皆さま、こんにちは。 企画部のWebサイト運営担当です。
今回は、5月25日、26日にグランドプリンスホテル新高輪で開催された「IBM Watson Summit 2016」の参加レポートをお届けします。
IBM主催の当イベントは全体で140以上ものセッションがありましたが、その中より、弊社の精鋭メンバー5名が出席したセッションを中心に、全般的な感想、体験内容を聞き、ブログ形式でまとめました。
総括
- 全体的に事例とVIDEOを多用したセッションが多く、わかりやすく面白かった。
- 充実した良いイベントである分、セッション数が多く、参加する際に興味分野に絞り込んでも時間が足りないのが残念だった。
- コグニティブの世界が進展すると、この先には人の仕事が取って代わる時代になる怖さもあるが、今はその手前でイベントでは導入事例が多く、近未来が絵空事でないことをを実感!
- 事例は国内様々な業界の先進モデルがあり、同業のお客様(エンドユーザー)は刺激になったであろう。
ユーザー企業による国内先進事例をピックアップ!
パネルディスカッションを含む基調公演では国内の事例が多く、その中でもメンバーの印象に残った事例をピックアップしました。
株式会社かんぽ生命保険
- 保険の支払査定担当は通常10年くらいの経験が必要。年間200万件の対応があり担当者は2,000人いるが、
ひとりあたり1日に5件が平均対応数であり、処理しきれない。 Watsonに過去の事例や保険の支払い条件などを勉強させるこ とで人間が対応する件数は半分くらいに減らせそう。また、経験の若い人でも査定ができる。
東京大学医科学研究所
- 遺伝子構造の解析からガン治療の研究をしている。
- 人間の遺伝子が30億個。スパコンを利用することで100個のがん遺伝子まで絞り込むことが可能だが、更に絞り込むのは処理時間的に現実的ではない状況。ガンなどの医療論文を勉強したWatsonを利用すると、
100個から可能性の高い6つの遺伝子に絞り込んで治療薬も含め て提示してくれる。実験段階ではなく、皮膚科等で難易度の高いがんの検診にすでに実用化している。
富士重工業株式会社
- スバル自動車の運転支援システム「アイサイト」は自動ブレーキなどの効果により、人身事故を60%減らせた。さらに残りの40%を減らすべく、IBMと協業してWatson IoTのオートモーティブを活用していく 。
ソフトバンク株式会社
- 自社内でWatsonを利用して、業務処理時間を半分に、生産性を倍にする「ソフトバンクブレイン」というプロジェクトを開始。
- 一部コールセンターで効果を実証できたので、社内のシステムに導入していく。
- 米国のジョージア工科大学の学生がWebの応答システムはWatsonとは気づかなかった。
みずほ銀行
- ペッパー君がお客様の質問に対してデータを分析して、「当行のお客さま全体ではこのくらいの期間で繰り上げ返済してますよ」というアシストをしていた。
- みずほ銀行の八重洲口で実際に動いている。
参加メンバーにインタビュー
「近未来を実現するコグニティブソリューションに何を感じたか?」
企画担当:皆様に聞きます。ユーザー事例を通して印象的だったことは何でしょうか?
コミュニケーションを通じて人を支援するコグニティブ
Kさん:かんぽ生命や東京大学の話を聞いて、スキルワーカーの負担軽減に繋がるソリューションでより良いサービスに繋がるという期待感がありました。しかし、同時に人間の仕事(職)が減ることにもなります。ただ、その怖さよりも具体的に、例えばガン治療の現場で役立っているという実益による可能性を感じました。
企画担当:そうですね。Kさんはまだ若いですからこれからの変革を見ていく世代としても感じることはあったと思います。
Kさん:はい。近年、ビッグデータ、IoTというデータの扱いに関するテクノロジーに着目され、そして機械学習、人工知能という人間の頭脳の領域に関するテクノロジーが融合し、その延長上にコグニティブがあるかもしれません。その先はどうなるのか。コグニティブに関しては、人工知能による自動化というよりも、コミュニケーションを通じて人間を支援する存在、システムであると感じました。
Watson IoTの存在
Hさん:IoTという切り口では、スバル自動車の取り組みが、Watson本体だけでなく、 Watson IoTを活用していくという印象だった。
企画担当:どうしてですか?
Hさん:自動車だけでなく、数十億にわたるデバイスやセンサーなどのモノが相互に接続し連携したIoTの世界では、その膨大なデータを意味のある、役に立つデータにするために即時に解析する仕組みが必要で、そこにコグニティブソリューションが期待されます。さらにクラウド側で処理する仕組みとしてWatson IoTにスバル自動車は期待しているのだと思いました。
今後のIT部門は大変?
