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こんにちは。 てくさぽBLOGメンバーの佐野です。 最近世間で業務の効率化ツールとして注目を集めているソリューションであるRPA(Robotic Process Automation)。 第一回記事は概要編でしたが、今回は第二回としてNTT-AT社が製品として出荷している「WinActor®」を紹介します。 1.WinActorってどんな製品? RPA製品全般的にですが、実現できることは「パソコン上の操作の実行」です。 例えば、Webページ上の特定の情報をExcelに転記する、テキストのデータを読み込んでWebサイトに入力する、などがあります。 WinActorはNTT-AT社が開発した製品で、初期の製品出荷開始が2014年と既に4年もの出荷実績があります。 この製品の主な特長としては以下が挙げられます。 ・日本国内でのシェアNo.1(情報元:WinActorサイト) ・国産製品なのでGUIはもちろん日本語 ・フローチャート形式でシナリオを作成 実際のロボット作成画面は以下のようになります。 画面の左下の部分がロボットの動作を定義する画面ですが、フローチャートのようになっていることが分かりますね。 ・WinActorが用意している部品や画像マッチングを利用して様々なアプリケーションの操作が可能 ExcelやWordなどはWinActor自体が用意している部品を使って、例えばExcelのアクティブなセルの移動や値のコピー、書式設定といった操作を実現できます。 それ以外の部品の用意されていないアプリケーションに関しては画像マッチングで対象を特定することで、様々なアプリケーションの操作が可能になります。 簡単な例として、NotesDBに対する新規文書作成操作のデモを画像認識とテキスト入力だけで作ったのでご覧下さい。 デモの中で、黄色の枠が画像認識をした部分の動作になります。例えば最初の画面では「ディスカッション」と書かれた文字の画像を認識してNotesDBを開いています。 ・専用サーバーが不要で、WindowsPC 1台だけでも稼働可能 WinActorはサーバーを用意する必要が無く、PC上にインストール・稼働可能です。 WinActorを利用開始するための初期投資としてはWinActorライセンス費用+シナリオ作成作業費用(+WinActor実行用PC)のみですので、安価にRPAの利用が開始できます。 サーバー不要でPC上のみで完結できる製品をデスクトップ型の製品と呼びますが、対して専用サーバーでロボットの実行・管理をする製品もあります。こちらはサーバー型の製品となります。 それぞれの違いについては次章で解説をします。 2.デスクトップ型とサーバー型 今回紹介しているWinActorは「デスクトップ型」の製品ですが、世の中の他のRPA製品には「サーバー型」のものもあります。 何が違うのでしょうか? ポイントは「ロボットの管理」です。 デスクトップ型 デスクトップ型はRPAのソフトウェアをPC上に導入し、そこでロボットを稼働させます。 全て1台の端末上で完結するため、個人の端末上でも、部門共有PCでも導入することができ、現場での取り回しが容易な形式です。 デスクトップ型の利用イメージとしては以下のようになります。 1つ注意が必要な点としては、デスクトップ型の製品ではロボットが処理を実行している時にはPCを占有するため、個人のPCに入れるというよりも専用PCを用意することを推奨しています。 デスクトップ型製品では、簡単にロボットを作成・稼働できるのがよい点ですが、反面、全社で統一管理をしたいという要望がある場合には不向きです。 WinActorの場合、統合管理するソリューションを追加できるよう準備していますので、このような要望にも対応できるように機能拡張をしています。 サーバー型 デスクトップ型はデスクトップ上でロボットを動かす。それに対してサーバー型は「サーバー上でロボットを動かす」から「サーバー型」なんじゃないか?と推測するかもしれません。 サーバー型は「ロボットをサーバー上で管理する」のでサーバー型と呼ばれます。 当然管理するためのサーバーを別途用意する必要がありますので、その分費用も高くなりがちですが、ロボットの実行環境を増やしたい場合には一元管理するメリットが活きるので比較的大きな環境向けといえるでしょう。 また、製品にもよりますが、PC上でもサーバー上でもどちらでもロボットを実行可能です。 ロボットの実行は管理サーバー上で管理されますので、管理者が管理サーバー上でスケジュール実行や実行トリガーの設定をすることによって実行できます。(手動実行もできます) 構成のイメージは以下のようになります。 3.まとめ WinActorの画面イメージや簡単なデモ動画をご紹介しましたが、どのような製品かイメージがついたでしょうか。 WinActorはロボットを作る操作がさほど難しくなく、RPAで実現する生産性向上の第一歩として使い始める製品としては非常に有用です。 まずは身近な業務で複数の人が同じような業務を行っているのであれば、そこからRPA化を着手してみるのもいいのではないでしょうか。 ※WinActor®はNTTアドバンステクノロジ株式会社の登録商標です。 この記事に関する、ご質問は下記までご連絡ください。 エヌアイシー・パートナーズ株式会社 技術支援本部 E-Mail:nicp_support@NIandC.co.jp
こんにちは。 てくさぽBLOGメンバーの佐野です。 最近世間で業務の効率化ツールとして注目を集めているソリューションであるRPA(Robotic Process Automation)。 どんなソリューションなのか?どういうところに適用する(できる)のか?が言葉を聞いただけではなかなか理解しづらいので、今回はRPAの概要編ということで解説をいたします。 1.RPAって? RPAは"Robotic Process Automation"の略です。”Robotic”とあるので、Pepperのようなロボットを想像するかもしれません。 または、工場などに設置されているような製品を組み立てるために使う機械を想像するかもしれません。 実はRPAでいう”ロボット”は物理的なロボットではなく”ソフトウェアのロボット”を指します。ソフトウェアなので、”パソコン上の操作を自動化する”ためのロボットとなります。 よくあるRPAの使い方の例としては以下のようなものがあります。 例1:Excel(CSV)で受け取ったお客様情報一覧を社内の顧客管理システムに入力する 例2:ECサイトを巡って自社製品の実勢価格を一覧としてExcelにまとめる 上記のようなことを実現できる、PC操作を自動化するためのソフトウェアロボ=RPA なわけですが、RPAが最も威力を発揮するのは複数のアプリケーションをまたぐ操作の自動化です。 Excel内で完結する処理なのであれば、マクロで済んでしまいますが、RPAはExcelをはじめとした、Webブラウザや専用アプリケーション間のデータの橋渡しができるソリューションです。 例えば、顧客マスタのExcel(CSV)を元に顧客管理システムと販売管理システムのそれぞれに顧客情報を登録することができます。 世の中にはRPAソリューションが多数ありますが、大きく2種類の特長に分類できます。 サーバー実行型 デスクトップ実行型 サーバー実行型は実行するロボットをサーバー上で管理します。特に多くのロボットを稼働させる場合には実行スケジュールの調整やスケールアウトの柔軟性が高いという点でも集中管理する場合にはサーバー型が最適です。 それに対してデスクトップ実行型はユーザーの端末上でロボットを稼働させることができます。サーバーを用意する必要がないため、すぐに始められる(スモールスタートできる)ところが良い点です。 デスクトップ実行型はRDA(Robotic Desktop Automation)と呼ばれることもあります。 サーバー実行型・クライアント実行型のどちらがよいのか?という問いには、それぞれにメリット・デメリットがあるのでケース・バイ・ケースとしか言えません。どのような業務を対象とするのか、どの程度の規模になるのかによって、最適なものを選択する必要があります。 海外製品も含めたRPAのメジャーな製品を分類すると以下のようになります。 2.RPAを使うとどういう効果があるの? RPAを導入すると以下の効果が見込めます。 人為的な操作ミスによる手戻りの削減 業務のスピードアップ・効率化 人間がより付加価値の高い仕事に時間を割けるようになる また、RPAを導入する際に業務プロセスの見直しをすることが多いので、副次的な効果として、業務プロセスの簡素化を実現することもあります。 RPAを導入することによって効果が大きくなる業務は以下のようなパターンです。 業務の量が多く、転記やシステムへの入力といった操作の繰り返し 同じ内容(例:お客様情報)を複数システムへ登録 他には、RPA単体ではなくOCR製品と組み合わせて帳票の読み取りからシステムへの入力までを自動化する、という業務も効果が大きくなります。 このように、人間の判断が比較的少ない操作をRPAにより自動化することで従業員のワークロード削減に繋がります。 さらに、対象業務によってはお客様の待ち時間が減少し、顧客満足度向上につながる、なんてことも有り得ます。 