2023年07月

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脱炭素化状況の可視化から削減を実現する戦略的ESGデータ管理プラットフォーム「Envizi ESG Suite」とは

グリーン・ファイナンスや代替えエネルギーへの投資など、脱炭素化や ESG投資(「Environment:環境」「Social:社会」「Governance:企業統治」を考慮した投資活動や経営・事業活動への取り組み)は、もはやムーブメントではありません。
これらの取り組みが企業の財務戦略と並ぶ重要な位置を占めるようになっています。

そして、脱炭素化を目指す企業のサステナビリティ・パフォーマンスの最適化に必要不可欠なのが、正確なレポートデータから得る洞察です。

本コラムでは、データ収集と分析を包括的なソフトウェア・プラットフォームにより多岐にわたる ESG指標を報告・管理して排出量を削減するためのアクションを特定し、最終的にはデータ基盤の構築やレポートの合理化、チームのエンゲージメント向上へと導き脱炭素化の加速を実現する IBM の ESGデータ管理プラットフォーム「Envizi ESG Suite」を紹介します。

ESG情報開示の世界的な潮流と日本の状況

「ESG」「サステナビリティ」「排出量」「脱炭素化」など、かつては企業にとって馴染みのなかったコンセプトがここ10年間で今や企業戦略の欠かせない一部となりました。

脱炭素に向けた動きは世界的に加速し、国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)が終了した2021年11月時点で、154カ国・1地域が2050年などの年限を区切ったカーボンニュートラル(温室効果ガスの排出を全体としてゼロにすること)の実現を表明しています。

日本でも2020年10月、菅首相による「実質ゼロ表明」宣言(2050年カーボンニュートラル宣言)がありました。これに呼応して地球温暖化対策推進法が一部改正され、「改正地球温暖化対策推進法」(以下 改正温対法)として2021年5月に成立しています。

そもそも温暖化対策については1997年の「京都議定書」を継承して、2015年12月にフランスのパリで開催された COP21 にて世界約200カ国が合意し成立した条約(通称 パリ協定)が対策目標の基準となっています。
そのパリ協定を受けて日本政府は2016年に「地球温暖化対策計画」を閣議決定し、その時点で提示されていた目標は「2030年までの中期目標として温室効果ガス排出を2013年対比26%削減。そして、2050年までに80%削減する」というものでした。

しかし「2050年カーボンニュートラル宣言」ではこの80%という目標削減数値が一気に引き上げられ100%に。すなわち、2050年までに排出ゼロにするということです。
当然、企業対策も強化されることとなり、これに対し産業界には激震が走りました。

改正温対法による排出量情報のデジタル化・オープンデータ化の推進

改正温対法の主なポイントは次の3点です。

  1. 2050年までに温暖化ガスの排出を実質ゼロにすることを基本理念として明記
  2. 地域の再エネを活用した脱炭素化を促進する事業推進のための計画・認定制度の創設
  3. 脱炭素経営の促進に向けた企業の排出量情報のデジタル化・オープデータ化の推進

このなかで特に注目したいのが「企業の温室効果ガス排出量情報のオープンデータ化」です。

従来、温室効果ガスを多量に排出する企業に対しては毎年度の排出量の報告が義務づけられています。その情報は企業単位で公表されていますが報告の多くは紙媒体を中心に行われており、公表までに約2年もの期間を要していました。

そこで改正温対法では排出量情報の公表までにかかる時間を短縮することを目的とし、企業の温室効果ガス排出量報告を、排出量情報活用促進の弊害にとなっている紙媒体中心の報告から原則デジタル化しています。
さらに、企業における脱炭素化の取り組みをより透明性高く可視化するため、従来は開示請求手続きが必要だった事業所単位での排出量情報を、手続きなしでも閲覧可能としています。

これにより、国内外の企業や投資家などに向けて温室効果ガスの排出量情報の活用を促すとともに、脱炭素経営や ESG投資の呼び込みを促進させる考えです。

ESG投資の急拡大と求められる情報開示

金融市場においてはコロナ禍にともなう金融緩和も相まって、ESG投資が急拡大しています。

ESG投資とは “ESGの3要素を重視し社会的責任を果たしている企業に対し投資をすること” を意味します。

2021年7月19日、世界の ESG投資額の統計を集計している国際団体の GSIA(Global Sustainable Investment Alliance)*1 から、ESG投資の統計報告書「Global Sustainable Investment Review(GSIR)」の2020年版が発行されました。

同報告書によれば、2020年の世界の ESG投資額が18年比で15%増の35.3兆ドル(約3900兆円)で、これが全運用資産に占める比率は35.9%と18年比で2.5ポイント上昇しています。日本の ESG投資額も2020年には2.8兆円(約320兆円)と、2018年と比べて31.8%も増加しました。

これにともない、気候変動に関する情報開示を企業に求める動きが世界的に広がっています。
日本でも東京証券取引所のプライム市場上場企業は、TCFD提言*2 またはそれと同等の国際的枠組みに基づく開示を求められています。

こうした動きに加えて、2021年11月には IFRS財団(The IFRS Foundation)により「国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)」が設立されました。
これにより、ESG情報の開示に関する統一的な国際基準を策定する ISSB基準に準拠したサステナビリティ開示基準の公開草案を2024年3月31日までに公表し、2024年度中(遅くとも2025年3月31日まで)に確定する計画も進んでいます。

産業界では、国内外で取引先まで含めたサプライチェーン全体の脱炭素化やそれにともなう経営全体の変容(グリーントランスフォーメーション(GX))が加速し、デジタル技術の活用でサプライチェーン上の CO2排出量を算定し可視化するサービスの開発も活発になっています。

