2020年08月

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今、デジタルサービスに求められる必須要件とは!?アプリケーションのコンテナ化で得られる5つのメリット

IBM Cloud Pak for Applicationsの新規販売は終了いたしました。
今後のアプリケーションランタイムソリューションは、2021年1月15日に発表されたWebSphere Hybrid Editionとなります。


アプリケーションを稼働させる環境として、コンテナに注目が集まっています。
デジタルサービスに対する顧客のニーズが多様化し、かつ加速度的に変化している中、その顧客ニーズに対応しようとしている企業にとって、DevOps によるアプリケーションの開発・運用と共にコンテナ化には様々なメリットがあるのがその理由です。

本記事では、そんなアプリケーションの迅速な開発・展開が可能となるコンテナ化について、従来の仮想マシン上でアプリケーションを稼働させる場合との違いやメリットを解説します。

 

Index


 

コンテナとは?

コンテナとは、アプリケーション本体やライブラリといったアプリケーションの実行環境をパッケージングした上で、ホスト OS のコンテナエンジン上でプロセスやネットワークといったリソースを切り離して仮想環境を構築する技術のことです。

コンテナの中核をなしているソフトウェアは、主に以下の2つです。

  • コンテナエンジン

コンテナエンジンは、ホスト OS 上でのコンテナの作成、削除、実行などを担います。代表的なコンテナエンジンとしては Docker がよく知られています。

  • オーケストレーションツール

単に開発環境としてではなく本番環境もコンテナ化する場合には、コンテナの運用管理を徹底する必要があります。そこで登場したのが、オーケストレーションツールです。

オーケストレーションツールは、コンテナ起動中のロールアウトやロールバック、データを保持するための外部ストレージのマウント、クラスタの構成、各コンテナの管理やログといったコンテナの運用に関わる様々な役割を担います。
代表的なオーケストレーションツールとしては、Kubernetes や OpenShift がよく知られています。


 

コンテナと従来の仮想化技術との違い

これまで、アプリケーション稼働環境の構築手法としては仮想マシン型が一般的でした。
仮想マシン型の場合、物理サーバー上にアプリケーションやライブラリのほかにゲスト OS を含む仮想マシンを複数実装することで仮想環境を構築し、リソースの効率的な利用を実現します。

一方でコンテナの場合、各コンテナはアプリケーション本体やライブラリなどで構成されており、ゲスト OS は含みません。コンテナエンジンがホスト OS からネットワークやリソースを切り離した上で、単一のホスト OS 上での複数アプリケーション(コンテナ)の実行を制御しているからです。

これにより、仮想マシン型と比べるとより小さなリソース(CPU・メモリ・ディスク)でアプリケーションを稼働させることができるようになります。


 

コンテナのメリット

前項で述べたコンテナと仮想マシン型の仮想環境の実装を比べると、コンテナには次のようなメリットがあります。

 

1. 起動が速い

仮想マシン型の場合、アプリケーションを起動するためにはゲスト OS の起動をともなうため、アプリケーションが利用可能となるまでに数分から数十分程度の待ち時間が発生します。

一方コンテナの場合、アプリケーションを実行するための各コンテナはゲスト OS を含まないので、ゲスト OS を起動する待ち時間が発生しません。そのため、コンテナ起動後は数秒から数十秒程度でアプリケーションの利用を開始できます。

 

2. 処理が速い

仮想マシン型の場合、各仮想マシンからハードウェアにアクセスする際にハイパーバイザーとホストOS を経由します。そのため、物理環境と比べると処理速度が低下する難点があります。

コンテナの場合には、各コンテナからハードウェアへのアクセスをホスト OS が直接制御します。そのため、仮想マシン型と比べて物理環境に近い処理速度で仮想環境を利用可能です。

 

3. ハードウェアのリソース消費を減らせる

仮想マシン型の場合、アプリケーションを実行するためのサーバーを増やす(スケールアウト)にはアプリケーションやライブラリのほかにゲスト OS を含む仮想マシンを追加しなければなりません。
特にゲストOS自身が多くのリソースを消費するので、スケールアウトすることによってハードウェアのリソースを消費し、アプリケーションで利用できるリソースが逼迫してしまいます。

