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2021年12月28日

【10分で早わかり】インタビュー記事「Power10の真の価値とは」(後編)

※当インタビューは「前編」「後編 (当記事)」に分けてお送りしています。   登場者 【ゲスト】 日本アイ・ビー・エム株式会社 テクノロジー事業本部 Power テクニカル・セールス コンサルティングITスペシャリスト 釘井 睦和 氏 【インタビュアー】 エヌアイシー・パートナーズ株式会社 技術支援本部 テクニカル・サポート部 佐藤 正忠 エヌアイシー・パートナーズ株式会社 技術支援本部 ソリューション推進部 村上 文香   さらなる経営課題に応えるIBM Power10 - IBM Power10 はセキュリティもかなり強化されているようですね。 釘井) おっしゃるとおりです。IBM Power10 のプロセッサーは、セキュリティ機能をさらに進化させました。 具体的には、コアの暗号化機能を向上させるとともにパフォーマンス劣化のないメモリー暗号化も実現しています。 暗号化という作業を CPU やソフトウェアに頼らずにすみ、自動的な暗号化が可能であるため処理能力の低下というストレスを経験することなく、それでいて、すべてのデータが常に堅牢に守られている、という状態を享受いただけます。 - 最近の産業界では、環境負荷の軽減も強く求められています。 米国のパリ協定復帰を機に、いわゆる "環境関連銘柄" に再び注目が集まるようになり、日本でも「カーボンニュートラル」をサプライチェーン全体で達成しようといった動きが見られます。 あらゆる企業がその一挙手一投足で、都度「それは環境にとって正しい判断か」を考える時代が来ました。 釘井) この点でも IBM Power10 は大きく貢献できます。 最新の 7nm Power10プロセッサーによる高い集約性とリソースの効果的な活用の実現により、IBM Power E1080は、同じワークロードを実行した場合、IBM Power E880C と比べて52%、IBM Power E980 と比べても33%の消費電力削減を達成できます (※IBMによる自社従来品との比較調査 (2021年))。 IBM Power10 にアップグレードすることで、より少ない CO2排出を実現できることになります。 また、エネルギー効率の向上のみならず、リサイクルや環境に優しい材料の活用促進、製品パーツのアップグレード、修理、再製造、再利用によるプロダクトライフサイクル拡大など、IBM Systems全体でハードウェア製品や製造過程における環境面への影響を考慮したイノベーション活動を続けています。 販売に際しても、導入によって年間約20トンの CO2削減を見こむお客様には、製品の一部を割り引く「SDGs割」制度を導入しています。 こちらもぜひ活用いただきたいと思います。   IBM Power10の最も効果的な利用シナリオ - 釘井さんにとって、IBM Power10 はどのように活用するのが最も効果的だと思いますか。 釘井) いろいろお勧めはありますが、ニーズも高くて効果的だと思うのは、最新型ERPシステムの基盤として動かすことです。 ここで重視すべきなのは、CPU の性能です。 7nm Power10プロセッサーは、8スレッドSMT (Simultaneous Multithreading) をチップあたり最大15コア搭載でき、コアあたりの処理能力は、POWER9プロセッサーと比較して約1.3倍のパフォーマンス向上を実現しています。 また、この高い CPUコア処理能力と高密度・高速なメモリー・アーキテクチャーの実現により、アプリケーションが必要なコア数を削減できます。 結果として、サーバー台数の削減や TCO の改善が可能になります。 「クラウドでERPを動かしてみたけれど満足した性能が得られなかった」「完全クラウドシフトはコスト感が合わない」という経験をされたお客様が "脱クラウド" に向かわれる現象も出てきており、IBM Power10 はそうしたお客様の受け皿になれると考えています。 もう1つは、データベースシステム基盤として活用することです。 例えば、これは実際に合ったケースですが、それまで x86ベースで126台のサーバーを運用されていたのが、IBM Power E980 にリプレースすることにより、なんと3台に統合できました。さらに IBM Power E1080 にアップグレードしたとすると2台にまで集約可能です。 これをエネルギーという観点で見ると、102kW から約20kWと1/5に、ライセンス数としても約1/3に削減可能です (※IBMによる自社従来品との比較調査 (2021年))。 いろいろな意味で大きな節約になります。   手が届く存在にする賢い買い方 - E1080 というフラッグシップ製品から登場したこともあって、お客様からは「理想的なシステムであることは認識しているが、当社には『高嶺の花』」といわれることがあります。 釘井) IBM では、IBM Global Financing という組織を通じて様々なお支払い方法の選択肢を用意しています。 一括購入するのではなく分割月額払いにする、分割月額払いにリースを組み合わせる、また、分割月額払いも、均等割ではなく最初は低い金額で開始する、支払い開始時期を後ろに倒す、現在のリース残を新たなリースに包含してすべてリース払いにする、などの方法があります。 冒頭でご紹介した「Dynamic Capacity」も節約術の1つとして活用いただけます。 ぜひ、ご相談ください。 来年以降も新製品を予定しておりますので、楽しみにお待ちください。 - 本日はありがとうございました。   CEOの直面する経営課題の解決策が全部入った1台 新しい時代に突入し、道を切り拓いていくことが求められている現代の企業。 IBM Power10 は、そうした企業の CEO が抱く切実な "思い" を真摯に受け止め、妥協を許さず様々な機能を実現した製品だと実感しました。 NI+C Pも、「リプレース時期が来たら検討する」ではなく「IBM Power10だから検討する」といっていただけるよう、パートナー企業の皆さんを通じて、このサーバーの魅力やメリットを引き続きお伝えしていきたいと思います。     この記事に関するお問い合わせ エヌアイシー・パートナーズ株式会社 企画本部 事業企画部 この記事に関するお問い合せは、「こちら」からお願いします。   関連情報 IBM Power10 (製品情報) - 効率性と処理能力、セキュリティを重視した設計、さらに、脱炭素への取り組みを通じて環境への配慮を実現します。 早わかり!ここが進化したIBM Power10 (コラム) - よりスピーディに、よりスマートに、企業活動を発展させ、デジタル競争の勝者となるためには…?  

2021年12月28日

【10分で早わかり】インタビュー記事「Power10の真の価値とは」(前編)

登場者 【ゲスト】 日本アイ・ビー・エム株式会社 テクノロジー事業本部 Power テクニカル・セールス コンサルティングITスペシャリスト 釘井 睦和 氏 【インタビュアー】 エヌアイシー・パートナーズ株式会社 技術支援本部 テクニカル・サポート部 佐藤 正忠 エヌアイシー・パートナーズ株式会社 技術支援本部 ソリューション推進部 村上 文香   キーワードは「アジリティー」と「摩擦レス」 今日、日本の企業は様々な経営課題に直面しています。 さらなるスピード経営の実現、クラウドや AI活用による DX推進で継続的な成長を追求する一方で、情報セキュリティ対策を高度化し、脱炭素社会や SDGs の実現に向けた施策も必要です。 こうした中、IBM Power10 は「アジリティー」と「摩擦レス」をキーワードに、このような経営課題に応えるために誕生しました。 具体的にどのような解決策が提供されているのでしょうか。 日本アイ・ビー・エム (以下 IBM) で Power テクニカル・セールスを担当されている、ITスペシャリスト 釘井 睦和 氏にお話を伺いました。 ※当インタビューは「前編 (当記事)」「後編」に分けてお送りします。   世界のCEOが注目しているテーマは「アジリティー」 - 本日はよろしくお願いいたします。 日ごろ日本企業と対話される中で様々な声を聞かれると思いますが、課題としてはどのようなものが多いでしょうか。 釘井) IBMには、お客様の声を聞く媒体の1つとして、定期的にグローバル経営層に対してアンケート調査を行い、その結果を発表している「IBM CEO Study」があります。 世界中の13,000名以上の CxO (最高責任者) レベルの経営層に、今日のデジタル時代をリードするために何が必要かについて尋ねるものです。 2021年度は前年がコロナ禍に見舞われた転換の年であったため、かつてない規模での調査を実施しているのですが、それによると、56%の CEO が「アジャイルで柔軟なオペレーションを積極的に追求する必要がある」と回答しました (図1)。 「アジャイルである」とは、俊敏であること、機敏であること。つまり、状況に合わせて自在に "伸び縮み" できることを意味します。 アンケート回答の結果は、不確実性の高い時代の危機を乗り切るために、企業にとってこの経営判断や組織づくりにおける俊敏性、機敏性を指す「アジリティー」を持つことが必須となっている状況を表しています。 [caption id="attachment_109017" align="alignnone" width="491"] 図1:今後2,3年で最も良い業績を生み出すための最重要課題とは?出典:IBM CEO Study (グローバル経営陣スタディ)[/caption] 確かに、コロナ禍以降の状況が時々刻々と変化したこの2年を振り返れば誰でも実感できることです。 昨日は可能であったことが今日はそうでなくなり、今日禁じられていたことが明日は許可されるという世界。紙の裏表のように変わる環境に即応して適切な対策を講じることができなければ、企業経営はたやすく危機に陥るリスクをはらんでいました。 「アジリティー」とは、俊敏であること、機敏であること。つまり、状況に合わせて自在に "伸び縮み" できることを意味します。 経営と IT が不可分である今日、このような危機を乗り切ろうと思えば、IT こそがこの「アジリティー」を持つことを強く求められているのです。 そして必然と言えますが、「アジリティー」を担うのが IT です。 - 新しく登場した IBM Power10 はまさに「アジリティー」と「摩擦レス」をキーワードとして誕生していますね。 釘井) そのとおりです。この「アジリティー」を象徴する機能として、IBM Power10 には「Dynamic Capacity」が備わっています。以前の IBM Power でも一部のモデルで提供されていましたが、このバージョンで全面展開となります。 どういう仕組みかというと、同じサーバーモデルでエンタープライズプールという形で "チームを組む" ことによって、コアやメモリーといったリソースを全サーバーで共有が可能になります。 超過して使いそうな可能性がある場合は、従量制課金の考え方でそれぞれのサーバーでリソースを事前購入して搭載しておきます。 このようにしておけば、ふだんは最小限に見積もった容量で利用し、一時的に利用が増えるというときも特段の準備なく用意しておいたリソースで事業を継続できます。超過使用量は分単位で課金計算が行われ、それはハードウェア管理コンソールを通じて Cloud Management Console で自動管理されたデータで確認できます。 そして、一時的な利用増大が終了すればまた元の状態に戻れます。 これまでは、利用が増えればサーバーを追加するしか選択肢がなく、調達するまでのタイムラグをどうしのぐか、という問題がありました。さらに、利用が減っても一度増やしたサーバーを減らすのは簡単ではありません (図2)。 [caption id="attachment_109018" align="alignnone" width="547"] 図2:Dynamic Capacityを用いたシナリオ例[/caption] - なるほど。ちなみにリソースを事前購入しておくのはなぜですか。 Cloud Management Console で使用量が確認できるのであれば、すべてオンデマンドで課金計算してもいいように思います。 釘井) 事前購入の方が、発生するコストを想定しやすいからです。 クラウド利用でも見受けられることですが、日本のお客様はコストが予想以上に膨らむことを懸念されます。事前購入はコストコントロールに配慮した仕組みです。 将来的に「Dynamic Capacity」は、IBM Cloud上で動く IBM Power Virtual Server を含めた利用も可能になる予定です。これを併用することによって、より急激な利用増大ニーズにも対応しやすくなります。 コロナ禍でマスク販売サイトやワクチン接種予約サイトへのアクセス集中を私たちは経験しましたが、産業界でも同様のことは起きています。 システムの拡大・縮小対応がますます現実的になる中、ニーズは高いと思われます。 - いつごろ利用可能になりそうでしょうか。 釘井) 現時点では開発意向表明のみが出ていて提供時期をお伝えすることはできませんが、北米の数社でパイロットとして利用が始まっていると聞いていますので、比較的早い段階で提供できるのではと考えています。   IBM Power10で「ハイブリッドクラウド」と「AI」をどう実現するか 釘井) IBM Power10 は、IBM としての方向性である「ハイブリッドクラウド」と「AI」とも足並みを揃えたシステムになっています。 - IBM Power10 で対応する「ハイブリッドクラウド」とはどのようなものですか。 お客様は実際どのように「ハイブリッドクラウド」環境をお使いでしょうか。 釘井) お客様のクラウドニーズはほんとうに様々です。最も多い利用ケースは、開発・検証環境の実装ですね。 従来オンプレミスシステムでは、開発・検証環境の構築は不自由さを強いられていました。 それなりの環境を基幹システム基盤に環境を確保すれば、本番システムの性能に影響を与えてしまいます。かといって制限を設ければ、十分な開発・検証が実施できません。 その点クラウドであれば、必要なときに必要なボリュームを用意して心ゆくまでリソースを活用、作業が終われば即撤収、という使い方ができます。 また、災害対策としても有効です。 これまでは「途切れない事業継続のためには、本番システムと同様のシステムを遠隔地にご用意ください」と申し上げるしかありませんでした。 しかし、クラウドであればハードウェアを別途調達する必要はありませんから、災害対策コストは軽減されます。 しかも、IBM Cloudのコロケーション環境で仮想環境を提供しているIBM Power Virtual Server を利用すれば、オンプレミスの本番システムとまったく同じアーキテクチャーをもった災害対策環境を、オンデマンドで構築することができます。 必要なデータをクラウド・ストレージにコピーしておく、サービス環境を立ち上げるのに必要な定義情報を IBM Cloud に保管しておく、といった準備は必要です。 こうすることで、平常時は最低限のサーバーのみで運用コストを抑えつつ、万が一のときは災害対策用の業務サーバーを自動作成して迅速に事業継続を図れます。この方法もよく選択されるクラウド活用法です。 システム運用からの解放やクラウド先端技術活用のために全面的なクラウドへのリフト&シフトを進められているお客様があるかと思えば、その一方で、パフォーマンスやコストコントロールの観点から「脱クラウド」を掲げ、オンプレミスシステムへ回帰されるお客様もいらっしゃいます。 IBM Power10 は、これらすべてのニーズに対応します。 つまり、オンプレミスシステム志向からクラウド志向まで、お客様がどのフェーズにおられても、また、どのフェーズに移行されようとしても、IBM Power Virtual Server との連携によって「摩擦レス」にシステムの構築・移行を実現します。 - よくわかりました。 それでは「AI」という方向性についてはいかがですか。 AI活用といえば、お客様は「IBM Power AC922」などを用いてディープラーニングによる機械学習を行ってきたかと思うのですが、それが IBM Power10 でも行えるようになるのでしょうか。 釘井) AI活用には、学習と推論という2つの側面があります。 膨大なシステムリソースが必要になる学習には、引き続き「IBM Power AC922」のようなGPUを搭載したサーバーが有利です。 しかし、完成したモデルにデータを投入して推論させる段階になると、必ずしも GPUマシンを用いる必要はありません。 たとえるなら、レーシングコースを走るなら F1カーが最適ですが、街なかを走行するのにも F1カーに乗りますか?ということになります。 IBM Power10 は「Train Anywhere, Deploy Here」をキーワードに掲げ、データの蓄積された場所、つまり基幹システム上で推論を実行することを想定しています。 その意味では「すでにモデルはいくつか作り上げた、そこに生のデータを当てて検証を繰り返し、さらに精度を向上させていきたい」といった、AI活用がある程度進んだお客様にお勧めしたい機能です。 このサーバーは、Matrix Math Assist (以下 MMA) という行列計算などを専門として処理するエンジンが IBM Power10 のチップに組みこまれており、MMA につながるメモリーまわりの帯域幅やキャッシュ容量も増えているため、膨大なデータを高速に処理することができます。 例えば、同じ筐体内に業務システムを動かす IBM i や AIX の区画、AI を動かす Linux区画を置き、IBM i や AIX の区画に続々入ってくる日時の営業トランザクションや製品の需要情報を Linux区画に送って推論を行い、その最新計算結果をまた業務システム側に反映する、といった利用法が考えられます。 「データのある場所でAIを実行しよう」が、IBM Power10 のメッセージです。   後編「さらなる経営課題に応えるIBM Power10」~へ進む     この記事に関するお問い合わせ エヌアイシー・パートナーズ株式会社 企画本部 事業企画部 この記事に関するお問い合せは、「こちら」からお願いします。   関連情報 IBM Power10 (製品情報) - 効率性と処理能力、セキュリティを重視した設計、さらに、脱炭素への取り組みを通じて環境への配慮を実現します。 早わかり!ここが進化したIBM Power10 (コラム) - よりスピーディに、よりスマートに、企業活動を発展させ、デジタル競争の勝者となるためには…?  

