2020年06月

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OpenShiftに代表されるコンテナ環境へのIBMストレージの対応

IBMの岡田です。前回の「全包囲網。。。最新 IBMストレージ 概要」はいかがでしたか?

今回は、今流行りのコンテナ環境とIBMのストレージがどのようにこれらの環境に対応しているのかに触れてみたいと思います。

 

コンテナって何?

ある調査によると、クラウドファーストを掲げて次々とクラウド環境に IT を移していくといった流れは世界中の ITワークロードの5分の1ほど移ったところで一段落していると言われています。今日では従来型IT環境、仮想化環境、プライベートクラウド環境などのオンプレミス環境と、複数から成るパブリッククラウド環境を上手く使い分ける時代に入ってきたという人もいます。

何れにせよ、今後の IT はこう言った環境の種類に依存することなく、適材適所かつ必要に応じていかなる環境でも同じようにアプリケーション開発や検証ができ、完成されたアプリケーションをどこでも同じように作動させることができ、場合によってはそれぞれの環境で連携して動くと言った技術が必要になってきます。

この要求に応えることができるのがコンテナ技術です。

図1. 仮想環境とコンテナの比較

 

コンテナのメリット

図2.コンテナを使うことのメリット

どうしてコンテナ技術を用いるとこれらの要求を解決することができるのでしょうか?

それはコンテナ技術を用いることで、動かすべき対象つまりアプリケーションと、動かすための環境つまりインフラストラクチャーを明確に分けることができ、前者は同じコンテナ基盤であればどこでも同じように動かすことができ、後者はどんなプラットフォームでもこのコンテナ基盤を使えばどこでも同じ動作環境をアプリケーションに提供することができるからです。
別の見方をすると、従来型IT環境では機能要件と非機能要件を分けて考えることが時には困難な場合もありましたが、コンテナ環境ではこれらを明確に分けることができるわけです(図3参照)。

図3. 従来型IT環境とコンテナ環境での考え方の違い

 

Red Hat OpenShift について

このようなコンテナですが、その方式はいくつか存在し、ここ数年いろいろな方々が実際に触っていくうちに自然と多くの人に使われるものが絞られてきました。
また、その周りを司る管理機能についてもやはり幾つかの方式からここに至ってある程度代表的なものに絞られてきました。いわゆるデファクトという呼び方をしたりするものですが、恐らく現在デファクトのコンテナ用オーケストレーターと言えるものは Kubernetes ではないでしょうか?

この Kubernetes についての詳しい話はネット上にも沢山出てくると思いますので、ここではこれ以上触れません。
ちなみに最近はよくこの Kubernetes を “K8s” と書くことがあります。この K8s の “8” は Kubernetes の頭の “K” と最後の “s” に挟まれた “ubernete” の8文字を表しています。
Ruby 関連で i18n が internationalization を指すのと同じことです。そもそも IT の根本は如何にシステムを使って楽するかという怠け者の発想ですのでこんな略し方もわかる気がしますね。
(以下このブログでは、”Kubernetes” を “K8s” と表記します。)

さて本題に戻ります。
K8s 環境は実際にちゃんと作ろうとすると、周辺機能を選びつつ構築していくことが必要となります。
またこれらは通常 OSS で組むこととなるため、ミッションクリティカルな環境への適用は、何かあった際のクイックなサポート等の面から非常に難しくなります。

Red Hat OpenShift は、K8s を中心に置き、必要な周辺モジュールを全てパッケージ化した上で評価を完了させてある商用パッケージです。
そのため、要らぬところに労力を割くことなく、正しい K8s環境を短時間で構築することができます。しかも、商用であるがゆえに保守等もちゃんと付いています。

図4.OpenShift について

IBM はこの OpenShift をベースに各用途向けにコンテナ化された IBMソフトウェアを搭載し、パッケージ化した6つの IBM Cloud Pak というソリューションを提供しています。
(※詳しくは「製品・ソリューション/ソフトウェア」内で紹介されている、各種 IBM Cloud Pak をご参照ください。)

 

コンテナ環境下でのストレージのあり方

コンテナのメリットは先程ご説明しましたが、その中でも特にポータビリティという点は十分に考えられたソリューションです。

しかし、果たしてそれだけで十分でしょうか?