繰り返しになりますが、コンテナの場合、各コンテナはゲストOS を含みません。
そのため、ハードウェアのリソース消費を抑えながらアプリケーションをスケールアウトすることができます。

 

4. 環境を選ばず実行できる

ゲスト OS を含む OS 単位で構成された仮想環境の仮想マシン型とは異なり、コンテナはアプリケーション単位で構成された仮想環境です。
そのため、作成したコンテナは、パブリッククラウドやオンプレミスといったアプリケーションの配置場所や物理サーバー・仮想サーバーのようなサーバー環境の違いに依存せずに実行できます。

 

5. ほかのアプリケーションから分離された開発環境で作業できる

エンジニアは、コンテナ上で開発したアプリケーションをほかのアプリケーションから分離された開発環境で扱えるようになります。
また、コンテナには特定のバージョンのプログラミング言語ランタイムやライブラリ、アプリケーションの実行に関わる依存関係などを組み込めるので、最終的にそのコンテナがどの環境にデプロイされてもアプリケーションとしての一貫性を保つことが可能です。

 

コンテナ化の注意点

前項で挙げたように、アプリケーションのコンテナ化には様々なメリットがあります。

一方で、コンテナ内でデータを保持する場合には注意が必要です。コンテナを削除すると、コンテナ内のデータも一緒に削除されるからです。
したがって、コンテナで扱うデータを保持する場合には、データを永続化させるための構成を検討する必要があります。

具体的な方法としては2つあります。

    1. コンテナエンジンを稼働させているホスト OS 上にデータを保管する
    2. 外部(共有)ストレージにデータを保管する

1.では、コンテナ上で保存するデータをホストOS上の領域に保管する設定ができます。
しかし、サービスを提供する本番環境では可用性・拡張性を確保する必要があり、一般的には複数台のホストOS 環境を用意することになります。
この方法の問題点として一番大きいのは、アプリケーションのスケールアウトや、障害対応のために当初稼働していたホストOS とは別のホストOS でコンテナを稼働させるといった場合に、データの引き継ぎが行われず結果としてデータロストが発生してしまう可能性があります。

2.では、複数のホストOS からアクセス可能な共有ストレージにデータを保管します。
その場合は1.で実現できなかったホストOS をまたいだコンテナのスケールアウト・移動にも対応できるようになります。

また、コンテナを停止するとコンテナ内に保存していたデータが消えるという特性上、仮想マシン型のようなバックアップ取得は難しくなります。
そのため、アプリケーション内にバックアップ機能を追加する、データの保管先を意識した設計に変えるといった考慮が必要になります。

今日では、コンテナ化にあたっての懸念材料となるデータの永続化について、バックアップ機能を持ったオーケストレーションツールや NAS とのパッケージングなどによって解消できるソリューションも登場しています。

 

今日のビジネスにおけるコンテナの活用シーン

ここまで解説したように、アプリケーションのコンテナ化には様々なメリットがあります。冒頭でも述べたように、これらのメリットは顧客ニーズの多様化に対して自社のデジタルサービスをスピーディーに適合させようとしている企業にとって大きなインパクトがあります。

今日のようにビジネス環境の変化が著しい中で、企業は顧客ニーズを自社サービスに素早く反映することが求められています。
とはいえ、これまでの「ウォーターフォール」型手法ではスピーディーな実現が難しくなります。「アジャイル開発」的な発想で自社のデジタルサービスを日々アップデートしていく必要があります。

これまで、デジタルサービスはモノシリックな形で作り上げるのが一般的でした。モノシリックとは、単一のアプリケーションとしてデジタルサービスを作り上げるソフトウェアのアーキテクチャのことです。

小規模なデジタルサービスの開発には適していますが、コードベースの拡大に伴って修正・テストに時間がかかる・コードのバージョン管理といったメンテナンスが煩雑化しやすいという難点があります。
そのため、サービスの改修や追加をスピーディーに実行することが難しく、高頻度でのアップデートを前提としたデジタルサービスを開発するアーキテクチャに適しているとは言えません。