2017年11月27日

【特集:インタビュー】「クラウドとデザイン思考」日本企業にはイノベーションの素養がある ~ IBM デザイン・シンキング ~(後編)

interviewee : 長尾 政明 (Masaaki Nagao)氏 IBM iX Creative & Design 統括 IBM デザイン思考推進リーダー IBM Studios Tokyo スタジオリーダー interviewer : NI+C パートナーズ 企画推進部 加古 ~ 前編からのつづき ~ - それでは、IBM がデザインシンキングを導入していった過程についてお聞かせいただけますか。 IBM では、2012 年に IBM におけるデザインプログラム 第2章 として、IBM Design という組織を立ち上げ、最初の IBM デザインシンキングのトレーニングを製品開発チームに対して行いました。その時は、まず希望者を募ったため、各チームから 1,2名ずつの参加となりました。約1週間、デザインシンキングのトレーニングを実施しましたが、トレーニングを受けた後、現場に帰ったその方達は、「周りのチームメンバーが、全然理解できていない。自分達だけが遊んでいるみたいだ」、と感じたのだそうです。 この教訓を活かし、トレーニングには、チーム単位(5~10名)で参加させることにしました。こうして、現場に戻ってもやらざるを得ない環境作りもサポートしたのです。   デザイン・シンキングのトレーニングはマネジメント層にも必須 実は、それで全てが上手くいったわけではなく、プロジェクトを進めていくと、今度は該当製品開発チームのマネージメント層から「何をやっているんだ」、「これまでの尺度で報告しろ」という意見が出るなど、マネージメントがチームの活動を理解してくれない、IBM デザインシンキングのアプローチで推進できないという相談が トレーニング参加者からありました。そこで、トレーニングを受講するチームのマネジメント層もセットで デザインシンキングのトレーニングを受けてもらうようにしました。マネジメント層に対する1週間のトレーニングは難しいため、0.5日から1日で基本的なことと、なぜ必要なのかということを理解してもらいました。更にメンタルモデルの変化、コーチング方法の変更をについても理解してもらい、ようやく回り始めたのではないかと思います。   このように、IBM でも何度か失敗しているのです。個人だけでなくチーム全体、更にマネジメント層まで浸透させ、評価制度まで変えないと、日本の企業においてデザイン・シンキングの導入、更に変化を起こすことは、難しいのだと思います。 ― 日本の IBM 社内では、どのくらいのトレーニングを実施されているのですか? 営業チームに実施しているのは1日のトレーニングです。1日以上拘束することが、難しいため、与えられた時間で出せる結論までにしています。その内容を元にお客様に提示してみる、営業チームで試してみる、そのように回る仕組みを目指して実施しています。来年からは、少し変更して、デザイン・シンキングそのものだけではなく、 ユーザー・リサーチ(観察)もしっかり実施するようなコース開発も行っています。 e ラーニングも社内では準備しているのですが、デザイン思考に関しては受動的な学習では理解が難しいので、アクティブ・ラーニングによるトレーニングという形を重要視しています。   IBM デザイン・シンキングの進化 ― IBM デザイン・シンキング自体に変化はありますか? 当初 IBM のデザイン思考は、以下のイメージのように"シーケンシャル"に進むイメージで書かれていました。 上記のように以前は 4ステップ あったのですが、今は単純化されて、「Observe(観察)」、「Reflect(洞察)」、「Make(施策)」の 3ステップ です。 ※※()内の和訳は、『IBMの思考とデザイン』 からの引用です。 更に、これらはループします。なぜこの形に行き着いたかと言うと、IBM の製品開発がアジャイル的にどんどん進化したからです。その進化の中で、デザイン・シンキングをステップ通りに進めなければならない、とは もはや言えなくなったのです。どのプロセスからも入ることができるモデルが必要となりました。まずは作り、その結果を熟考してみて、その リフレクション(振り返り、学び)を元に変更を加えて...というやり方でも良くなり、もちろん、従来からのお作法通りに進めても良いのです。 ― アジャイルは、IBM の中でも当たり前のように浸透し、そのアジャイルに適応し、融合するため、このモデルの変更されたのですね。   他のプラクティス、アジャイルやリーンスタートアップと融合することでより強力なツールに この新しいモデルが強力なのは、アジャイルという手法に対し、どういうものを作るか?というアイデアを出す部分をデザイン思考が補完するところにあります。補完して、メイク部分をまずはプロト的に紙芝居のようなものでアジャイル的に作り出していく。アジャイルのプレイヤー達と一緒にどんどんこのサイクルを回していく、ということができます。デザイン思考だけではなく、アジャイルもなくてはならない存在です。加えて、お客様の既存システムといったイメージではなく、新しい事業やサービスラインを作るなどの場合は、リーンスタートアップ ※1 的な手法もここに入ってきます。お客様での成果を見て、実際のアイデアと開発内容に反映します。 これらの手法は、絡み合っています。どれか1つだけでは、片手落ちです。デザイン・トランスフォーメーションを例にとると、企業が目指しているものを明確にし、そこに対してデザイン思考、アジャイル、リーン・スタートアップなど、新しい手法を適材適所に組み合わせて実践します。 ※1. 「リーンスタートアップ」: コストをかけず。最低限の製品やサービス、機能の試作品を短期間で作り、顧客に提供し、顧客反応を得て、観察し、観察結果を分析し、改善し、再び顧客に提供する。このサイクルを繰り返す手法。 IBM でデザイン・カルチャーを作る、という目的を実現するための方程式があります。それは、" People "、" Practice "、" Place " が重要という考え方です。 IBM デザイン・シンキングを支える「場」 ― 先ほどお話いただいたのは方程式のなかで、Practice 「実践」の部分だと思いますが、では、Place 「場」についてお聞かせください。   ここ(IBM Studios)は、共創するための場です。一般的な会議室だと、いきなりセッションを実施したとしても難しいことがあります。やはり集まりやすく、ここに来ると何か面白そうなことが起こるのでは?という雰囲気を感じられることがとても重要です。ここはもちろんセキュリティが厳しいのですが、ソニー社では、1階の受付を通らずすぐ入れるような メイクスペースをお持ちです。  Yahoo 社も Yahoo lodge を開設されています。外部の人の入りやすさであったり、社内の人もそこに来る、そんな場で、様々なことが発生する。このような環境づくりもオープン・イノベーションを謳う企業にとって非常に重要な部分になるのでは、と思います。   多種多様な"人を繋ぐ場" とデザイン・シンキング IBM でもこの「場」というものを非常に大切にしています。その場に来るとデザイナーがいて、ノンデザイナーとデザイン思考を使いながら、お客さんと一緒に問題解決をする。共創し、形にするための道具として、デザイン思考があり、様々なバックグラウンドの人々を繋ぐ役目を果たしています。デザイン思考は、仕事の仕方、ひいては働き方のための OS 、インフラやフレームワークのようなものとして機能し、それを有効的に使える 「場」として、 IBM Studios が存在しているのです。IBM Studio は、現在、世界43箇所に設置され、社内外の人が共創活動を行っています。   お客様にも、「ふらっと来て、デザイナーと話せる、相談できる、そのような場を持つことも重要です。」とお伝えするようにしています。中には、「では、空いてる部屋をこれに使おうか」と、自ら場づくり、空気作りにも取り組もうとされているお客様もいらっしゃいます。 ― 確かに、昔ながらの会議室で堅苦しく机を囲んでいるのでは、「さぁ、アイデアを出しましょう!」と言われても活発に思ったことを言い合う雰囲気にはなり辛いですよね。アイデアを出す場合、座っているより、立っている方が良い、ホワイトボードがあって、付箋紙貼れる方が良い、最も重要なのは、多種多様なバックグラウンドを持った人々が気軽に集い参加できる「場」があること、なのですね。   IBM デザイン・シンキングでは特に「人」を重要視している ― それでは、3番目の 「People」 についてお聞かせください。 ありきたりなシステム開発ではなく、ユーザーにとって本当に価値のあるものを見つけ、提供するといった場合、デザイン思考のバックグラウンドを持った人が、ユーザーを理解することから始めます。アイデアを出して簡単に試作をして、評価するということをぐるぐる回して理解します。このような問題の理解から始めないと、本当の価値を見つけ、提供する、ということことはできません。   チーム全体が共感し合うことが大事 その時は、個人的に誰が良くやった、ということではなく「チーム」として成功も失敗も経験するということが重要です。IBM デザインシンキングの中では、特に「チームが大事」ということが言われます。また「共感」が重要とも言われています。ユーザーに共感するだけではなく、チームメンバーにも共感する。チームの各メンバー同士が共感していないと、「私のアイデアが...」といったメンバー間の競争になってしまいます。ユーザーに共感する前に、まずはチームの中で共感し合いながら、お互いの強みや弱みを理解することにより、最大限良いものが出せる、という思想です。 IBM のプロダクト部門があるオースティンを中心にこの取り組みが進んでいます。同じ IBM のオフィスであっても雰囲気が全然違います。助け合いというか、お互いに共感し、オープンな雰囲気があります。そういう意味では、昔の町工場的なイメージです。   単体のチームだけでなく複数チームによる"異種交配の場"をつくる 例えば、オースティンの Watson IoT や Watson Health のような製品開発チームの良い例があるのですが、彼らは、作っているものや、やっている事についての情報を通路に張り出しています。それは、ただ、自分たちが行っていることを発信しているだけでははないのです。その通路に張り出された情報に対し、他のチームの人が自由に意見を書き込んだり、アドバイスしたりと、オープンに意見交換を行っているのです。彼らはこれを花粉の受粉に例えて、"クロスポリネーション"と表現しています。異種の花同士の交配、これを起こさなければならない。チームの中でだけでは新しい意見や発見がなかなか出てこないと考えています。オースティンでは、その中での情報がオープンで共有できる環境をつくるため、オフィスのセキュリティーは非常に厳しく・・・・実は、私は毎度行くたびにロックアウトされてしいまうのです(笑)。ですが、それ位厳しいからこそ、実現できているのだと思います。 異種の芽というのを入れる。デザイン・シンキングそのもののチーム構成は、ビジネスの人だけを入れれば良い、 IT の人だけでチームを構成してしまうと、その分野のエキスパートではありますが、多種多様な意見を引き出すのは難しくなります。様々な人を入れて、問題に対してアプローチする、意見を言ったりする、アイデアを出したりする。異質とか多様性からの創造、チームでもいろんなチームが存在する環境の中で、有機的に交わりながらモノづくりするというのがデザインカルチャーの根底にあるような気がします。 昔の印象とは全然違う姿があり、日本の方がまだまだ個人やチーム間が協力し合っていないイメージにあるように思います。   -そうですね。デザイン・シンキングを実践する人数やメンバー構成を考える上では、やはり出来る限り多様なメンバーを揃えるというのが重要ということですね? はい、そうだと思います。 人数の部分からお答えすると、決まった人数というのはありません。 IBM の製品開発でのデザイナーとエンジニアの最適な人員構成は、元々は 1:50 だったり、1:33 だったり、色々な数字がありました。今は、1:8  にしようとしています。デザイナーが、1,600 人になって、このデザイナーとエンジニアの比率はこれぐらいが良いのでは、となっています。最近のスタートアップ、例えば創業者がデザイナーの Airbnb では、1:2、1:3 の比率とのことです。IBM は製品が複雑で、専門的なスキルが必要ですので、将来的にもその割合にはならないとは思います。 - そうなのですね、確かに 1:8 ぐらいに落ち着きそうですね。 はい、エンジニアは、これぐらい必要だと思います。   デザイナーを大胆に配置し売り上げが倍増 2010 年に買収された企業から Phil Gilbert が IBM に加わり、 BPM チームを任されました。当初、40 ぐらいあったプロダクトを 4 つに整理しました。人も 1,000 人いたディベロッパーを 600 人減らしました。正確な数字は分からないですが、デザイナーを増やし、プロジェクト・マネージャーと合わせて、700 人ぐらいにしました。人を 30 % 減らし 、更に 4 つにプロダクトラインを減らしたのですが、この次の年の売上は 2 倍増になったとのことです。このような人の構成で、有機的に反応し合い、進めるのが良いということがわかりました。ある意味できすぎた話に聞こえてしまうのですが、 IBM では、オファリングマネージャとデザイナー、エンジニアとデザイナー、など組織での比率を常に意識しているのです。   IBM ではデザイナーとエンジニアの比率は 1:8 を理想としていますが、一般企業で言うとどうでしょうか。IT 部門で何か新しいシステムを作るという場合、 1:50 に近い数字のイメージではないでしょうか。しかし、サービスを作るとなると、デザイナーが重要になってきますので、比率はもっと変わってくるのではないかと思います。 ―最後に今後、デザイン思考やってみようとか試してみようとかという企業やビジネスパートナーに向けて、何から手をつけて良いかアドバイスいただければと思います。   理想から言ってしまいますと、とにかくとりあえずやってみましょう、体験してみましょう、ということになります。 今、 IBM 社内 の営業担当者向けにワークショップを実施しています。その内容を是非パートナーさんにも広めたいと思っています。実現するにはその方法を考えなければならないのですが、ワークショップやセッションという形で体験してみていただければ、その体験を通して、これならお客様とも一緒にできる、という感覚を持っていただけるはずです。まずは、このようなステップを踏んでいただけれたら良いかと考えています。 デザイン思考については、頭で考え始めても悶々とするだけですので、考えるのは体験してからで良いと思います。   デザイン・シンキングはパートナー様の強みにできる 実は、お客様が本当にどう困っているのかが、わかっていないことがありますが、デザイン思考を使って、パートナー様自らリサーチし、仮説を立案することができます。また、自社のセールス・プランニングのツールとしても使うことができます。また、デザイン・シンキングを含む他の手法をアピール材料に、新たなお客様へアプローチする手もあります。   単純にこの製品を入れましょう、ということだけではなく、例えば、マーケティング・オートメーションのツールだとすると、ユーザーは自動でメール配信ができるのは理解したが、では配信効果が出るのはどのタイミングなのか?ということを実際に配信した結果を元に考えませんか?など、デザイン思考ならではの使い方や取り組みができます。 今後、これらのきっかけとなるセッションをどう実現するか、という課題は残ります。もちろん、課題は課題としてとらえ、日本で IBM として、デザイン・シンキングを広めていくためにできることを考えていきたいと思っています。   2回に渡り、IBM デザイン・シンキングについて、特に IBM 社がどのようにデザイン・シンキングを企業の血や肉としてきたかをお聞かせいただきました。 ツールとしてのデザイン思考に注目が集まりがちですが、そのツールを使う「人」や「場」を準備し、ようやく回り始めるという状況だということがわかりました。 また、単純に推進役だけがデザイン思考というツールを知るだけでなく、チーム全体、マネジメント層の理解を得ることももちろんのこと、ひいては評価制度に至るまで、変えていかなければならない、ということに改めて気づかされました。 その上で「日本にはイノベーションの素養がある」と確信し、それには個人個人、そしてチームのマインドセットが重要との認識を更に強めました。 機会があれば、番外編として、「デザイン思考を実現するマインドセット」について考えてみたいと思います。  