アプリケーションの作りにもよりますが、普通にコンテナ内のストレージを使いアプリケーションを動かすと、コンテナが不要となり消し去った際データも一緒に消えてしまいます。
複数のコンテナを並列に動かすような作りの場合にはデータを連携する必要があるかもしれません。

図5.永続ストレージの必要性

つまり、コンテナから独立したデータの器が必要となります。
これが永続ストレージというものです(図5参照)。

最近の IT の記述書などでよく “PV” という文字を見かけます。それは “Persistent Volume” の略であり、永続ストレージはその PV を使って定義づけられます。

では、永続ストレージにはどのような接続形態があるのでしょうか?

 

永続ストレージの接続形態

図6で示す通り、永続ストレージにはいくつかの形態があります。ちなみに一番左は通常のコンテナでのストレージのあり方で、この方法だとコンテナと共にデータは消えることとなります。

図6. K8s 環境でのストレージのあり方

ノード内の永続ストレージという点では OpenShift においては Red Hat OpenShift Container Storage が使われます。こちらはノード依存性がありますので複数ノードにまたがって連携することはできません。

それに対し、外部にストレージを保つ方法があります。ソフトウェア・デファインド・ストレージかハードウェア製品かに関わらず、K8s ノード外にあるストレージを使うため、仮にノードごとに何らかの理由で停止するようなことがあってもデータはキープされます。
(※どのような製品が対応可能かは後ほど触れます。)

これらの接続方法は、実は K8s のバージョンによって変わってきます。
ここでは K8s を包含した OpenShift のバージョンでお話しします。

図7. OpenShift のバージョンによる接続方法の違い

 

CSI

CSI とは Container Storage Interface の略です。K8s のストレージはこうあるべきという考えに基づき、K8s とは独立にプロトコルを標準化したものです。

よって、CSI を使うことで K8s ユーザーはストレージのメーカーや製品を意識することなく同じに使うことができるようになります。逆に言うと各メーカーの優位性を出すことが難しくなります。
とは言え、IBMストレージとしては後述の通りハードウェア製品とソフトウェア・デファインド・ストレージ製品との連携でより便利に使うことが可能です。

 

IBM のストレージ対応

さて、ここまではどちらかと言うとコンテナ側のお話をしてきましたが、いよいよ IBM のストレージの対応についてお話していきましょう。

 

ブロックストレージ編

図8. IBM のブロックストレージの CSI 対応状況

IBM FlashSystem は、IBMストレージのブロックストレージにあたります。

FlashSystem はいち早く CSI にも対応しています。
もちろん FlashSystem 同様 IBM Spectrum Virtualize ファミリーのアプライアンス製品 SAN Volume Controller も、ソフトウェア・デファインド・ストレージとしてクラウド上にポーティング済みの IBM Spectrum Virtualize for Public Cloud も、対応済みです。

オンプレミスとパブリック・クラウド間でのデータ連携も永続ストレージ間で実施できるため、コンテナ上のアプリのポータビリティをオンプレミスとパブリック・クラウドの間でデータも含めて実現することができます。
実際、図2で示したコンテナのメリットは、ちゃんと永続ストレージを使ってどのプラットフォーム上でもできないと完璧にこなすことはできません。これが IBM のコンテナ対応のバリューです。

当然のことながら、フラグシップであるところの DS8000シリーズも CSI 対応済みです。

 

ファイルストレージ編

次にファイルストレージについて見てみましょう。

図9. IBM のファイルストレージの CSI 対応状況

IBMのファイルストレージと言えば、IBM Spectrum Scale というソフトウェア・デファインド・ストレージ製品ですが、アプライアンス製品として IBM Elastic Storage Server という製品があります。(第一回目のブログでもご紹介しましたね。)
この ESS についても CSI 対応済みということになります。

