2017年07月

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クラウドとデザイン思考 Vol.1 ~そもそも最近よく聞くデザイン思考って何?~

最近「デザイン思考」という言葉をよく聞くようになってきました。IBM社が大量のデザイナーを採用していると話題となっています。そんな中、そろそろ「デザイン思考」って何?自社も取り組むべきなの?と、疑問に思っている方も多いのではないでしょうか。

Wikipedia によると「デザイン思考」とは、

” デザイン思考(でざいんしこう、英: Design thinking)とは、デザイナーが
デザインを行う過程で用いる特有の認知的活動を指す言葉である。”

とのことですが、正直いいまして、私には全く理解できませんでした。

もう少しわかりやすい定義はないかと探してみますと、イノベーション創出サービスを提供する btrax の記事によると、

” 全てを “Why” から始め、最終的にイノベーションを創り出すプロセス”
出展: btrax, 「【やっぱりよくわからない】デザイン思考ってなに?

とあり、問いを元にイノベーションを創出するための過程とのことで、おぼろげにその概要が見えてきました。

しかし、これでもデザイン思考とは何なのかを理解するにはなかなか難しいと感じました。
そこで、最近よく聞くこの「デザイン思考」について書いてみたいと思います。

 

ユーザー中心の思考法からイノベーションを生み出す

 

思考法としての起源は1960年代後半にさかのぼるようです。ビジネスへの応用は、スタンフォード大学で、後に IDEO を創業するデビッド・ケリーによって開始されたと言われています。 ※ IDEO :カリフォルニア州パロアルトに本拠を置くデザインコンサルタント会社

デザイン思考の「デザイン」とは、いわゆる、デザイナーが絵を描いたり、色を塗ったりすることではありません。デザインには、「新しい機会を見つける為の問題解決プロセス」という定義もあり、デザイン思考においては、この意味になります。

デザイン思考のビジネス応用の研究をスタートさせたスタンフォード大学には d.school という学科横断型のプログラムがあります。機械工学、コンピュータサイエンス、ビジネス、法律、文学など様々な学部学科から学生や教職員が集結、デザイン思考を学びながら、分野を越えてイノベーションを生み出していく力を身につけています。

その d.School 発行のデザインガイドによるとデザイン思考には、5つのステップがあります。

DesignThinkingProcessImage_600px

デザイン思考、人間中心の協調的問題解決アプローチ

Step1: 共感(Empathize)    ・・・ 共感のためのヒアリング
Step2: 問題定義(Define)    ・・・ 本当に解決すべき問題を定義する
Step3: 創造(Ideate)       ・・・ 問題解決のアイデアを拡散させる
Step4: プロトタイプ(Prototype) ・・・学びを得るために試行する
Step5: テスト(Test)      ・・・ 解決策を改善し評価する

※ 上記のステップを繰り返し改善する

これらを進め、繰り返していくことで、既成概念を排除し、ユーザーに焦点を当てた商品やサービス、またチーム全員が同じ方向を目指して、デザインすることが可能となります。

デザイン思考において最も重要なことは、「ユーザーに焦点を当てる」ということです。とにかく、デザイン思考は、ユーザー中心、ユーザー・ドリヴンな思考法ということがポイントです。

 

なぜいまデザイン思考なのか?

 

それでは、なぜ今、デザイン思考が注目されているのでしょうか。

現在、グローバルエコノミーにおける先進企業は、生き残りをかけ、イノベーションを生み出し続けなければならい状況にあります。日本では、優等生とされていた大企業の没落、海外企業への身売りなど、これまでのビジネスモデルや製品サイクルが急激に変化する状況にあります。

日本のみならず、全世界的に新興国発の企業、またベンチャー企業などから攻勢を受け、競争も激化し、大胆に収益モデルの転換を余儀なくされています。

また、スマートフォンを始めとするテクノロジーはどんどん進化するものの、成熟した社会におていては、ヒット商品が生まれにくい状況にあります。単なる性能強化や機能の充実では消費者を満足させ続けられなくなってきています。