2017年11月06日

【特集:インタビュー】「クラウドとデザイン思考」日本企業にはイノベーションの素養がある ~ IBM デザイン・シンキング ~(前編)

interviewee : 長尾 政明 (Masaaki Nagao)氏 IBM iX Creative & Design 統括 IBM デザイン思考推進リーダー IBM Studios Tokyo スタジオリーダー 経歴 ・・・ コンサルティングファームにおいて、戦略・トランスフォーメーション領域でのコンサルティングに従事した後、事業会社に移り、新規事業企画 (大手電機メーカー)、グローバルオペレーション企画 (海外通信機器メーカー) 等を経験。 IBMにおいては、電機・電子業界コンサルティング、戦略コンサルティングを経て、現在はC&D 統括として、IBMデザイン思考推進リーダー、IBM Studios Tokyo スタジオリーダーを務める。クライアントと共に、新しい顧客体験の創造とビジネスデザインを実行、またデザインカルチャーの組織への浸透・実践に取り組んでいる。 専門分野 ・・・  IBMデザイン思考、新規事業企画、ビジネスモデル、イノベーション、FORTH公認ファシリテーター  interviewer : NI+C パートナーズ 企画推進部 加古 当インタビューの背景 今回のインタビューのきっかけは、「デザイン思考とクラウド」と題した特集記事です。素人ながら"デザイン思考は何かから、クラウドとの親和性について”執筆してきました。考察を進めていくうちに、日本の企業はデザイン思考を効果的に導入することが難しいのではないか?という疑問にたどり着きました。 この疑問を紐解くには、やはり、デザイン思考の推進に実際に取り組んでいる方にお話をお伺いするのが良いのではないか?ということになり、日本 IBM で第一人者の長尾氏にインタビューのお時間をいただくことになりました。   IBM デザイン・シンキングを担う組織 ― お話しにくいかもしれませんが、こういうところが難しいんですよとか、成功、及び失敗事例も含めてざっくばらんにお話いただければと思います。まず初めに、長尾様のお仕事、お立場や役割についてお聞かせください。 私は、 IX (インタラクティブ・エクスペリエンス)担当、コンサルタントとして GBS という組織にいます。 IBM グローバルでは、"デジタル・ストラテジー・アンド・インターラクティブ・エクスペリエンス"という顧客体験やユーザー体験、といったお客様に近い部分を担当するチームというイメージです。私には、クリエイティブ・アンド・ デザイン、ここでは顧客体験を作るにあたってデザインやアプリケーション、その前段のそもそもどういうユーザー体験が求められているのかを考えるミッションがあります。 最近 IBM は、エクスペリエンスを全面に押し出し始めています。 これまでのように戦略や要件定義を理詰めで考え、落としこんでも、結局ユーザーが使いたい、または必要な機能にはならないことが多いということを経験してきました。機能をたくさん詰め込んでしまうと、お腹がいっぱいの状態になってしまうのです。 例えば、(テーブルにあったリモコンを指し)テレビのリモコンにはこんなにボタンがありますが、使うボタンはほんの一部です。ボタンが多すぎるのです。(赤、青、黄色・・・ 等のボタンを指しながら)このボタンは、何かしら投票する時などにしか使わないですよね。そもそも使いこなしている人はほとんどいない。同じように、モバイルやクラウド、特にフロント寄りでは、 IoT、 AI 、何でもできるとして、何でも乗っけたくなるのですが、結局無駄なものができてしまい、響かないのです。   ユーザー体験をエンリッチするために 「響く体験、生き残るためにユーザの体験をエンリッチするものでなければならない」、と言うのが2012年にジニー・ロメッティが就任した時の言葉です。「クライアント・エクスペリエンスの今後が、 IBM 成長の鍵となる」と。この瞬間、デジタル・リインベンション、そしてエクスペリエンスが IBM の中心となりました。このデザインを先頭になってやるというのが、我々のチームです。 その中には UX (User Experience) などの上流工程をデザイン・シンキングを使ってデザインしている者もいれば、それを受けて様々なアプリを開発したり、プロダクトにつながるもの、また簡易的なサービスをデザインする者もいます。更に広告代理店系の人材、デジタルマーケティングとかデジタルクリエイティブという人達もいます。大手広告代理店との差別化として、例えば、デジタルマーケティングと IBM のマーケティング関連のオファリングと上手く組み合わせてサービスを作っていくなど、 全く同じことをやるのではなく、デジタルの世界でも、試行錯誤しているところです。 他にはモバイルとか モバイル・エクスペリエンスの部隊、マーケティング&コマース、セールスフォースの部隊、 エクスペリエンス・アナリティクス、アナリティクス・ ソリューションもあります。 顧客接点のいろいろな体験マーケティングのソリューションを持っているというよりは、後ろに一緒にいて体験を作っていくように関わっていきます。その時の道具として使っているのが IBM デザイン・シンキングです。共創のためのフレームワークと言うアプローチ方法を適応しています。 これらが C&D  (クリエイティブ アンド デザイン)がやっていることで、私は、それをリードしています。いわゆるデザイナーやクリエイティブな人材を抱えていますが、普通のコンサルティングと同じ稼働率で評価されるイメージです(笑)。   ― そこは、なかなか変えることが難しいですよね。 確かに、そこは難しいですね。   IBM デザイン・シンキング -では、IBM デザイン・シンキングについてお聞きしてもよろしいでしょうか。 今の IBM デザイン・シンキングの始まりは、2012年、ジニー・ロメッティは就任の際に、「クライアント・エクスペリエンスが重要だ」と語ったところからです。クラウド、 SaaS といったフィジカルなものではなく、お客様がサービスを試し、良かったら採用する形になる。そうであれば、最初から体験が物を言ってくる、これが重要だ、とも言っています。それを受け、テキサスのオースティンにいるフィル・ギルバートという GM がトップとして 「IBM デザイン」という組織を作りました。そのミッションは、「デザインとデザイン・シンキングのカルチャーを IBM に浸透させる」というものです。 今では、デザイナーを1600人以上抱え、デザイン組織としても有数の規模になっていますが、デザイナーを何人にするということよりもデザインカルチャーを IBM にインストールする、それが浸透して全社員がお客様やユーザーに共感して物事を考えて解決していく、というような組織になりたいということなのです。 そして、私には、デザイン・シンキングを日本の IBM 社内で推進するという役目があります。コンサルタントで稼ぐというのと、他の部門に対してのトレーニング実施、さらに浸透させるためのフォローアップ、これらのバランスが結構難しいです。 今は、営業チーム向けのデザイン・シンキング・トレーニングを四半期に 1、2 回程度行っています。GBS の中途採用者に関しては毎月月初にプログラムとして実施しています。他部門でもニーズがあります。先日もクラウド & コグニティブの部門で 3 日間のイベントをお手伝いしました。 もっと展開できると思っていますが、今はトレーニング (その場で実際の問題を解決するために活用するアクティブラーニングの形をとります)を切り口に浸透させていきたいと考えています。 日本企業には、イノベーションの素養がある ― ここで、デザイン・シンキングって本当に難しいの?という問いについてお考えをお聞かせいただけますか。 デザイン・シンキングは去年結構流行ってましたよね?今年も引き続き流行っていますが、そろそろバズワード化してしまって、結局あれは大したことなかったとなる可能性があります。 それが IBM 社内では起こらないように、きちんと理解してもらった上で、日々お客様サービスやトレーニングでも価値が出るように、日々試行錯誤しています。 先ほど、デザイン・シンキングが日本では難しいんじゃないかという話がありましたよね。確かに難しいんですが、アメリカ人に言わせてみると日本で騒がれていること自体が不思議なようです。   デザイン・シンキングのパイオニア達は日本の『下町ロケット』を参考にした?! デザイン・シンキングは 1990 年から 2000 年にかけてアメリカ西海岸でスタートしました。その前から、もちろんデザイナーが無意識のうちにやっていたと思いますが、明確にそういう言葉が出てきたのはその頃です。Stanford d.School や IDEO (※)のトム・ケリー、デビッド・ケリー、ビル・モグリッジなどが始めたのです。 ※IDEO(アイディオ)は、アメリカ合衆国カリフォルニア州パロアルトに本拠を置くデザインコンサルタント会社。 彼らを含め、アメリカのデザイン・シンキングに関わる人に言わせると「なぜ日本人は騒いでるんだ?(デザイン・シンキングは)日本人が元々やっていたことを割と参考にしながらやってるんだよ」、ということだそうです。これは、よく言われます。   ― はい、私もそう思います。日本の企業には元々"イノベーション"の素養があるということですね。 多分 Honda さんにしても皆さん、下町ロケット(※)の世界で、大部屋で部門や部署がどうとか関係なくお客様や自分たちの課題があってそれに対してみんなでやってみる。任せて、それぞれの英知を発揮してやってみる。試行錯誤しながら進めていくというようなものだったと思います。正にこれはデザイン・シンキングの世界で、日本にはもともとあった素養なのです。海外から効率化といったものが入ってきて、日本は優等生として取り入れてしまった。その結果、組織が出来上がって、サイロ化して、今では隣の部門が何をやっているのかわからない、そんな縦割りの状況が多く見受けられるようになってしまったのです。弊社でも色々チームを作ってしまうと、そこでどうしても垣根ができてしまう。そういったものを見直したのがアメリカの西海岸のスタートアップの人たちだと思うのです。 (※)池井戸潤の小説、2015 年にテレビドラマ化され話題を呼んだ。 ですので、もともと日本にはそういう素養があります。一度"ガラガラポン"してみてみるのは良いのかなとも思います。   重厚長大な組織でもデザイン・シンキングを導入できる IBM でも 2012 年から本格的に全社を挙げてデザイン・シンキングの導入を始めています。グローバルでは、38 万人の社員の内、9 万人ぐらいが IBM デザインシンキングバッジ認定制度での認定を受けて実践しています。日本だとそれが 7,000 人程度の人間が同様の認定を受けています。 GE 社(※)では、デザイン思考を早くから取り入れていて、リーンスタートアップを取り入れた、ファーストワークス手法を作っています。重厚長大な企業もスタートアップかの如く実践しています。日本の企業も頑張れると思います。ただそこに行くきっかけ、壊すきっかけになるような衝撃、というのがまだまだ足りないのかなと思います。しかし、十分危機感はあるような気がするのですが、今の状況だと。まずは、小さくても良いから試してみる、という思いきりが必要じゃないかなと思います。 ※ゼネラル・エレクトリック(英語: General Electric Company、略称: GE)は、アメリカ合衆国コネチカット州に本社を置く、多国籍コングロマリット企業。   - 私も難しいとは言っていますが、日本の企業が元々やっていることというのは、理解しているつもりです。それでも最近の状況にマッチしないんじゃないか、例えば失敗を許さない雰囲気、コンプライアンスだとか、縦割りの組織であるとか。 IBM がデザイン思考をやると、聞いた時に面白いなあ、と思ったんです。ある意味そことは離れた会社という勝手なイメージがあったので。そこに"デザイン思考"を取り入れていくということは、皆さんがどう苦労され、チャレンジされているのかは、多くの日本企業にとって参考になるのではと思っています。   いくら IBM や GE 社あっても、市場に正式に出した段階、正式リリースした段階などで失敗があった、というのはダメです(笑)。ただ、ここでの小さな失敗はすぐにアップデートしたり軌道修正することもできるので、そういった学習サイクルが早く回ることがどのタイミングであっても大事かと。もちろんそうならないように非常に早いタイミング、これまでよりもずっと早いタイミングで試行(失敗)をするというのがやはり重要です。そのタイミングの失敗だったら、許すよというのが大事です。プロジェクトも後半で、より具現化しなきゃいけない、かなりお金も投入したという段階で、ユーザーテストやユーザーと検証してやっぱり失敗でしたというのはダメです。   本当に早い段階で、まずはアイデアを試す。仮説でもいいからアイデアを作ってみる。アイデアを形にして検証して...というサイクルを早く回してみる。その中で失敗した、で終わるのではなく、その失敗から学んだことを活かして次のステップに進む。なぜ失敗したかということを理解する上では、その過程、その行為を評価する、ということが揃って IBM でも許されてるんじゃないかなという風に思います。   マネージメント層のコーチング・スタイルの変化も必須要件 完全に何をしても失敗してもいい、というものでもないですが、アーリーフェイルア、というよりはランニングですね。そこから何を学習するか、最終的に失敗してしまったら失敗ですけれども、途中の失敗はまだ学習の糧です。マネージメント層もそこをちゃんと理解しないといけない、助言するとしてもこれを前提としたコーチングの方法を身につけなければなりません。   かなり早い段階でこれまでと同じ尺度で、「それいくらになるの?」とお金の話を出すとか、失敗したからだめだよねとか。そういうやり方ではなくて、例えば、ある施策を 10 人のうち 2 人だけすごく欲しいと言っているとします。その場合、見極めて完全に方向転換するのか?この二人というのは実は形にして見せて見ると他の人を取り込めるぐらい先見性を持ったユーザーの 2 人なのか?このような問いができるコーチングや助言が必要です。次のステップに進めるために上手くラーニングを回すための助言が必要なのです。 >> 後編に続く..... 公開済み! ↓  「日本企業にもできるデザイン・シンキング、イノベーションの具体的な方法とは?」後編