参考情報

*1. Global Sustainable Investment Alliance(GSIA)

GSIA は2年に一度、日米欧など世界5地域のESG投資の普及団体が年金基金や資産運用会社などを対象に実施したアンケートを基に「Global Sustainable Investment Review(GSIR)」でESG投資額を公表している。

※サステナブル投資(SRI・ESG投資)の発展に寄与することを目的とした NPO日本サステナブル投資フォーラム(JSIF)作成の「Global Sustainable Investment Review 2020」日本語訳ダウンロードは「こちら

*2. TCFD提言

「気候変動関連財務情報開示タスクフォース(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)」の略称。
G20財務大臣・中央銀行総裁会議の要請を受け、2015年12月に金融安定理事会(FSB)により気候関連の情報開示および気候変動への金融機関の対応を検討するために設立された。
TCFD は2017年6月公表の最終提言をはじめ、関連ガイダンス等複数の刊行物を公表。そのメインレポートが「Final Report: Recommendations of the Task Force on Climate-related Financial Disclosures(気候関連財務情報開示タスクフォースによる提言 最終報告書)」で、通称「TCFD提言」といわれる。

Scope毎のCO2排出量の把握はサプライチェーン脱炭素化実現の第一歩

これらの状況の中でカーボンニュートラルに向けて企業が取り組むべきことは、まず CO2排出量を正しく把握・可視化し、サステナビリティ・パフォーマンスを最適化することです。
その目的は、気候関連の財務情報の開示、顧客企業への排出量報告、Scope情報の収集、省エネ法・温対法への対応です。

特に日本が目指す「カーボンニュートラル」は CO2 だけに限らず、メタン、N2O(一酸化二窒素)、フロンガスを含む「温室効果ガス」を対象にしたものであり、「全体としてゼロに」とは「排出量から吸収量と除去量を差し引いた合計をゼロにする」ことを意味します。
そのため企業の排出責任の範囲は自社単体からサプライチェーン全体に広がり、排出量を把握することの重要性が高まっています。

国際的な温室効果ガス排出量の算定・報告の基準となるのが「温室効果ガス(GHG)プロトコル」です。その中で設けられている温室効果ガスのサプライチェーン排出量の算定方法・範囲のことをScope(スコープ)と呼びます。

サプライチェーン全体の排出量は「スコープ3基準」として次のように区分されています。

  • Scope1:事業者自らの燃料の燃焼や工業プロセスにともなう排出量を示す指標
  • Scope2:他社から供給された電気・熱・蒸気などのエネルギー使用にともなう排出量を示す指標
  • Scope3:サプライチェーン排出量のうち、Scope1とScope2以外の間接排出量を示す指標

Scope3 では、自社内だけではなく部品メーカーや原材料メーカーなど、自社製品の生産に必要な部品製造のために他社が排出した温室効果ガスの排出量を把握することが求められています。
日本全体の CO2排出量削減目標を達成するにはこの Scope3 の排出量にも着目する必要があります。したがって、Scope3 の算出は複雑さをともなうと同時にサプライチェーン全体での脱炭素化実現の第一歩だといえます。

これに対応して CO2 を可視化するサービスは近年クラウドを中心に様々なものが登場しており、マクロ視点での非財務情報としての温室効果ガス排出量実績や削減目標・取り組みの公開まで実現できていますが、可視化までの取り組みで止まってしまい、次のアクションへつなげられていないケースも少なくありません。

温室効果ガス(GHG)排出量のスコープ3基準の範囲

図1:温室効果ガス(GHG)排出量のスコープ3基準の範囲

ESGレポート、ESGパフォーマンス、エネルギー管理、施設の最適化

IBM は2022年1月、環境パフォーマンス管理においてデータ分析ソフトウェア・プロバイダー大手Envizi社 の買収を発表しました。

Envizi社は炭素排出量の管理で組織をサポートするというビジョンを持って2004年に設立され、これまで20年近い歴史の中で英国と米国の市場で成長し、10年以上の運用ノウハウを活用したベストプラクティスを提供しています。
IBM の「Envizi ESG Suite(以下 Envizi)」には、同社の実績がそのまま活かされています。

正確なデータから得る洞察は脱炭素化の道筋に不可欠です。
Envizi の15種類のモジュールは、全体で排出量管理、ESGレポート、ESGパフォーマンス、エネルギー管理、および施設の最適化など様々な機能を提供しており、お客様のニーズに合わせてソリューションを拡張できます。
Scope1 および Scope2、さらには Scope3 の全カテゴリをカパーする500を超えるデータ・タイプの収集と集約を自動で実行でき、カスタム・フィールドの追加も容易です。

Enviziがカバーするデータの種類

図2:Enviziがカバーするデータの種類

これにより ESG指標を報告・管理できるようになるだけではなく、データと分析を包括的なソフトウェア・プラットフォームで提供し、現状の可視化や適切な情報開示を支援、そして、サステナビリティ・パフォーマンス管理を促進します。
また、国際的に認められた主要な ESG報告書作成フレームワークに対応し、強力な視覚化機能と簡単にカスタマイズ可能なダッシュボードを使用することで環境目標の管理や効率性を向上させる機会の特定、サステナビリティ・リスクの評価を行うことが可能です。

温室効果ガス排出量係数は様々な国や地域、カテゴリごとに次々と更新されていく状況で、ユーザー自らが管理することが非常に難しくなっています。これに対しても、Envizi ではお客様が活動量に関するデータを入力するだけで自動的に排出量が算出されるようなっています。
また、毎年のように変わる ESG情報開示フレームワークに対しても Envizi を使うことで簡単にレポーティング作業を管理することができます。