具体的な例として、弊社内で実装した例を以下に挙げます。 この例では、メーカーのサイトにある発表レターを弊社のサイトに掲載する業務の自動化になります。 この仕組みを実装することで、人間が定型的・定期的に実行していた業務の一部を自動化でき、メーカーサイト・CMS・Notesと3か所あった作業ポイントがCMSのみの1か所に集約できています。 3.RPAでロボットを作るにはどうしたらよいの? 製品にもよりますが、ロボットは主に以下の2種類の方法で動作を定義することができます。 1.操作を録画し再現する 2.操作を手作業で定義する 最もお手軽なのは1.による録画ですので、この機能を利用することが基本となりますが、人間が実行した操作を記録するだけなので人間が頭で判断しているコト(例えば条件分岐や繰り返し操作)を網羅してロボットを作ることができません。 そのため、条件分岐などを実装するためには、2.を使うことになります。 ロボットの定義は実行してすぐに動作を確認することができるので、「1.で録画」→「2.で条件分岐・繰り返し操作を実装」→ロボットを実行して動作確認→他の操作を「1.で録画」→「2.で条件分岐・繰り返し操作を実装」→ロボットを実行して動作確認・・・ ということを繰り返してロボットを作っていきます。 製品によっても違う部分がありますが、Webブラウザの操作を記録する場合、HTML構文解析機能をもっているものは、HTMLタグのどの項目をどのように変える(入力する)のか、ということを判断できるので、精度が高くなります。 また、画像認識機能を持つ製品もあり、それらの製品ではウィンドウ内の位置情報だけでなく「どのボタンを押すか」を画像一致で検索・実行できます。 ロボットの一連の動作を定義したものを”シナリオ”と呼びますが、シナリオの書き方が製品毎に大きく異なります。 フローチャートのように動作を定義していくものもあれば、まるでプログラミング言語でコーディングをするかのようにシナリオを作るものもあります。 RPAとしての機能だけではなく、維持運用のことも考慮して”どのようにシナリオを作るのか?”も気を付けた方がよいポイントです。 「ロボットを作るにはどういうスキルセットが必要なの?」と聞かれることも多いのですが、条件分岐・繰り返しもあり、正しい処理に直すためのデバッグを考えるとプログラミングを全くやったことが無い人だけでは難しいです。 しかし、バリバリのプログラミングスキルが必要かというとそうでもないので、Excelマクロを組んだことがある人であれば問題ないレベルではないかと思います。 4.まとめ 今回は概要の解説ですが、実際には製品によって実現できることが大きく変わってきます。モノによっては、RPA製品単体で実現出来るけれど、別の製品だと他の製品を購入・連携させないといけない、なんてこともあります。 また、Webブラウザの操作はHTML構文解析機能を利用するため精度が高いのですが、それ以外のアプリケーション(Office製品除く)は専用のモジュールが用意されていないことが多いので、画像認識や座標指定での実装となり、精度が落ち、実装できることに制限が発生することが多いです。 製品選定をする場合には、RPA製品としてどのようなモジュールが用意されているのかについても気にした方がよいポイントの一つです。 次回以降に、弊社が取扱いできる2製品(WinActor、IBM RPA with Automation Anywhere)を検証しましたので、その内容や製品の特長も含めて解説をしていきますのでお楽しみに。 この記事に関する、ご質問は下記までご連絡ください。 エヌアイシー・パートナーズ株式会社 技術支援本部 E-Mail:nicp_support@NIandC.co.jp
皆さんこんにちは。てくさぽBLOGメンバーの河野です。 2018年6月に IBM i が AS/400 として誕生してから30年が経ちました。 IBM i は、この30年間に様々なテクノロジーを吸収し、名称をその時々で変えつつ、性能も大幅に進歩しています。長きにわたり全世界のユーザーに支持されているのは、移植性、堅牢性等の製品コンセプトが、誕生から変わらないことが、大きな要因ではないでしょうか。 次の30年に向けてスタートを切った、IBM i。全世界にも中継された、記念すべき IBM i World 2018に参加してきました様子をご報告します。 IBM i World 2018は、秋葉原コンベンション・ホールで開催されました。会場内は満席で、その期待と熱気が伝わってきました。そして、14:00 の定刻通りにオープニング・セッションが開始されました。 IBM i ユーザーがすぐにでも取り組める事例 講演は、どれも興味深いものでした。その中でも IBM i ユーザーがすぐに取り組める話として、九州三菱自動車販売株式会社様の開発事例が特に興味深かったので、ご紹介します。 九州三菱自動車販売様では、来店のお客様情報をリアルタイムに把握できないという課題に対して、ナンバープレートをカメラで読み取り、リアルタイムにお客様担当者へ通知する仕組みを導入していました。 しかし、1台のPCにしか情報が届かないために、結果として“ご用件を伺って予約いただいたお客様”に対して、ご来店時に再度ご用件を伺うといったような“効率の悪さ”があり、うまく仕組みを活用できていない、という課題がありました。そこで、通知を専用PCではなく、音声で担当者のPCに知らせる、インカムで来店通知を一斉発報する仕組みを構築しました。 その際に必要となったのが、ナンバープレート読み取り機能と IBM i 上の顧客データとの連携です。そこで、採用した技術がOSS(Open Source Software)を組合せて独自開発して、IBM i と連携させる仕組みでした。 最新の IBM i は、OSS 連携ツールが充実してきており、また、ユーザー研究会等の IBM i コミュニティからアドバイスやヒントが得られることも、実装する上で大きかったようです。 開発が進み、最終的には、インカムへ音声通知する仕組みまでを3ヶ月で完了しました。 私は、IBM i は基幹システム、という堅いイメージがあったのですが、最近の活用のされかたは、画像情報とリアルタイム連携するなど、進化し続けていることを改めて感じました。 増々 OSS が進化することと思います。OSS の進化に併せOSS との連携(データ連携)に関連しセキュリティやネットワークといった技術との連携も意識して取り組みが必要となってくるはず、と感じました。 事例発表の後、IBM からの使用技術の説明があり、更に理解を深めることができ、参加されたユーザーの方々もチャレンジして欲しい内容の話でした。 働き方改革に貢献する事例 もう一つのユーザー事例は、住商モンブラン株式会社様の働き方改革に対する取り組みでした。 それは、IBM i 上のリアルタイムの売り上げデータを IBM Watson へデータ連携することにより、生産計画のための分析資料を、簡単に作成できるというものでした。 住商モンブラン様では、IBM i の基幹データをコアに、様々なツールと簡単に連携させることにより、生産性が向上し、残業を削減させることに成功しました。これはまさに、今問われている働き方改革に IBM i とそのデータ活用が貢献する話でした。 最新技術との連携で課題解決に貢献する IBM i 今後は、IBM i を企業を支える基幹システムとしての役割だけはなく、生産性向上、顧客満足度向上、企業価値の向上など多くの役割を担える、ということがわかった IBM i World 2018での事例紹介でした。 今後も、IBM i をフォローしていきたいと思います。 ※この記事は2018年7月6日時点の情報を基に作成しています。 この記事に関するご質問は、下記までご連絡ください。 エヌアイシー・パートナーズ株式会社 技術支援本部 E-Mail:nicp_support@NIandC.co.jp
こんにちは。てくさぽBLOGメンバーの山田です。 6月11日―12日に開催された IBM Think Japan 2018に参加してきました。 今、IT業界ではデベロッパー向けのイベントが増えていますが、IBM Think Japan 2018 も、初日を Code Day と称して3,000人を超えるデベロッパーが参加するイベントとなりました。 そのキーメッセージは、 世界はITでできている。イノベーションはエンジニアがリードする。 です。 イノベーションを牽引するエンジニアの時代 今年3月に開催されたラスベガスの IBM Think にも参加しましたが、Code Dayと銘打ってエンジニア向けの日程を設けたり、新世代エンジニアを登壇させたりという企画は、日本独自のものでした。この新世代エンジニアを登壇させるという企画からはグローバル以上に強いメッセージを感じました。逆にいえば、日本ではまだまだエンジニアへのフォーカスが弱いという証拠なのかもしれません。 新世代エンジニア4名が登壇した「エンジニア達の世界観」をテーマとしたパネルディスカッションは、IBMイベントとしては異色でした。 ここがポイント! 