こうした中で、多くの企業の関心を得ているのがデジタルサービスのマイクロサービス化です。
マイクロサービスとは、細分化された個々のサービスを連携させて1つのデジタルサービスを作り上げるというソフトウェアのアーキテクチャです。すでに一部の企業は、自社のデジタルサービスをマイクロサービス化した上で、それぞれを高頻度でアップデートすることにより顧客ニーズに素早く対応しています。

そして、前述したようにアプリケーションをコンテナ化することによって、開発者はほかのアプリケーションから分離された環境で開発を行うことができるようになります。
これはつまり、アプリケーションをマイクロサービス化・コンテナ化することによって、コンテナ上で開発したアプリケーションをマイクロサービス化した機能単位でスピーディーに開発できるようになるということです。

したがって、アプリケーションのコンテナ化・マイクロサービス化によってマイクロサービス単位のアップデートを繰り返すことが容易にになり、顧客ニーズを早期にキャッチアップした継続的なアップデートを行うことで顧客満足度を向上し企業価値を高めることができます。


 

IBM Cloud Pak for Applications について

本コラムは、アプリケーションのコンテナ化とそのメリットについて解説しました。
今日、デジタルサービスに求められる必須要件としてのアプリケーションのコンテナ化をスピーディーに実現できるツールの1つが、IBM Cloud Pak for Applications です。

IBM Cloud Pak for Applications は、Red Hat OpenShift を基盤としてアプリケーションのモダナイゼーションを支援する製品です。

Cloud Pak シリーズには他に、データ管理、システム連携、マルチクラウド管理、セキュリティといった様々な機能に特化した製品があります。
ユーザーは、IBM が築き上げたベストプラクティスとして提供されるコンテナ・イメージを活用できるので、オンプレミスやクラウドといった環境を問わず、IBM Cloud Pak for Applications を利用して既存アプリケーションのコンテナ化を実現できます。

アプリケーションのコンテナ化に関心をお持ちの方は、ぜひ、IBM Cloud Pak for Applications をご検討ください。

 
 