2014年04月02日

Vol.15 新人SEにソーシャルについて学ぶ

普段の製品・ソリューション紹介だけでは聞き出せない情報を「実際のところはどうなんだろう?」という素人視点で、専門家に聞いてみるシリーズです。 題して「実際どうでしょう」。。。どうぞ、ご覧ください。 今回は、新人 SE が学ぶ IBM Connection(※1)でお馴染みの日本アイ・ビー・エム吉原様にインタビューをさせていただきました。自身のブログにコミュ力がないとあったので、会話が途切れ途切れにならないか心配されていましたが、ソーシャルの質問をすると引き出しが広く知見の高い方でした。 ※1 新人 SE が学ぶ IBM Connection第1回(IBM DeveloperWorks) プロフィール 日本アイ・ビー・エム株式会社 吉原 洋樹 様 ソフトウェア事業本部 Collaboration Solutions 事業部 第一テクニカル・セールス 新卒で日本アイ・ビー・エムに入社し、現在の部署に配属され、3年目。 営業・技術支援として、パートナー様を中心にテクニカル・セールスを担当している。 2014年の目標は、「人前での説明に強くなる!」そのために、日々努力している。 ※2014年6月時点のプロフィールです。   1.学生時代の経験が今に生きている - 弊社までお越しいただき誠にありがとうございます。(インタビュアー重山) [吉原さんは、Vol5でお世話になった松田さんにご紹介いただきました。](Vol.5 「Lotusはソーシャルで新たに羽ばたく、ひとのつながりでビジネスが変わる」) 吉原:いえ、一度聖路加の眺めの良いオフィスに伺ってみたかったので。IBMのオフィスも少し見えますね。 ※弊社本社(聖路加タワー)からの眺め。スカイツリーが見えます。 - そう言っていただけて、良かったです。このインタビューも気づけば15回ものシリーズになりました。吉原さんは、現在3年目と伺っていますので、私より年下の方のインタビューは初めてなので、何だか新鮮です。簡単に経歴をお願いできますでしょうか? 吉原:あっ、はい。何だか面接みたいですねー - 申し訳ありません…では、肩の力を抜いていきましょう! 吉原:新卒で日本アイ・ビー・エムに入社して、現在3年目になります。旧Lotus、現在のソフトウェア事業本部 Collaboration Solutions 事業部に所属しています。現在は、パートナー様を中心に営業・技術支援を行うテクニカル・セールスに就いています。 - コラボレーションを掲げている部署なので、さぞさまざまなツールを使いこなしているんでしょうね。今日はそのようなお話を伺えればと思っています。まず入社して以来、ずっと同じ部署にいらっしゃるのですか? 吉原:はい、同じ部署にいます。戸惑うことも多々ありましたが今では、黄色の製品が大好きです。(※2) ※2. IBMでは、ブランドカラーを色で表されることがあります。Collaboration Solutions 事業部は、今はもう使っていませんが昔は黄色がブランドカラーでした。 - 配属は希望または希望通りだったのですか? 吉原:いえ、特に希望していなかったです。関係があるか分かりませんが、大学の卒業論文に「ソーシャルネットワーク(SNS)」を取り上げたからかもしれません。 - へぇー、旬なネタを取り上げた研究をされたんですね。ちなみに、たまたまググったら吉原さんの論文がヒットしました。簡単に、どんな論文だったんですか? 吉原:さすが、今は何でもWebで検索できる時代ですね(苦笑) 簡単に言うと、東日本大震災後には放射線値を多くの人が自前の放射線機を使ってTwitterにつぶやく動きが起こりました。しかし、それら1つ1つの値は国・公共団体の発表値に比べ精度が決して高くありません。そこで、SNSによる大勢の人が呟きの力がどこまで正確な値に近づけられるのか、位置情報と投稿内容を精査する研究をしていました。もしかしたら、その研究もあってか、今の部署につながっているかもしれません… - 学生時代からソーシャルに精通されていたんですね。 [ここでは割愛しますが、興味のある方は検索を。「吉原洋樹 論文」タイトル:個人ユーザーが発信するセンサー情報の収集統合プラットフォーム] ちなみに、学部は理系だったんですか? 吉原:んー、環境情報という学部で自由に科目を選択でき、さまざまな講義を受講していました。また、学生時代はパソコンが24時間できる施設に夜中に居残る、通称“残留”したり研究室にこもったりしていました。 - “残留”なんて初めて聞きました!学生時代は、私と真逆で勉強に専念していたんですね。では、同年代であまりギャップのない会話が聞けると思いますが、学生時代のソーシャルネットワーク(SNS)との関わりについて、聞かせてください。 吉原:はい。まず大学生の頃、「友達を作ろう!」と思い、mixiを始めました。その後、Twitter、Facebookが流行ってきて、サークルで知り合った海外の友人の影響でFacebookを始めました。当初は、Facebookに投稿や写真をアップすると“リア充(実際の現実生活(リアル生活)が充実している人間のこと)”に見えると思って、よく面白がって使っていました。(笑) そういう意味ですと学生時代から自然と生活に混ざりこんでいた感じですね。今の学生の方も大半が友達が使っているからという理由で使い始めてるのではないでしょうか。 入社当初は、上司や同僚からどのように見られるのかと思い、Facebookの利用は難しいかと思っていましたが、今はソーシャルにかかわる1人として、プライベート・仕事共に有効活用しています。 - 当初のきっかけが面白いですねー。 確かに、炎上して他者に迷惑をかけてしまう可能性があるので、SNSは便利な半面、上手く付き合っていく必要がありますね。 次に、本日の本題の「ソーシャルの企業活用」について、教えていただきたいのですが、会社内でのソーシャル活用にはどのようなケースがあるのですか?   2.企業内での情報共有の形が変わってきている 吉原:どこからお話しましょうかね。では、まずはこの資料を御覧ください。 企業での情報共有は、この3つに大別されます。まず「組織型」といって、トップダウンでの情報配信する方法です。多くの企業はこの型式をとっていますが、これで満足している経営層に情報共有の有用性を説いても、ヒットしません。しかし、逆に現状に物足りないと思っている方には、ささります。 次に「チーム指向型」です。同じ部署やプロジェクトメンバーで情報を共有する方法です。チーム内で綴じた情報を共有するため、セキュリティが担保されます。 最後に、「ネットワーク型」です。個人が持つ情報を広く公開し、人と人のつながりを通して情報を流通させる方法です。この特徴として、ソーシャルを活用して誰でも情報の発信源になることができます。 そして、組織型とは大きく違う点として、情報の伝達性がいいことです。組織型は、上位層が不在や共有することを失念していた場合は、情報の伝達が滞ってしまいますからね。 後ほどご紹介させていただきますが、IBM Connectionsを活用して、組織型だけではない情報の流通を実現することが可能になります。 - わかりやすいチャートですね。確かに、上司が不在の時や会議が開かれない時は、情報が古かったり、知らなかったりすることがあります。情報共有する型式はさまざまですが、属人的になってしまうと情報が落ちてこないことがありますよね。 吉原:その通りです。理想は、1フロアに集まって、都度Face to Faceのコミュニケーションができる職場だと思います。しかし、実際は以下チャート図にあるような阻害要因があり、上手く情報共有できないといったことが生じます。 - そうですね、全体共有の場を持ちたくても、スケジュールの兼ね合いでメンバーが不在、拠点間での物理的な要因、1つの組織では仕事が完結しない等、コミュニケーション不足を感じる時が多々あります。   3.ワークスタイル変革を支えるIBMコラボレーション・ソリューション(ICS) 吉原:そのような重山さんが感じている悩みは、多くの方も感じていると思います。それを解消する環境整備作りが、私の日々提案している内容です。 そこで、IBMのソリューションとしては、以下3つがあります。 ※各製品の詳細に関しては、MERITひろばの製品紹介ページにリンク MERITひろばの製品ページに解説はお願いするとして、どの製品をご紹介しましょうか? - さり気なくMERITひろばのご紹介、ありがとうございます。では、前回は御社の松田さん(※3)にIBM Notesについてご紹介いただいたので、IBM Connections/IBM Sametimeについて、簡単にご紹介いただけますでしょうか? ※3 実際どうでしょうVol.5 「Lotusはソーシャルで新たに羽ばたく、ひとのつながりでビジネスが変わる」 吉原:IBM Connectionsは、本日の資料をインタビュー前に共有させていただいた時に使用したソリューションです。(※4)画面レイアウトはFacebookのようでタイムラインで表示され、セクションを分けている他社と繋がれるのが利点です。また、各個人で資料を格納しており、そこから自由にダウンロードすることができます。以前、新人SEのブログで書きましたが、ダウンロード数も目に見えるので、資料作成の活力になったりします。 ※4 新人 SE が学ぶ IBM Connections: 第6回 Filesを使って変わる!~ソーシャルを使って嬉しい4つのこと~ - 他社と繋がることができたり、ファイルを検索して必要な情報を探したりすることができるなんて、便利な仕組みですね。それにIBM Connectionsを使用することで、社内の人とナレッジを共有して、業務効率化を図ることができそうですね。次に、IBM Sametimeはどのような活用をされていますか? 吉原:IBM Sametimeは、社内の人と簡単に繋がることができます。その機能は、チャット/在席確認/WEB会議といった内容です。電話だと通じない・出てくれない、でもメールより早く返信が欲しい、連絡の新しい手段として最近どんどん使われ始めているソリューションです。こういった手段が増えたおかげでよりスピード感・余計なストレスを感じない業務が可能になりました。 他にも、在席確認ができるため、簡単に質問できたり、昼食の誘い合いをしてリフレッシュしたり、残業の際は励まし合ったりという使い方もあったりしますね。(笑)そういった動きを”遊び”と感じる方もいらっしゃいますが、むしろこういった使い方があるからこそ柔軟にコミュニケーションを取りながら業務を遂行できるのだと思います。 勿論、ロケーションが離れた方ともWEB会議が可能です。なので拠点間のやり取りにも注目されています。つまり、リアルタイム・コミュニケーションを支援しているソリューションです - 1人では仕事は完結しないので、社内の他の方と繋がることができると業務が効率化しそうですね。少し気になったのですが、ソーシャルは導入しても目に見える効果が見えにくいと思うのですが、どのように提案されているんでしょうか。   4.ソーシャルを通じて、「働き方」を変える 吉原:それは難しい質問ですね。確かにこのソリューションを導入して、売上が何倍上がりました!という効果は出しにくいのは事実です。少し逸れるかもしれませんが、海外の事例で、「脱電子メール」というIBM社員がいます。この方は、ソーシャルを導入して、彼の受信箱は98%削減されたそうです。 - それは、スゴイですねー!お客様もソーシャルでやりとりされたのですかね? 吉原:さすがに、お客様の環境に合わせることもあり、100%メールをなくすことはできなかったようですが、ソーシャルを通じて働き方を変えた一例だと思います。このように、ソーシャルを導入することで、すぐに数値化できるような効果が出ることは少ないかもしれませんが、現状の働き方に満足していない、例えば組織でノウハウが共有されていない、社内連携がとれていない等あれば、検討される余地が十分にあると思います。 - 確かに仰々しいメールを書くより、社内ならそういうコミュニケーションの方が効率いいかもしれないですね。まさに「働き方」を変える、いい言葉ですね。しかし、ソーシャルは導入してもリテラシーの問題で全社員に馴染むまでに時間がかかったりしませんか? 吉原:はい、なかなかすぐに浸透しないことはありますが、導入時に工夫することでスピーディに変革することもできます。 その成功事例として、「ヤマトフィナンシャル様」の事例があります。ヤマトフィナンシャル様は、社内で各部から推進者を設置することで、短期間で「IBM Connections」を稼働させ、自社向けに「知恵ッター」というソリューションを導入しました。   この他にも、IBMの事例ではないのですが、例えば25名の部門で2名のみソーシャルを使っている場合は他には影響しなかったが、逆に23名がソーシャルで仕事をすると、使っていなかった2名も使用するようになったという事例があります。若干強引さはありますがソーシャルが十分に仕事のツールとして不可欠たりうる証拠でもあると思います。 このように、ソーシャルが実業務に直結するようになったり、効率的になったりすると浸透するのはいたって早いようです。 - 実際そうかもしれないですね。数10年前には、電子メールは存在していませんでしたが、今はほとんどの方が使えるようになっていますしね。普段、プライベートでばかりソーシャルに触れていましたが、ビジネス活用の良さがだんだん分かってきました! あと、伺っていて気になったのですが、ソーシャルを使う中では、「セキュリティ」は切っても切れないと思いますが、どう感じられますか? 吉原:良い質問ですね。それは、重要なフレーズになります。お客様ごとで、セキュリティ基準は違うので一概に言えないですが、そのセキュリティ基準を守った中で、どの辺りまで「働きやすさ」を求めるのかを提案させていただいております。 IDC調査で、2014年のIT支出増加率に占める割合は“SMAC”(Social Business、MobileFirst、Analytics/Big Data、Cloudの頭文字)が89%という調査が出ています。実際はこれらをお客様に合わせて、Social+Cloud、Social+Mobileのように単一でなく他のテーマとクロスさせることが求められてきています。 - お客様によって、さまざまな環境があるので、大変そうですね。ホントに、ソーシャルと言ってもひとつでは語りきれなくなってきてるんですね。興味深い話を聞くことができました。最後に、同年代として吉原さんの今年の目標は何ですか? 吉原:そんなに大それたものはありませんが、人前での説明に強くなる、要は相手に伝わるように話すことです。具体的には、IBMは時代をリードする製品・ソリューションを提供しているという自負があります。その一員として、専門用語を多用するのではなく、ユーザー目線でお客様が欲しくなるシステムをわかりやすく提案していくことです。重山さんはいかがですか? - ユーザー目線、同感です。私は、頼りにされる人になることです。具体的には、エヌアイシー・パートナーズ(株)は設立半年足らずで、まだまだ頼りない面もあるかもしれませんが、価値のあるシステムを提供していくための地盤作りをしていきたいと思っています。 吉原:お話を聞いているとすでに自社内で色々な人に頼りにされているようですし、私も頼りがいのある人間になりたいです。 - いえいえ、吉原さんこそ、製品への自信だけでなく付帯する知識も深く、はっきりと解説してくださったので、頼もしい印象を受けました。 今後もお互いに、これから頑張っていきましょう!よろしくお願いします。 吉原:はい!これからも宜しくお願い致します。 - 本日は、ありがとうございました。 吉原:ありがとうございました。   編集後記 新人SEが学ぶ・・のブログを拝見している限りでは、実は、もっと内気なタイプな人かと思っていましたが、あれはブログ上の演出だったのでしょうか。もしくはブログや日本IBM社内で鍛えられたのでしょうか。とても意欲的で力強い方でした。IBM Connections同様、他社の方ではありますが、今後もコラボレーションしながらお互い成長していきたいと思いました。