このような状況下において、顧客が真に欲するもの、顧客すら気づいていないニーズを掘り起こす、「イノベーションを生み出し続ける」ユーザー中心の思考法としてデザイン思考が注目されているのです。

 

IT 業界と「デザイン思考」

 

さて、それでは我々の IT 業界でのデザイン思考の浸透度はどのようなものになっているのでしょうか。

日経ビジネスオンラインによると IBM 社はグローバルで、

“2012年には375人にすぎなかったIBMの社内デザイナーの数は、2015年には1100人にまで増加。さらに2017年には1500人に増やす計画だ。”

出展: 日経ビジネスオンライン, 「米IBM、2017年にはデザイナー1500人体制へ」, 2016年7月28日

としており、デザイン思考を現場で実践するためのデザイナーを相当な勢いで増やしています。

また、

“独ソフトウェア大手SAPも変革の手段としてデザイン思考を活用したグローバル企業です。直近5年で全世界の売り上げを1.4兆円から2.7兆円まで2倍近く伸ばした背景に、デザイン思考がありました。”

出展: Forbes, 「世界的企業は今、なぜ「デザインx経営」なのか?」, 2017年3月29日

とあり、SAP は、デザイン思考によって既に結果を出している企業の一つとのことです。余談ではありますが、スタンフォード大学の d.School は、SAP 創始者のハッソ・プラットナーの個人の寄付により設立されたことからも早い段階から SAP がデザイン思考に注目していたことがわかります。

Salesforce 社でも Ignite と呼ばれるデザイン思考の専門支援チームが、顧客のためのデジタル・トランスフォーメーションのビジョン作りを支援しています。

例を挙げるときりがないほど、多くの IT 企業でデザイナーが活躍し、デザイン思考が活用されていることがわかります。

 

以下は Techcrunch が、IT関連企業でのデザイナーの需要はこれまでになく高まっているとし、6社でのザイナーとディベロッパーの比率を割り出したもののまとめです。
明らかに、IT 関連大手企業でのデザイナーの採用が増えていることがわかります。

Atlassian Dropbox Intercom
2012年 2017年
1:25 → 1:9
2013年 2017年
1:10 → 1:6
2017年
1:5
LinkedIn Uber IBM
2010年 2017年
1:11 → 1:8
2017年
1:8
2012年 2017年
1:72 → 1:8

出典: Techcrunch, 「過去5年間でデザイナーの採用目標が倍増―
―大手6社のデータに見るデザイン人材の動向,
2017年6月2日

 

 

とは言ってもデザイン思考ってそんなに簡単なの?

 

それでは、デザイン思考を日本の IT 企業が実践していくことは、簡単なのでしょうか。

これは、「その会社による」としか言えません。

 

単純に「デザイナー」と呼ばれる方を社員として迎えたり、プロジェクトごとに配置したりすれば成功するようなものでもありません。前述の d.School がまとめた「デザイン思考に必要な39のメソッド」では、その題名だけからも 39 ものメソッドが必要というこで、その難しさを物語っています。

日本でもデザイン思考を大学で教えたり、研修が受けられるようになったりしてきました。しかし、短期研修ではなかなか上手く実践するところまで到達するのは難しく、また大学で勉強してきたとしても受け入れ側の態勢が整っていない、というのが現状のようです。

 

そこでまずは、自社が「デザイン思考」のメリットを享受しやすい文化にあるか?というところからチェックしてみるのはいかがでしょうか。

<デザイン思考のための社風チェック>

  • 行動よりも先にリスクに目が行ってしまう
  • 製品開発は、プロセスごとに縦割り、分業で、企画から製造までメンバーが共に創っている感覚がない
  • ユーザーの声を傾聴するよりもコントロールすべきだと考えている
  • ブレーンストーミングをやったことがない、やっても上手くいかない
  • 会議ではいつも決まった人が発言している