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2025年08月04日

【てくさぽBLOG】IBM watsonx OrchestrateのADKを使ってみた

こんにちは。 てくさぽBLOGメンバーの高村です。 早速ですが、今年5月に開催されたIBMの年次イベント「Think2025」で、watsonx Orchestrateの新機能が発表されました!その中の一つとして、開発者向けの「Agent Development Kit(以下、ADK)」があります。今回はこのADKを活用し、watsonx Orchestrate環境への接続やエージェントの追加といった操作を行い、その使用感をご紹介します。  なお、watsonx Orchestrateについては、今年2月、3月に公開した「watsonx OrchestrateやってみたBLOG」でご紹介しておりますので、是非こちらもご一読ください。 【てくさぽBLOG】IBM watsonx Orchestrateを使ってみた(Part1) 【てくさぽBLOG】IBM watsonx Orchestrateを使ってみた(Part2) 目次 はじめに ADKとは? ADK使ってみた さいごに お問い合わせ はじめに Think2025で発表された新機能は、6月に環境へ追加されました。それ以前の環境とは、メニュー構成や操作方法、機能名称に変更があります。 例えばこれまで「Skill」と呼ばれていたものが「Tool」へと名称変更されています。 アップデート後の環境につきましては、別ブログにて改めて詳しくご紹介させていただく予定ですので、ぜひご期待ください! ADKとは? まずはADKについてご紹介します。ADKとは開発者向けにwatsonx OrchestrateのAgentやToolをスクラッチ開発するための開発キットになります。ローカル端末などに導入し、pythonベースで開発を行うことができます。 また、ADKとは別に、watsonx Orchestrate Developer Editionをローカル端末に導入することで、ADKで開発したAgentやToolのテストが可能になります。なお、watsonx Orchestrate Developer EditionはDockerコンテナ上で動作し、現時点のハードウェア要件はCPUは最小8コア、メモリは最小16GBが必要です。詳細はInstalling the watsonx Orchestrate Developer Editionをご確認ください。   ADKとwatsonx Orchestrate Developer Editionを利用することで、コードの迅速な作成・修正や柔軟なカスタマイズに加え、環境へのデプロイ前にローカルでテスト・修正が可能となり、作業効率の向上が期待できます。 ADK使ってみた 前述ではADKでAgent開発し、watsonx Orchestrate Developer Editionで動作確認、SaaS watsonx Orchestrateへインポートする構築の流れをお話しましたが、今回の検証における動作確認は検証環境として利用しているIBM Cloud 上のwatsonx Orchestrate利用します。よって前述したwatsonx Orchestrate Developer Editionは利用せず、ADKからwatsonx Orchestrate検証環境へAgentとToolを直接インポートし、動作確認を行いたいと思います。また、ADKのインストール先は自分の端末ではなく、IBM Cloud上に構築したUbuntuのVirtual Server Instance(以下、VSI)を使用します。検証環境の構成イメージは下記の図の通りです。 尚、ADKのインストール要件はPython 3.11以上、Pip、そして仮想環境(以下venv)が必要です。詳細については、Getting started with the ADKをご確認ください。 それでは早速使ってみましょう! VSIのプロビジョニング まずはADKをインストールするVSIをプロビジョニングします。本ブログではプロビジョニング方法について詳しく記載いたしませんが、手順は「【てくさぽBLOG】IBM Power Virtual ServerのAIX環境とIBM Cloud Object Storageを接続してみた(Part1)」のVSI for VPCの作成をご参考ください。 OSはUbuntu 22.04 LTS Jammy Jellyfish Minimal Install、リソースは2vCPU,4GB RAMで作成しました。VSI作成時にSSH鍵が必要なるので作成を忘れないようにしてください。 作成すると数分で起動します。端末からSSHログインするため浮動IPが必要になります。赤枠で囲った浮動IPを作成しインスタンスに紐づけします。以上でVSIの作成は完了です。 Ubuntuの設定 ターミナルを開きsshでUbuntuにログインします。私はWindowsのコマンドプロンプトを使用しました。Ubuntuユーザでログイン後、rootパスワードを設定し、スイッチできるようにします。 ubuntu@nicptestvsi:~$ sudo passwd root New password: Retype new password: passwd: password updated successfully ubuntu@nicptestvsi:~$ su - pythonのバージョンを確認したところ3.10.12でした。ADKの要件は3.11以上ですので、バージョンアップが必要になります。最初は3.13にバージョンアップしてみたのですが、後続作業と最新バージョンではパッケージが合わなかったのかうまく動かず…仕切り直して3.11を利用することにしました! root@nicptestvsi:~# apt install python3.11 バージョンアップ後、デフォルトバージョンとして3.11を指定します。 root@nicptestvsi:~# sudo update-alternatives --install /usr/bin/python3 python3 /usr/bin/python3.10 1 sudo update-alternatives --install /usr/bin/python3 python3 /usr/bin/python3.11 2 sudo update-alternatives --config python3 update-alternatives: using /usr/bin/python3.10 to provide /usr/bin/python3 (python3) in auto mode update-alternatives: using /usr/bin/python3.11 to provide /usr/bin/python3 (python3) in auto mode There are 2 choices for the alternative python3 (providing /usr/bin/python3).Selection Path Priority Status ------------------------------------------------------------ * 0 /usr/bin/python3.11 2 auto mode 1 /usr/bin/python3.10 1 manual mode 2 /usr/bin/python3.11 2 manual modePress <enter> to keep the current choice[*], or type selection number: 2 root@nicptestvsi:~# root@nicptestvsi:~# python3 --version Python 3.11.13 次に下記コマンドを実行して任意のvenvを作成します。 