2014年04月02日

Vol.14 エンドポイント管理、あの製品の誕生秘話を聞きました

普段の製品・ソリューション紹介だけでは聞き出せない情報を「実際のところはどうなんだろう?」という素人視点で、専門家に聞いてみるシリーズです。 題して「実際どうでしょう」。。。どうぞ、ご覧ください。 今回は、C&SI(Tivoli)関連のスペシャリストである廣田様にインタビューをさせていただきました。当然IBM (Tivoli)Endpoint Managerにも詳しく、BYODを率先されており、インタビュー中にお使いになっていたPCはリンゴのマークだったのは新鮮でした。 <聞いてみて良かった(*´ω`*) メリひろ担当がエキスパートにインタビュー> プロフィール:日本アイ・ビー・エム株式会社 廣田 俊和 様 ソフトウェア事業 Cloud & Smarter Infrastructure事業部 シニア・セールス・スペシャリスト IBMでは公共(通産省)担当から製造関連の担当へ、その後、1996年にIBMがTivoli社を買収してすぐ97年から製品担当に従事。 ※ 2014年3月時点でのプロフィールです。 — 本日はよろしくお願いします。PCやスマートフォンなどのデバイスに関して、MDM、BYOD、セキュリティなどについてお聞かせください。 いきなりですが、IBMが買収したモバイル・セキュリティのFiberlink社の製品・サービスとIBM (旧Tivoli)Endpoint Managerの違いをざっくりと教えて頂けないでしょうか。(インタビューアー 重山) 廣田:はい。利用形態としては、FiberlinkはSaaS、IBM Endpoint Managerはオンプレミスであり、特徴としては、Fiberlinkはモバイル、IBM Endpoint ManagerはPCとお考えください。ただ、Fiberlinkのオンプレミス版も今後リリースされる見込みです。 — 素人から見ると違いがわかるような、わからないような・・・ 廣田:そうですね、それではIBM Endpoint Managerの誕生秘話をお話しましょう。歴史や背景がわかれば方向性も理解しやすいでしょう。 — IBM Endpoint Manager、通称IEM(アイイーエム)として「MERITひろば」でも紹介している製品ですね。ストーリーがわかると理解が深まります。お願いします。 エンドポイントマネージャー誕生秘話 廣田:IBM(社内)は全世界で約90万台のクライアントが稼働しています。 昔は端末管理、つまりPCのセキュリティ管理は各地域に任されていました。 — きゅ、90万台ですか、具体的に想像しがたい数ですが、セキュリティパッチの配布管理などは国や地域別に実施されていたということですね。 廣田:そのとおりです。日本IBMではISSIと呼ばれる社内システムがセキュリティパッチの配布管理をしていました。この各地域での個別管理をやめてグローバルで均一の管理をするためにBigFix(ビッグフィックス)というベンダーの製品を採用しようと検討をしました。 — そのクライアントの数とグローバル拠点に対応した製品だったということですね。 廣田:はい。導入検討を進めていると、これは良い製品だという話になり・・・ — もしかして、ですが・・・ 廣田:正解です。(笑)その製品を買収しようという運びになりました。IBM Endpoint ManagerはこのBigFixのクライアント管理製品をベースにしているのです。 さらにですね、FiberlinkはSaaSでPC端末管理機能があるのですが、この機能の元はBigFixをOEMとして使っていたので、IBM Endpoint Managerと共通な仕組みが多いのです。 — FiberlinkもBigFixの一部の機能を組み込んで、その後IBMがBigFix、続いてFiberlinkを買収したのですね。BigFixから見るとそれぞれ使われて、最期はIBMで合流したという感じですね。 廣田:そのとおりですね。 米政府機関のモバイル・セキュリティを管理 — 冒頭からFiberlinkの名前が登場しましたが、IBM FamilyになったFiberlinkについて特徴を教えて下さい。 廣田:Fiberlinkはモバイル・セキュリティ製品として多くの実績のある製品ですが、例えば最も厳しい運用基準のひとつであるアメリカ政府機関にも採用されています。 SaaSで提供される製品ですから、政府としても外部にデータを渡していることになり、通常より更に厳しい管理が求められます。3ヶ月に1回は米国の監査が入っていますが、いままで問題なく運用されています。 — 政府がSaaSを利用というのもすごいですが、モバイル・セキュリティはその方が良さそうですね。 廣田:SaaS形式で提供されるのですが、専用設備は不要なのです。同様のSaaSでよくあるのは、実はマシンを入れてくださいというケースもあるようです。しかし Fiberlinkは全く不要。すぐに利用できます。 — Fiberlinkのサイトを見ると「MaaS360」という名称になっていますが、MaaSというのはなんでしょうか。 廣田:Mobile as a Serviceの略です。 ちなみに、昨年末(2013年末)に日本IBMの社員のスマートフォンの管理はIBM Endpoint ManagerからFiberlinkに切り替えました。4日間で4万台の切り替えが完了しています。 — 4日は早い、スムーズな切り替えですね。それにしても4万台という話や冒頭のグローバルで90万台の管理を迅速に対応できるというのは製品の仕組みに特長があるのですよね? 端末CPU負担たったの2%でアップデート作業が進む 廣田:それでは IBM Endpoint Managerにフォーカスして、その強みについてご説明差し上げます。   廣田:まず、管理者画面ではパッチリストが表示され、全体から該当するマシンがピックアップされている状態なので、 「適応ボタン」を押すだけです。 全体としては中間サーバがなく、各クライアントがリレーしながらパッチ適応していきます。パッチファイルはメーカーからダウンロードしてキャッシュした状態で端末に配布します。 — パッチリストの適応中ってPCのCPU利用率があがって、業務に支障がでる場合がありますよね。 廣田:クライアントのCPU利用率の上限を設定することができるのですが、利用率は2%でも大丈夫です。 —  え?たったの2%ですか?それでパッチ適応配布の運用が可能なのでしょうか。 廣田:はい、大丈夫です。重山さんがお使いのThinkPadでもリレー機になれる程度の負荷です。CPUだけでなく、ネットワーク帯域の利用設定もできるので、既存のインフラへの影響は少なく運用できます。 「中間サーバ不要」で採用決定 廣田:あるお客様のお話です。インフラとして各代理店にはサーバ環境はなくネットワークのルーターだけであり、この環境において以前使っていたセキュリティ管理では、本社のサーバにアクセスが集中して大変だったそうです。かといって中間サーバを導入するのも困難でした。IBM Endpoint Managerは中間サーバが不要ですので、コスト的にも良かったそうです。 — すごいですね。その他にも強みを教えて下さい。 廣田:この中間サーバが不要という仕組みは旧来の「サーバ集中型」ではなく「分散型」だからこそできるのですが、この仕組みによりユーザが社内ネットワークにつないだ時に最適なリレーポイントを介し、さらに即時に差分情報だけを取得して管理できるのです。 — インターネットの仕組みのようですね。それが結局早くて、強いということですね。 廣田:はい、他にもOSのセキュリティパッチだけでなく、アプリケーションのパッチまでも管理対象としているのも特長です。近年はOSそのものよりも、Java等のミドルウェアからAdobeなどのソフトウェアも管理しなければセキュリティは担保できません。 テーマパークの安全にはあの製品が — C&SIブランドの製品としては、他にもサービス・マネジメントの「IBM SmarterCloud Control Desk(略称:ISCCD)」や企業資産管理の「Maximo」などもありますよね。本日は時間が足りないので、またの機会にお願いしたいのですが、ISCCDの紹介は「MERITひろば」をご参照いただくとして、Maximo について、事例やエピソードがありましたらお願いします。 廣田:たとえば、テーマパークで動いている乗り物の定期メンテナンスにはMaximoが使われていたりします。乗り物の安全は大事ですからね。 また、Maximoの話をすると「うちはプラントではないから関係ないよ」とおっしゃるお客様もいますが、動くものがあれば、必ず定期保守があると思います。Maximoなら機械のセンサーからの情報をもらって、バンドルされているCognos BIがレポートを出してくれます。機械の予防保全ができるのです。 — 先日のインタビュー(Vol.12 今更聞けない「進撃のHadoop」の基礎と豆知識)でもSPSSが品質保全管理に役だっているという話も出ました。 それにしても廣田さんの製品知識と守備範囲は広いですね。エンドポイント管理において個人スマートフォンの企業利用、つまりBYODについてお伺いするのを忘れていました。 最後にお願いします。先ほどからひとことお願いばかりですみません。(笑) 廣田:あと2時間くらいお話しましょうか?(笑) モバイルデバイス管理(MDM)は近年対応している企業様も増えておりますが、例えばMDMの基本機能として、デバイスを紛失した時に遠隔操作でデータを消去する「リモートワイプ」がありますが、データを全て消してしまうソリューションもあるのです。 — つまり、会社のデータを消すには個人のスマホのデータも全て消去されるということですね。それは困りますね。まぁ、紛失する方が悪いとはわかっていますが。 廣田:ですが、IBM Endpoint Manager (for Mobile Devices)は大丈夫です。特定のデータだけ、特定のアプリだけを消去するなどの設定が可能なのです。他にも沢山の機能がありますが、組み合わせてお客様にあった仕組みをご利用いただけます。 — 本日は沢山の話をありがとうございました。今度、そのテーマパークに行った時は、Maximoが安全に一役買っているんだなぁと感謝しようと思います。 廣田:そういえば、導入の際にスタッフがスーツ姿で現地に行って、すごく目立ったと言っていました。(笑)重山さんはプライベートでは仕事から離れて、楽しんで下さい。 — ありがとうございます。そのようにさせていただきます。

2014年02月25日

Vol.13 IT業界で25年継承される設計思想とは? その2

    ・大学生もわかる「ビジネス用マシン」の基本とは ・仮想化環境においても変わらない IBM i の価値 他 — 安井さんそれでは、引き続きお願いします。ここまでは設計思想について用意いただいたスライド2ページだけで1時間以上お時間を頂戴してしまいましたが、凄く楽しかったです。 IBM i は「長く使える」という声を良く聞く一方で、こう言ったらなんですが、最近のサーバーとしては「古いシステム・・・」「価格もそれなり・・・」というイメージもあります。この「でもお高いのでしょう?」という質問はいつもインタビューにあえて入れているのですが、これらの点について伺ってもよろしいでしょうか。(インタビューアー:重山)  古いのではなく、アプリケーション資産継承がうまくできているモデル 安井:はい、我々も製品に対する冷静な観察だけでなく、ネガティブなものも含めてどのようなイメージを持たれているか、という点にも注意を払っています。 IBM iに対する、逆風とでも言うべきイメージをあえていうなら次の2点だと思います。 1)古いシステムである 2)初期コストが高い 古くから存在するシステムである事は間違いありませんが、古いままのシステムではない事を、納得いただくよう努力しています。すなわち前回説明させていただいた4つの点は不変のものとして、それを土台に新しい機能を常に取り入れるようにしています。これを可能にしているのは、テクノロジーにとらわれない、仮想的なマシンであるところのTIMIです。柔軟な機能強化を可能にしています。 — 古いのではなく、25年前の設計思想がしっかりしていて現在も受け継がれているということですね。その設計のおかげで最新プラットフォームに対応しながらも、アプリケーション資産継承ができると。   安井:はいそうです。2点目の初期コストについては、他のサーバーと比較するのは難しいし、ともすると高いように見えてしまうのも事実です。例えばIBM iにはデータベースやシステム管理機能を含むなど、OS機能に大きな違いがあります。同等機能を前提とした比較になっているのか、という点にも注意を払わねばなりません。 しかし、いまのコンピュータシステムで一番高いのは「人件費」だというデータがあります。 — 「人件費」についてはトータルコストでもよく言われることなのですが、ビジネスの現場では、わかりづらい費用項目でもあると思っています。   DB管理者が居なくても運用できるシステムとして評価されている 安井:はい。IBM iにおける人件費の特徴について、具体的にご説明します。 このスライドを見てください。   出典:「IBM i for Midsize Businesses – Minimizing Costs and Risks for Midsize Business : International Technology Group October 2012 調査会社のデータですが、IBM iを含む3つのシステムにかかる要員数です。さらに人件費を年収ベースで表記しています。   —  えーっと、IBM iはどの業界でも要員数は1.0を下回っているのですね。あれ?IBM i の列には「DB管理者」 の年収が空欄になっていますが、これは・・・ 安井:そうです、DB管理者はいなくて大丈夫だったということを表しています。 —  これはすごいですね。工数が少ないとかは他の製品説明資料でも拝見しますが、そもそも他のシステム運用では必要とされる要員が不要というのは驚きです。理屈ではなくて実際に運用されているユーザからのデータを元にしているでしょうから、本当にすごいです。 運用コストにDB管理者を入れないで良いということは、他の業務に専念できますね。 こういった資料は導入検討のお客様も試算しやすいですね。この人件費分を利用年数で乗算した数字が比較している他製品との価格差に収まれば、確実に“買い”なわけですよね。 安井:実際のシステム検討では、そこまでシンプルではないとは思いますが、「人件費」が安くすむという点はIBM iの強みなのは間違いありません。   —  アプリケーション資産の継承、DB管理の容易さ、この2点だけでも運用コストが低減されるのは容易に想像できました。ありがとうございます。 パート1では、25年来続く設計思想、そしてパート2のここまでは導入検討におけるIBM iの強みを知りました。次に、今後のロードマップについて教えて頂けないでしょうか。   IBM i 宣言に見るPowerの将来とは? 安井:はい。それでは「IBM i と Powerの将来」についてお話します。 AS/400誕生から20周年を迎えたタイミングでもあるわけですが、2008年に「IBM i宣言」というものが公表されました。 これは、将来においてもこのシステムに対して継続的な投資をしていく事を、メーカーとしてお客様やビジネス・パートナー様に対してお約束するものです。 具体的な例として、プロセッサーテクノロジーにおいては、次世代サーバCPUの「POWER8」をこの夏に発表したところです。 —  将来にわたる投資宣言ということは、ユーザも安心して採用できますね。 安井:はい。次に直近として「2015 年に向けた IBM i 投資動向」についてご紹介します。 ポイントは以下4点です。 1. ソリューションの品揃え拡大 2. より簡素なシステム管理 3. 万一の際にも回復力のあるシステム 4. クラウド・コンピューティング   JAVAやPHP,さらにはRubyも稼動する まず、1つ目は業界標準テクノロジーの実装、つまりオープン化によって、より多くの種類のアプリケーションプログラムを稼働させていきましょうという点です。システムである以上は、アプリケーションの品揃えは重要です。ご存知のとおり、IBM iはRPGやCOBOLだけのシステムではなく、JAVAやPHP,さらにはRubyも稼動するようになります。すなわちPHPで記述されたオープンソース・アプリケーションも稼動するようになるわけです。 2つ目の「より簡素なシステム管理」は読んで字のとおりです。昨今は単一のハードウェア上で同時に様々な、そして複数のOSを稼動させる事が多くなってきています。IBM iは管理の容易なシステムと言われていますが、IBM iを含めて複雑化するシステム全体を、容易に管理できるようにします。ユーザーインターフェースをブラウザーに統一する、というのもその一つです。 3つ目の「万一の際にも回復力のあるシステム」ですが、複数サーバーを統合するという事は、裏を返すとリスクの集中とも言えます。一台一台のサーバーがダウンした時の影響は、より大きくなっていく傾向があります。システムそのものに冗長性を持たせる事も重要ですし、外部ストレージ製品が持つデータ・コピー機能を活かしたアベイラビリティ対策にも力を入れています。また、ダウンしてしまう際には必ずログを吐き出してくれれば、対策を講ずる事で次回の同様なトラフルを防ぐ事ができます。 —  ログを出さないで落ちるシステムの調査なんて原因特定できませんよね、基本的なことなのかも知れませんが重要だと思います。 安井:はい、基本的な技術をとことん実装できるのもIBMが統一して開発しているIBM iの強さの根源です。 最後に、4つ目は、クラウド・コンピューティングをサポートするための機能強化です。例えば、サービス・プロバイダが複数のエンド・ユーザー会社(第三者)にサービスを提供する際に、いくつかの必要となる機能があります。アプリケーションを停止させずに、サーバーをまたいでその環境を移動できる「Live Partition Mobility」の実装もその一つです。 —  ありがとうございます。実は、インタビュー前にこのスライドも拝見したのですが、体系的には理解できていませんでした。これで“ハラオチ“しました。 パート1の際に安井さんが仰っていた、「どうして、その技術が実装されたのか?いろんな機能が増えても、その視点で理解できれば、お客様にも説明、納得できる」という言葉のとおりです。 私は、昔の実際のAS/400を知らず、実際にIBM iを運用したことがないとう点で私も学生と同じレベルですから、今日はすごく内容の濃い講義を受けることができた気分です。 安井:大学院で社会人向けの講義もしておりますので、良かったら入学してください。 普段はあまり配っていないのですが、これが大学の名刺です。(笑顔で受け渡す) —  あ、ありがとうございます。そ、そうですね。勉強にも興味ありますが、今日のインタビューを広く、沢山の方に見ていただけるようにMERITひろばの運営に注力します。(笑)長時間本当にありがとうございました。今後もよろしくお願いします。 安井:こちらこそ、ありがとうございました。  

