対応やモバイル対応、AI対応があります。そのようなところで、もっと価値を出していけるのではないかと考えています。 ── V14.5 については、後半でさらに詳しくお聞かせください。 松浦: 最新バージョンには、Domino と生成AI を統合した機能もあります。V14.5 は、大きく進化した面もあるので是非語らせてください(笑)。 ── 楽しみにしています(笑)。後半では、新バージョン V14.5 の新機能やアップデート、互換性についてお聞かせください。 HCL Domino について問い合わせる まとめ ここまで Domino の現状について、HCLSoftware 松浦様にお伺いしてきました。 最後に、前半のまとめと後半のトピックをご紹介します。 前半のまとめ Domino の現状 Domino は35年以上にわたり利用されている製品で、現在も市場は活況。 ユーザー数は多く、旧バージョンのまま利用されるケースも多い。 長期的に利用される理由は、高い開発生産性と安定性。 利用され続ける理由 Domino は情報系基幹システムとして必要十分な機能を備えている。 高い下位互換性と上位互換性があり、古いデータやアプリケーションが最新バージョンでも問題なく動作する。 旧バージョンの課題 特定バージョンを使い続ける「塩漬け運用」が多く、安定性を理由にアップグレードしないユーザーが多い。 古いままでもシステムが動作するため、アップグレードの動機になりにくい。 見た目の改良も費用対効果が低いとして、アップデートしないケースが多い。 Domino のバージョンアップと他社製品への移行 Domino は他社製品との共存が可能。 新バージョンは V14.5で、新たな機能が追加された。 DX領域での価値提供が、バージョンアップの理由となる可能性を秘めている。 次回予告 後半では、より具体的に新バージョン、互換性についてお届けします。 新バージョン V14.5 の機能はもちろん、今後のビジネス戦略も語って頂きました。 新バージョン V14.5 が刻む新たな一歩 生成AI を Domino の中に Domino と生成AI の統合「Domino IQ」 自社のベストプラクティスを得られる Domino による生成AI の活用方法 REST API による効率的なシステム間の連携 バージョンアップの鍵は互換性の安心感 移行チェックツールとその効果 新旧バージョンの互換性は移行チェックツールで担保する バージョンアップ vs 他社製品への移行 バージョンアップはしないが、移行もしない 結論!バージョンアップが最適解 今後の戦略 V14.5 は 描いたロードマップの答え合わせになるバージョン 兄弟製品に繋げる二段構えの展開 HCL 様からのメッセージ 過去にとらわれない新たな事例でアプローチ V14.x を避けて V12 にする意味はない (本ページは前半です[後半も公開中]) HCL Domino について問い合わせる このページを見ている人におすすめのページ 安定の裏に潜む意外な悩み?HCLに聞く「HCL Domino」のバージョンアップにおける課題と意義(後編) HCL Domino 製品紹介ページ Com-PASS Cloud|Domino Notes アプリのお預かりサービス .recommend-list{ margin-top: 0px; } ol.recommend-list li { color: #9b9b9b; } #recommend{ font-family: "Noto Sans Japanese"; font-size: 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