お客様の大きな価値となるサステナビリティ・イニシアチブ促進を目指して

500種類以上のデータの収集と統合を自動化する Envizi は、前述の TCFD の他にも ESG要素に関する開示基準として国際的なサステナビリティ報告基準を運営する「CDP*3」や「SASB*4」など、主要なサステナビリティ・レポートの開示フレームワークをサポートしています。

さらに Envizi は、以下のような IBM のより広範な AI搭載ソフトウェアを共に使用することで企業の環境イニシアチブと日常業務における運用エンドポイントとの間で生成されるフィードバックを自動化し、現状を把握しながら素早い改善アクションの実行を可能にします。

  • IBM Maximo(設備保全管理ソリューション)
  • IBM Sterling(サプライチェーン・ソリューション)
  • IBM Environmental Intelligence Suite(気候変動による経済的影響を事前に計画・管理)
  • IBM Turbonomic(ITインフラの「リアルタイム最適化」を実行)

これによりお客様は ESG対応状況を迅速に把握し、目的にあったテンプレートを用いることでゴールを明確にしてデータの可視化を進め、レポートの作成とプロジェクトを円滑に運営してサステナビリティ活動を加速することができます。
そして、レポートを公開することで透明性をアピールするとともにカーボンニュートラルを企業の大きな価値に転換し、サステナビリティ・イニシアチブの促進や環境目標を実現することが可能になるのです。

エヌアイシー・パートナーズは IBM認定ディストリビューターとして、Envizi ESG Suite および Envizi ESG Suite と連携可能な製品の販売を通し、お客様のよりレジリエントで持続可能な運用とサプライチェーンの創出、そして、持続可能性への取り組みをスケーラブルにするための重要なステップを支援いたします。

参考情報

*3. CDP

英国の慈善団体が管理する非政府組織(NGO)であり、投資家、企業、国家、地域、都市が自らの環境影響を管理するためのグローバルな情報開示システムを運営。
2000年の発足以来グローバルな環境課題に関するエンゲージメント(働きかけ)の改善に努めており、日本では2005年より活動開始。(一般社団法人 CDP Worldwide-Japan

*4. SASB

「Sustainability Accounting Standards Board(サステナビリティ会計基準審議会)」の略称。
2011年に米国サンフランシスコを拠点に設立された非営利団体で、企業の情報開示の質向上に寄与し、中長期視点の投資家の意思決定に貢献することを目的に将来的な財務インパクトが高いと想定されるESG要素に関する開示基準を設定している。
2018年11月に11セクター77業種について情報開示に関するスタンダードを作成・公表。

ESG情報開示枠組みの紹介:SASB(Sustainability Accounting Standards Board, サステナビリティ 会計基準審議会)スタンダード」(JPXサイト)

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関連情報

NI+C Pサイト情報

  • IBM Envizi ESG Suite
    – 企業の透明性ある情報開示と脱炭素に向けた取り組みをサポートする、ESGデータ管理プラットフォームです。

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2025年06月09日

安定の裏に潜む意外な悩み?HCLに聞く「HCL Domino」のバージョンアップにおける課題と意義(後編)