2013年12月20日

Vol.12 今更聞けない「進撃のHadoop」の基礎と豆知識

普段の製品・ソリューション紹介だけでは聞き出せない情報を「実際のところはどうなんだろう?」という素人視点で、専門家に聞いてみるシリーズです。 題して「実際どうでしょう」。。。どうぞ、ご覧ください。 今回は、お二人の方に同時にインタビューさせていただきました。名コンビで実況中継と解説という雰囲気になり、とても沢山の話題を提供して頂きました。 <聞いてみて良かった(*´ω`*) メリひろ担当がエキスパートにインタビュー> プロフィール:日本アイ・ビー・エム株式会社 堀越 啓二 様 ・入社以来、研究部門に所属し製品担当になったのは去年の秋 ・趣味は5歳から続けているテニス、毎週テニスの試合を楽しんでいる 都築 英夫 様 ・身長183cm 、体重秘密。以前より片目の視力が極端に弱かったが、最近、両目とも人工レンズに交換し好調。3Dテレビが見られるようになって嬉しい。 ・料理は趣味というより日常。冷蔵庫にある余り物の即興料理が得意。 ※ 2013年12月時点でのプロフィールです。 —今日はよろしくお願いします。お二人は同期なのですね。(インタビューアー) 堀 越:そうです。ただ、一緒に仕事をするようになったのは昨年の秋からです。私が研究所からブランド/製品の担当になったのがきっかけです。 都 築:開発研究所ですが、今は研究員もお客様先に行き、接点を持つようにシフトしています。 堀 越:基礎研究の人達は研究に集中していますよね。 都 築:そうですね、とりわけ、特許をとるために研究している人達は別ですよね。日本IBMは実は、特許だけでビジネスになっている企業なのです。 堀 越:あれ、詳しいですね。 都 築:以前、特許ソリューションを担当しておりましてね、えーっと、そのソリューションというのは・・・ 堀 越:今日はHadoopがテーマですよね。 —そ、そうなのです、そのソリューションも興味あるのですが、まずは現在も注目されているHadoopについてお聞かせ願いますでしょうか。 都 築:了解しました。基本的な事項は堀越さんにお任せするとして、私は脱線担当ということで(笑) 堀 越:では適時私が振りますのでよろしくお願いします。(笑)   今さら聞けない?Hadoopの誕生の背景   堀 越:Hadoopは大量のデータを複数に分散して処理できるオープンソースのソフトウェアです。 採用企業は年々増えており、ビッグデータ活用には必要不可欠な存在になっています。 データ量の増加にともなうサーバーの増加をする場合は、プロセス同士の通信の監視や障害時の対応など、共有データ部分の管理が煩雑になります。いわゆるスケールアウトの課題です。 エンジニアにとって、分散処理は効果があるけれど、対応が面倒な存在だったのですが、Googleが先頭にたって開発したのがHadoopというフレームワークです。 そして、ペタバイトベンダーのYahoo!やFacebookなどがそのテクノロジーに注目して採用し、共同で開発して生まれたのが、ApacheプロジェクトのHadoopという訳です。 —元々はGoogleの開発だったのですか、知らなかったです。 都 築:そうです。背景を知ると面白いですよ。そしてHadoopといえば、MapReduce(マップリデュース)とHDFS(エイチ・ディ・エフ・エス)ですねMapとReduceという用語はLISPなどの関数プログラミングから来ていてですね、関数型言語なのですが・・・ 堀 越:都築さん、その話になると一般の読者はついていけないかも・・ — 堀越さん、ツッコミありがとうございます。実はすでにメモを取る手がフリーズしておりました。 都 築:あ、失礼しました。暴走したら止めて下さい。それでは何故Googleが開発したかという話にしますね。豆知識です。(笑) Googleの命は検索エンジンですよね。大量のデータ、当時で数億ページだったWebをクローリングして、ひとつひとつの単語にインデックスを付けるわけです。 ユーザが検索した単語にURLを繋げるというマッピングの作業なのですが、爆発的に増え続けているインターネットのページに対してGoogleは新しいページを数日でインデックスする事ができるのです。これらの基盤をHadoopは支えています。 えー、それでは本筋に戻しましょう。堀越さん、お願いします。(笑) 弱点を克服していくベンダー 堀 越:はい。解説ありがとうございました。それではHadoopの基本的なテクノロジーについて続けます。 Hadoop前は複数のマシンをプロセス監視(通信、障害検知)するためには逐一考慮して、プログラムする必要があったため、分散処理は大変だったのです。 Hadoop後は、プログラマーはそれらを気にすることなく分散処理を実装できるのですごく助かります。 都 築:実は、IBMはもっと昔に並列処理としてSP2というマシンがありましたし、DB2にもパラレルエディションというのがあって、分散並列処理で高速化したという点ではHadoopと同じでした。 —世の中に出すのが早すぎたのですね。   都 築:そうですね、ネット普及前だったので、それほど大きなデータではなかったという事でしょうか。 堀 越:確かにIBM独自の路線もあったのですが、オープン性をみて、Hadoopを採用したのです。 —先行開発だとすると通常は自社開発にこだわってしまいそうですが、切り捨てる決断も凄いですね。   堀 越:次に、Hadoopの構成を説明しましょう。 冒頭に出たMapReduceは処理の分散管理で、HDFSはストレージの管理、複数のマシンをひとつのマシンとして管理できる基本機能です。 とにかく、エンジニアは継ぎ足す度に、設定をかえていたので大変でした。この2つの機能で並列処理の利便性が格段に向上したのです。 都 築:この分散ファイルシステムの弱点はシングルポイントフェイラー(システムの冗長化が行なわれていない単一障害ポイント)ですが、全体を管理している人(Mainノード)をIBMは2重化して問題を解決しています。 —プロマネを二人配置するみたいにですね?   都 築:そうです、その人が急にいなくなっても大丈夫なように、つまり企業で使えるようにというのを意識しているのです。 堀 越:HDFSの良い点はデータ処理時間の短縮化ですね。そして、データ管理が強みもポイントです。 —Hadoop=大量データ=大企業向けというイメージですが。それだけじゃないということでしょうか。   堀 越:そうです、処理時間の短縮という点は色々な企業に適応できます。 夜間バッチでデータの加工、集計処理をしていたのが、昼間、その日に処理が完了したデータを見られるようになるというのは、企業収益の改善と直結します。 データの管理についてですが、RDBでの管理は、データが増えて、DBの表を大きくしていくとスケールアウトの課題にあたるのですが、HadoopはHBase(エイチベース)という分散データベースの仕組みを使っているので、表の追加・修正をする必要がないのです。 — それはいい事だらけではないですか? 堀 越:しかし、万能ではないのです。データのKeyと値で表現する、シングルデータ管理は得意ですが、リレーショナルな複雑なデータ管理は得意ではないのです。ですよね、都築さん。 欲しいデータそこにあるのに、取り出せない「暗黒大陸」   都 築:そうですね。やはり、トランザクションではなく、バッチ処理に向いていると言えます。 例えば、支店の売上げデータを締めて、集約して各支店の店長にレポートを出すという業務があったとします。データの量が増えていくけど、朝が来る時間はかわらない。 長くなるバッチ処理に担当者はドキドキしているのです。1日で終わらないケースもありますので、そうなると分析をしている担当は、データ待ちの時間がネックになります。 こういったシーンはよくあります。 ある銀行の分析担当の人は、欲しいデータはそこにあるのに、取り出せないので、「暗黒大陸」と呼んでいました。システム運用の方は対応したくてもバッチ処理や他の業務優先で対応できなかったのです。 —暗黒大陸ですか。(笑)すぐにデータを見たいフロントと様々なタスクをもっているバックエンドの対立というかジレンマは確かにありがちな課題ですね。 都 築:大量のデータを高速で処理できるというのはすごくメリットがあるのは、みんな知っていましたが、昔はサマリーデータ、つまり、1ヶ月分のデータをまとめて・・という業務が多かったのです。 堀 越:現在のように1週間でビジネスが変わってしまう時代では、それでは間に合わないですよね。 都 築:実は日本では昔からビジネスにおけるデータ把握はタイムリーに出来ていたので「あ、奥さん今日はそろそろおでんじゃないですか?いい大根あるよ」という商売ができていました。 しかし、マーケットの拡大や全国展開の大企業になると、データ集約が間に合わないので、粒度が荒くなっていきました。セグメント化してバルク(まとめて)でやらざるを得なかったのです。 ちょうど【顧客から「個」客へ】というのがIBMのスマーターマーケティングのスローガンになっていますね。 —そのテーマでもお話を伺いたいのですが、時間に限りがあるので、ぐっと我慢して、次のトピックスへお願いします。     技術者からみたら怖くて採用できなかった?   堀 越:では次にHadoopのオープンソースに対してベンダーが取り組んだことを話しますね。 HDFSでストレージ管理というのは新しく生まれた技術だったこともあり、本来ストレージとしてあるべき機能、例えばアーカイブ、スナップショットなどをサポートされていませんでした。 HDFS内のネームノードの高可用性がネックだったので、企業のインフラ管理者から見たら、対障害性という点で問題がありました。 都 築:もう、悪夢だよね。障害対応を考えると夜も眠れません。 堀 越:そう、技術者からみたら怖くて採用できないのです。(笑) その対策を各ベンダーが出していきました。 HDFSの単一障害点の課題解決をはかったストレージベンダーなどです。 都 築:HadoopはSNSを駆使している企業にユーザが多いのですが、そのユーザはコンプライアンスをあまり気にされない場合があります。あ、言い方悪いですね。新しいサービスを立ち上げるスピード優先という意味です。 そもそもHadoopにはロックダウンする仕組みがなかった。 サービスの継続提供と共にセキュリティの強化というコンプラの順守を各ベンダーも考慮したのです。 堀 越:あとは、Hadoopは物理サーバー上のクラスターで処理しているのですが、Hadoop用の物理インフラを別途管理する必要があります。 サーバーの仮想化、統合化が進んでいるのに独立して物理サーバーを用意するのは面倒です。Hadoop用、BI用、ローカルストレージなど個別にサーバーを立てていくのは非効率なのです。 そこで、現在はApacheのクラスターをサーバー仮想上の上で動かすプロジェクトを進めています。 各ベンダーはインフラの観点でビッグデータの活用にどのようなアプローチをするのかがKeyになっていますからね。 都 築:Googleの仕組みって実は一般企業には足りないところが色々あるのです。あ、語弊がありますかね。 ただ、これは悪いことではなくて、Googleは自らのサービスで必要なところに特化しただけなのです。 この潔さが良いところなのです。ところがジェネラルパーパスとして一般企業でも安心して使えるようにするとGoogleが捨てたところをフォローするなどの配慮が必要です。 しかも、スピードを犠牲にしないで改善してきたMapReduce機能について、IBMはものすごく改良して、早さを生かしたファイルシステムにしています。 オープンソースは新しい技術をどんどん出すというところにフォーカスされていてそれが推進力になっているのですが、IBMは企業のお客様が必要なところも大事にしています。 ビジネスで言えば、管理の大変さ、コンポーネントが増えれば、管理のポイントが増えるので運用コストが増えていく一方だったのです。あるお客様はサーバーを増やすという運用の困難さが採用の懸念点になるわけです。 堀 越:そこでアプライアンスというのがひとつの答えなのですね。 都 築:そうです、そうです。冷蔵庫を提供する感じです。配置して、電源を入れて、温度調整のつまみをガチャガチャっと回して、ハイ使えますという感じです。 堀 越:今の冷蔵庫はつまみではないでしょうけどね。(笑) 都 築:そうですね。(笑) その他にも開発支援ツールを出したりと、Hadoop関連では、周辺製品がどんどん出てきて、名前も”Pig”だったりして、動物園みたいになっています。 堀 越:しかも放し飼いね。 —Hadoopのロゴは黄色い象ですよね。それにしても放し飼いですか(笑)   都 築:そうです、もうね、象の周りに沢山の動物が放し飼いで・・・そこでZooKeeperを出して、全体を管理できるようにしています。 —その飼育員ですが、それは洒落ではなくて、プログラム名ですか? 都 築:はい。ZookeeperはApache Hadoopのサブプロジェクトです。設定情報の集中管理のサービスを提供するソフトウェアですね。 そのようなツールが必要なくらい、実は、普通にHadoopを入れようとすると大変なのです。 相性とかバージョンが合わないといったのはオープンソースでは良くある課題です。先端を追いかける人はそれでもいいのかもしれないが、一般企業ではそれでは不安です。 今は新しいシステムを導入するときはスタンドアローンということはなくて、必ず他のシステム経由のデータ連携がありますからデータアダプタを使ったりと様々な設定が必要なのです。 — それら煩雑な設定をまとめてくれるKeeperがいるということですね。 堀 越:そして、その分、値段も上がっていくこともある・・・(笑) 表に出てこない採用コストを削減するために 都 築:そこですね、沢山の周辺ツールやオプションがあるのはユーザの利便性向上にとって好ましいですし、必要なオプションを選択していけばいいという考えがあります。 しかし、パーツにわけたりするとお客様の 、予算、稟議プロセスも大変複雑になるのです。 この事務プロセスはコストなのです。 IBMが取り扱う製品だと何万パーツになる訳ですが、これでは事務プロセスが増えるだけです。 パーツを分けるのは個人ではメリットかもしれないが、企業だとコストになることが多いです。 —その観点はあまり聞いたことないです。確かに日本企業の予算獲得や稟議プロセスを考えるとお客様の担当者は次フェーズも含めて、まとめて予算申請しておきたいという要求はよくありますよね。   都 築:そうです。初期コストというのは分かりやすいですし、目立ちますが、運用コスト、障害時の対応コストに加えて、導入する際の検討、採用コストも考慮すべきです。 —決してベンダー都合ではなく、お客様が選択、採用しやすい仕組みを設けるのもベンダーの役割ですね。 都 築:はい、あとベンダーの役割としては、こういった新しい技術を知ってもらうための活動に力を入れるというのも大事です。 近年は一方的なメッセージや囲い込みではなく、オープンコミュニティにお客様も参加してもらい、認知してもらっています。 オープンコミュニティはお客様とベンダーの窓口として大事です。あ、またHadoopから離れちゃいましたね。 いつ採用すればいいのか?   堀 越:それではスタジオに戻します。(笑) なぜ、Hadoopなのか、いつ使うのか?という話をします。 都 築:「今でしょ!」 でいいですか? 年間大賞としても旬ですから、今のうちに使っておきましょう。 (一同 笑い) 堀 越:そうですね、今ですね。 何故ならば、過去において、企業は社内データの活用でよかったのですが、グローバルな競争に勝ち、ビジネスチャンス拡大にはマシンデータやSNSなどの外部データを積極的に取り込んでいくという綿密な情報戦略が必要です。その中ではHadoopは必然な存在です。 オープンソース+付加価値の製品が出てきているので、企業戦略として採用しやすくなっています。 こういったツールを活用してビッグデータへのベストとプラクティスを作るのが(MERITひろば運営会社の)NI+Cさんやシステムインテグレータ様 の力の見せ所なのです! —あ、ありがとうございます。「最後のひとこと」のようですね。   都 築:締め括りに入らなければならないところをまた脱線します。(笑) データ活用という意味では、データ・ソースというキーワードが大事です。 10月7日に開催されたIBM Think Forum Japan 2013で、ロメッティ(IBMのジニー・ロメッティCEO)がパナソニックの津賀一宏社長とパネルディスカッションをしていた時の話です。 パナソニックのカスタマーサポートでは一日に1万件の電話がくるらしいです。 これを分析すれば新しい製品のヒントがあるだろうと思って分析したら新しいアイデアは出てこなかったそうです。 そこで気がついたのは新製品開発には内部だけではなく、外部の人の声、つまり現在お客様では無い人の声を聞くのも大事だということです。 そこでSNSデータの有効活用に発展していくのです。 —なるほど。実際にやってみないと分からないことも多いですよね。脱線ついでですが、ビッグデータという意味ではマシンデータ、とりわけセンサーデータの活用について興味があります。 以前、データサイエンティストの中林さんにインタビューした時に、センサーデータの活用はこれから発展してく領域だと伺いました。   堀 越:国内大手重機メーカーは重機が地球の裏側で故障しても、アラートがあがって迅速にメンテパーツを送ることができるなどは有名な事例ですね。違うパーツを差すとエラーも出るすぐれものです。 都 築:確かに、アフターパーツの補完、管理はメーカーにとってコストなのです。 堀 越:さらに、故障前にアラートあげるという仕組みも進んでいます。 —SPSSも品質保全管理のソリューションとして出ていますね。あ、更に脱線しますね。   都 築:はい、MDA(Machine Data Analytics)は興味深いソリューションですよ。統計の世界ではオーバーフィッティングの問題があります。 データマイニングの世界では点をつなぐ重回帰の考えですが・・・(以下、ページの都合上省略。ご了承下さい。) よし、SPSSの話は次の機会にしましょう(笑) とにかく、現在、製造業においてアフターマーケットがアツいです。ここは日本企業が強いです。 —それでは、そろそろまとめをお願いします。   堀 越:Hadoopが必須技術なのは先ほど申し上げたとおりですが、それ以外にも技術の進歩は速いです。 使う側のユーザも進歩しなければ使いこなせないのですが、使う側が強い意思、意図をもっていなければならないと思います。我々はそれを支援するのです。 都 築:例えば我々(IBM)が、万年筆を製造する立場だとするとインク補填もいらないくらい、ずっとスラスラ書ける最高の万年筆を作ります。 周辺として専用の紙もあってインクもにじみません・・・という製品を売っていますが、「では直木賞はどうやってとるのですか?」とお客様に聞かれても我々は答えを持っていません。 そこはお客様の経営判断なのです。 —お二人ともありがとうございます。堀越さんにはきっちりと基礎を教えていただき、そこから都築さんが動物園から万年筆まで色々な例えをしてくださり、とてもためになって楽しいインタビューでした。