上記に一つでも当てはまることがあれば、デザイン思考を実践する前に自社のマインドセットを切り替えに注目した方がよいかもしれません。

 

多くのデザイナーを採用している IBM 社であっても、デザイン思考の導入には以下のようなアプローチを踏んでいます。

” IBMは巨大かつ複雑な組織で、製品のテクノロジーも複雑です。デザイナーが入社後、それぞれのチームに入る前に“橋”をかけるようなサポートを行う必要がありました。現在、新たなデザイナーに対して3カ月のブートキャンプ・プログラムを実施していますが、私は、その設計と運営、管理を行いました。

また、このデザイナー向けのプログラムを実施していく中で、IBM全社員に対しても、デザイン及びデザイン思考について教育を行い、会社を変化させないといけないことがわかりました。なぜなら、全社員も、企業としてどのような方向に変化していくのかを知る必要がありますから。

そこで一人でも多くのIBM社員がデザイン及びデザイン思考を体験し理解するための教育プログラムをつくりました。デザイナー向けから全社員向けに、私の役割はここ数年でこうした変化を遂げてきました。”

出典: Forbes,  「IBMがデザイナーを1000人雇い、デザイン思考を推める理由」, 2017年3月24日

 

まずは、デザイン思考を知り、この思考法を社内で展開できる雰囲気か判断し、そうでなければまずは、その目的づけ、会議や打ち合わせのやり方、ユーザーとの接し方、縦割りのプロセスなどを見直すところから始めてみてはいかがでしょうか。

いきなり、「デザイン思考」ありきからスタートすると、単なる思考法マニュアルになってしまい、「デザイン思考でやってみたが何も起こらない」となってしまう可能性があります。

それでは、デザイン思考そのものの恩恵を十分享受し、真のイノベーションに到達することは難しいでしょう。

 

クラウドとデザイン思考

 

では、具体的に何か製品開発にデザイン思考を応用した例はないかと探してみると、身近な良い例がありました。それはBluemix です。Bluemix はデザイン思考を元に開発された製品なのです。

”The Bluemix team used IBM Design Thinking to focus on users—not functions or capabilities—with the goal of letting developers focus on their work, rather than on infrastructure and configuration.

【抄訳】Bluemix チームは、IBM デザイン・シンキングを使用して、インフラやコンフィグではなく、開発者が自分の仕事に集中できるように、「ユーザー」~ 機能や能力ではない ~ に焦点を当てました。”
出展: IBM Design, 「Case study: IBM Bluemix」, 2014年7月17日

また、当プロジェクトでは、多くの人数と時間をユーザーとの時間に費やし、マネジメント、エンジニアリング、設計、マーケティングに至るまで、一同が関わり、共創することで、計画より半年以上前倒しして、Bluemix を完成させることができたとのことです。

ここでは、多くを触れませんが、このような形で、IBM 社のクラウド戦略の根幹をなす製品開発にデザイン思考が活用され、成果が出ていることがわかります。

 

Bluemix でのケーススタディでもわかる通り、イノベーションのプラットフォームとしてのクラウド活用が今後進んでいくことは間違いないでしょう。それは、Bluemix の特長を例にとると、

  • 100以上のサービス連携が提供される
  • これらの組み合わせで、より早く幅広いアプリケーションを作ることが容易
  • 使用インスタンス等で課金されるため都度必要な分のコストで小さく始められる

など、デザイン思考のような、プロトタイピングを重視する早期実行型の思考法にマッチしやすいと考えられるからです。

今後は、IT企業だけではなく、別業態からもクラウドを中心にイノベーションを進めていく企業がどんどん増えるはずです。これらの企業や迎え撃つ既存の IT企業の開発者は、サーバー構築や運用の労力にとらわれず、プログラミングに集中できるBluemix をベースに新たなサービスを模索したり、構築を進めたりすることは自然な選択ではないでしょうか。