python3 -m venv /path/to/nicpse/project/your-venv-adktest <環境のパスを指定 venvを活性化してログインします。下記コマンド結果のようにvenvに入れましたらUbuntuの設定は完了です。 root@nicptestvsi:~# source /path/to/nicpse/project/your-venv-adktest/bin/activate (your-venv-adktest) root@nicptestvsi:~# ADKのインストール 以下コマンドを実行してADKをインストールします。ADKは6月時点で1.5.1が最新バージョンです。 (your-venv-adktest) root@nicptestvsi:~# pip install ibm-watsonx-orchestrate Collecting ibm-watsonx-orchestrate Downloading ibm_watsonx_orchestrate-1.5.1-py3-none-any.whl.metadata (1.4 kB) Collecting certifi>=2024.8.30 (from ibm-watsonx-orchestrate) Downloading certifi-2025.6.15-py3-none-any.whl.metadata (2.4 kB) Collecting click<8.2.0,>=8.0.0 (from ibm-watsonx-orchestrate) Downloading click-8.1.8-py3-none-any.whl.metadata (2.3 kB) Collecting docstring-parser<1.0,>=0.16 (from ibm-watsonx-orchestrate) Downloading docstring_parser-0.16-py3-none-any.whl.metadata (3.0 kB) Collecting httpx<1.0.0,>=0.28.1 (from ibm-watsonx-orchestrate) Downloading httpx-0.28.1-py3-none-any.whl.metadata (7.1 kB) ----中略---- (your-venv-adktest) root@nicptestvsi:~# orchestrate --version ADK Version: 1.5.1 ADKの環境設定 次にADKの環境設定を行います。watsonx OrchestrateのインスタンスIDが必要になるため、watsonx OrchestrateのSetting画面に入り確認します。下記画面をご参考にしてください。 環境設定コマンドはこちらになります。-nの後はvenv名を指定し、-uの後はインスタンスIDを指定します。 (your-venv-adktest) root@nicptestvsi:~# orchestrate env add -n <仮想環境名> -u <環境のインスタンスID> [INFO] - Environment 'my-name' has been created [INFO] - Existing environment with name 'nicpse' found. Would you like to update the environment 'nicpse'? (Y/n)y [INFO] - Environment 'nicpse' has been created 以下コマンドを実行して、IBM Cloud上のwatsonx Orchestrateと認証設定をします。APIキーの取得方法は「【てくさぽBLOG】IBM watsonx.aiを使ってみた(Part2)」のAPIキーの取得をご確認ください。尚、リモート環境に対する認証は2時間ごとに期限切れになります。期限が切れた場合は再度認証する必要があります。 (your-venv-adktest) root@nicptestvsi:~# orchestrate env activate nicpse --apikey <APIキー> [INFO] - Environment 'my-ibmcloud-saas-account' is now active [INFO] - Environment 'nicpse' is now active 下記コマンドを実行してCLIから利用できる環境のリストを表示します。IBM Cloud上のwatsonx Orchestrateがactiveとなっていました! (your-venv-adktest) root@nicptestvsi:~# orchestrate env list nicpse https://api.us-south.watson-orchestrate.cloud.ibm.com/instances/XXXXXXXX (active) local http://localhost:XXXX Toolとagentのインポート 次にToolとAgentのインポートを行います。ToolとはAgentがタスクを実行する際に利用する機能です。今回は、IBM様より共有いただいたyfinanceを活用したToolおよびAgentのコードを、ADKを用いてインポートします。なお、yfinanceはヤフーファイナンスから株価などの金融データを取得するためのPythonライブラリです。 最初にToolのインポートを行います。下記の様に、scpなどでToolファイルとrequirements.txtをディレクトリにアップロードしておきます。requirementsファイルは他のモジュールと依存関係がある場合使用します。 (your-venv-adktest) root@nicptestvsi:~/orchestrate_tool/py/source_02# ls -l total 12 -rw-r--r-- 1 root root 0 Jun 24 04:42 __init__.py drwxr-xr-x 2 root root 4096 Jun 24 04:38 __pycache__ -rw-rw-r-- 1 ubuntu ubuntu 8 Jun 24 03:02 requirements.txt -rw-rw-r-- 1 ubuntu ubuntu 1778 Jun 24 02:46 yfinance_agent.py 下記コマンドを実行してToolファイルとrequirementsファイルをインポートします。