こちらも IBM Spectrum Scale の機能を使ってプラットフォーム間でデータを連携することができます(Active File Management 機能は後日別の回での解説を予定しています)。

IBM Spectrum Scale を用いると、ある面白いこともできます。
これも詳しくは後日解説しますが、少しだけお話すると、IBM Spectrum Scale は NAS、オブジェクトストレージを含むマルチプロトコル対応です。CSI で静的プロビジョニングを用いてコンテナからアクセスできるようにすると、既存で NAS 等で使っているボリュームを見せることも可能となります。
さらに IBM Spectrum Scale は Unified Access という機能で同じファイルを NAS としてもオブジェクト・ストレージとしても共有できる機能があるため、コンテナでも同一ファイルを使うことが可能となり、実質的に従来型IT とコンテナとの間でもデータが連携できることになります。

従来型のシステムとコンテナのアプリ間でデータ連携できることのメリットは、まさに最初に述べた環境を用途などで使い分ける現在の IT環境には無くてはならない機能です。
これも IBMストレージの大きなメリットです。

ハードウェア製品、アプライアンス製品、ソフトウェア製品を通じてブロックストレージ、ファイルストレージ共に IBM はコンテナ対応済みであると言えます。

 

オブジェクト・ストレージ編

オブジェクト・ストレージは基本的に RESTful API による HTTP 接続が使われます。
よってコンテナに限ったことではありませんが、ブロックやファイルストレージとは異なり、独自ドライバや CSI を介する必要はなく、アプリケーションから直接 I/O することが可能です。

IBM は IBM Cloud Object Storage というソフトウェア・デファインド・ストレージを扱っています。
また IBM Spectrum Scale もオブジェクト・ストレージとして使用可能です。

オブジェクト・ストレージについては AI&Bigデータの回で詳しくお話することにしましょう。

 

ソフトウェア・デファインド・ストレージのもう一つの対応

図10. IBM Storage Suite for IBM Cloud Paks

現在取り扱っているコンテナ対応済みソフトウェア・デファインド・ストレージを取りまとめて、IBM Storage Suite for IBM Cloud Paks という名前で IBM Cloud Paks 向けに提供を始めました。

ここには IBM の前述のソフトウェア・デファインド・ストレージ製品3つと、メタデータ、タグマネージメントといった機能を持った IBM Spectrum Discover、それに Red Hat OpenShift でネイティブなRed Hat OpenShift Container Storage と根強いファンの多い Red Hat Ceph Storage を加えた6つをワンパッケージにしました。

この Suite 製品の面白いところは、OCS(Red Hat OpenShift Container Storage)の契約 VPC数(契約対象の仮想プロセッサコア数)に応じた容量分を自由に何種類でも組合わせて使うことができるというところです(もちろん単体で全容量使うのもありです)。

この手のコンテナ環境・クラウド環境でストレージを使うことは、はじめは何をどのくらい使うべきかわかっていない状況だったりするものです。特にアジャイル、アジャイルと言われる昨今、「とにかくやってみよう」という傾向が強いのも事実です。
そんな時にこのパッケージを使うと、容量を超えない限りどのストレージをいくら使っても自由ですので、使ってみて決めていくということができます。

まさに現在のクラウド時代にふさわしいストレージパッケージと言えるでしょう。

 

今回のまとめ

ここまで見てきた通り、IBM のストレージ製品は2020年7月現在取り扱っているものとしてはブロック、ファイル、オブジェクト・ストレージであり、これらすべてコンテナ対応が完了しています。

図11. IBMストレージの OpenShift 対応状況

Red Hat OpenShift あるいは各種 IBM Cloud Pak においては、接続性も含めて検証済みであり安全にお使いいただけます。

もしコンテナ環境をご検討中であれば、ハードウェアもクラウド上のソフトウェア・デファインド・ストレージもあり上下のデータ連携が可能な IBM のストレージ製品を、ぜひご活用ください!