Domino が誕生してから35年以上が経過し、IBM から HCL に移管されて丸6年が経ちました。 Domino は、高い開発生産性と堅牢性を兼ね備えたアプリケーション基盤で、長きにわたり企業の業務効率化を支えてきた歴史ある製品です。一方、重ねてきた実績の分だけ、バージョンアップに対する課題も垣間見えます。 今回は、エイチシーエル・ジャパン株式会社 HCLSoftware のテクニカルリードである松浦光様に HCL Domino のビジネス状況や今後の展開など、多岐にわたり話を伺いました。(本ページは後半です[前半も公開中]) 対談者 【ゲスト】 エイチシーエル・ジャパン株式会社 HCLSoftware テクニカルリード 松浦 光 様 【インタビュアー】 エヌアイシー・パートナーズ株式会社 技術企画本部 ソリューション企画部 松田 秀幸 ※対談者情報は2025年6月9日時点 新バージョン V14.5 が刻む新たな一歩 生成AI を Domino の中に ── この夏に新バージョンの出荷が予定されていますね。 松浦: はい、2025年6月にバージョン V14.5 の出荷が予定されています。 ── V14.5 のポイントは何でしょうか? 松浦: 目玉の1つとして、Domino の中に AI を持つ「Domino IQ」 という機能がリリースされます。 なぜ、わざわざ自社で生成AI を持たなければいけないか、と思われる方もいると思いますが、理由の1つはセキュリティです。 Domino と生成AI の統合「Domino IQ」 自社のベストプラクティスを得られる ── 「Domino IQ」は、どのようなものでしょうか? 松浦: 完全にローカルで生成AI を持つことで、機密度が高い自社の情報についても問い合わせできるようになります。 加えて、自社の Domino を20~30年使い続けているお客様は結構多く、その積み重ねた情報に注目しています。そこで、今まで溜め込んだナレッジを生成AI に教え込み、ベテランの方が持つナレッジや自社のベストプラクティスを回答する生成AI を作っていく 流れですね。 このような利用も考えて、Domino IQ を開発しています。 ── 生成AI のモデルは、HCL で作っているのですか。 松浦: HCL で開発しているわけではなく、オープンソースの LLM を使っています。今ベータ版で使えるのは、Meta社の Llama3.2 などです。 ゼロから HCL で作ったものではなく、もう既に賢く育てられた LLM を使える点が大きな強みの1つだと思います。RAG を使って LLM に足りない情報を学習させられるようになるので、自社のデータベースで蓄えていた情報を AI が活用できるようになります。 Domino による生成AI の活用方法 ── RAG による拡張はキーになりそうですね。 松浦: Domino に溜まっている色々な情報やデータを社外や国外の生成AI に出さなくても、Domino IQ で新しい使い方が可能です。 ── Domino と生成AI の組み合わせで業務効率も向上しそうですね。 松浦: Domino は、業界用語や社内用語なども扱える 『生き字引き』のような人に代わる存在になっていき、皆さんの業務を支えられる のではないかと考えています。 REST API による効率的なシステム間の連携 ── フロントエンドの作り込みはどうでしょうか。例えば、チャットボット以外の入口を作る必要はありますか? 松浦: フロントエンドは何でもいいと考えていて、様々な Web やモバイルアプリに組み込むこともできますし、Notesクライアントが好きであれば Notesクライアントでもいいですし、Nomad Web でもいいと思います。Nomad Mobile というスマホやタブレット向けの Notesクライアント相当のものもあるので、それを使ってもいいですね。 ── 他社システムとの連携はどうでしょうか? 松浦: 前半でも少し触れたディレクトリサービスの連携だけではなく、REST API で他社システムと繋ぐことも想定しています。例えばフロントエンドとしては、チャットボットはもちろん、それ以外にも様々なシステムから入力してもらうこともできます。 Domino IQ 用に設定された Domino Server は、Dbserver プロセスから推論エンジンを起動する。(画像クリックで拡大)(出典:HCL Software|Configuring / Configuring users and servers / Domino IQ) 松浦: オープンソースの LLM を Dominoサーバーのデータディレクトリの下にインストールし、アプリケーションからの参照は、簡単な Lotus Script の読み込み・書き込みという2つのメソッドで問い合わせる仕様です。 先程も触れましたが、既存の LLM を使える点は大きな強みだと思います。 バージョンアップの鍵は互換性の安心感 新旧バージョンの互換性は移行チェックツールで担保する ── 互換性を気にされる方が多いと思いますが、いかがでしょうか? 松浦: 12.0.1 については 64bit対応、Open Java への変更があり、10 から 14 のタイミングで足回りをアップデートしました。その対応も含めて確認したところ、アプリケーションの互換性に関しては問題はありませんでした。 それでも互換性に懸念をお持ちのお客様には、NotesConsortium(ノーツコンソーシアム)で会員特典として利用できる移行チェックツールの使用も検討していただきたいと思います。 NotesConsortium(ノーツコンソーシアム) Domino に関する様々な知識やノウハウを交換、蓄積して会員同志で共有するユーザーコミュニティ 引用 以前のバージョンの環境で動作していたプリケーションの互換性(@関数/LotusScriptのみ) をチェックするツール、アプリケーションコードチェッカー(NDACC)をご提供しています。 カンタン移行判定ツールもご利用頂けます。 引用元:NotesConsortium「会員の特典」|移行支援ツールの提供 移行チェックツールとその効果 ── 実際に 9、10 から、V14、V14.5 へのバージョンアップは、移行チェックツールで試した場合の非互換はどれぐらいでしょうか。 松浦: 非互換はほとんどありません。 一言で非互換といっても、インパクトの程度は異なります。少し見た目が変わってしまうといった軽微なものから、挙動が変わってしまうという大きなものまであります。 移行チェックツールも過去20年以上の歴史があり、インパクトが小さい内容もチェックする仕組みでしたが、今はインパクトが小さい内容はチェックから外せるようになりました。 ── 非互換性の影響が少なく、迅速かつ正確な対応が可能であれば、安心してバージョンアップできますね。 