企業情報を取得するstock_infoと株価を取得するstock_quoteの2つのToolがインポートされました。 (your-venv-adktest) root@nicptestvsi:~/orchestrate_tool/py/source_02# orchestrate tools import -k python -f "./yfinance_agent.py" -r "./requirements.txt" [INFO] - Using requirement file: "./requirements.txt" [INFO] - Tool 'stock_info' imported successfully [INFO] - Tool 'stock_quote' imported successfully listコマンドを実行するとインポートされたToolを確認できます。 (your-venv-adktest) root@nicptestvsi:# orchestrate tools list ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┳━━━━┳ ┃ Name ┃ Description ┃ Permission ┃ Type ┃ Toolkit ┃ App ID ┃ ┡━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╇━━━━╇ │───────────┼────────────┼── │ send_mail_brevo │ send a meil using Brevo. │ write_only │ python │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ ├─────────────────────────────────┼──── │ stock_quote │ 企業のTickerSymbolを用いて株価… │ read_only │ python │ │ │ ├─────────────────────────────────┼──── │ Untitled_6160RC │ No description │ read_only │ openapi │ │ │ ├─────────────────────────────────┼──── │ stock_info │ 企業のTickerSymbolを用いて企業… │ read_only │ python │ │ │ └─────────────────────────────────┴──── 次にAgentをインポートします。下記コマンドを実行します。 (your-venv-adktest) root@nicptestvsi:~/orchestrate_tool/py/source_02# orchestrate agents import -f ./yfinance_agent.yaml agent listコマンドでインポート済みのAgentを確認できました。Agentが使用するToolも表示されています。 (your-venv-adktest) # orchestrate agents list ┏━━━━━━━━━━━━━━━┳━━━━━━━━━━━━━━━┳━━━━━━━━ ┃ Name ┃ Description ┃ LLM ┃ Style ┃ Collaborators ┃ Tools ┃ Knowledge Base ┃  ┡━━━━━━━━━━━━━━━╇━━━━━━━━━━━━━━━╇━━━━━━━━ │ yfinance_age… │ 企業の会社情… │ watsonx/meta- │ react │ │ stock_info, │ │ │ │ │ llama/llama-3 │ │ │ stock_quote │ │ ││ │ │ -2-90b-vision ││ │ -instruct │ │  IBM Cloud上のwatsonx Orchestrateで動作確認 インポートしたAgentとToolをIBM Cloud上のwatsonx Orchestrateで確認します。 watsonx Orchestrateへログインし、BuildからAgent Builderを選択します。 yfinanceエージェントが表示されているので、クリックします。 クリックすると、Agent作成画面に入ります。UIから基盤モデルを変更したり、Agentの振る舞いなど変更することができます。 スクロールして、Toolsetを確認するとADKからインポートしたToolが登録されています。 右のPreviewからAgentの動きを確認することができます。今回はDeployせずPreviewで確認します。入力欄には「IBMの株価は?」と質問してみます。しばらくすると本日の株価が回答されました。Show Reasoningを開くと推論過程を確認することができます。株価を取得するTool「stock_quote」を使用し、AIがユーザの入力から自動的にTicker symbolを入力していることがわかります。 次に「IBMの企業情報」と質問をします。しばらくするとAIがユーザの入力からTicker symbolを入力し、Tool「stock_info」を利用して企業情報を取得、回答されました。ユーザの入力内容からAgentが使用するToolを選択し、実行していることがわかります。   さいごに ADKのご紹介とADKを使ってToolとAgentのインポートを行いました。 ADKのインストールおよび設定について、Pythonバージョンの設定やvenvの作成でつまずく部分はありましたが、venvが作成できればその後の設定はスムーズに進められました。 今回はVSI上のUbuntuサーバにADKをインストールしましたが、ご自身の端末に導入することで、より気軽にAgent開発を行えるかと思います。なお、今回は検証対象外でしたが、watsonx Orchestrate Developer Editionを利用する場合は、インストール要件としてやや高めのスペックが必要になる点にご注意ください。 検証時のADKのバージョンは1.5.1でしたが、7月末では1.8.0が最新バージョンとなっています。比較的頻繁にアップデートされますので適宜Release Notesをご確認ください。バージョンアップでコマンドオプションも変更される場合があるため、マニュアルを確認するかコマンドに`--help`を付与してパラメータを確認することをおすすめします。   お問い合わせ この記事に関するご質問は以下の宛先までご連絡ください。 エヌアイシー・パートナーズ株式会社 技術企画本部 E-mail:nicp_support@NIandC.co.jp   .anchor{ display: block; margin-top:-20px; padding-top:40px; }