 

お読みいただきまして、ありがとうございます。
次回はハイブリッド・クラウド、マルチ・クラウドに適切なストレージについてお話する予定です。お楽しみに!

 

 


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2025年08月04日

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VSIのプロビジョニング まずはADKをインストールするVSIをプロビジョニングします。本ブログではプロビジョニング方法について詳しく記載いたしませんが、手順は「【てくさぽBLOG】IBM Power Virtual ServerのAIX環境とIBM Cloud Object Storageを接続してみた(Part1)」のVSI for VPCの作成をご参考ください。 OSはUbuntu 22.04 LTS Jammy Jellyfish Minimal Install、リソースは2vCPU,4GB RAMで作成しました。VSI作成時にSSH鍵が必要なるので作成を忘れないようにしてください。 作成すると数分で起動します。端末からSSHログインするため浮動IPが必要になります。赤枠で囲った浮動IPを作成しインスタンスに紐づけします。以上でVSIの作成は完了です。 Ubuntuの設定 ターミナルを開きsshでUbuntuにログインします。私はWindowsのコマンドプロンプトを使用しました。Ubuntuユーザでログイン後、rootパスワードを設定し、スイッチできるようにします。 ubuntu@nicptestvsi:~$ sudo passwd root New password: Retype new password: passwd: password updated successfully ubuntu@nicptestvsi:~$ su - pythonのバージョンを確認したところ3.10.12でした。ADKの要件は3.11以上ですので、バージョンアップが必要になります。最初は3.13にバージョンアップしてみたのですが、後続作業と最新バージョンではパッケージが合わなかったのかうまく動かず…仕切り直して3.11を利用することにしました! root@nicptestvsi:~# apt install python3.11 バージョンアップ後、デフォルトバージョンとして3.11を指定します。 root@nicptestvsi:~# sudo update-alternatives --install /usr/bin/python3 python3 /usr/bin/python3.10 1 sudo update-alternatives --install /usr/bin/python3 python3 /usr/bin/python3.11 2 sudo update-alternatives --config python3 update-alternatives: using /usr/bin/python3.10 to provide /usr/bin/python3 (python3) in auto mode update-alternatives: using /usr/bin/python3.11 to provide /usr/bin/python3 (python3) in auto mode There are 2 choices for the alternative python3 (providing /usr/bin/python3).Selection Path Priority Status ------------------------------------------------------------ * 0 /usr/bin/python3.11 2 auto mode 1 /usr/bin/python3.10 1 manual mode 2 /usr/bin/python3.11 2 manual modePress <enter> to keep the current choice[*], or type selection number: 2 root@nicptestvsi:~# root@nicptestvsi:~# python3 --version Python 3.11.13 次に下記コマンドを実行して任意のvenvを作成します。 python3 -m venv /path/to/nicpse/project/your-venv-adktest <環境のパスを指定 venvを活性化してログインします。下記コマンド結果のようにvenvに入れましたらUbuntuの設定は完了です。 root@nicptestvsi:~# source /path/to/nicpse/project/your-venv-adktest/bin/activate (your-venv-adktest) root@nicptestvsi:~# ADKのインストール 以下コマンドを実行してADKをインストールします。ADKは6月時点で1.5.1が最新バージョンです。 (your-venv-adktest) root@nicptestvsi:~# pip install ibm-watsonx-orchestrate Collecting ibm-watsonx-orchestrate Downloading ibm_watsonx_orchestrate-1.5.1-py3-none-any.whl.metadata (1.4 kB) Collecting certifi>=2024.8.30 (from ibm-watsonx-orchestrate) Downloading certifi-2025.6.15-py3-none-any.whl.metadata (2.4 kB) Collecting click<8.2.0,>=8.0.0 (from ibm-watsonx-orchestrate) Downloading click-8.1.8-py3-none-any.whl.metadata (2.3 kB) Collecting docstring-parser<1.0,>=0.16 (from ibm-watsonx-orchestrate) Downloading docstring_parser-0.16-py3-none-any.whl.metadata (3.0 kB) Collecting httpx<1.0.0,>=0.28.1 (from ibm-watsonx-orchestrate) Downloading httpx-0.28.1-py3-none-any.whl.metadata (7.1 kB) ----中略---- (your-venv-adktest) root@nicptestvsi:~# orchestrate --version ADK Version: 1.5.1 ADKの環境設定 次にADKの環境設定を行います。watsonx OrchestrateのインスタンスIDが必要になるため、watsonx OrchestrateのSetting画面に入り確認します。下記画面をご参考にしてください。 環境設定コマンドはこちらになります。-nの後はvenv名を指定し、-uの後はインスタンスIDを指定します。 (your-venv-adktest) root@nicptestvsi:~# orchestrate env add -n <仮想環境名> -u <環境のインスタンスID> [INFO] - Environment 'my-name' has been created [INFO] - Existing environment with name 'nicpse' found. Would you like to update the environment 'nicpse'? (Y/n)y [INFO] - Environment 'nicpse' has been created 以下コマンドを実行して、IBM Cloud上のwatsonx Orchestrateと認証設定をします。APIキーの取得方法は「【てくさぽBLOG】IBM watsonx.aiを使ってみた(Part2)」のAPIキーの取得をご確認ください。尚、リモート環境に対する認証は2時間ごとに期限切れになります。期限が切れた場合は再度認証する必要があります。 (your-venv-adktest) root@nicptestvsi:~# orchestrate env activate nicpse --apikey <APIキー> [INFO] - Environment 'my-ibmcloud-saas-account' is now active [INFO] - Environment 'nicpse' is now active 下記コマンドを実行してCLIから利用できる環境のリストを表示します。IBM Cloud上のwatsonx Orchestrateがactiveとなっていました! (your-venv-adktest) root@nicptestvsi:~# orchestrate env list nicpse https://api.us-south.watson-orchestrate.cloud.ibm.com/instances/XXXXXXXX (active) local http://localhost:XXXX Toolとagentのインポート 次にToolとAgentのインポートを行います。ToolとはAgentがタスクを実行する際に利用する機能です。今回は、IBM様より共有いただいたyfinanceを活用したToolおよびAgentのコードを、ADKを用いてインポートします。なお、yfinanceはヤフーファイナンスから株価などの金融データを取得するためのPythonライブラリです。 最初にToolのインポートを行います。下記の様に、scpなどでToolファイルとrequirements.txtをディレクトリにアップロードしておきます。requirementsファイルは他のモジュールと依存関係がある場合使用します。 (your-venv-adktest) root@nicptestvsi:~/orchestrate_tool/py/source_02# ls -l total 12 -rw-r--r-- 1 root root 0 Jun 24 04:42 __init__.py drwxr-xr-x 2 root root 4096 Jun 24 04:38 __pycache__ -rw-rw-r-- 1 ubuntu ubuntu 8 Jun 24 03:02 requirements.txt -rw-rw-r-- 1 ubuntu ubuntu 1778 Jun 24 02:46 yfinance_agent.py 下記コマンドを実行してToolファイルとrequirementsファイルをインポートします。企業情報を取得するstock_infoと株価を取得するstock_quoteの2つのToolがインポートされました。 (your-venv-adktest) root@nicptestvsi:~/orchestrate_tool/py/source_02# orchestrate tools import -k python -f "./yfinance_agent.py" -r "./requirements.txt" [INFO] - Using requirement file: "./requirements.txt" [INFO] - Tool 'stock_info' imported successfully [INFO] - Tool 'stock_quote' imported successfully listコマンドを実行するとインポートされたToolを確認できます。 (your-venv-adktest) root@nicptestvsi:# orchestrate tools list ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┳━━━━┳ ┃ Name ┃ Description ┃ Permission ┃ Type ┃ Toolkit ┃ App ID ┃ ┡━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╇━━━━╇ │───────────┼────────────┼── │ send_mail_brevo │ send a meil using Brevo. │ write_only │ python │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ ├─────────────────────────────────┼──── │ stock_quote │ 企業のTickerSymbolを用いて株価… │ read_only │ python │ │ │ ├─────────────────────────────────┼──── │ Untitled_6160RC │ No description │ read_only │ openapi │ │ │ ├─────────────────────────────────┼──── │ stock_info │ 企業のTickerSymbolを用いて企業… │ read_only │ python │ │ │ └─────────────────────────────────┴──── 次にAgentをインポートします。下記コマンドを実行します。 (your-venv-adktest) root@nicptestvsi:~/orchestrate_tool/py/source_02# orchestrate agents import -f ./yfinance_agent.yaml agent listコマンドでインポート済みのAgentを確認できました。Agentが使用するToolも表示されています。 (your-venv-adktest) # orchestrate agents list ┏━━━━━━━━━━━━━━━┳━━━━━━━━━━━━━━━┳━━━━━━━━ ┃ Name ┃ Description ┃ LLM ┃ Style ┃ Collaborators ┃ Tools ┃ Knowledge Base ┃  ┡━━━━━━━━━━━━━━━╇━━━━━━━━━━━━━━━╇━━━━━━━━ │ yfinance_age… │ 企業の会社情… │ watsonx/meta- │ react │ │ stock_info, │ │ │ │ │ llama/llama-3 │ │ │ stock_quote │ │ ││ │ │ -2-90b-vision ││ │ -instruct │ │  IBM Cloud上のwatsonx Orchestrateで動作確認 インポートしたAgentとToolをIBM Cloud上のwatsonx Orchestrateで確認します。 watsonx Orchestrateへログインし、BuildからAgent Builderを選択します。 yfinanceエージェントが表示されているので、クリックします。 クリックすると、Agent作成画面に入ります。UIから基盤モデルを変更したり、Agentの振る舞いなど変更することができます。 スクロールして、Toolsetを確認するとADKからインポートしたToolが登録されています。 右のPreviewからAgentの動きを確認することができます。今回はDeployせずPreviewで確認します。入力欄には「IBMの株価は?」と質問してみます。しばらくすると本日の株価が回答されました。Show Reasoningを開くと推論過程を確認することができます。株価を取得するTool「stock_quote」を使用し、AIがユーザの入力から自動的にTicker symbolを入力していることがわかります。 次に「IBMの企業情報」と質問をします。しばらくするとAIがユーザの入力からTicker symbolを入力し、Tool「stock_info」を利用して企業情報を取得、回答されました。ユーザの入力内容からAgentが使用するToolを選択し、実行していることがわかります。   さいごに ADKのご紹介とADKを使ってToolとAgentのインポートを行いました。 ADKのインストールおよび設定について、Pythonバージョンの設定やvenvの作成でつまずく部分はありましたが、venvが作成できればその後の設定はスムーズに進められました。 今回はVSI上のUbuntuサーバにADKをインストールしましたが、ご自身の端末に導入することで、より気軽にAgent開発を行えるかと思います。なお、今回は検証対象外でしたが、watsonx Orchestrate Developer Editionを利用する場合は、インストール要件としてやや高めのスペックが必要になる点にご注意ください。 検証時のADKのバージョンは1.5.1でしたが、7月末では1.8.0が最新バージョンとなっています。比較的頻繁にアップデートされますので適宜Release Notesをご確認ください。バージョンアップでコマンドオプションも変更される場合があるため、マニュアルを確認するかコマンドに`--help`を付与してパラメータを確認することをおすすめします。   お問い合わせ この記事に関するご質問は以下の宛先までご連絡ください。 エヌアイシー・パートナーズ株式会社 技術企画本部 E-mail:nicp_support@NIandC.co.jp   .anchor{ display: block; margin-top:-20px; padding-top:40px; }