松浦: もちろんインパクトの大小に関わらずチェックすることもできるので、気になる方は互換性に関するすべての内容を把握できます。すべてを確認していただいても、大きな影響を及ぼすような非互換はほとんどない と思います。 バージョンアップ vs 他社製品への移行 バージョンアップはしないが、移行もしない ── 前半にも話があったとおり、Domino の旧バージョンを利用されているお客様は多いようですね。 松浦: はい、旧バージョンのまま利用されているお客様も多いです。やはり、「バージョンアップをしなくても現状で満足」というのが理由 だと思います。 ── 一方で Domino から別製品への移行を検討されるお客様の声も聞きます。他製品への移行が検討される理由についてはいかがでしょうか。 松浦: DX を旗印に企業の形を大きく変えたいと思われた時に、エンドユーザーが日々使う情報系システムを刷新するのは象徴的だと思います。特に社外から新しい CIO が来たという様なケースだと顕著です。 引用 DX推進の際の障壁としては、「投資するための予算確保が少ない」が最も多くなっており、今後DXをさらに推進していく上で、約4割が「IT投資にかかる予算の増加」に取り組みたいと回答しました。 引用元:一般社団法人 中小企業個人情報セキュリティー推進協会「アンケート調査レポート」|「DX推進に成功している経営者」の実態調査アンケートの結果について ── DX の観点はひとつの肝かもしれませんね。 松浦: Web対応やモバイル対応、AI対応への再投資に対して、もっと価値を出していけるのではないかと考えています。 ── ただ、基幹的な情報系システムだと、気軽に移行するわけにはいかないですよね。 松浦: 他社ツールへのスイッチングコストの中には教育費を含め色々なものが発生するので、それだけお金をかける価値があるのかということに悩みながら検討されていると感じます。 やはりコストが大きいということで、移行ではなく共存で落ち着く ことがかなり多いですね。 HCL Domino の運用事例 内製化で自社の強みを生かしたDXを実践(日経XTECH) 20年で培ったデジタルカイゼンの文化 エームサービスの現場とIT部門をつなぐNotes(ZDNET Japan) 結論!バージョンアップが最適解 ── 他社製品への移行リスクや未知のコストも考えると、Domino を利用し続けるのがよさそうですね。 松浦: 異なる基盤でも併用して共存でき、互換性も担保されている ので最新バージョンアップでの利用をお勧めします。 ── ここまでの話以外で、他社製品への移行が検討される理由はありますか? 松浦: お客様から、Notesクライアントの強力な機能は変わらずご評価いただきながらも、そのインストールやセットアップなどの運用管理はやはり大変だ、という声もいただいております。 ── 最新バージョンでも同様でしょうか? 松浦: 最新バージョンでは改善されています。具体的には、V14 では ブラウザベースで Notesクライアントとほぼ同じようなことができる「HCL Nomad」という機能があります。特長は、専用Notesクライアントのインストールが必要ない点と、ブラウザベースなので複数の端末から使っていただける点です。 ── 「今までNotesクライアントでしかできなかったことが、Web でもできるようになる」ということでしょうか? 松浦: 例えば、Excelマクロを使った帳票の集計業務などですね。これまでは、Notesクライアント内でオフィス系のアプリケーションを起動するようなものは、ブラウザのセキュリティ制限によりブラウザからの利用ができませんでした。 しかし、2025年6月に出る新バージョン V14.5 は「HCL Nomad Web」が COM をサポートするのが目玉機能の1つで、Nomad Web から Excel や Word や PowerPoint を起動してマクロ実行などができるようになります。 ── V14.5 における進化の1つですね。 松浦: はい、バージョンアップの利点ともいえます。 すでに、以前から使用されているお客様がトライアルを始めている という状況です。 バージョンアップを推奨する理由 新旧バージョンの互換性を担保している。 コミュニケーション基盤が別製品でも、Domino を併用できる。 Domino IQ の実装/HCL Nomad Web の COMサポート HCL Domino について問い合わせる 今後の戦略 V14.5 は 描いたロードマップの答え合わせになるバージョン ── 今後の HCL の Domino のロードマップ、戦略はどのようになっているでしょうか。 松浦: この夏に出荷予定の V14.5 では実行環境のアップデートやスマホ・Web対応の進化や生成AI連携など、HCL になってから大きく描いたロードマップの答え合わせになるバージョンです。 アプリケーションを作り、うまく使ってもらう というのが、Domino の軸になっていると思います。Notesクライアントで動くアプリケーションから Webブラウザやモバイルで動くアプリケーションまで、様々なものがあります。それらを支えていくというのが Domino の DNA です。 ── 確固たる理念と設計思想があるのですね。支えるためには、Web対応や生成AI連携なども見越した拡張性も重要だと。 松浦: 作成したアプリケーションを拡張していくという方向性として API連携が挙げられます。Domino だけで全ての業務が回るとは考えていないので、周辺の製品サービスとの連携が簡単にできる というのがポイントの1つです。 兄弟製品に繋げる二段構えの展開 ── バージョンアップ以外での、ビジネス戦略は何かありますか? 松浦: アーキテクチャは異なりますが、開発環境の観点も含めれば兄弟製品といえるものがあります。 例えば Volt MX という製品には、モバイルOS を含む様々なプラットフォームのネイティブアプリケーションを作る機能があり、単一の開発環境で作成できます。 ── 開発するアプリケーションによって、戦略の幅が広がりますね。 松浦: Volt MX は一例ですが、プラットフォームを問わず使っていただけるような 本格的なアプリケーションについては兄弟製品 に繋げていく、という二段構えの戦略を考えています。 ── 兄弟製品への横展開…Domino が秘めるビジネスの可能性といえそうですね。 松浦: 今後のロードマップは、我々が描いた V14.5 の評価をユーザーから得ながらアプリケーションの軸はぶらさずに兄弟製品と補完しながら作っていく予定です。 ── Volt MX 以外に、どのような兄弟製品がありますか? 松浦: Nomad Web Designer、Domino Leap という製品があり、どちらもブラウザで動きます。 Domino Leap は、エンドユーザー様が『ITの専門知識を必要とせずに簡単にアプリケーションを作成したい』というローコードの需要を補完できるツールとして位置づけています。 