彼らは異口同音に、場所や時間にとらわれない働き方が理想であり、エンジニアはそれを実現できると述べている コミュニティへの所属は、個人だけでなく組織や社会への貢献につながる エンジニアは課題を持つ現場と一緒に解決に取り組むことが大事 特に、高齢化という現場の課題を挙げ、テクノロジーによる身体能力拡張や自動化の研究に取り組んでいるという話では、若者たちが高齢化への取り組みを前向きなチャレンジとしてとらえ、日本ならではの強みになると考えていることに感動と期待を感じました。 IBMの主催イベントでありながら、IBM製品やテクノロジーについてまったく話題にしなかったことも面白く、こういった発想をもつエンジニアの皆さんが、どのようなテクノロジーを評価し、どのようなツールを使うのかを、市場は注目しているに違いないと感じました。 IBM Code Patterns はまさにデベロッパーのためのツール 今回のイベントで大々的に発表された「IBM Code Patterns(コードパターン)」は、まさに彼らにとって有効なツールになりえるのではと思いました。 IBM Code Patterns は、アプリケーション開発に役立つアイデアやコードが、以下のような作りたいアプリケーションの目的別に提供されたものです。例えば、ブロックチェーン・ネットワークを構築する、API Connect と Secure Gateway を使用してハイブリッド・クラウドを作成するなど、ディベロッパーのための様々ツールを提供しています。 コードを読む時間が短縮できるというメリット IBM Code Patterns では、作りたいアプリケーションの目的別にアーキテクチャ、サンプルコード、ドキュメント類がまとめて提供され、コードを読む時間が短縮できるというメリットがあります。 モバイル、クラウド、AI など、現在のアプリケーション開発は複数のテクノロジーが複雑に絡み合っています。そのため、それぞれの分野のスぺシャリストが、コミュニティで活動することが重要です。また、エンタープライズの世界では業種ごとの専門的要件なども関係するため、Context(文脈)も重要になっています。これらの状況を踏まえ、IBM Code Patternsがアプリケーション開発に役立つアイデアやコードを提供することで、開発者の次のステージをサポートするのです。 更にコグニティブの出現とともに”開発者は意思決定者に進化した”というメッセージにもある通り、エンジニアはテクノロジーを使って言われたものを作るのではなく、クリエーターであり、イノベーターであり、ダイバーシティを表現する存在として期待されているということと捉えることができます。 印象に残ったセッション 40以上の Breakout Session では、テクノロジーや開発手法などのトピックがデモやユースケースを通じて具体的に紹介されていました。 二日目の General Session では、この1年でどんなことが起きたのかを日本IBMの社長であるエリー・キーナン氏が振り返っていました。 テクノロジーの変革は大きく飛躍しました。 AI の認知度が上がり、日本でも Watson 導入企業は7倍になった ブロックチェーンの導入により、トレーサビリティの時間も7日から2.2秒に短縮された 量子コンピューターで、アジア初の HUB を開設した テクノロジー以外のことでは、ディスラプション(破壊的イノベーション)について語っていたことが記憶に焼き付いています。元々ディスラプションは Uber のように業界以外から起きると言われていました。しかし、実は業界 TOP の既存企業によるディスラプションが大幅に拡大していることが分かったそうです。 これは、既存企業が持つ非公開データの存在が大きく影響しているようで、データの重要性を裏付ける現象だと言えるでしょう。 楽天の取り組み Keynote として講演された楽天の事例は、初日のエンジニアによるイノベーションと、ディスラプションとなりえる企業の戦略を表したものだったと感じました。 楽天は、昨年、Watson のテクノロジーと楽天のビジネス上のノウハウを活用し、”楽天AIプラットフォーム”という社内システムを構築しましたが、驚くべきことに、1年間に38ものチャットボットを立ち上げ、サービスの品質や利便性を向上させているとのことでした。 更に、このような楽天エンジニアのスペックやその取り巻く環境も興味深いものがありました。 世界8か国に4,600人のエンジニアを抱え、国内に至っても日本人比率は、41% とまさにグローバル化されています。また、女性が23%を占めるダイバーシティな環境でもあります。社内の英語公用語化も、世界中から優秀なエンジニアを集めるための1つの施策だったそうなので、エンジニアへの期待値は相当高いと言えます。 今後、ブロックチェーンの技術を活用した楽天ポイントのグローバル通貨化の構想もあり、楽天ポイントを通じて個人的にも先進テクノロジーの恩恵を受けることができるのかとワクワクしました。 もはや仮想通貨に限らず様々なエリアで活用される技術となったブロックチェーンについては、近いうちに特集で取り上げたいと思います。 まとめ 最後に、初日に講演していたWatsonの生みの親グラディ・ブーチ氏は、 今やデベロッパーはすばらしいコードを書くだけでなく、経済的価値をもち、倫理的・道徳的な課題を解決するコードを書かないといけない。世界を変えているのでその責任があるのだ。 と語っていました。 正直、そこまで言う?とその時は思いました。しかし、二日間セッションに参加するうちに、IBMはこんなにもエンジニアを大事にしている、と感じると共に、ビジネスパートナー様をサポートする立場として、エンジニア向けにどんなサポートができるのかを考えさせられるイベントとなりました。 ※この記事は2018年6月27日時点の情報を基に作成しています。 この記事に関するご質問は、下記までご連絡ください。 エヌアイシー・パートナーズ株式会社 技術支援本部 E-Mail:nicp_support@NIandC.co.jp
皆さんこんにちは。てくさぽBLOGメンバーの佐藤です。 IBM のグローバルイベントである「IBM Think 2018」(以下 Think)に参加するため、ラスベガスに行ってきました。 Think は 3/18-22の 5日間開催で、IBM の最新の情報や事例などのセッションが 2,700 以上(!)もあり、注力イベントになります。 セキュリティ、Watson 、ブロックチェーンといった最新テクノロジーや量子コンピュータIBM Qといった製品に至るまで幅広い範囲をカバーしています。 本記事ではハードウェアを中心の内容をお届けします。 1.伝統と革新のメインフレームIBM Z IBM Z 関連でいくつか発表・言及がありました。 IBM Zというとメインフレームで枯れたハードウェアで老朽化にともない粛々とリプレースを繰り返す…そんなイメージがあるかと思います。 セキュリティに関しては、z14から、すべてのデータをOSレベルで100%暗号化を実現しています。 しかし、メインフレームであれば基本的にはローカルネットワーク上にあるはずで、そこまで強固な暗号化がそもそも必要なのか?という疑問が出るかと思います。 IBMからのメッセージは、データ活用、クラウド化、ブロックチェーンといったキーワードでした。 すなわちIBM Zのデータをもっと活用してより新しいサービスを提供しよう! 新しいサービスには、Watson等の他のシステムとの連携が必要になり、様々なシステムとつながることになり、よりいっそう脅威にさらされやすくなることを意味しています。 IBM Zは他のシステムとの連携で攻めに転じつつ、100%暗号化で守りも万全という攻守がそろったシステムとなります。 写真はz14、クリアパネルで中が見えるようになっていた特別な展示モデルです。 正確に言うと拡張ボードの筐体、中央のバックプレーンに対して前後で拡張ボードが刺さるという効率的なデザイン。 昔を知る人間からすると、NEC PC‐9800シリーズのCバスを彷彿とさせる構造。 2.OpenPower OpenPower系ですが、IBM Powerとは別に展示がありました。 日本で未発売の1U Power9モデルやラックスペース社のモデル、Googleの社内使用の特別モデル 珍しいところでは、ロシア製の2Uで4ソケット、メモリが最大8TB搭載可能なPower8マシンもありました。 OpenPowerも盛り上がりを見せています。 ラックスペース社の実機。 普段はクラウド提供のため、実機がみられることはほぼないと思います。 PCIeをフレキシブルケーブル延長して横向きGPUを搭載するという凄い仕様 写真右のジャバラは何かと思ったら、引き出し構造になっており2.5インチのDiskスロットが横向きに並んでいる構造です。 おかげでスペース効率はかなりよさそうです。 3.IBM Q IBMは量子ゲート方式の量子コンピュータを世界で唯一サービス提供しています。 ハードだけでなくソフトまで提供しているのはIBMのみで、今回新たに早期アクセス版の発表もあり 日本からは日立金属、本田技術研究所、長瀬産業、慶應義塾大学が参加します。 50Qbitの試作機の展示がありました。 といってもそのほとんどは冷却装置になります。 量子コンピュータにおける量子もつれ状態(重ね合わせ)の状態を維持するには、絶対零度近くまで冷やす必要があるためです。 また、電磁波といったノイズも影響を受けるため、実際動かすときはさらにカバーが付きます。 4.最後に 全体的な印象としては、例年開催しているIBMの複数のイベントをThinkに集約するという初めての試みもあったため非常に盛況でした。 会場はとても広かったのですが、それでも参加者が4万人ということもあり、基調講演といった特別なセッションがおわると人の流れがすごかったです。 基本すべて英語で行われますが、だんだん耳も慣れてきますので、習うより慣れろとはまさにこのことでした。 来年はサンフランシスコで行われますので興味のある方は参加をおすすめします。 Think2019のために、予定はあけておいてね!との事。 この記事に関する、ご質問は下記までご連絡ください。 エヌアイシー・パートナーズ株式会社 技術支援本部 E-Mail:nicp_support@NIandC.co.jp