2025年07月11日

【参加レポート】Domino Hub 2025

公開日:2025-07-11 みなさまこんにちは。ソリューション企画部 松田です。 2025年6月19日・20日と2日間に渡って開催された「Domino Hub 2025」に参加しました。これは HCL Ambassador有志が企画・実行する Dominoコミュニティイベントです。去年に続き、今回が3回目の開催となります。 昨年同様、今回もエヌアイシー・パートナーズはスポンサーとしてご支援させていただき、両日参加いたしました。そのレポートをお送りします。 目次 イベント概要 セッション内容 - Domino 14.5 リリース 特徴的機能とライセンス改定 -ロードマップ -お客様事例:曽根田工業様 最後に 関連情報 お問い合わせ イベント概要 「Domino Hub」は、HCL Ambassadorが主宰となり、Dominoの利用者、開発者、ソリューションベンダーが一堂に会するコミュニティイベントです。今回は1日目がオンライン、2日目はオンサイトのみの開催でした。 特に2日目は参加率が非常に高かったとのことで、会場も大変盛況でした。結婚式場としても使われている今回の会場は、中庭から陽の光が差し込み、解放感があるラグジュアリーな空間で、一般的なビジネスミーティングよりも上質な雰囲気が感じられました。 併せて展示ブースも設置され、Dominoアプリケーションがスマートフォンやブラウザで使えるようになる「HCL Nomad」などのHCL製品とともに、様々なビジネスパートナー様の多彩な関連製品が数多く展示・紹介されていました。 セッション内容 2日間で全22セッションが行われました。セッションはHCLをはじめ、HCL Ambassadorから、様々な開発ベンダー、製品ベンダー、エンドユーザーからの事例紹介などのセッション、そしてパネルディスカッションがありました。まずHCLからのセッション内でのトピックをお伝えします。機能のみならずライセンスまわりで大きなニュースもありました。 Domino 14.5 リリース 特徴的機能とライセンス改定 Domino Hubの2日前、2025年6月17日にリリースされました。 Domino IQ 特徴的な機能で最も注目すべき、今回もご説明に時間を割かれていたのが「Domino IQ」です。 一言で言えば「Domino内にローカルでLLMを持たせ、蓄積されてきたDominoアプリ内の情報も取り込み、セキュアな環境で生成AIを用いた業務を実現する」ものです。 企業内業務で生成AIをどのように実装し利用していくかは今、皆様の大きな関心事項であられると思います。自社のDomino環境内で、Dominoアプリケーションを用い、Notesクライアントからそれが実現できることになります。 (画像クリックで拡大) Nomad for Web COM対応 またNomad for WebがCOMに対応したことにより、これまではNotesクライアントだけでしかできなかったExcelやPowerPointを埋め込んだDiminoアプリもブラウザから利用できるようになりました。 ライセンスダッシュボード:DLAUの統合 これまでGitHubからダウンロードしてセットアップしていたDomino License Analysis Utility (DLAU)がDomino内にデフォルトで統合され、The Domino License Administration (DLA) となりました。 (画像クリックで拡大) ライセンス改定 そしてライセンスにも大きなベネフィットが付加されました。CCB Termライセンスにはこれまで「Domino Leapで5アプリケーションまで開発・利用が可能」という権利が含まれていましたが、2025年7月1日からその制限がなくなりました。すなわち「2025年7月1日以後有効なCCB Termライセンスをお持ちのお客様は、Domino Leapのフル機能が利用できる」となります。 同時に、Domino Leapライセンスの利用範囲であるHCL Enterprise Integrator(HEI)の利用権利も含まれます。これでCCB Termライセンスのみで、追加費用なく「ブラウザによるノーコード/ローコード開発」「基幹業務とDominoアプリケーションの連携」が可能になります。 さらにCCB Termで利用できるSametime Chatで添付ファイルと画像添付も可能になりました。 ロードマップ Domino、Notes、Verse、Nomadなど各ソリューションについてのロードマップも紹介されました。先々の計画は出てこないものですが、このようにHCLから明確に提示されることにより、Dominoをお使いのお客様はこれからも安心して利用を継続していただけると思います。 