※この記事は2023年3月24日時点の情報をもとに作成しています。
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こんにちは。てくさぽBLOGメンバーの原田です。
すでにご存知の方も多いかと思いますが、仮想化環境で IBMソフトウェア(Passport Advantage:以下 PA)ライセンスを利用する場合の注意点について【早わかり】シリーズとしてご説明いたします。
フルキャパシティ・ライセンスとサブキャパシティ・ライセンス
まずはじめに、IBM PAライセンスを利用するお客様は、すべてのサイトおよびすべての環境におけるすべての「プログラム」についてライセンス記録を管理する必要があることをご理解ください。
IBM PAライセンスには「IBMソフトウェア(Passport Advantage)ライセンスのまとめ【2022年12月版】」でも記載している通り製品によって様々な課金体系があり、その中でもコア数を元にした課金体系の製品が多くあります。
IBM PAライセンスにおける基本的な考え方として、活動化されたすべてのプロセッサー・コアに対してライセンスの取得が必要となります。ただし、以下に記載した課金体系の製品を仮想化環境にインストールした場合には、次のうち低い方のライセンスを取得することができます。
- 対象製品が任意の時点で使用できるサーバー内の物理コアの最大数の PVU/VPC/RVU
- 対象製品が任意の時点で利用できる仮想マシン(VM)の仮想コアの最大数の PVU/VPC/RVU
前者をフルキャパシティ・ライセンス、後者をサブキャパシティ・ライセンスと呼んでいます。
以下の表でもう少し詳しく整理してみましょう。
フルキャパシティ・ライセンス | サブキャパシティ・ライセンス | |
特徴 | 物理サーバー上のコア数分に基づいたライセンス取得方法 | 仮想化環境の仮想サーバー上に割り当てたコア数に基づいたライセンス取得方法 (サーバーの物理コア総量は超えない) |
ライセンス管理ツールの使用 | 推奨(手動レポート可) | 必須 |
レポーティングに関するお客様の責任 | 少なくとも年に1回はレポートが必要 | 四半期ごとに少なくとも1回はレポートが必要 |
このように、サブキャパシティ・ライセンスの場合には仮想サーバーに割り当てたコア数のみライセンスを取得すればよいため、フルキャパシティ・ライセンスの場合と比較してライセンス費用を削減することができます。
しかしながら、サブキャパシティ・ライセンスを利用するためにはいくつかの条件があります。
サブキャパシティ・ライセンス利用のための要件
「Sub-capacity(Virtualization capacity)licensing」(IBMサイト)で掲載されているサブキャパシティ・ライセンスの利用要件について、もう少し分かりやすく整理してみました。
十分なライセンスの取得
「Virtualization Capacity License Counting Rules」(IBMサイト)に従った、IBMプログラムが利用可能なパーティションまたは仮想サーバーの仮想コア総量に基づいた十分なライセンスを取得する
適格なサブキャパシティー製品の使用 ※2023年3月時点
- 対象課金体系のサブキャパシティー製品の利用
- Processor Value Unit(PVU)
- Resource Value Unit Managed Activated Processor Core(RVU MAPC)
- Virtual Processor Core(VPC)
- 適格な仮想化テクノロジーを使用する(2022年12月15日)
- 当リストは適宜更新され、更新があった場合にはその条件が新たに適用されます
- 特に古いOSやハイパーバイザーはリストから削除されていくため、最新バージョンに上げる必要があります
- 利用する仮想化テクノロジーによってサブキャパシティ・ライセンスのカウント方法は変わります
※詳細は「Sub-capacity(Virtualization capacity)licensing」(IBMサイト)の “License Counting Scenarios:” 以下をご参照ください
- 適格なプロセッサー・テクノロジーを使用する(2023年2月9日)
管理ツールの利用 ※2023年3月時点
以下のいずれかの IBM認定のツールを使ってライセンス管理が必要
- IBM License Metric Tool(ILMT)
- HCL BigFix Inventory
- Flexera One with IBM Observability IT Asset ManagementおよびFlexera One IT Asset Management
Flexera One with IBM Observability はまだあまり知られていない製品ですが、弊社での導入検証結果を「【やってみた】IT資産管理ソリューション「Flexera One with IBM Observability」を使ってみる -Part1-」でご紹介していますので、ぜひご覧ください。
IBM License Metric Tool(ILMT)とは
「IBM License Metric Tool(以下 ILMT)」とは、「パスポート・アドバンテージのご契約条件」(IBMサイト) で使用を規定されたライセンス管理ツールです。
複数あるライセンス管理ツールの中でも最も多くのお客様にご利用いただいており、以下のデータを収集してレポートを作成することができます。
- IBMソフトウェアのフルキャパシティ/サブキャパシティ ライセンス数
- サーバー環境の情報
ILMT は IBMソフトウェアのライセンス管理を支援し、監査に備えたコンプライアンス遵守を実現します。
お客様はツールのインストールに必要なハードウェアを用意し、ツールの導入、運用を行っていただく責任があります。
ILMT利用にあたって
ILMT の利用にあたっては以下の通り様々な規定があります。
※ここに列記した規定はあくまで一部であり、予告なく変更される場合があります。
- 他のIBMソフトウェア製品同様に発注が必要
- ILMTはライセンス+ソフトウェア・サブスクリプション&サポート(以下 SS&S)をゼロ円で注文して取得
- 翌年以降もSS&Sをゼロ円で注文する必要がある(SS&S契約がないとバージョンアップができないため)
- ILMTのライセンスは無償だが、ハードウェア、導入費用、管理・運用費用等はお客様負担
- ILMTは専用サーバーを準備する必要がある
- 常に最新のILMTバージョンを使用する必要がある
- サブキャパシティー・ライセンス導入後、90日以内にILMTによるライセンス管理を開始する必要がある
- ILMTレポート文書は少なくとも四半期ごとに1回は実行し、各レポートは少なくとも 2 年間は保持する必要がある
- ILMTレポートは要求があった場合はIBMに提供する必要がある
- 2023年2月の IBM Passport Advantage Agreement v11 のリリースにより、IBM はサブキャパシティー報告要件の例外サポートをしなくなった(導入例外規定はなくなった)
- ILMTでライセンスカウントする範囲は下記に示す同一リージョン内にあるサーバに適用される
- リージョン1: 北アメリカと南アメリカ
- リージョン2: ヨーロッパとアフリカ
- リージョン3: アジア と オーストラリア
さいごに
仮想化環境で IBM PAライセンスをご利用いただく際に、フルキャパシティ・ライセンスとサブキャパシティ・ライセンスの2通りの考え方がある点についてご理解いただけたと思います。
サブキャパシティ・ライセンスの利用は一見ライセンス費用の効果が高いように見えて管理ツールの導入と運用のためのコストが追加負担となりますので、ライセンス/SS&S費用の低減と比較してお客様にとって本当に望ましい選択かどうかを検討する必要があります。
なお、近年ではクラウド環境やコンテナ環境での IBM PAライセンスの利用も増えてきており、サブキャパシティ・ライセンスでの利用を余儀なくされるケースもあるため、サブキャパシテイ・ライセンス利用における条件や注意事項をよくご理解いただいた上で IBM PA製品導入のご検討をお願いいたします。
また今回は詳しく触れていませんが、コンテナ環境で IBM PAライセンスをご利用される場合には「IBM Container Licenses」(IBMサイト)をご確認ください。
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エヌアイシー・パートナーズ株式会社
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