更に、デザイン思考をベースに開発された Bluemix 上で、デザイン思考を活用し、イノベーションを実現する、これらは非常に相性の良い組み合わせかと容易に想像できます。

 

今後もデザイン思考の取り組みにも注目していただければ幸いです。次回は「デザイン思考導入を阻むもの」について考えてみたいと思います。

 

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2024年04月08日

【てくさぽBLOG】watsonx Assistant + Watson Discovery + watsonx.aiを連携してみた

こんにちは。てくさぽBLOGメンバーの高村です。 ビジネスへの生成AI の取り込みに注目が集まっている今日、watsonx.ai をどう活用すればいいのか、多くのお客様からお問い合わせ頂いています。そこで前回の「【てくさぽBLOG】IBM watsonx.aiを使ってみた(Part2)」では、watsonx.ai のユースケースとして Retrieval-Augmented Generation(以下 RAG)をご紹介しました。 今回は、RAG の仕組みを利用し AIチャットボットを提供する「watsonx Assistant(以下 Assistant)」と検索エンジン機能を提供する「Watson Discovery(以下 Discovery)」、「watsonx.ai」を組み合わせた連携ソリューションをご紹介します。 目次 AssistantとDiscoveryの連携 watsonx.aiを取り入れた連携 Assistant + Discovery + watsonx.aiを連携してみた さいごに お問い合わせ AssistantとDiscoveryの連携 本来なら各製品を一つのブログで詳しくご説明したいところですが、今回は連携した結果についてのご紹介となりますので、Assistant と Discovery については今後のブログであらためてご紹介したいと思います。 Assistant は watsonx の大規模言語モデルが搭載され、自然言語の問い合わせを理解し、適切な回答を返すことができるチャットボット機能を提供する製品です。一方 Discovery はドキュメントから適切な情報を検索する検索エンジン機能、パターンや傾向を読み取る分析エンジンとしての機能を備えた製品です。 Assistant と Discovery を組合わせたユースケースでは Assistant にあらかじめ回答を用意してルールベースで回答させ、答えることが難しい問い合わせに対しては Discovery の検索結果を利用して回答します。 watsonx.aiを取り入れた連携 上記の連携では Discovery の検索結果がユーザーに表示される仕組みとなっていますが、watsonx.ai を介して回答を提供することでDiscovery が得た検索結果をさらに整理し、より理解しやすい形での返答が実現できます。 Assistant + Discovery + watsonx.aiを連携してみた Assistant、Discovery、watsonx.ai を連携してみます。 事前準備 利用環境 今回は IBM Cloud で提供される SaaS を利用して検証します。なお、Assistant と Discovery の Plusプランは30日間無償期間が付属されていますので、是非ご活用ください。 watsonx Assistant:Plusプラン(30日間無償期間あり、以降は有償) Watson Discovery:Plusプラン(30日間無償期間あり、以降は有償) watsonx.ai:Essentialプラン(有償) 検証の目的 検証では構築手順の他、以下の点を確認します。 「Assistant + Discovery + watsonx.ai」と「Assistant + Discovery」の連携による回答の違いを比較 言語モデルを変えて問い合わせを行い、回答の違いの比較 実施手順 以下の流れで検証を実施します。 Assistantのプロビジョニング Discoveryのプロビジョニング、検索対象とするデータの取り込み※取り込むデータは「IBM Power S1014 データシート」のS1014のPDF watsonx.aiのプロビジョニング Assistantの初期設定 Assistantのカスタム拡張機能からDiscoveryを繋げる Assistantのカスタム拡張機能からwatsonx.aiを繋げる Assistantアクションの作成、問い合わせの検証 言語モデルを変えて問い合わせの検証 検証実施 1. Assistantのプロビジョニング はじめに Assistant のプロビジョニングを行います。 IBM Cloud にログインし、カタログ画面から "Assistant" を選択します。 ロケーションとプランを選択し「作成」をクリックします。 しばらくすると以下の画面の様に、Assistant がプロビジョニングされます。 2. Discoveryのプロビジョニング 次に Discovery をプロビジョニングします。 カタログ画面から "Discovery" を選択します。 