Dominoのロードマップ(画像クリックで拡大) Notesのロードマップ(画像クリックで拡大) Nomad, VerseといったエンドユーザーのUI部分が短期間でバージョンアップされていく。(画像クリックで拡大) お客様事例:曽根田工業 様 Dominoユーザーの有限会社曽根田工業 代表取締役 曽根田 直樹 様より、Domino事例のご講演がありました。曽根田様は2001年に静岡県磐田市で個人で起業され、切削機械の刃物を製造されています。曽根田様のお話で非常に興味深かった部分を抜粋致します。 "独立・起業するにあたり、前職で使っていたNotes/Dominoを自社でも使うことにした。現在は大手メーカーからの発注依頼や過去に作った品番の再発注など数多く受けており、当時のCAD/CAMのデータや販売管理データなどをDominoに入れて運用している。 オンプレミス環境のリスクやセキュリティ、IT技術のトレンドに合わせてクラウド化を検討した場合、Dominoからは離れたほうがいいのではないか?と思い、他社SaaS製品も検討しトライアルで利用登録をした。 しばらく触れずにいたところ、アカウント情報に登録していた支払い口座から利用料の引き落としがされていなかったためアカウントが凍結、さらに保存していたデータも突然消去されてしまっていた。支払いが滞っただけで中身まで削除されてしまうようなシステムには会社の大事な資産であるデータを載せられないので、「Dominoを『やめることを止める』判断」をした。" Dominoから他製品への移行を検討され断念されるお客様は多く、その理由は「Dominoの業務アプリケーションを、サービス内容を落とさずに別プラットフォームに移行することがはなはだ困難である」ということをよくお聞きしますが、この点にも意外な理由が潜んでいました。 最後に 初の2年連続開催となった今年のDominoHubは、コミュニティの力を象徴するかのような盛り上がりを見せました。14.5のリリース、生成AIの実装、ライセンス強化など、今後のDominoの発展を確信させる要素が数多く披露されたほか、実際のユーザー事例も非常に示唆に富むものでした。加えてロードマップの提示による未来への安心感も得られました。 DominoHubは単なる情報共有の場に留まらず、技術、コミュニティ、そしてビジネスの未来を交差させる特別な場となっています。これからもこのような取り組みが継続していき、多くのDominoユーザー、デベロッパー、そして販売パートナーが更なる価値を引き出していけることを楽しみにしています。これからもDominoと私たちの未来を築いていきましょう。 関連情報 「Domino Hub」大阪開催 Domino Hubは、2025年9月18日に大阪でのオンサイト開催が決定致しました。詳細およびお申し込みについては、こちらのリンクからご確認ください。 お問い合わせ エヌアイシー・パートナーズ株式会社E-mail:voice_partners@niandc.co.jp   .highlighter { background: linear-gradient(transparent 50%, #ffff52 90% 90%, transparent 90%); } .anchor{ display: block; margin-top:-20px; padding-top:40px; } .btn_A{ height:30px; } .btn_A a{ display:block; width:100%; height:100%; text-decoration: none; background:#eb6100; text-align:center; border:1px solid #FFFFFF; color:#FFFFFF; font-size:16px; border-radius:50px; -webkit-border-radius:50px; -moz-border-radius:50px; box-shadow:0px 0px 0px 4px #eb6100; transition: all 0.5s ease; } .btn_A a:hover{ background:#f56500; color:#999999; margin-left:0px; margin-top:0px; box-shadow:0px 0px 0px 4px #f56500; } .bigger { font-size: larger; } figcaption { color: #7c7f78; font-size: smaller; }

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