こんにちは。てくさぽBLOGメンバーの佐藤です。 ハイパーコンバージドや、次世代移動通信「5G」等、今後さらなるネットワークの高速化の需要が高まることが予想されます。 現在10Gbpsを採用されるケースが多いかと思いますが、2018年以降普及しそうなNVMeOF等を踏まえると10GbpsEtherですらボトルネックになることが想定されます。 今回は、10Gbpsの次の世代、今から覚えておいて損はない25GbpsEtherの紹介をしたいと思います。 RJ45の終焉 以前、10GbpsEtherは何を選べばよいの?で10GBase-Tについて触れました。 有線LANといえばRJ45アダプタというのは一般の人にも広くなじみがあるのではないでしょうか? 気になるのは後継にあたる25/40GBase-Tだとおもいます。 25/50GBase-Tでは?と思われますが、技術的に実現できないという事で、25/40GBase-Tで規格化されました。 25/40GBase-Tについては、2016年にIEEE 802.3bqで標準化されましたが実際の製品は2018年3月現在、残念ながら存在しません。 技術的な課題から製品の登場は2020年以降と言われています。 また、スイッチとなるとさらにそのあとにリリースとなりますので、現時点では普及するのが全く見えない規格といえます。 今現在、10Gbpsを超える規格については、RJ45は選択できません。 40/100Gbpsを振り返る ご存じの方は、40/100GbpsEtherが先にあるのに、なぜ今になって遅い25/50Gbpsなのだ?違和感を覚えるかもしれません。 そこで、40/100GbpsEtherを振り返ってみましょう。 40/100GbpsEtherは10GbpsEtherの技術をなるべく流用しようとのコンセプトの元作られています。 簡単に言うと、40GbpsEtherは内部的には10GbpsEtherが4つ束ねられています。 100GbpsEtherは大きく分けて2つの規格があるのですが、一つは10GbpsEtherを10本束ねる方式 もう一つは25Gbpsを4つ束ねる方式を標準化しました。 40/100GbpsEtherの問題点とは? さて、当初40/100GbpsEtherは規格化も製品化も比較的スムーズに進んだのですが、課題の低コスト化が解決できずに普及がなかなか進んでいません。 問題は何か?これらの規格は見た目のケーブルは1本ですが、内部的には4ないし10のケーブルが束ねられています。 実際、ネットワークスイッチやNICカード内の配線が過去の4倍もしくは10倍必要で、特にネットワークスイッチは内部配線が大変なことになります。 当然、10Gbpsを10本束ねるタイプの100GbpsEtherについてはかなりコストが高止まりすることになりました。 25/50GbpsEtherとは? そんな問題点を解決する策は1つしかありません。 技術的にはハードルが高いですが、1本あたりの転送速度を25Gbpsする必要があります。 100Gbpsであれば10Gbps×10ではなく、25Gbps×4の100Gbps方式をとるということです。 25GbpsEtherの期待値が高いことがこれでお分かりになると思います。 規格一覧表 文章で説明してきましたが、かなりややこしいと思いますので、一覧にまとめます。 イーサネット クロックレート レーン数 データレート 1GbE 1.25GHz 1 1Gbps 10GbE 10.31GHz 1 10Gbps 25GbE 25.78GHz 1 25Gbps 40GbE 10.31GHz 4 40Gbps 50GbE 25.78GHz 2 50Gbps 100GbE 10.31GHz 10 100Gbps 100GbE 25.78GHz 4 100Gbps ケーブル種類 ケーブルについては、メタル、光と豊富にありますので、戸惑いますが、自由に組み合わせることができます。 現在主流のSFP/QSFP系のみ紹介します。 選び方は、低コストは短距離、高コストは長距離となります。 1.DAC(DirectAttachCopper) ・最も安い ・最大長~5m 2.AOC(ActiveOpticalCable) ・DACに次いで安い ・最大長~100m 3.Optical Transceiver ・高コスト(Transceiver+Cableが必要) ・最大長 SR~100m LR~10km 画像はmellanoxから、直販価格は一つ当たり、25Gbps SFP28 LC-LC SR $155 画像はmellanoxから、LRが25Gbpsはまだ出てなかったので参考で100Gbpsになります。 直販価格は、一つ当たり100Gbps QSFP28 LC-LC LR4 $4315(!) まとめ 10GbpsEtherの時もそうでしたが、10Gbpsを超える速度の世界は種類が非常に多く悩ましいと思います。 現状を踏まえると ・RJ-45タイプは製品が出ていないので選択肢から外れる。 ・25Gbpsより上の速度はマルチレーンになり、同じ100Gbpsでも10Gbps×10と25Gbps×4では互換性がない。 ・RDMA/RoCE,NVMeOFといった技術を使うことにより、規格上の帯域だけでなく実効転送速度も期待できる。 となります。 現状RJ45のケーブルを敷設しているユーザーはケーブルの敷設のやり直しが必要になります。 単純にネットワークの高速化だけではコストが高すぎるとなるケースもあるかもしません。 25Gbpsですと帯域的にもファイバチャネルの置き換えも可能になりますので、SANネットワークの置き換えも併せてご提案というのが良いシナリオになるかと思います。 IBM Storage製品ではV7000/V50x0シリーズが25GbpsEtherに対応しておりますので、ご提案検討に含めていただけると幸いです。 この記事に関する、ご質問は下記までご連絡ください。 エヌアイシー・パートナーズ株式会社 技術支援本部 E-Mail:nicp_support@NIandC.co.jp
皆さま、こんにちは。てくさぽBLOGメンバーの岡田です。 前回ブログ”VMware on IBM Cloudでクラウド化の提案してみませんか”の第2弾として、前回ブログにも記載しましたVMware on IBM Cloudの優位性について詳細をご紹介します。 VMware on IBM Cloudの優位性を理解いただくことで他クラウドとの比較検討の際の参考にしていただければと思います。 日本を含む世界中40拠点以上のデータセンターで利用可能 各国にあるIBM CloudデータセンターでVMware on IBM Cloudを利用できるので利用要件に合わせて最適な場所を選択できます。日本も含まれているので、仮想サーバーを日本国内に置く必要がある要件の場合でも利用できます。 また、利用環境であるベアメタルサーバーは全世界で10年以上の提供実績がありますので、安心して利用できますね。 各データセンター間の高速回線を無償で利用可能 これはIBM Cloudそのものの特長ですが、なぜVMware on IBM Cloud環境でメリットがあるのでしょうか。 異なるデータセンター間での仮想サーバー同士の連携や遠隔地保管、災害対策構成などを取る場合、必ずデータセンター間で通信が発生します。このときデータセンター間の通信が無料のため通信料金を気にしないで利用できるので、コスト面で大きなメリットになりますね。 VMwareの管理者権限を保有可能 VMware on IBM Cloud でデプロイされた環境は、オンプレミス環境と同様にハードウェア、ソフトウェアの管理者権限がありますので、これまでの運用要件やスキルを活用しながらVMware環境をフルコントロールしたい場合に最適です。つまり場所がオンプレミスからクラウドに移っただけで他は何も変更を意識せずに運用することができるのですね。 逆に、クラウド移行を機に運用を任せたい場合はIBMのマネージドサービスを利用することも可能です。 要件や規模に応じた複数のデプロイメント方式を提供 VMware on IBM Cloudは以下の3種類の構成形態から選ぶことができます。それぞれのハードウェアスペックも1種類ということはなく、複数パターンから選択することができます。どの方式もVMwareライセンスの持ち込み(BYOL)または月額課金の購入が可能です。 ・VMware on IBM Cloud(アラカルト型) - IBM Cloudベア・メタル・サーバーの豊富なラインナップから選択できます。 - この方式は手動で構築が必要ですので、オンプレでのvSphere環境構築に近いですね。 ・VMware vCenter Server on IBM Cloud(VCS) - 共有ディスク構成でのNFS接続が提供されますが、vSANも選択できます。 - vCenter、vSphere Enterprise Plus、NSX Base、vSAN を利用可能。 ・VMware Cloud Foundation on IBM Cloud(VCF) - VMware認定vSAN Readyノード構成のハードウェアです。 - vCenter、vSphere Enterprise Plus、NSX、vSAN、SDDC Manager、Active Directory を利用可能。vSANを利用したハイパーコンバージドをイメージすると分かりやすいと思います。 また、ベアメタルサーバーには最新のGPU を追加可能なので、VDI(Virtual Desktop Infrastructure)環境を構築することも可能です。 補完ソリューションが充実 災害対策、バックアップ、セキュリティ、ネットワークなどの要件を実現するために、以下のようなソリューションを追加することが可能です。VMware製品だけで要件を満たせない場合に追加できるので、実現できる構成の幅が広がりますね。 クラウドへの移行が容易 先月から日本のデータセンターでHybrid Cloud Extension(以下、HCX)が利用可能になりました。HCXは、既存のオンプレミスVMware環境のIPアドレスやルーティングなどネットワーク設定を変更することなく、IBM Cloudとの間で、簡単にマイグレーションを可能にします。 HCXには以下の特長がありますが、一番のメリットは既存オンプレミス側のvSphereバージョンが5.1以降でよいことです。クラウドに移行するためにオンプレミス側のvSphere環境をバージョンアップする必要があるとハードルが一気に高くなるのですが、バージョンアップせずに済めば移行にかかる工数も抑えることができますね。 最後に いかがでしたでしょうか。VMware on IBM Cloudの優位性について理解いただけたかと思います。 特に注目いただきたいのは、3つの提供方式の中から選択できるVCSとVCFです。これまでオンプレミスでvSphere環境を構築するには日単位の工数がかかっていましたが、VCSまたはVCFを選択すると、たった数時間で、VMwareソフトウェアが導入済みの状態で展開されますので、構築やテストの工数を大幅に削減できると思いますので、ご検討の際にはぜひVCS or VCFをお勧めします。 最後にまとめると、オンプレミスvSphere環境の移行先にIBM Cloudを選ぶ最大の理由は”そのまま移行”できることです。現在のスキルや運用手順を移行後も活用できるVMware on IBM Cloudを是非ご検討ください。 (参考情報) 【資料】ビジネスのためのクラウド IBMCloud のご紹介 *弊社パートナー様向けサイトのためユーザー登録/ログインが必要です。 ※この記事は2018年3月27日時点の情報を元に作成しています。 この記事に関する、ご質問は下記までご連絡ください。 エヌアイシー・パートナーズ株式会社 技術支援本部 E-Mail:nicp_support@NIandC.co.jp
皆さんこんにちは。エヌアイシー・パートナーズ 取締役 企画本部長 平沢 です。 先週、IBM 初の試みとなる全ブランドが集結する世界最大規模のイベント"Think2018"がラスベガスにて開催されましたが、今回は、その中の PartnerWorld at Think の模様をいち早く、ご紹介していきます。 ラスベガス MGM Grand ホテルで盛大に開催! PartnerWorld at Think は 3月20日の Beacon Award 表彰式から 22日のクロージング・セッションまで 3日間に渡り、ラスベガスの MGM Grand ホテルで開催されました。 MGM Grand ホテルでの Beacon Award 表彰式風景 IBM Global Business Partners を率いる John Teltsch ゼネラルマネージャーが「今年は簡素化を一層推進し、パートナー様にとって付き合い易い IBM になる年とする」と宣言し、基調講演が始まりました。今回の際立ったトピックスは以下の2つでした。 ● パートナー様トランスフォーメーション事例 ● スペシャルゲスト Earvin "Magic" Johnson 氏の講演 パートナー様トランスフォーメーション事例 先ず「パートナー様トランスフォーメーション事例」です。Watson Build Challenge の欧州チャンピオンにして世界チャンピオンを勝ち取ったイタリアの blueit 社です。blueit 社は Watson Build Challenge への参加をきっかけにトランスフォーメーション(変革) を目指しました。"Precision Farming as a Service" (ドローンが撮影した畑の写真から病害虫の状況を Watson が特定し、必要な区画に適切な対策をガイドする AI) を開発し、栄冠を勝ち取りました。今後はワイン用のぶどうに固有の病気を予防 (Preventive Maintenance) する AI を開発するそうです。革新(Innovation) はプロジェクトではなくプロセス(終わりの無い継続する活動)であるという言葉が心に残りました。 スペシャルゲスト Earvin "Magic" Johnson 氏の講演 次は基調講演のスペシャルゲスト Earvin "Magic" Johnson 氏の講演です。NBA のレジェンドにして現在は実業家。15歳の時に Triple Double (得点、リバウンド、アシスト、スティール、ブロックの内の 3つを 1試合の中で 2桁回数) を達成し "Magic" の称号を得ました。「僕は十分大きいからステージから降りて話すよ」と言って、聴衆の間を巡りながらの講演です。 "Magic" Johnson 氏のモットーは Winning Attitude (勝ちへのこだわり、勝てるように変わる)。自身の経験談として、「激しく早く動き回るゲームから球をじっくり持って攻めるバスケットボールに変わった時期があり、自分自身とチームがそれに合わせて Adjust することで常勝チームを維持した」、「今の IBM と一緒だね!」という言葉は説得力があります。 "Magic" Johnson 氏は 7人兄弟姉妹の大家族だったため、父親は ゼネラルモータースの給料に加えゴミ回収の仕事を家計の足しにしていたそうです。厳冬のミシガン州で父親の手伝いをした時、こぼれたゴミをきちんと片付けなかった "Magic" Johnson 氏に父親が言った「半分しかしない人間は半人前の人間にしかなれない」という言葉が "Magic" Johnson 氏を Perfectionist (完璧主義者)にしたそうです。そして年2回、自分自身を「1人の男性」、「夫」、「父親」、「ビジネスマン」として SWOT 分析しているそうです。 ビジネスとして "Magic" Johnson 氏とスターバックス ハワード・シュルツ CEO との共同事業の事例を話してくれました。マイノリティ(アフリカやヒスパニック系住民)が多く住む都心の密集地にはスターバックスが全くありませんでした。"Magic" Johnson 氏はハワード・シュルツ氏と 50/50 で出店する説得に成功。唯一の条件は、並べるスウィーツと店内音楽をマイノリティ向けに変えることでした。Overdeliver(期待以上のことを提供) することがとても重要で、この Adjustment(調整 = スウィーツと音楽の変更)で 105店舗を展開しているそうです。 締めくくりは聴衆との質疑応答です。「リーダーシップとは」という問いに「部下や同僚を引き上げること」、「あの時こうしていればと思うことは」という問いには「過去を振り返って後悔することはない。常に前向きに新しいことに向かう」と明快に答えていました。その後は質問者と一緒に並び、ビッグスマイルのツーショット写真です。 6フィート 9インチ(206センチメートル!)の身体は大迫力で普通のアメリカ人男性が子供に見えます。ビジネスのことは分からなかったのでメンターを付けて一から学んだという謙虚で賢い人格が会場を満たしていました。 日本から参加されたパートナー様向け"Japan Forum" 3日間に渡るセッションをまとめる形で日本から参加されたパートナー様向けに Japan Forum が開催されました。日本アイ・ビー・エム株式会社 ジョージ・カチャドリアン (取締役専務執行役員 チーフ・オペレーティング・オフィサー、ストラテジー・チャネルズ&オペレーションズ担当)から "We are OPEN to business." (ビジネスを第一義とし、全ての可能性を追求すると筆者は理解) を Japan GBP (Global Business Partner)のスローガンとしているというお話しで開会しました。 Watson Build Challenge 日本チャンピオンの情報技術開発株式会社 ソリューション・コンサルタント部 工藤弘隆様と宮崎温子様が「コグニティブビジネスへの取り組み - Create New Generation Zoo by Smart Zoo」をお話しされました。