ロケーションとプランを選択し「作成」をクリックします。 しばらくすると以下の画面の様に、Discovery がプロビジョニングされます。※ここで、資格情報内にある「API鍵」と「URL」をメモに控えます 「Watson Discoveryの起動」をクリックし「New Project +」をクリックします。 Project name に任意の名前を入力、Project type では「Conversational Serch」を選択し「Next」をクリックします。 作成されたプロジェクトをクリックします。 「Integration Deploy」をクリックします。 「API Information」タブをクリックし「Project ID」をメモに控えます。 次に検索対象の PDF を Discovery に取り込みます。 「Manage collections」から「New collection +」をクリックし、「Collection name」に任意の名前を入力、「Select language」を「Japanese」に設定します。 Upload files の領域に PDF をドラッグアンドドロップして「Finish」をクリックします。 アップロードが完了しました。次に、Smart Document Understanding機能(以下 SDU)を利用して PDF内のヘッダーやテキストなどのフィールドを定義します。 SDU は、PDFをはじめとする非構造化データの文書構造を理解して検索や分析の精度を向上させる機能です。例えばタイトルと定義した箇所を検索キーとしたり、検索対象をテキストと定義した箇所のみとするなど可能になります。 「Identify Field」タブをクリックします。 取り込んだ PDF が表示されるので右側の Field labels からヘッダー箇所やタイトル箇所などをドラッグアンドドロップして指定していきます。 ページの定義が終わったら「Submit page」をクリックして次の頁を定義していきます。 SDU では数ページ指定すると自動的にヘッダー箇所やテキスト箇所を認識してくれるので、何ページもあるドキュメントには便利な機能です。 今回は SDU を使って PDF の文書構造を定義しました。SDU以外の Discovery の機能については、また別の機会にご紹介したいと思います。 3. watsonx.aiのプロビジョニング ※watsonx.ai のプロビジョニング方法は「【てくさぽBLOG】IBM watsonx.aiを使ってみた(Part1)」をご参照ください。 4. Assistantの初期設定 Assistant の初期設定を行います。 Assistant を起動します。 起動後、以下の項目を入力します。 Assistant name:任意の名前を入力 Assistant Language:「English」を選択※日本語を選択することが可能ですが、Assistant のスターターキットは英語での利用を想定しているため今回はEinglishを選択します Assistant の公開先を「web」に設定します。※"Tell us about your self" 以降はご自身の情報を入力ください 入力後「Next」をクリックします。 デフォルトのチャットUI を利用するため「Next」をクリックします。 プレビュー画面が表示されるので「Create」をクリックします。(以下の画面は「Create」が隠れてしまっています) 「Congratulations!」と表示されたら初期設定は完了です。 5. Assistantのカスタム拡張機能からDiscoveryを繋げる 「Githubのassistant-toolkit」から "watson-discovery-query-openapi.jsonファイル" をダウンロードします。 Assistant のメニューから「Integration」をクリックします。 下にスクロールし「Build custom extension」をクリックします。 以下の画面が表示されるので「Next」をクリックします。 「Extension name」に任意の名前を入力し「Next」をクリックします。 先程ダウンロードした watson-discovery-query-openapi.jsonファイルをドラッグアンドドロップでアップロードします。 以下の画面が表示されるので「Finish」をクリックします。 追加した Extension の「Add +」をクリックします。 以下の画面が表示されるので「Next」をクリックします。 以下の画面が表示されるので、選択および入力します。 Authentication type:「Basic auth」を選択 Username:「apikey」と入力 Password:メモに控えたWatson DiscoveryのAPI鍵 discovery_url:メモに控えたWatson DiscoveryのURLから"http://"を除いた値 ※以下の画面ショットは discovery_url入力箇所が切れてしまっていますが、実際は「Servers」の下に discovery_url の項目があります 以下の画面が表示されるので「Finish」をクリックします。 