こんにちは、ソリューション企画部の西村です。
今回私は、ビジネスイノベーションとテクノロジーの先端を切り開く IBM Global の年次イベント「Think 2024」に参加しました。
このブログを通して、イベントで得た印象深いハイライトや知見を皆さんと共有できればと思います。
イベント概要
2024年5月20日から23日にかけて、アメリカのマサチューセッツ州ボストンにて「Partner Plus Day at Think 2024」と「Think 2024」イベントが開催されました。
この4日間のイベントでは、IBM の戦略や新たな製品の発表がありました。
世界の状況は不透明さを増しており、経済も不確実性を抱えています。
そんな中、経営の本質を変えるイノベーション “ビジネスモデルを一新し、生産性を高める取り組み” が、非常に重要なテーマとなっています。
Think 2024 では、最新の AI技術、ハイブリッドクラウド、自動化、さらには量子コンピューティングなど、従来の枠を超えた技術革新について発表がありました。
イベントには世界中からエンドユーザ様、パートナー様が4,000人以上集まり、これらの発表や最新情報を理解し、ディスカッションする場となりました。

Partner Plus Day at Think 2024
Think 2024 の開催に先立ち「Partner Plus Day at Think 2024」が20日に BCEC のグランドボールルームにて開催され、IBMエコシステムの General Manager ケイト・ウーリーをはじめとした IBM のシニアリーダー陣による、IBMエコシステム戦略や最新の Partner Plusプログラムなどについての説明がありました。
IBM CEO のアービンド・クリシュナ氏は IBM の注力エリアであるハイブリッドクラウドと AI について語り、特に4兆ドルの AI市場や成長中の1兆ドルのクラウド市場の潜在的な可能性に注目していました。
IBM の売上の50%を協業ビジネスで実現しようという目標は、パートナーの皆様にとって重要なメッセージでした。また、AI技術の開発におけるコスト削減や生産性向上への寄与、そしてリソースの不安解消にも力を注いでいる点は、多くの共感を呼びました。
ロブ・トーマス氏の講演では IT業界の動向に焦点が当てられ、AI の活用にはハイブリッドクラウドが不可欠であること、そして複雑さが増す中で自動化のニーズが高まっていることが明らかにされました。
IBM の自動化に関する独自の提案や AI の導入を容易にする取り組みは、特に興味深い内容でした。また、共同でのセールスとマーケティングの推進や再利用可能なコードの生成、PoC やデモの機会の継続的な促進は、パートナーシップにとって非常に有益であるということが伝わりました。
パートナーエコシステムGM のケイト・ウーリー氏からは、IBM の投資方針として、モダナイゼーションと自動化の需要に応えるためのハードウェアとソフトウェアへの継続的な投資についての説明がありました。
特に HashiCorp の買収*1 は、ハイブリッドクラウド環境におけるアプリケーションのプロビジョニングと構成を簡素化するとして大きな注目を集めました。パートナー活動への投資、そして製品の組込みやすさやサービスの強化は、パートナー各社の IBM製品販売の動機付けになることでしょう。
続いて行われた日本IBM によるセッションでは、共創を支援するリソースや今後の展開について深く掘り下げられました。
技術、コンサルティング、販売力、ソリューションの結集に加え、業界標準となる Open Technology の役割が強調されました。
AI をあらゆるビジネスに適用する動きは進んでおり、各パートナー様が持つ専門技術の共有というかたちで日本マーケットのさらなる成長が期待されています。
*1.(参考情報)「IBM、HashiCorp社を買収し、包括的なエンドツーエンドのハイブリッドクラウド・プラットフォームを構築」
Think 2024
5月21日からは IBMパートナー企業に加えてさらに多くのお客様も参加し、「Think 2024」が開催されました。総勢4,000名、日本からも150名以上が参加する盛況ぶりでした。
IBM の CEO アービンド・クリシュナ氏は、AI がいかにイノベーションを実現し生産性を向上させているかを力強く語るとともに、「IBM Granite*2」モデルをオープンソース化するという大きな発表を行いました。
これにより、AI の活用が加速することが期待されます。
IBM の AI戦略はよりオープンになり、新たな提携も続々と発表されました。
注目すべきは「Automation」と「Scale」の推進、そして生成AI(Generative AI)を取り巻く「Open」というキーワードでした。
今後AIアプリケーションが爆発的に増加すると予想されるなか、人の手に負えない管理作業を自動化することが必須となってきます。
そのため IBM は、IT の自動化に関する7つの重要領域 “Observability、Resource Management、Network、FinOps、Technology Business Management、および Insight” を整理しています。
中でも「IBM Concert」という名の新しいプラットフォームが Insight の領域で発表されました。アプリケーションライフサイクル管理のアシスタントとして管理対象システムの様々なデータを継続的に収集し、そこから Insight を道き出します。
Risk を一例とすると、CVE(Common Vulnerabilities and Exposures)と呼ばれる共通脆弱性識別子に対してそのシステムにおける重要度、関連するシステムのコンポネントを可視化します。この CVE に対する対応を Chat で問い合わせ AI が回答するという機能も提供されます。
この Risk に加えて、Compliance、Evidence の機能がが6月17日より提供される予定です。
また、Networking、Automation、Observability、Cost の領域では順次新しい機能のリリースが予定されています。