前半は宮崎様が英語でのプレゼンを短縮版で披露され、聴衆を魅了しました。素晴らしいの一言です!後半は情報技術開発株式会社様の Watson への取り組みを工藤様がご説明くださいました。 今回 Japan Forum の目玉は、アメリカのパートナー様 Stan Wysocki (スタン・ワイソッキ), VP, Mark III Systems 社による "Transformation (変革) or Transit(遷移)" という講演でした。Mark III Systems 社はテキサス州の創立 20数年のインフラビジネスを得意としてきた会社でしたが、オープンソースを活用したソリューションカンパニーに、最近はアウトカム(お客様の目的を達成し結果を出す)カンパニーに進化してきたそうです。重要なのは Stay Relevant - お客様のビジネスに関わり続けること。IBM のイベントではありましたが、「IBM が変われと言うから変わるものではない」、「自社はこれまでお客様に販売、提供してきたモノに自信と責任がある」とぶれない考えを披露してくれました。よって、新しいことを始めることは過去を捨てるのでなく、その上に積み上げる(Additive = move up stack)という考え方で進んでいるそうです。 重要なのは "Stay Relevant" ~ お客様のビジネスに関わり続ける ~ こと 事例として、昨年 11月に不動産登記の女性経営者からシステムパフォーマンス不具合を相談する電話があったそうです。Stan Wysocki 氏から不具合は全く問題なく解決できること、しかしそんなことができる IT 会社は近隣に何社もあることを説明。それより、その女性が経営する会社が直面する課題について話して欲しいと水を向けると、競合会社の脅威があることを話してくれたそうです。詳しく話を聴くと彼女から「これこそ正に私が話したかったこと」。経営課題に取り組みつつ、システムの課題も解決しました。完全な信用を取り付けていたため、価格交渉は一切無かったそうです。 このような Outcome Conversation (お客様の目的を達成し結果を出すことを話し合う) が最重要との指摘です。Talk to clients what needs to be done! (お客様とは成されるべきコトを話そう!) です。会社を進化させる中でオープンソースに取り組む際、新しい技術に貪欲で尽きない興味を持つエンジニアを採用してきたそうです。そして、エンジニアが「もっと試してみたい」と言う時は言うに任せ、Empowerment しているそうです。実際に会社を進化させてきた経営者のお話しに聴衆全員が聞き入りました。 来年 2019年は 2月12日から15日にサンフランシスコで開催されます。 今直ぐ手帳に予定を書き込み、是非ご一緒に参りましょう。 この記事に関する、ご質問やご意見がございましたらコチラにてご連絡ください。
AI は今や話題に事欠かないテーマとなっており、日々様々な意見や事例を目にするようになっています。 前回の特集(『AI に怯えず積極的な活用と人の武器を磨いてみよう!』)で、AI プロジェクトを進めていく上でのポイントとして、以下を挙げました。 ●準備に時間をかけ過ぎず、始める ●小さく始めて、大きく育てる ●失敗から学ぶ ●最初から完全を目指さない(ある程度の完成度でトライ・アンド・エラーで改善する) ●ユーザーに共感し、利便性や生産性を上げ、本来の仕事に集中させる では、実際に自社やお客様が「AI を活用したい」となった時にどのようなアプローチを取れば良いのでしょうか。 AI プロジェクトの成否の鍵は・・・ AI を業務に実装するには(もちろん、AI だけに特化することでもありませんが・・・)「構想フェーズ」から始まり、「検討フェーズ」を経て、「試作・評価フェーズ」を繰り返し、「実装フェーズ」、「運用フェーズ」と進めていきます。 まだまだ未知のことが多い AI を業務やビジネスに活かすには、新しいアイデア、これまで考えつかなかった発想の転換などが必要となります。この新しいアイデアや発想の転換をいかに生み出せるかが、AI のプロジェクトの成否を分けるキーになり、フローの冒頭にあたる「構想フェーズ」が重要になるのです。 今回は、この"構想フェーズ"にフォーカスをあて、アプローチの方法について迫っていきましょう。 「構想フェーズ」でのアイデア出し プロジェクトにおいては、まず、課題と目的が設定されます。そして課題を解決するアイデア出しに進みますが、この"アイデア出し"が、 AI プロジェクトの要となる 「構想フェーズ」で実施されます。 では、AI プロジェクトを成功させるため、最も重要となる「構想フェーズ」において、新しいアイデアや発想の転換を生み出すためには、どうするのが良いのでしょう。 昨今、以前、第3弾に渡りご紹介したデザイン思考(「なぜクラウドとデザイン思考なの?」「何がデザイン思考導入を難しくするのか」「日本企業にはイノベーションの素養がある(前編/後編)」)がアプローチ法として使われることも多いのですが、デザイン思考を知らなければできないというわけではありません。今回は、より一般的で、誰もが一度は経験したことがあるであろう"ブレーン・ストーミング"について、確立されている細やかな手法などを改めてご紹介してみたいと思います。 ブレーン・ストーミング 以降は、共創という形で、アイデアを出す方法を考えてみます。 共創とは、複数人で創造(発想)することを言います。ブレーン・ストーミングなどの手法を使うのが一般的ですが、まず、この発想のための会議をどのように取り仕切るか、という検討が必要となります。参加者はどうすれば良いのか、場所は?時間は?など、共創の前には準備が必要です。 1. 人選をどうするか? Amazon のジェフ・ベゾスが、最適なチームの規模について「ピザ2枚で足りる」ぐらいが良いと言っています。これは、5~8人前後の人数ということで、アイデア出しにはこれぐらいの人数が良いと思います。また、そこに参加する方は、フラットで雑多な(上下関係がなく、職種がバラエティに富んでる)方がより多くのアイデアが出ると言われています。お客様も含め、部門や職域などがあまり重ならないようにすることが重要です。 2. 場所をどうするか? いつもの会議室などあまり場所にこだわらないことも多いと思います。しかし、意外に場所は大事です。広さは十分か、机は固定されていないか、ホワイトボードは足りているか、暗く閉鎖的ではないか…など気をつける必要があります。開催場所を変えてみる、会議が煮詰まったら参加者で散歩する、なども効果的です。 3. 時間は? アイデア出しは、長くやったからと言って良いわけではありません。また、一人のときにアイデアが湧くこともたくさんあります。アイデア出しの時間は1時間程度、更にウォーミングアップ(アイスブレイク)の時間もしっかり取るとよいでしょう。 ブレーン・ストーミングの進め方 それでは、実際にブレーン・ストーミングはどのように実施すれば良いのでしょうか。 流れから言うとこのようなイメージになります。 ※アイスブレイク とは、初対面の人同士が出会う時、その緊張をときほぐすための手法です。 それでは、ブレーン・ストーミングのプロセスを詳しく見ていきましょう。 アイスブレイク アイスブレイクの心構え 誰もが平等(フラット)な立場でいること バイアスを取り除くこと、 アイデアを検閲しないこと、 固定概念を取り払うこと 反応速度を上げること、 創造性を刺激しておくこと 間違っても良い雰囲気を作ること、 相手が喜ぶように受け取ること 否定しないこと、肯定だけしないこと、 相手のアイデアに自分のアイデアを加えて返すこと ブレーン・ストーミングを使って共創する場合、普段の脳を仕事モードから発想モードへ切り替える必要があります。また、会議に対し、いつも叱責されるとか、時間がダラダラと長いとか、一人の決まった人が発言しているなど、ネガティブ・イメージがある場合は特にアイスブレイクをしっかり実施し、どんな発言も許されるような安心な場と雰囲気を作る必要があります。 アイスブレイクのためのエクササイズ 1. 私あなた コミュニケーションの基本であるアイコンタクト(相手を見る、相手に影響される)を学び、打ち解け合う 立ってグループで円になり向かい合います 開始する人を決めその人が、「わたし」と言いながら自分の胸に手を置き、 次の人に「あなた」とパスをまわします パスを受け取った人は同じように「わたし」と言いながら自分の胸に手を置き、 別の人に「あなた」とパスを回します 2,3 を繰り返します この際、相手の目を見てパスを回すことが重要です 2. 