2025年07月11日

【参加レポート】Domino Hub 2025

公開日:2025-07-11 みなさまこんにちは。ソリューション企画部 松田です。 2025年6月19日・20日と2日間に渡って開催された「Domino Hub 2025」に参加しました。これは HCL Ambassador有志が企画・実行する Dominoコミュニティイベントです。去年に続き、今回が3回目の開催となります。 昨年同様、今回もエヌアイシー・パートナーズはスポンサーとしてご支援させていただき、両日参加いたしました。そのレポートをお送りします。 目次 イベント概要 セッション内容 - Domino 14.5 リリース 特徴的機能とライセンス改定 -ロードマップ -お客様事例:曽根田工業様 最後に 関連情報 お問い合わせ イベント概要 「Domino Hub」は、HCL Ambassadorが主宰となり、Dominoの利用者、開発者、ソリューションベンダーが一堂に会するコミュニティイベントです。今回は1日目がオンライン、2日目はオンサイトのみの開催でした。 特に2日目は参加率が非常に高かったとのことで、会場も大変盛況でした。結婚式場としても使われている今回の会場は、中庭から陽の光が差し込み、解放感があるラグジュアリーな空間で、一般的なビジネスミーティングよりも上質な雰囲気が感じられました。 併せて展示ブースも設置され、Dominoアプリケーションがスマートフォンやブラウザで使えるようになる「HCL Nomad」などのHCL製品とともに、様々なビジネスパートナー様の多彩な関連製品が数多く展示・紹介されていました。 セッション内容 2日間で全22セッションが行われました。セッションはHCLをはじめ、HCL Ambassadorから、様々な開発ベンダー、製品ベンダー、エンドユーザーからの事例紹介などのセッション、そしてパネルディスカッションがありました。まずHCLからのセッション内でのトピックをお伝えします。機能のみならずライセンスまわりで大きなニュースもありました。 Domino 14.5 リリース 特徴的機能とライセンス改定 Domino Hubの2日前、2025年6月17日にリリースされました。 Domino IQ 特徴的な機能で最も注目すべき、今回もご説明に時間を割かれていたのが「Domino IQ」です。 一言で言えば「Domino内にローカルでLLMを持たせ、蓄積されてきたDominoアプリ内の情報も取り込み、セキュアな環境で生成AIを用いた業務を実現する」ものです。 企業内業務で生成AIをどのように実装し利用していくかは今、皆様の大きな関心事項であられると思います。自社のDomino環境内で、Dominoアプリケーションを用い、Notesクライアントからそれが実現できることになります。 (画像クリックで拡大) Nomad for Web COM対応 またNomad for WebがCOMに対応したことにより、これまではNotesクライアントだけでしかできなかったExcelやPowerPointを埋め込んだDiminoアプリもブラウザから利用できるようになりました。 ライセンスダッシュボード:DLAUの統合 これまでGitHubからダウンロードしてセットアップしていたDomino License Analysis Utility (DLAU)がDomino内にデフォルトで統合され、The Domino License Administration (DLA) となりました。 (画像クリックで拡大) ライセンス改定 そしてライセンスにも大きなベネフィットが付加されました。CCB Termライセンスにはこれまで「Domino Leapで5アプリケーションまで開発・利用が可能」という権利が含まれていましたが、2025年7月1日からその制限がなくなりました。すなわち「2025年7月1日以後有効なCCB Termライセンスをお持ちのお客様は、Domino Leapのフル機能が利用できる」となります。 同時に、Domino Leapライセンスの利用範囲であるHCL Enterprise Integrator(HEI)の利用権利も含まれます。これでCCB Termライセンスのみで、追加費用なく「ブラウザによるノーコード/ローコード開発」「基幹業務とDominoアプリケーションの連携」が可能になります。 さらにCCB Termで利用できるSametime Chatで添付ファイルと画像添付も可能になりました。 ロードマップ Domino、Notes、Verse、Nomadなど各ソリューションについてのロードマップも紹介されました。先々の計画は出てこないものですが、このようにHCLから明確に提示されることにより、Dominoをお使いのお客様はこれからも安心して利用を継続していただけると思います。 