Jさん:セキュリティとコグニティブの相性は良いが、聞いていて辛い世界になるなと思った。
企画担当:辛い世界ですか?
Jさん:IT部門は大変だという意味です。何故ならば、セキュリティは社内だけを考えていてはダメでクラウド、APIという社外との連携も考えて対応しなければならないのです。この対応は運用として一度はじめると止めることができないため、情報管理者の立場で考えると大変だなと思いました。
企画担当:どんな大変さがあるのでしょうか。
Jさん:あるセッションでIBMのスピーカーが、中外製薬様はセキュリティ事故が置きた場合の避難訓練(シミュレーション)を実施しており、IBMでも実施していきたいと話していました。
例えば、社員のPCがマルウェアに感染してしまい、アラートが上がった、そのとき、他の社員はどう対処すべきかなどは訓練しておかないと行動に移せないかもしれませんね。
Jさん:同様にデプロイ(開発)の現場も難しくなります。オンプレ、クラウド両方のデプロイシステムの整合性、そのプログラム(のバージョン管理等)を人が管理する限界を超えてきている。そこでIBMはアーバンコードという製品をIBMは買収した。
企画担当: IBM UrbanCode、アプリケーションのリリースを自動化するソフトウェアですね。今後はこういった製品も注目ですね。
人間と寄り添う
企画担当:最後の質問です。人間とWatsonのコミュニケーション、インターフェースについてどのように感じましたか?
Jさん:Watsonは最近テレビCMも放映されていますね。渡辺謙さんとWatsonが会話しているCMをみました。
企画担当:私もあのCMは好きです。ただ、Watson側はモニターのようなデバイスじゃないですか、あれだとやはりコンピューターと会話しているんだなと思ってしまします。
Aさん:パネルディスカッションで話していた、ジョージア工科大学の学生全員がWeb上で会話している相手が人間だと思っていたという点がすごいですね。また、みずほ銀行の話では、住宅ローン窓口にWatsonと繋がったペッパー君がいて、お客さまの応対するというドラマ・CMのようなストーリーがある動画が印象的でした。
企画担当:人間とのインターフェースという点では今後、もっともっといろいろなアイデアが出てきそうですね。皆様ありがとうございました。
トレンドウォッチ:気になった用語を解説!
Watson Summitでは様々な用語が出てきましたが、その中でもIBMのメッセージとつながる、気になった用語について解説します。
注)用語の解説内容はイベント内での意味を含め、エヌアイシー・パートナーズ(株)メンバーの独自の解釈です。
Open for Data
天気予報、X(旧称:Twitter)のデータをIBMが公開。開発のエコシステムに参加しているビジネス・パートナーが持っているDataも提供し合う。そして分析手法もエコシステムでオープンに扱われる。
Digitization(ディジティゼーション)
従来型のデータを集める、ITでビジネス強化する取り組み
Digitalization(ディジタリゼーション)
分析も含めて意味のあるデータに価値を創造する取り組み。データに基づく知性を担うのがコグニティブソリューション。「ポール与那嶺氏はゼネラルセッションでこれらの用語を数回つかっていた(Sさん)」
Watson SummitにおけるWatsonという用語の位置づけ
今後のIBM製品のストラテジーにおいて、その製品の裏に追加していく機能として存在する”Watson”と解釈すると分かりやすかった。
Data Lake
ただ集まっただけのデータ。「セッションではデータレイクとカタカナ表記だったこともありピンとこなかった」「EMCが使い始めた言葉だが最近は用語として広まってきている」
Dark Web
いわゆる裏稼業においてハッキングした情報の取引をしている世界。「例えば、カルテの情報が1件60$で売買されており、クレジットカードの情報より高くなっている。犯罪であるが、市場の情報価値としてみると、今までと違う時代の象徴でもある。」
Watsonをビジネスに活用する立場として
IBMはコグニティブによって、「このような世界になるよ」と提示しており、ベンダーはエコシステムの参加によるビジネスモデルを提唱しています。IBMのビジネスパートナーはどのようにトランスフォーメーションすれば良いかを考えるきっかけになるイベントだったと言えます。
編集後記
筆者はイベントに参加できなかったのですが、参加メンバーの話を聞いているとIT業界のイベント・セミナーの感想よりも、近未来のSF映画を見たあとの興奮が伝わってくるような話が多く、人の感情を揺さぶるソリューションとしてコグニティブには今後も目が離せないと感じました。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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