私あなた(名前バージョン) コミュニケーションの基本であるアイコンタクト(相手を見る、相手に影響される)を学び、打ち解け合い、名前を覚える 円になり向かい合う 開始する人を決めその人が、「○○(自分のニックネーム)」と言いながら自分の胸に手を置き、次の人に「〇〇(相手のニックネーム)」とパスを回します パスを受け取った人が同じように「○○(自分のニックネーム)」と言いながら自分の胸に手を置き、次の人に「〇〇(相手のニックネーム)」とパスを回します 2,3 を繰り返します 名札があるとハードルが下がる、ニックネームでなくても良いが、肩書を意識させない呼び名が良い(社長、部長 ☓) 3. Two Dots(ツードッツ) 直感で表現する(すぐ描く)、また相手の表現に影響されて表現するトレーニング ホワイトボードの真ん中に「 ・ ・ 」のように2つの点を描きます ホワイトボードの前(1m ぐらい離れて)に参加者全員が立ちます 「 ・ ・ 」に各参加者が交互に一筆書きで線や図形を描きます この際特に絵のテーマや上手い下手にこだわる必要はありません 次々に一筆で描かれていく図形に影響を受け、即座に描き足すこと意識します 2~3回転ぐらい、もしくは絵の完成でエクササイズを終了します 4. スケッチ 架空の物や場面を想像し表現、参加者全員で一つの架空のシーンを共有するエクササイズ 題:「自動車の日常点検」とし、日常点検について想像し、どのような要素があるかを指し示しながら伝えます 例えば、最初の人が「ここにライトがあります」 次の人は、「ライトを点けてみます、ライトが点きました」 次の人は、「ここにブレーキがあります」 次の人は、「ブレーキを踏むとブレーキランプが点きます」 次の人は、「この辺で面倒くさくなって点検をやめてしまうユーザーがいます」…どんどん続けます このようにお題に対して、そこにあるものを広げていったり、情報を詳しくしたり、その場所のイメージを共有します。お題は、ブレーン・ストーミングのテーマに関係のなく、想像しやすいものから始めても良いでしょう。また、難しい可能性もありますが、「自動車の日常点検」のような具体的なテーマに沿ったお題で実施することにより、よりユーザー目線でテーマを考えるきっかけになります。 しっかりとアイスブレイクを実施し、お互いが心を許せる居心地の良い場をつくり、心理的安全性を確保することで、ブレーン・ストーミングによる共創がより充実したものになります。 課題解決のアイデア出し ~ブレーン・ストーミングの実施~ さて、アイスブレイクも終了しましたので、次はアイデア出しをします。今回は最も基本的なブレーン・ストーミングのやり方で、Post Up(張り出し法)を使ってみたいと思います。 Post Up (ポスト・アップ) 最もシンプルなブレーン・ストーミングの方法 1人作業で3分間でできるだけ多くのアイデアを付箋紙に書き出します 時間を決め(例えば10分間)2人で相手とアイデアをホワイトボード/模造紙に貼りながら、アイデアを共有します 付箋紙を貼っている間に相手のアイデアから違うアイデアが出てきたら、すぐに付箋紙に書き出して貼ります 各ペアの発表者を決め、他のペアとどんなアイデアが出たかを発表しあいます Post Up は複数回実施することもでき、1回目は、課題の洗い出しに、2回目はその解決方法を考えるといったことが可能です。 様々な職域の方でブレーン・ストーミングを実施する場合、課題の理解や持っている情報レベルが違う場合があります。情報共有の意味を含め、改めて、課題の洗い出しを実施します。 2回目では「1回目で出てきた課題を解決する方法」のアイデアを出します。ここで大事なことは、目的は完璧な答えを探すことではなく、どんなつまらない、突拍子もないイデアでも歓迎し、アイデアを出し尽くすことです。変なアイデアがあったとして、他の2つ以上のアイデアを掛け合わせる、引き算する、反対を考えるなど、一見使えないようなアイデアでも視点を変えることにより、使える場合があります。更に重要なことは、他の人のアイデアに影響を受けて、アイデアを重ね、一人で考えていては、思いつかないようなアイデアを出すことです。 優先順位を決める(ドット投票) アイデア出しの優先順位決めには、「ドット投票」を使います。ドット投票は、加点方式の評価法です。 一人5票までと決め、参加者にシールを5枚ずつ渡します 発表され、張り出されたアイデア(付箋紙)から良いアイデアにシールを貼ります また、少し投票や集計に時間がかかりますが、 のように意味を分けて、シールを貼る方法もあります。このようにシールを分け、意味づけすることにより、アイデアの優先順位やまとめるための情報を多く得ることができます。 発表・評価 ~ブレーン・ストーミングの収束方法~ ブレーン・ストーミングはあくまでもアイデアを出す場で、何かを決定したり、判断したりする場ではありませんので、一旦ここで終了します。 ブレーン・ストーミング終了後に担当者が画像や箇条書きでアイデアをまとめ、参加者全員で共有します。 ブレーン・ストーミングの結果を共有することで、参加者全員が当事者意識を持って、ブレーン・ストーミング以外の日常でもこの課題に対して発想を意識してもらいます。アイデアは共創で生まれることもありますが、シャワーを浴びているとき、散歩をしているときなどにふと湧いてくることも多いからです。 この後は、ドット投票の結果なども踏まえ、具体的な試作に落としていきます。具体的な試作へ落とす方法については、ここでは詳細に書きませんが、まずは、「小さく進めること」が重要です。 それには、アプリであればいきなり試作を作り始めるのもありですが、模造紙やダンボール、粘土、モールなど使って簡易的にデバイスやアプリの画面を作っても良いかも知れません。また、試作のリアリティを追求するために、お客様役、店員役などに分かれて寸劇(スキット)をやるのも良いでしょう。 試作で結果が出なければ、ブレーン・ストーミングを再度実施したり、結果に戻ったりしても良いでしょう。小さく始めていれば、後戻りもスムーズです。 新しい発想から生まれた AI 活用(例) さて、ブレーン・ストーミングについて詳細にご紹介してきましたが、最後に実際の AI 活用のお客様事例を見てみましょう。 THINK Watson の記事によるとオートバックス社は、AI の画像認識能力を活用した「タイヤ摩耗診断」を2017年9月に公開しました。自動車の日々の点検は、安全には欠かせない作業ですが、様々な理由から十分に実施されている状況にはありません。オートバックス社では、スマホを使って簡単にメンテナスの必要性の有無を診断できれば、ユーザーの意識向上に一役買えるのではと、「かんたんタイヤ画像診断」を開発しました。これは、メンテナス不良による事故原因ともなっているタイヤの摩耗度合いをユーザーが撮った画像から診断するというものです。 この事例、「かんたんタイヤ画像診断」の開発の経緯は、以下のようなものでした。 ——「かんたんタイヤ画像診断」開発の経緯を教えてください。 八塚 自動車点検整備推進協議会の調査からもわかるとおり、自動車ユーザーの日常点検に対する意識を高めていく必要があります。オートバックス各店舗ではかねてより「タイヤ安全点検」を実施していますが、点検のために店舗に行くということ自体がお客様にとってはハードルのひとつになっていると感じていました。 この状況を改善するために、当初はオートバックスのピットマンがユーザーから送られてくるタイヤの画像を診断するという案も検討しましたが、人手で対応するには限界があります。そこで、AI による画像認識でタイヤの摩耗状態を診断するサービスを発案しました。メンテナンスをなかなか行えないという方々の「面倒・お金がかかる・時間がない」というお悩みに「簡単・無料・すぐにできる」というかたちでお応えできると考えています。 出典:THINK Watson, 『オートバックスに聞く:新たな顧客価値を創造するAIビジネス戦略』 上記の事例では、課題と目的は、以下になります。 この課題と目的を元に、これまでご紹介してきた"ブレーン・ストーミング"のような手法を用い課題を解決するアイデア出しを行っていきます。 例えばこの事例であれば、先にご紹介の Post Up で、「課題とその理由」の洗い出しを行い「自動車ユーザーの日常点検に対する意識が低い」という課題、そしてその理由「点検は面倒・お金がかかる・時間がない」を掘り下げて考えます。 こうしたアイデア出しが行われた結果、新たな発想から、「簡単・無料・すぐできる」を実現し、"自動車ユーザーのユーザーの日常点検に対する意識を高める"目的を達成する新しいAI を活用したソリューション「かんたんタイヤ画像診断」が誕生したのです。 まとめ AI プロジェクトの成否を握る「構想フェーズ」で、より有効なアイデア創出に役立つ"ブレーン・ストーミング"の進め方を改めてご紹介してみました。 繰り返しとなりますが、AI プロジェクトを進めていく上で大事なことは以下のようなことです。 ●準備に時間をかけ過ぎず、始める ●小さく始めて、大きく育てる ●失敗から学ぶ ●最初から完全を目指さない(ある程度の完成度でトライ・アンド・エラーで改善する) ●ユーザーに共感し、利便性や生産性を上げ、本来の仕事に集中させる チームで"アイデア出し"を行いそこで出たアイデアを元に試作し、評価します。 アイデア出しから試作までに必要なことは、子供のような遊び心、そしてどんなことでも言い合える、また寸劇をやっても恥ずかしくない、安心安全な場と関係づくりなのではないでしょうか。 皆さんが、AI プロジェクトに携わる際、この"ブレーン・ストーミング"を活用することで、今までになかった新しい発想を生み出し、AI プロジェクトを成功に導いていただければ幸いです。