Nomad Web Designer は今まで Windows PC でしか提供されなかった Domino Designer を MacOS でも同じように使えるようにしたイメージです。 ── いくつもの製品があり今後の展開も楽しみですが、まずは V14.5 からですね。 松浦: 旧バージョンをご利用中のお客様においては、まず他社製品との連携までかと思っています。 今は塩漬けの状態で、Domino の中だけで流通している情報があると思うので、それを他のシステムにも流通させてもらいたいですね。 1つの製品内だけでは情報の流れが停滞することもあると思います。業務の活性化のためにも、他社製品やAIとうまく連携し Domino を『情報の流れを淀ませないような解決策』という位置づけ に持っていきたいという思いもあります。 HCL 様からのメッセージ 過去にとらわれない新たな事例でアプローチ ── 長年 Domino を販売されているパートナー様に、特にお伝えしたいことはありますか。 松浦: HCL に移ってから使っていただいてるお客様から、「色々なツールを使っているが、やはり Domino は凄く良い製品だよね」という声をいただくことがとても増えている気がします。 お客様がやりたいことに耳を傾けると、今までにない新しい使い方 もどんどん出てきます。 弊社サイトで公開しているお客様事例にも掲載しているので、Domino を長らく販売していただいているパートナー様はもちろん、Domino の販売に興味をお持ちの企業様にも、ぜひご覧いただければ嬉しいです。 Domino はかゆいところに手が届く業務アプリを作るには最適なツールだと思うので、そこを強みとしてどんどんビジネスを仕掛けて欲しいと思っています。 インフラの観点においても、堅牢でパフォーマンスのいい製品に仕上がっていますし、他の SaaS製品との連携も充実しているので、「今までの Domino ってこうだよね」という枠の中だけで考えずに 販売していただきたいと思います。 V14.x を避けて V12 にする意味はない ── では最後に、Dominoユーザー様、パートナー様へのメッセージをお願いします。 松浦: Domino に限らず、バージョンアップの際は『どのバージョンにするか』を迷われるケースがよくあります。 今回のバージョンアップは V14.5 と刻まれたバージョンなので、V14 や V12 という実績があるバージョンを検討したいと思われるお客様もいるかと思いますが、この度 V14.0 の非互換検査をしたところ、12.0.1以上であればアップデートされたプラットフォームとして動作が変わらないことが分かりました。つまり、『14.5 もしくは 14 を避けて V12 にする意味はない』 ということなので、ぜひ最新バージョンを検討していただきたいと思います。 14.5 も新機能を使わなければ 14 と同じような挙動なので、保守期間が残っている新バージョンを使っていただいて、興味のある新機能にトライしていただくのが良いのかなと考えています。 ── 本日はありがとうございました。 HCL Domino について問い合わせる まとめ ここまで HCL Domino の新バージョンや今後の展開など、多岐にわたり HCLSoftware 松浦様にお伺いしてきました。 最後に、前半の話を含め HCL Domino の特長となる強みとバージョンアップを推奨する理由をまとめます。 HCL Domino の強み 高い開発生産性と堅牢性 簡潔で迅速なアプリケーションの開発。 長期的に使用されることに適した、運用の安定性。 優れた互換性と柔軟性 チェックツールにより、新旧バージョンの互換性を担保している。 古いバージョンのデータやアプリケーションも最新バージョンで動作可能。 コミュニケーション基盤が別製品でも、Domino を併用できる。 新バージョン V14.5 の新機能「Domino IQ」 セキュリティを確保しながら自社データを活用した生成AI の活用が可能。 過去のナレッジを活用し、業務改善を支援。 Domino の現状とバージョンアップを推奨する理由 Domino の現状 Domino は35年以上にわたり利用されている製品で、現在も市場は活況。 ユーザー数は多く、旧バージョンのまま利用される「塩漬け運用」も多い。 バージョンアップを推奨する理由 サポートが終了したテクノロジーへの脆弱性対応として必要。 新旧バージョンの互換性を担保している。 Domino は他社製品との共存が可能。 新バージョンは V14.5で、新たな機能が追加された。 (本ページは後半です[前半も公開中]) HCL Domino について問い合わせる このページを見ている人におすすめのページ 安定の裏に潜む意外な悩み?HCLに聞く「HCL Domino」のバージョンアップにおける課題と意義(前編) HCL Domino 製品紹介ページ Com-PASS Cloud|Domino Notes アプリのお預かりサービス .recommend-list{ margin-top: 0px; } ol.recommend-list li { color: #9b9b9b; } #recommend{ font-family: "Noto Sans Japanese"; font-size: 16px; font-weight: 700; color: #9b9b9b; border: none; padding: 0; margin-bottom: 10px; } .highlighter { background: linear-gradient(transparent 50%, #ffff52 90% 90%, transparent 90%); } .anchor{ display: block; margin-top:-20px; padding-top:40px; } .btn_A{ height:30px; } .btn_A a{ display:block; width:100%; height:100%; text-decoration: none; background:#eb6100; text-align:center; border:1px solid #FFFFFF; color:#FFFFFF; font-size:16px; border-radius:50px; -webkit-border-radius:50px; -moz-border-radius:50px; box-shadow:0px 0px 0px 4px #eb6100; transition: all 0.5s ease; } .btn_A 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2025年06月09日