2013年12月11日

Vol.11 これぞモバイルアプリ開発の王道

普段の製品・ソリューション紹介だけでは聞き出せない情報を「実際のところはどうなんだろう?」という素人視点で、専門家に聞いてみるシリーズです。 題して「実際どうでしょう」。。。どうぞ、ご覧ください。 <聞いてみて良かった(*´ω`*) メリひろ担当がエキスパートにインタビュー> 今回は、デモ動画撮影と同時に近年発展著しいモバイルとビジネスについてインタビューをさせていただきました。(インタビュアー:重山) プロフィール:日本アイ・ビー・エム株式会社:尾山 滋則さん プロフィール:日本アイ・ビー・エム株式会社 ソフトウェア事業 WebSphere事業部 パートナー営業部 尾山 滋則: 様 外資系データベースのメーカーに勤務。当時まだ新しかった、モバイルDB事業でプリセールスを担当 2013年5月より現職。 趣味はランニング。 ※2013年10月時点のプロフィールです。 モバイルファーストを支えるフレームワーク — 先程はデモ動画の撮影ありがとうございました。途中から弊社のスタッフも声だけ参加させて頂きました。(重山)   尾山:  一人でデモするよりもやりやすかったです。本当は実際にお客様に利用していただいている他のモバイルアプリをデモ動画として公開したかったのですが・・・ — そうですね、デモして頂いた、某企業で実際に使われている営業支援のアプリは動きも素敵でした。タブレット画面によりリアルタイムデータをお客様と一緒に見ながらなので、担当営業もそのお客様に対してもともて便利だと思いました。 このインタビューを見たお客様で個別に実例のデモを見たい場合は、尾山さんを直接呼んでいただくしかないですね。 尾山: はい。どこへでも伺いますよ。(笑) — さて、今日のテーマですが、私は「MERITひろば」を運営していてWebの戦略では「モバイルファースト」という言葉が認知されてきていると感じていますが、ビジネスモバイルの世界ではいかがでしょうか。 尾山: はい。日本IBMでも、モバイルファーストを提唱したサイトを公開していますし、モバイルが消費者の行動を変えているのは事実です。   ユーザの90%は常時デバイスを手元に置いている — モバイル(サイト)にも対応ではなく、モバイルから先にビジネス、システムを考えようということですよね。実際、スマートフォン、タブレットが普及しているのは、いち消費者としても実感していますが、ビジネスにおける市場性という意味ではどうでしょう。 尾山: はい、モバイルユーザの90%は常時そのデバイスを手元に置いており、トランザクションは年次50%増、ECも成長を続けています。   — なるほど、それをビジネスに活用する法人にとって完全に無視できない存在ですね。モバイルのビジネス活用という点で企業側が意識すべきことはなんでしょうか。 尾山: このスライドを見てください。74%のCIOがIT、の重要施策として「モバイル」を回答しています。   まずは、B2Cつまり、自社のお客様向けのアプローチか、B2E、自社の従業員向けの仕組みなのかでモバイル活用の効果は異なります。   私物モバイルの業務利用:会社が対応する VS 会社が支給する — 図の右下に表記されているBYOD(Bring Your Own Device)という言葉も最近良く目にします。私は個人でiPhoneを使っていますが、まだ社内システム連携という点では実現していません。ちなみに日本IBMではBYODの取り組みはいかがですか? 尾山: IBMは非常に先進的な取り組みをしている企業だと思います。先程デモで利用したiPhone、iPadは実は私物です。IBM Endpoint Managerを使って管理しているのでセキュリティは万全です。 — そうすると日本国内でもBYODは浸透していくと? 尾山: 海外では「自分のモバイルで仕事をしたい。会社がBYODに対応するべきだ!」という視点がありますが、日本企業の場合は、セキュリティの観点から、新たにモバイルを会社が支給するというパターンが多いと思います。 — 確かに友人は自分のiPhoneと会社支給のiPhoneで合計2台持っていました。それはかえって面倒ですね。 尾山: はい。しっかりと管理すれば個人のモバイルも十分仕事で使えます。   モバイル活用ビジネス 3つのアプローチ — 次ですが、例えば上司や経営サイドが「我が社もモバイルを活用したビジネスを強化する!」「モバイル活用で新規ビジネスだ!」という戦略を出した時に考えるべき事などを教えて下さい。 尾山: :そうですね、モバイルビジネスを考える上でのアプローチは3つあります。 コスト削減 売上拡大 ニューサービス(ビジネス) 最初の「コスト削減」は、ペーパーレス、BYODの活用による経費削減が考えられます。また、すでにモバイル開発を実施した企業がそのトレンドの早さや複数のプラットフォームでの開発に予想以上の開発コストがかかってしまった場合の開発プラットフォームの導入もコスト削減のひとつの考え方です。 2つめの「売上拡大」については、B2Cにおいては顧客との接点の増加が見込まれます。B2Eにおいては生産性の向上があります。例えば、お客様との商談の際にその場でお見積書等を発行できれば、よりビジネスが広がります。 3つめは、現在のビジネスを軸としてモバイル活用を展開した場合の「新規ビジネス、サービス」についての視点です。 — それぞれ、かなり幅の広い話になりそうですね。可能でしたら、3のニューサービス、つまりモバイルを活用した新規事業や活用事例を中心にお聞かせ頂けないでしょうか。 尾山: 承知しました。 IBMの製品事例ではないのですが、最近話題になった清涼飲料メーカーのキャンペーンがあります。購入したペットボトルのシリアルコードを入力するとWebから音楽がダウンロードできるキャンペーンです。モバイルを売上増/マーケティングに活用したわかりやすいケースです。 — あ、知っています。炭酸資料ですね。ボトルを買うと昔から現在のCMソングをダウンロードできるキャンペーンですよね。   新規事業のアイデアは必ずしも斬新である必要はない 尾山: はい。O2O(オーツーオー)の事例とも言えます。通常O2Oの場合はOfflineからOnlineつまりネットから店舗に来てもらうことを指していますが、直接店舗を持っている訳ではない飲料メーカーが、最終消費者に対して、楽曲をダウンロードしてもらい、モバイルですぐに聞けて、SNSでシェアすることで認知度があがり、つながりのある人が更に購買するという良い循環が生まれました。 — さすがだとは思いますが、仕組みを聞くと凄いというよりも、すでに普及している技術の組み合わせですよね。それをO2Oとして上手く広げたという印象です。 尾山: そうです。キャンペーンや新規事業のアイデアといっても必ずしも斬新である必要はなく、自社のコンテンツ、先の飲料メーカーの場合は歴史とCMソングをモバイルとネットを使って活用したということですね。 — そうか、コンテンツの活用ですね。いやぁ、事例は聞いていて楽しいです。他もお聞かせください。 尾山: そうですね、これも製品事例ではないですが、国内の企業の話です。 営業支援のアプリですが、ある担当営業は図面などで店舗のレイアウトを操作できるアプリが入っているタブレットをお客様に預けておいて、じっくり検討してもらい、後日打合せする方法をとったと聞きました。この方法が正しいかどうかは別にして、お客様とデータをすぐに共有し、直感的に操作できるこのタブレットの強みは旧来にはないツールです。 — 単なる紙の電子化ではないということですね。   モバイルアプリ先進業界と開発フレームワーク 尾山: そのとおりです。 モバイルは「カメラでQRコードを読み取り、ネットに繋げる」「GPSによる位置情報をチェックイン、つまりその場に居たという証拠とする」などのカメラ、センサー技術との組み合わせが新たなサービスを生み出しているのです。 例えば、映画館でポップコーンを購入した際のレシートの裏に印刷されたQRコードを使ってネットから特別な画像がダウンロードできるといった仕組みはそれほどコストがかかる技術ではないですが、お客様はその場にいるからこそ享受できるという特別なサービスに喜んでいただけるのです。 — ニューサービス、新規事業をお考えになる担当者にはモバイルを使うチャネルは考える必要がありそうですね。業界的にはどこがモバイル活用をリードしているのでしょうか。 尾山: さきほどのネットバンキングのように金融のお客様は取り組みが早いです。あとは、EC、流通、製造、製薬、医療業界も積極的です。 下図はIBM MobileFirst Platform Foundation(旧:Worklight)国内事例のひとつですが、都市銀行様のネットバンキングの例です。 採用の決め手は開発と展開を5ヶ月で実施するというミッションに対応したのがポイントです。モバイルアプリの開発に1年もかけているとプラットフォームが変わっちゃいますよね。やはり、開発プラットフォーム、アプリ開発フレームワークをきっちり利用することで、スピードと品質を得ることができるのは、すごく重要です。   知れば知るほどお値打ちなモバイルプラットフォーム — IBM MobileFirst Platform Foundationについて、沢山の機能があると思いますが頂戴した製品資料でいくつか気になる点があったので教えて下さい。 モバイルアプリ開発においては、UI(ユーザインタフェース)が重要なため、テスト行程の効率化、管理は重要だと思いますが、製品の説明に「ユーザの操作、文字入力、タッチ、スワイプを記録、再現できる」とありますが、これは先日、IBMの田村さんのインタビューでお伺いした際の新製品、Tealeafのようですね。 尾山: よく気が付きましたね、まさにTealeafモバイルがIBM MobileFirst Platform Foundationには組み込まれています。 — ええ?本当にあのTealeafが入っているのですが、すごい。 それは・・・なんと言いますか、お得な気がします。テレビショッピングのようなコメントですみません。(笑) もしかして、他にも含まれている製品があるのでは? 尾山: そうですね、実績のある製品機能をマルチブランドで取り込んでいくのはIBMとしては当たり前に思っていたので、強くアピールした事がなかったです。 — ある意味、その製品を知っている人には分かりやすいと思います。 尾山: 他にもRational Test workbenchが入っています。これにより、iOSもAndroidも含めてエミュレーションできるので、効率的なテストを実現します。 — それは凄いです。他にお客様に「ほほぉ」と感心された機能とかはないですか?欲張りな質問ですみません。 尾山: それでしたら意外と知られていないのがアプリの「ダイレクトアップデート」ができる事です。 また、Worklight Application Centerというアプリのダウンロード・センターを建てることができるので、従業員向けの場合、モバイルユーザに対して直接アプリを配布、更新の通知をすることができるのです。 — ちょっとまってください。ということは、iOSの場合でいうとアップルのApp Storeを経由しなくともアプリのダウンロード、アップデートができるということですか? 尾山: その通りです。 特にiOSのアプリの場合はちょっとした機能アップデートでもApp Storeに申請して、許可が出てから配布となるので、どうしても時間がかかります。デモの動画があるので、こちらをご覧ください。 — アプリのアップデートは必ずApp Store経由だと思っていました。これだと、細かい機能改善やユーザへのポップアップ通知も思いのままということですね。恐れ入りました。 すみません、尾山さんに謝らなくてはならないことがあります。 尾山: な、なんでしょうか。 — 私、製品資料を見ていたにも関わらず、マルチプラットフォームに対応した統合開発環境ツールという位置づけだけでIBM MobileFirst Platform Foundationを見ていました。 これは、まさにモバイル開発フレームワークの王道なのですね。 尾山: そう言って頂けると私もインタビューを受けて良かったと思います。より詳細な資料をお渡ししますので、ぜひ、MERITひろばをご覧の皆様にダウンロードしてもらいたいです。 — はい。活用させて頂きます。本日は長時間ありがとうございました。 尾山: こちらこそ、ありがとうございました。   編集後記 記事を書いている時に、ニュースで「EC利用40%がモバイルから、市場は160%成長で2015年には2兆円」という内容を見ました。モバイルファーストにより力を入れていくのは明らかで非常に勉強になりました。 実は、尾山さんも私も大阪の近いエリアの出身でしたので、ローカル話でも花が咲いたのですが、今回のテーマとは関係がないので、割愛させていただきました。(当たり前?) 文中の表現も標準語に合わせて一部修正しておりますが、ご了承ください。