AI を仕事の手助けとして取り入れる動きが進んでおり、大事なポイントで生成AI を活用することによってそれぞれバラバラに運用されていたシステムが連携し、よりスムーズで効率的な業務の流れが作り出されました。
また、プログラムを書く際に手助けしてくれるコードアシスタントを使ったアプリケーションの作成、AI が Java のバージョンアップをサポートしたり、テストケースを自動で作ったり、コードの説明を自動生成したりする機能が紹介されました。
BI の分野では、10月にリリース予定の「watsonx BI assistant」を利用することでデータの分析作業が自動で行われ、ユーザーはチャットを使って問題の原因や解決策を簡単に尋ねることができるようになります。
今回の発表で、AI の開発をよりオープンで進めやすいようにするために大きな一歩を踏み出しました。
IBM の AIモデル「Granite」を誰でも利用できるよう公開し、「InstructLab」を活用してより効率的な大規模言語モデル LLM(Large Language Models)の作成を支援する方針です。
更に、IBM は Amazon の「Amazon SageMaker」、Microsoft の「Azure Marketplace」、Salesforce の「Einstein」、そして SAP の「RISE」といった大手プラットフォームとも提携を深め、これらの場で Graniteシリーズの用途を広げる計画を明らかにしました。
先進的な AIモデルである LLM を使う上で、信頼性が高く正確なデータを使って学習させることの大切さが特に強調されていました。
IBM が提供する「Granite」には、チャットボット、様々な言語の理解、時間の流れに沿った予測や天気予報など、16種類の異なる目的を持った AIモデルがあります。
さらに、IBM は Mistral AI や llma、elyzaなどのパートナー企業と協力し、複数のタイプのデータを扱える「マルチモーダル」AI の機能をより強化しています。
*2.(参考情報)「信頼できるデータで構築した基盤モデルGraniteの日本語版を提供開始し、日本のお客様の生成AI活用を加速」
まとめ
最後に、イベントでは「AIの未来はオープンである」というメッセージが強調されました。
AI とハイブリッドクラウドの技術が日々進化するなか、誰もがアクセスできるオープンな技術を取り入れることが、革新を続け、新しいビジネスの価値を生み出すための重要なポイントになるとのことでした。
この「Think 2024」では、IBM が世界のビジネスのリーダーたちと力を合わせ、未来を切り開く姿が見られました。そして、来年の「Think 2025」もボストンでの開催が予告されています。
次にどんな革新的な変化が起こるのか、今後の技術の進歩を、皆さまに継続的にご紹介させていただきます。

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