安定の裏に潜む意外な悩み?HCLに聞く「HCL Domino」のバージョンアップにおける課題と意義(前編)

Domino が誕生してから35年以上が経過し、IBM から HCL に移管されて丸6年が経ちました。 Domino は、高い開発生産性と堅牢性を兼ね備えたアプリケーション基盤で、長きにわたり企業の業務効率化を支えてきた歴史ある製品です。一方、重ねてきた実績の分だけ、バージョンアップに対する課題も垣間見えます。 今回は、エイチシーエル・ジャパン株式会社 HCLSoftware のテクニカルリードである松浦光様に HCL Domino のビジネス状況や今後の展開など、多岐にわたり話を伺いました。前半では「Domino の現状」を中心に、後半では「新バージョンの登場と互換性」をテーマにバージョンアップについてより具体的に語っていただきました。(本ページは前半です[後半も公開中]) 対談者 【ゲスト】 エイチシーエル・ジャパン株式会社 HCLSoftware テクニカルリード 松浦 光 様 【インタビュアー】 エヌアイシー・パートナーズ株式会社 技術企画本部 ソリューション企画部 松田 秀幸 ※対談者情報は2025年6月9日時点 HCL Domino の現状 製品の変遷と現在のビジネス状況 ── Domino が誕生してから35年以上が経過し、IBM から HCL に移管(2019年7月)されてからも丸6年が経ちました。今、HCL としての Domino のビジネス状況はいかがでしょうか。 松浦: 現在も利用していただいているユーザーも多く、市場としては活況です。 見た目や使い勝手も含めた新機能が多く実装されてきた点、バージョンアップのサイクルが非常に良いペース で進んできている点が、ユーザー様、パートナー様から製品投資として評価をいただいてます。 一方、Domino のクラウドに対する対応が SaaS としてではなく Amazon や Google などのクラウドキャリアとの協業による提供に主眼をおいているので、その点が他の SaaS型コミュニケーションツールと比べてもう少しなんとかならないかという声は未だにいただいている状況です。 ── Domino のクラウドに対して、SaaS型コミュニケーションツールとしても期待もされているということですね。 松浦: 運用に関する負荷を下げたいということだと思います。 加えて人材確保やノウハウ継承などの課題に対し、生成AI との連携など新しい領域へのチャレンジがトレンドになっています。 旧バージョンでの利用も多い ── バージョンアップのサイクルといえば、多く利用されているバージョンは何でしょうか? 松浦: お陰様で現時点の最新バージョンである V14 が順調に立ち上がっています。ただ実は、特定のバージョンでいわゆる『塩付け運用』をされているお客様も多くいます。 そのような状況の中で1点、昨年末にあったケースについてお話しさせてください。 2024年12月13日に重要障害が発生し、多くのお客様と関係者の皆様にご迷惑をおかけいたしました。大変申し訳なく思っております。この場を借りて、お詫び申し上げます。 対応として修正モジュールの適用をお願いしておりますが、実はこの障害は35年前のコードに含まれていたもので、Domino のすべてのバージョンで発生していました。 そのような中で、Domino の塩漬け運用をされているお客様、他社移行の事例記事になっており HCL とまったくお取引がないお客様からもお問い合わせをいただいています。 ── 古いバージョンのまま Domino を利用され続けているユーザー様もまだまだ多くいらっしゃる、ということが分かったのですね。 松浦: はい、良くも悪くも先ほどお話したような状態で、HCL と最近お付き合いがないお客様からもお問い合わせをいただくケースがありました。 古いバージョンを利用する際の注意点 ── 古いバージョンのまま利用することへの懸念は何でしょうか? 松浦: Java など サポートが終了したテクノロジーへの脆弱性対応 が懸念されます。 また、旧バージョンでは DXに対して十分な役割を果たせるとは言い難いです。新バージョンでは Web対応やモバイル対応、AI対応での活用もイメージしています。 例えば、新バージョンである V14.5 には、Domino と生成AI を統合した機能もあります。 ──『塩付け運用』をされた場合、サポート面はどうでしょうか。 松浦: 多くの塩漬け運用されているお客様からの声をお聞きすると、サポートが終了したバージョンで安定運用ができていたというのが Domino に対する今までの理解だったと思いますが、今回のようなことだけでなく、脆弱性対応も必要になるので、やはり サポートを受けられるバージョンの必要性 を意識していただけたのではないかと考えています。 Domino が選ばれ続ける理由 情報系基幹システムとしての性能と安定性 ── 旧バージョンでの利用も含め、Domino が利用され続ける理由は何でしょうか? 松浦: 情報系の基幹システムとして必要十分な機能を備えている点が大きいですね。 Domino が誕生した当初から兼ね備えており、「バージョンアップをしなくても現状で満足」というユーザーがいらっしゃる理由になっています。 ── Domino が古いまま使用されるのはなぜか、この点をより詳しくお聞かせください。捨てられないけれどバージョンアップもしない、というのは、なぜでしょうか? 松浦: 例えば、四半世紀前のデータがそのまま最新バージョンでも読み込めるなど、下位互換、上位互換性が非常に高い。動いてしまうがゆえに、使えてしまう。 便利に使っていただけるのはいいことなのですが、やはり15年前、20年前に作ったアプリケーションなので、見た目が古くなってくるというのは当然あります。 Domino でのアプリ開発の優位性 ── 一般的な市場感として Domino はすでに別製品に移行されてしまったという風潮もありますが、いかがでしょうか? 松浦: Domino はアプリケーションの開発生産性が非常に高い製品 だというのは、市場の評価として強くあります。 同じようなアプリケーションを、例えば SaaS型の Webベースの他製品、ノーコードの製品やローコードの製品に切り替えることにチャレンジされているお客様はいらっしゃると思うのですが、なかなかうまくいかないということを伺っております。 ── うまくいかないというのは? 松浦: その製品が悪いとか機能が足りないという話ではなく、Domino だと簡単にでき過ぎてしまうということで、エンドユーザーの満足度を得られないというのが1つの原因だとお客様はおっしゃっています。 他社製品と共存できるメリット ── メールはもう SaaSメールに移行しているという話はよく聞きますが、アプリケーションについては Domino の利用を続けているということでしょうか? 松浦: コミュニケーション基盤に関しては、在宅勤務やリモートワークが一般的になったので、好みの Web会議サービスに付帯したものへ切り替えたというお客様はいらっしゃると思います。 