こんにちは。ソリューション推進部です。
2023年12月12日に、エヌアイシー・パートナーズ株式会社として初めてのハンズオンセミナー『「IBM watsonx.ai 」を利用したRAGのハンズオンセミナー』を開催しました。
今回のハンズオンセミナーは、以下の2つのことを目的として行いました。
- パートナー様に製品の紹介とハンズオンを合わせて体験いただくことで、製品をより深く知っていただくこと
- 製品を活用したビジネスの新たな応用の可能性を見つけ出していただくこと
私たちのチームでは、パートナー様にご紹介・ご説明する製品を「実際に触ってみること」を大切にしています。
これは私たち自身の技術力の向上という目的もありますが、パートナー様に私たちのリアルな経験を交えながら製品のご説明をすることが、お客様の具体的な課題発掘や案件創出に繋がっていると考えているためです。
今回のハンズオンを通して、パートナー様ご自身が製品の価値を体感しご理解いただくことで、新しいビジネス展開のイメージを創出するお役に立ちたいと考えました。
それでは、今回実施したセミナーの内容について簡単にご紹介いたします。
レポート
1. watsonx.ai紹介講義
ハンズオンを実施する前に、watsonx.ai と RAG についての講義を行いました。
国内では生成AIビジネスが加速し、競争力やセキュリティなどの課題が増えています。
これらの課題を解決する製品として、IBM watsonx をご紹介しました。
watsonx は「watsonx.ai」「watsonx.governance」「watsonx.data」という3つの製品から成り立っています。
watsonx.ai は、基盤モデルをベースとした AI開発スタジオです。
ここでは、IBM が信頼できるデータを用いて事前に学習した基盤モデルや Hugging Face, Inc.* と連携したオープンソースの基盤モデルが利用可能で、ビジネスの状況や要件に応じて最適な基盤モデルを選択することが可能です。
また、RAG についての概念や利点、活用が期待されるシーンもご説明しました。
RAG を用いた具体的なユースケースとしては、IBM Watson Speech to Text や Watson Discovery、watsonx.ai を活用したコールセンター業務の事例や、watsonx Assistant や Watson Discovery、watsonx.ai を活用した ECサイトの問い合わせの事例を取り上げました。
時間の制約からこれら2つの事例しかご紹介できませんでしたが、今後、watsonx.ai を活用した多様な事例を私たち自身も理解し、パートナーさまと共に議論を深めていきたいと思います。
*Hugging Face, Inc.:機械学習 アプリケーションを作成するためのツールを開発しているアメリカの企業。
2. ハンズオン実施
ハンズオンでは、受講者の方々に「RAG」を活用した watsonx.ai の Foundation Model(LLM)への問い合わせを体験していただきました。
RAG とは「Retrieval-Augmented Generation」の略で、LLM への問い合わせをする際に、事前に用意したベクターストアへデータ(今回はPDF)を取り込んでおき、問い合わせプロンプトをもとにベクターストアを検索し、その結果を付与して LLM へ問い合わせを行う、というテクノロジーです。
RAG を使うことで、一般公開されていない社内情報を活用して LLM を利用することが可能となるため、自社での利用やお客様の課題を解決するための方法として有効であると考えています。
ハンズオンの環境につきましては、準備に時間をかけずスムーズに始められるよう、事前に弊社にて PC や RAG を利用するための Jupyter Notebook を用意いたしました。
また、watsonx.ai では複数の Foundation Model を利用できるため、複数のモデルを使って挙動の違いを確認してみたり、取り込む PDFファイルを追加することで回答がどう変わるのか、など、ご自身で自由に検証をする時間を多く設けました。
皆さまそれぞれに前提スキルは異なっていたかもしれませんが、「体験の時間が足りない…」ということはなかったかと思います。
今回ベクターストアへ取り込むのは PDF のみとしましたが、テキストファイルや PowerPoint なども取り込むことができるので、応用できる使い方が非常に広いということを理解いただけたのではないかと感じています。
3. IBMさまによる最新情報紹介・講義
日本アイ・ビー・エム データ・AI・オートメーション事業部 四元さまに「watsonx」に関して、最新事例と製品アップデート情報の2本立てで講義をしていただきました。
事例においては、IBM社内の watsonx活用事例(AskIT)は特筆すべきと言えるでしょう。
AskIT は、IBMの自然言語処理(NLP)能力を活かし、30万件を超えるサポートチケットから抽出された知見をもとに、重要なサポートトピックに迅速に対処する AIアシスタントとして開発されたそうです。
このツールは4ヶ月で133,000人の IBM社員に利用され、問い合わせの75%以上が AI によるチャットで解決されるなど、非常に大きな成果を上げています。
製品アップデート情報のメインは、12月に発表された「watsonx.governance」でした。
AI を組織として採用するためには倫理感のある意思決定が必須であり、watsonx.governance は AIガバナンスとして以下の3つの機能を提供する製品である、というご説明をいただきました。
- AIライフサイクルを通してAIモデルの実態を把握するための「モデル・インベントリ」
- AIの性能や課題の管理などを行う「評価・モニタリング」
- 総合監視画面を提供しリスクを可視化する「モデル・リスクガバナンス」
モデル・インベントリでは、他社の AI商品である「Amazon SageMaker」「Azure Machine Learning」などの AIモデルも合わせて管理・監視できることが非常に興味深いです。
watsonx は、AIワークフローを一貫してサポートすることで倫理的かつ透明性の高い AI利用を可能にしています。
これらの技術革新は私たちが直面している数多くの課題に対する解決策を見出し、先進的なビジネス環境を促進していく上での重要なステップと言えるでしょう。
さいごに
セミナー後には、参加いただいたパートナーさまとご支援いただいた IBMさまとの懇親会を開催いたしました。
当懇親会を通してパートナー様の生成AI に対する取り組みや課題を直に伺うことができ、大変有意義な場となりました。
2023年12月18日に弊社は10周年を迎えました。
10年間で培った経験を糧にし、今後さらに新しい取り組みにチャレンジしていきたいと考えております。
本年も、ブログを通してパートナーの皆さまへ様々な情報をお届けさせていただきます!
今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
お問い合わせ
エヌアイシー・パートナーズ株式会社
E-Mail:nicp_support@NIandC.co.jp