Dominoのロードマップ(画像クリックで拡大) Notesのロードマップ(画像クリックで拡大) Nomad, VerseといったエンドユーザーのUI部分が短期間でバージョンアップされていく。(画像クリックで拡大) お客様事例:曽根田工業 様 Dominoユーザーの有限会社曽根田工業 代表取締役 曽根田 直樹 様より、Domino事例のご講演がありました。曽根田様は2001年に静岡県磐田市で個人で起業され、切削機械の刃物を製造されています。曽根田様のお話で非常に興味深かった部分を抜粋致します。 "独立・起業するにあたり、前職で使っていたNotes/Dominoを自社でも使うことにした。現在は大手メーカーからの発注依頼や過去に作った品番の再発注など数多く受けており、当時のCAD/CAMのデータや販売管理データなどをDominoに入れて運用している。 オンプレミス環境のリスクやセキュリティ、IT技術のトレンドに合わせてクラウド化を検討した場合、Dominoからは離れたほうがいいのではないか?と思い、他社SaaS製品も検討しトライアルで利用登録をした。 しばらく触れずにいたところ、アカウント情報に登録していた支払い口座から利用料の引き落としがされていなかったためアカウントが凍結、さらに保存していたデータも突然消去されてしまっていた。支払いが滞っただけで中身まで削除されてしまうようなシステムには会社の大事な資産であるデータを載せられないので、「Dominoを『やめることを止める』判断」をした。" Dominoから他製品への移行を検討され断念されるお客様は多く、その理由は「Dominoの業務アプリケーションを、サービス内容を落とさずに別プラットフォームに移行することがはなはだ困難である」ということをよくお聞きしますが、この点にも意外な理由が潜んでいました。 最後に 初の2年連続開催となった今年のDominoHubは、コミュニティの力を象徴するかのような盛り上がりを見せました。14.5のリリース、生成AIの実装、ライセンス強化など、今後のDominoの発展を確信させる要素が数多く披露されたほか、実際のユーザー事例も非常に示唆に富むものでした。加えてロードマップの提示による未来への安心感も得られました。 DominoHubは単なる情報共有の場に留まらず、技術、コミュニティ、そしてビジネスの未来を交差させる特別な場となっています。これからもこのような取り組みが継続していき、多くのDominoユーザー、デベロッパー、そして販売パートナーが更なる価値を引き出していけることを楽しみにしています。これからもDominoと私たちの未来を築いていきましょう。 関連情報 「Domino Hub」大阪開催 Domino Hubは、2025年9月18日に大阪でのオンサイト開催が決定致しました。詳細およびお申し込みについては、こちらのリンクからご確認ください。 お問い合わせ エヌアイシー・パートナーズ株式会社E-mail:voice_partners@niandc.co.jp   .highlighter { background: linear-gradient(transparent 50%, #ffff52 90% 90%, transparent 90%); } .anchor{ display: block; margin-top:-20px; padding-top:40px; } .btn_A{ height:30px; } .btn_A a{ display:block; width:100%; height:100%; text-decoration: none; background:#eb6100; text-align:center; border:1px solid #FFFFFF; color:#FFFFFF; font-size:16px; border-radius:50px; -webkit-border-radius:50px; -moz-border-radius:50px; box-shadow:0px 0px 0px 4px #eb6100; transition: all 0.5s ease; } .btn_A a:hover{ background:#f56500; color:#999999; margin-left:0px; margin-top:0px; box-shadow:0px 0px 0px 4px #f56500; } .bigger { font-size: larger; } figcaption { color: #7c7f78; font-size: smaller; }

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