AIは怖い?怖くない? AI がトッププロ棋士に勝利し、AI 時代を踏まえ、大手銀行が大規模なリストラを発表したのは、記憶に新しいかと思います。 AI が仕事を奪う、AI が暴走する... テスラ社の最高経営責任者であるイーロン・マスク氏は、急速に発達する AI に対し"人工知能(AI)が人類文明の存在を根本から脅かす" と警鐘を鳴らしています。 心理学では、ある人が自分の状態を自分で認識している場合、「洞察(insight)」という用語を当てはめる。(中略) 大多数の人間が持ち、動物が持たない能力だ。そして、AI が本当に人間並みの認識力を備えるかどうか確かめるもっとも優れた方法は、この種の洞察を実行できると示すことだと、私は確信している。・・・・・(中略) スタートアップ企業文化の精神は、文明破壊 AI の設計図になる可能性がある。かつて Facebook は、「素早く動いて破壊せよ」というモットーを掲げていた。その後「安定したインフラとともに素早く動け」に変わったものの、維持するのは自分たちが構築したインフラであり、他者のインフラなどでないとしている。自分たち以外の世界を、自分の食べるオムレツに必要な卵と見なして割るような態度は、AIから見ると“終末をもたらせ”という最優先命令になりうる。・・・・・ 出典:『シリコンバレーが警告するAIの恐怖、その本質を 「メッセージ」原作者が分析』BuzzFeed News AI の急速な発展に恐怖を抱く方も多いのかも知れません。しかし、日進月歩のこの世界において、怖いからと言って耳を塞いで、身を潜めることで解決されるものではありません。ましてや、IT に関わる業界においては、避けては通れないテーマであることは間違いないでしょう。 先にご紹介の記事で”超高度 AI の恐怖をあおる行為を策略した"首謀者の 1 企業として挙げられていた Google 社の AI 部門のトップは、反対に"人びとは汎用の人工知能に対して心配しすぎだ" と語っています。 “今はAI に関して大量の誇大報道がある。多くの人が、汎用 AI の勃興をめぐって、いわれのない不安を抱えている”、と Giannandrea は語る。“機械学習や人工知能はきわめて重要であり、産業に革命をもたらすだろう。Google は検索エンジンのような、そのための建設工具を作って、生産性を高めようとしている”。 出典:『GoogleのAIのトップは曰く、人工知能という言葉自体が 間違っている、誇大宣伝を生む温床だ』Techcrunch AI 分野の最先端を行く、Google のトップが「誇大報道」だとし、「AI という言葉自体間違っている」と話しています。 "人工知能(AI)" に対し賛否両論が唱えられてはいるものの、AI の発展は更に加速されると予想されます。そのような中で、我々はどのように AI と向き合い、付き合っていけば良いのでしょうか。実際の事例を参考にして考察を進めていきましょう。 AI 活用を失敗事例から学ぶ AI との付き合い方について、積極的に AI を業務に取り入れる取り組みをしている企業を見てみましょう。 Pepper でおなじみのソフトバンク社は積極的な AI 導入推進企業の1社ですが ・・・ 昨年イベントで、商談に必要な情報が引っ張り出せたり、提案に対してアドバイスをもらえたり、必要な社内手続きが簡単に済ませたりできる IBM "Watson"をベースにした社内 AI "Softbank Brain"をいち早く導入するも、3ヶ月もたつと誰も使わなくなってしまった、という苦い経験を紹介されていました。 「AI に限った話ではないが、IT の社内導入には3つの壁がある。順に『検討の壁』『構築の壁』『導入の壁』、中でも AI 導入で一番のポイントになるのが、最初の検討の壁だ」と強調(中略)「とりあえずAI を入れろというお客さまはいまだに多いが、無理に導入しても、やはり2~3カ月で使わなくなってしまう。AI には『定着の壁』という大きな壁がある」 「この1年で特に分かったことは、AI はユーザーを含めてみんなで育てていくものだということ。AI は例えるとエンジンであり、我々が手がける通信回線は道路であるが、エンジンを載せる車体やガソリンがないとユーザーは利用できない。そこで何が必要なのか。ソリューションが車に相当するもので、パートナー企業とタッグを組んで多彩な車(AIソリューション)を市場に提供しているのが現状だ」 出典:『ソフトバンクもAI導入で失敗していた―― 「3+1の壁」を突破した今だからこそ言えること』ITPro リンクの ITPro の記事によると、ソフトバンク社には、AI 関連プロジェクトが多々あり、大小様々な失敗から日々学び、改善を行っているそうです。企業が失敗について話すことは少ない中、失敗談を語っていただけることは、大変ありがたいですね。また、この「失敗」や「最初から完全を目指さない」ということが AI プロジェクトにとって重要ということがよく伝わってきます。 事例の詳細については、記事をご参照いただければと思いますが、AI の活用に関して、我々はまだまだ何をどのようにすれば活用できるか手探りの状態であり、小さく産んで改善して育てることが重要、成功への鍵となるのです。 人の仕事を奪う、という考えではなく、いかにユーザーの利便性や生産性を上げ、本来の仕事に集中させるかにポイントが置かれます。これは、以前に特集したデザイン思考につながるアプローチです。 ウォーターフォール型のプロジェクトに代表される、利用用途や要件を全て決めてから始める、ということではなく、ある程度の完成度でトライ・アンド・エラーで改善していくアプローチが重要です。また、準備に時間をかけ過ぎず、始めることも外せないポイントでしょう。 自社で使うにせよ、お客様に提案するにせよ「何でも良いから AI を使う」ということではなく、ユーザーに共感し、仮設を立て、課題解決のアプローチを小さい形で始められる環境作りからスタートさせることが、最善の策といえるのではないでしょうか。 AI に対抗する人としての武器とは? では、AI 時代に太刀打ちできる?人間が持ち得る最強の武器とは何でしょうか。 SankeiBiz の記事『グーグルが人間同士の対話を重視するワケ「仕事が奪われる」AI時代に最も重要なスキルは何か』 の冒頭で、立教大学ビジネススクールの田中道昭教授は、"AI とは『人工知能』ではなく、『異星人的知性』の略である"という主張を紹介されています。 "AI"という言葉は、人工知能(Artificial Intelligence) という言葉ではなく、人間とはまったく違う発想をする知能として、異星人的知能(Alien Intelligence) の略と考えるべきだろう "AI"が人間の仕事を奪うか否かという議論に時間を費やすのではなく、われわれの仕事は違った考え方をするマシンを作り、異質な知性を創造することなのだ "AI"は答えることに特化し、人間はよりよい質問を長期的に生み出すことに力を傾けるべきだ 出典: 『これからインターネットに起こる「不可避な12の出来事」』 元々 AI は、我々、人間にとって代わるものではない、"AI に仕事を奪われる" と怯えることなどないのだと ・・・ では、AI の導入では実現できない、"人"ならではの強みを発揮できるのは、どんなことなのでしょう。 AI 時代だからこそ、本来人が重視すべき「人と人との対話」で AI との棲み分けを... 前述の Google が重視する、「力」について注目してみましょう。SankeiBiz の記事によると、Google 社の人事責任者、ラズロ・ボック氏は、人材育成や評価について、『ワーク・ルールズ!』(東洋経済新報社)で、下記のように説かれています。 「つねに発展的な対話を心がけ、安心と生産性につなげていく」 「(上司は部下に)あなたがもっと成功するために、私はどんな手助けができるかという心がけで向き合う」 「目標を達成する過程で発展的な対話を促す」 「発展的な対話とパフォーマンスのマネジメントを混同しない」 出典:『グーグルが人間同士の対話を重視するワケ「仕事が奪われる」AI時代に最も重要なスキルは何か』Sankeibiz Google や Amazon が AI を研究、導入するよことにより、人を軽視するようになったとは、聞いたことがありません。世の中が効率化され便利になる中で、やはり重要なのは人と人とのコミュニケーションであり、その心構えです。 景気や業績が厳しい中、部下との発展的な対話は難しいように思えます。しかし、AI 時代において、AI の先端企業が重要視する力、「発展的な対話力」なくしては、起死回生のイノベーションも起こりませんし、発展はないのかも知れません。 AI に仕事を奪われることを心配したり嘆いたりせず、まずは、小さいことから AI の活用を試しはじめながら、発展的な対話力を磨いてみるのはいかがでしょうか。コミュニケーション能力は才能ではなく、筋肉のように鍛えることができるといわれているのですから。 次回は、実際の AI 活用の効果的な進め方について、ベースとなるデザイン思考も絡め、考察を深めてみたいと思います。公開は2018年3月中旬頃を予定しています。 IBM Watson 関連情報 今回の記事では、AI に抱かれるイメージやその実態、特に失敗事例からの学びに着目し、AI 時代にこそ重要な人の能力、という観点で話を進めました。 今後 AI をビジネスに活用するために AI の活用例やビジネスのための AI プラットフォームである IBM Watson の概念などをぜひご参照ください。 IBM Watson 活用例 ビジネスのための AI プラットフォーム