2013年12月03日

Vol.10 IT業界で25年継承される設計思想とは?

普段の製品・ソリューション紹介だけでは聞き出せない情報を「実際のところはどうなんだろう?」という素人視点で、専門家に聞いてみるシリーズです。 題して「実際どうでしょう」。。。どうぞ、ご覧ください。 今回は、以前動画撮影にご協力いただいたエバンジェリストの安井様にインタビューをさせていただきました。 <聞いてみて良かった(*´ω`*) メリひろ担当がエキスパートにインタビュー> 安井様は、大学の教壇でも活躍されており、1話では完結しないぐらいさまざまな引き出しをもっておられました。 プロフィール:日本アイ・ビー・エム株式会社 安井賢克 さん IBM システムズ & テクノロジー・エバンジェリスト 日本アイ・ビー・エムに入社。当初は、旧藤沢事業所で生産管理に従事する。 その後、AS400の初期メンバーに参画し、2008年からPower Systemsのエバンジェリストとして活躍中。 新しいことをするのが好き。 「ビジネス用のコンピュータとは何か」を大学生に興味をもってもらおうと、大学の教壇に立ち、意欲的に活動をしている。 ※2013年11月時点のプロフィールです。 大学での講義が実際のビジネスに役立っている — 今回は、インタビューにご協力いただきありがとうございます。(インタビューアー:重山) ※以前は、「IBM i for Business Intelligence」という内容で動画撮影いただきました。 安井:動画の撮影も緊張しますが、インタビューも緊張しますね。 — インタビューでは、あらかじめ参考にいただいている資料を元に会話を膨らましていますので、気楽にお願いします。 まず、IBM iと急に入っても固くなってしまうので安井さんのプロフィールを教えてください。社会人当初より日本IBMにいらっしゃるのですか。 安井:はい。大学卒業後これまでずっと日本IBMで働いてきました。当初は、旧藤沢事業所で、生産管理に従事し、ジョブ・ローテーションの際に、AS/400の初期メンバーに参画しました。 その後、2008年からPower Systemsのエバンジェリストを担当しています。エバンジェリストという制度が始まったのも、ちょうどこの時期でエバンジェリストの中では1番の古株です。(笑) また最近では、“アカデミック・イニシアティブ”というプログラムがあり、大学で講義をしたりしています。 — そのような制度があるのですね。大学ではどのような内容を教えているのですか。 安井:大学では、「ビジネス用のコンピュータとは何か」を理解してもらうのを目的にした授業を受け持っています。学生は日頃からPCやスマホには触れているが、社会人になると今までとは違うシステムに触れるので、その際にすぐに適応できる人材の育成を意識しているようです。 ビジネス用のコンピュータという意味では、その現場にいるということから、私に白羽の矢がたちました。当初はIBM iに早い段階で触ってもらおうとも思いましたが、製品機能を習得するよりも、ビジネス用のコンピュータの特徴とかあり方に興味を持ち理解してもらうことに主眼を置いています。 講座タイトルに「ビジネス」とあって、ちょうど就職活動を意識する学年を主な対象にしていることから、毎年100名を超える履修希望者がおり、手前味噌ではありますが人気講義の一つだと言っても良いかも知れません。(笑) また、他の大学院で社会人にも教えていますが、少人数ではあっても社会人が自ら時間とお金を投資しているわけですから皆さん積極的で、質問やツッコミ何でもありの、雑談のような議論のような授業の進め方をしています。 ただカバーしなければならないポイントはありますので、それなりに時間調整には苦労しますが。 — 私は大学時代、情報系ではなかったので、その講義には興味があります。 大学の講義とエバンジェリストとしての2足のわらじは大変なイメージですが・・・ 安井:よく大変でしょ?と言われますが、私もこれらの活動を通じて多くを学んでいます。 大学生はIBM i , System zやIBMのビジョンに無関係に生活している人たちです。例えば、以前「スマータープラネット」を学生に説明する機会がありましたが、学生にわかりやすい言葉や表現に希釈するため、それなりの手間隙をかけた事前の準備が欠かせません。 この時間は、私にとって良い学びとなり、その後の仕事でお客様とのコミュニケーションにおいても応用することができ、大学での講義は実はビジネスにも役立っています。 — では、大学生の立場にたって、質問させていただきます。(笑) いただいた資料に「25年間継続されている設計思想」とありますが、ちょうど私が生まれたのと同時期ですね。それが今でも受け継がれているって、何だか感慨深いです。 安井:重山さん、若いですね。その設計思想に関しては、ご説明させていただきますね。   仮想化環境においても変わらない IBM i の価値 25年間継続されている設計思想   安井:変わらない設計思想とありますが、変わるものと変わらないものがあります。 — 奥が深そうですね。詳しく教えて下さい。 安井:はい。なるべくわかりやすくご説明させていただきます。 まず、IBM i は、フランク・ソルティスという技術者が設計したのですが、ソルティスは、“究極のビジネスコンピュータを作ろう”という思想のもと、テクノロジーやビジネスだけではなく哲学レベルで考えました。 その設計思想で変わらないものとして、下記の4点を代表的なものとしてあげることができます。 アプリケーション資産継承 必要機能一式を統合 誤動作を防ぎセキュリティー向上 パフォーマンス追求、ディスク管理の手間削減 まず、1点目「アプリケーション資産継承」です。 アプリケーションはテクノロジーの進化によって影響を受けやすいのですが、テクノロジーはどんどん進化しても、ビジネスは必ずしもそれと同期して変わるとは限りません。 ビジネス・プロセスとかそれを支えるアプリケーションの変更は、全く別の視点から行なわれるはずです。 そこで、テクノロジーとビジネスとを切り離すための両者間のクッションとして機能する、仮想的なマシンとでも呼ぶべき階層: TIMI(Technology Independent Machine Interface)を導入する事を考えました。 これによって例えばプロセッサーのビット数が上がるといったような、土台になるテクノロジーの変更があったとしても、ユーザはアプリケーションの修正やリコンパイルをせずにそのまま利用することができます。 — PCでは32Bitから64Bitになると動かなくなるアプリがありますので、レベルが違うかも知れませんが、すごいなと思ってしまいます。 安井:ユーザから長く愛されているのはこの思想が貢献していると思います。 2点目は「必要機能一式を統合」です。 IBM iは今でこそ大きな拡張性を持っていますが、元々は中堅・中小のお客様をターゲットに開発されたシステムでした。そのようなお客様は必ずしも多くのシステム要員を抱えていませんから、導入後に「すぐに使える」というのはビジネスでは大事なポイントです。 また、サーバーとして求められる機能一式が、最初から製品の中に含まれていますから、万が一トラブルに見舞われたとしても、お客様はどのベンダーのどのモジュールに問題があるのかを、切り分けるために悩む必要がありません。 —  スマホで言うとアップルのiPhoneのように製品のトータルの完成度を維持できる仕組みが品質やサポートに良い影響を与えるのですね。AS/400ユーザの安心感はこの“統合“が効いているのですね。 安井:そうですね、3点目が「誤動作を防ぎセキュリティー向上」です。 データにはすべて意味があります。それをコンピュータにも認識させることを思想として取り入れました。 例えば、データに「商品番号」と「価格」があるとします。消費税の計算をする場合に、価格ではなく商品番号の方に消費税をかける演算は人間ならしないですよね。 聞くと当たり前ですが、コンピュータにとって、文字列、数値はどちらも単なる0と1の並びにすぎず、データの意味は理解できません。データには意味があるとしてその属性を明確にし、実行できる演算内容(メソッド)をそこに紐付けるような仕組みを採用しました。 これは今で言うところの「オブジェクト指向」の考え方ですが、そのような言葉さえなかった時代にすでにこの考えを採用していました。 —  データに意味を持たせることによって、誤作動を減らすという発想はなかなか思いつかない気がします。 安井:ビジネス用のコンピュータなので、経理、経営など、複数の部門が一台の上で同時に複数アプリケーションを動かすことになるので、この思想は重要です。 最後、4点目は「パフォーマンス追求」です。 近代のマシンにおいては、CPUの動作サイクルはナノ(10のマイナス9乗)セカンド以下、HDDはミリ(10のマイナス3乗)セカンド台のレスポンスです。 HDDはシステムの中ですごく遅いのです。最近になってSSDなどが普及してきましたが、当時はこのHDDに頼らないシステムを考えたのです。 つまり、できるだけメモリだけでアプリケーションを動かそう、それを効果的に行なうためにもHDDとメモリの区分けをなくそうという設計です。そしてこらら4つの点は、実際はAS/400の前身であるSystem/38からの思想なので、35年前からになりますね。 — うーん、すごいです。ここまでの設計思想を伺っていると、ハードウェア中心の考えではないのですね。 安井:その通りです。「マシン」の定義はハードウェアではなく、ソフトウェア的に構成されたマシンと考えたのです。 システム全体をこのように考えて作り上げられたマシンは、商用システムとしては他に例を見た事がありません。 —  本当に勉強になります。まだ、インタビューのスタートのつもりで「設計思想」をお伺いしたら、これほど深く、マシンとユーザについて考えられていたので感動しました。例えとして適切かどうかわかりませんが、「ロボット(工学)三原則」を聞いた時のように、最小限で完璧な組み合わせの思想だと思いました。 私自身はIBM i を使ったことは無いのですが、よく「とにかく壊れない、止まらない」と聞いていたので、ハードウェアとしての堅牢性が高いイメージを持っていましたが、それだけではなかったのですね。 安井:はい。IBM iには、もっと沢山の技術が盛り込まれており、進化し続けています。そして、どのような技術なのかという点に目が行き勝ちですが、設計者のソルティス博士もその著書の中で言っているように、どうしてその技術が実装されたのか? という根っこのところを理解する事も大事なのだと思います。 —  安井さんの講義を受けた学生も社会人になって、すごく助かっていると思いますよ。 安井:そうあってほしいです。(笑) このように学生への講義でもマシンの歴史を話しているのですが、製品が世の中で長く使われる、市場で信頼を得るには「アプリケーション資産継承」が一番重要なのは揺らがないと思います。 —  次のテーマとして、「IBM iの運用コストの優位点」と「IBM iの今後」についてお伺いしていと思います。 両テーマとも、ここまでの設計思想を聞いておくと、その延長上の話としてわかりやすくなりそうです。 次回に続く Vol.13 IT業界で25年継承される設計思想とは? その2 編集後記 私は社内のインフラを管理する仕事にも携わっており、アプリケーションの資産継承の重要性を少しは理解しているつもりですが、ハード新調やOSのバージョンが変わってもアプリはそのまま使えるというのは、対費用効果の面でインパクトがあると思いました。

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