ただ、先ほどの話にあったように、アプリケーションはなかなか切り替えるのが難しいというのがあります。アプリケーション利用のために Domino が残っているというケース、共存されているというケースなど、多々あると思います。 ── Domino 以外のコミュニケーション基盤とアプリケーション基盤としての Domino を併用し、いわば一つのシステムとして使えると。 松浦: はい、その通りです。コミュニケーション基盤は別の製品を、アプリケーション基盤としては Domino を使っている 事例を、弊社ホームページにも事例記事として掲載しています。 ── コミュニケーション基盤とアプリケーション基盤でそれぞれのいいいとこ取りをされているのですね。 松浦: Domino と他製品が共存ができることは、バージョンアップの観点でも大きなポイントだと思います。 ──「基盤が2つあると運用管理も2倍になるのか」という疑問も出そうですが、どのような運用が可能でしょうか。 松浦: コミュニケーション基盤では、例えば1人に1つメールアドレスを発行するのが一般的だと思います。その場合、そちらのディレクトリシステムをメインにし、Domino は二次ディレクトリとして運用することもできます。 また、LDAP(Lightweight Directory Access Protocol)参照で認証委託をさせることもできますし、Dominoディレクトリと他のディレクトリ…例えばAzure AD(Azure Active Directory)のようなディレクトリサービスと連携させて運用している事例も多くあり、各社のやりたいことと運用負荷のバランスを考えて様々な方法がとれます。 なぜ Domino のバージョンを上げないのか 高い互換性が仇になっている?「動いてしまう」ジレンマ ── 互換性が高いということは、バージョンアップの障壁が低いともいえますね。 松浦: 互換性の高さは、単に過去のデータが「動く」以上の価値を提供していると考えています。 もし他社製品に移行する場合、往々にしてデータ移行が膨大なコストや技術的課題を伴い、互換性の問題が原因で取り残されたデータが発生するケースも見受けられます。Domino の場合、こうした課題を意識することなく 過去の資産を活用し続けることが可能 であり、移行リスクや未知のコストを回避 できる点でも独自の競争力を持っています。 ── 一方で、見た目を新しくすることは、バージョンアップの動機にはならない。 松浦: 見た目を新しくする機能もリリースはしていますが、そこに手をつけるよりは塩漬けで使ってしまおう、その方がお金がかからずに済む、ということで、古いバージョンのまま使うという決断をするお客様もいるのかなと思っています。 ── 確かに Notesクライアントだけを見たら、そんなに大きく変わらないですよね。 松浦: アーキテクチャは変わらないですし、Windows で動いてしまえばクリティカルな障害もなければ、上げる理由も作れなかったというところです(笑)。 最新バージョンは、バージョンアップをする理由になるか ── 大きな障害がなく動かせる状況の中で、上げる理由は何かとなると「最新バージョン V14 で何ができるのか」でしょうか。 松浦: そうですね。お客様が最新バージョンに上げる理由としては DX が多い印象です。再投資をする際の Web対応やモバイル対応、AI対応があります。そのようなところで、もっと価値を出していけるのではないかと考えています。 ── V14.5 については、後半でさらに詳しくお聞かせください。 松浦: 最新バージョンには、Domino と生成AI を統合した機能もあります。V14.5 は、大きく進化した面もあるので是非語らせてください(笑)。 ── 楽しみにしています(笑)。後半では、新バージョン V14.5 の新機能やアップデート、互換性についてお聞かせください。 HCL Domino について問い合わせる まとめ ここまで Domino の現状について、HCLSoftware 松浦様にお伺いしてきました。 最後に、前半のまとめと後半のトピックをご紹介します。 前半のまとめ Domino の現状 Domino は35年以上にわたり利用されている製品で、現在も市場は活況。 ユーザー数は多く、旧バージョンのまま利用されるケースも多い。 長期的に利用される理由は、高い開発生産性と安定性。 利用され続ける理由 Domino は情報系基幹システムとして必要十分な機能を備えている。 高い下位互換性と上位互換性があり、古いデータやアプリケーションが最新バージョンでも問題なく動作する。 旧バージョンの課題 特定バージョンを使い続ける「塩漬け運用」が多く、安定性を理由にアップグレードしないユーザーが多い。 古いままでもシステムが動作するため、アップグレードの動機になりにくい。 見た目の改良も費用対効果が低いとして、アップデートしないケースが多い。 Domino のバージョンアップと他社製品への移行 Domino は他社製品との共存が可能。 新バージョンは V14.5で、新たな機能が追加された。 DX領域での価値提供が、バージョンアップの理由となる可能性を秘めている。 次回予告 後半では、より具体的に新バージョン、互換性についてお届けします。 新バージョン V14.5 の機能はもちろん、今後のビジネス戦略も語って頂きました。 新バージョン V14.5 が刻む新たな一歩 生成AI を Domino の中に Domino と生成AI の統合「Domino IQ」 自社のベストプラクティスを得られる Domino による生成AI の活用方法 REST API による効率的なシステム間の連携 バージョンアップの鍵は互換性の安心感 移行チェックツールとその効果 新旧バージョンの互換性は移行チェックツールで担保する バージョンアップ vs 他社製品への移行 バージョンアップはしないが、移行もしない 結論!バージョンアップが最適解 今後の戦略 V14.5 は 描いたロードマップの答え合わせになるバージョン 兄弟製品に繋げる二段構えの展開 HCL 様からのメッセージ 過去にとらわれない新たな事例でアプローチ V14.x を避けて V12 にする意味はない (本ページは前半です[後半も公開中]) HCL Domino について問い合わせる このページを見ている人におすすめのページ 安定の裏に潜む意外な悩み?HCLに聞く「HCL Domino」のバージョンアップにおける課題と意義(後編) HCL Domino 製品紹介ページ Com-PASS Cloud|Domino Notes アプリのお預かりサービス .recommend-list{ margin-top: 0px; } ol.recommend-list li { color: #9b9b9b; } #recommend{ font-family: "Noto Sans Japanese"; font-size: 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