Extension が「Open」となっていることを確認します。 これで watsonx Assistant と Watson Discovery が連携できました。 6. Assistantのカスタム拡張機能からwatsonx.aiを繋げる 次に、Assistant のカスタム拡張機能から watsonx.ai を利用できるように設定します。 設定には IBM Cloud の APIキーと watsonx.ai のプロジェクトID が必要です。取得方法は「【てくさぽBLOG】IBM watsonx.aiを使ってみた(Part2)」をご参照ください。なお、今回は東京リージョンで watsonx.ai をプロビジョニングします。 Github の「assistant-toolkit」から "watsonx-openapi.json" をダウンロードします。 Visual Studio Code などで東京リージョンの URL に編集し保存します。 Discovery の連携と同様に、Assistant のメニューから「Integration」「Build custom extension」をクリックします。 以下の画面が表示されるので、任意の Extension name を入力して「Next」をクリックします。 編集した watson-discovery-query-openapi.jsonファイルをドラッグアンドドロップでアップロードして「Next」をクリックします。 以下の画面が表示されるので「Finish」をクリックします。 追加した Extension の「Add +」をクリックします。 以下の画面が表示されるので、選択および入力します。 Authentication type:「Oauth 2.0」を選択 Grant type:「Custom apikey」を入力 apikey:取得済みのIBM CloudのAPIキー Client authentication:「Send as Body」を選択 Header prefix:Bearer(デフォルト) Servers:https://jp-tok.ml.cloud.ibm.com(自動入力) 以下の画面が表示されるので「Finish」をクリックします。 Extension が「Open」となっていることを確認します。 これで Assistant と watsonx.ai が連携できました。 7. Assistantアクションの作成、問い合わせの検証 Github の「assistant-toolkit」から "discovery-watsonx-actions.json" をダウンロードします。 Assistant の「Actions」から「Global Setting」をクリックします。 「Upload/Download」タブをクリックし、Uploadスペースに discovery-watsonx-actions.json をドラッグアンドドロップしてアップロードします。 以下の画面が表示されるので「Upload and replace」をクリックします。 以下の画面の通り、3つのアクションが作成されます。 メニューから「Variables」「Created by you」をクリックします。 「discovery_project_id」の値をメモに控えていた Discovery のプロジェクトID を入力し「Save」をクリックします。 「watsonx_project_id」の値をメモに控えて置いた watsonx.ai のプロジェクトID を入力し「Save」をクリックします。 「model_id」の値で watsonx.ai で使用する言語モデルを指定します。2024年2月29日に GA された日本語で訓練された Granite-japaneseモデルを使用するため、「ibm/granite-8b-japanese」を入力し「Save」をクリックします。(その他変数はデフォルト値とします) 「Actions」から「Generate Answer」を選択し、「model_input」の値を以下の例の様に日本語に変更します。 例: ("<s>[INST] <<SYS>>\nあなたは親切で、礼儀正しく、誠実なアシスタントです。常に安全を保ちながら、できるだけ役立つように答えてください。答えは簡潔に日本語で回答してください。回答には、有害、非倫理的、人種差別的、性差別的、有毒、危険、または違法なコンテンツを含めてはいけません。回答が社会的に偏見がなく、本質的に前向きであることを確認してください。\n\n質問が意味をなさない場合、または事実に一貫性がない場合は、正しくないことに答えるのではなく、その理由を説明してください。質問の答えがわからない場合は、誤った情報を共有しないでください。\n<</SYS>>\n\n質問に答えることで、次のエージェントの応答を生成します。タイトルが付いたいくつかの文書が提供されます。答えが異なる文書から得られた場合は、あらゆる可能性について言及し、文書のタイトルを使用してトピックまたは領域を区切ってください。与えられた文書に基づいて回答できない場合は、回答がない旨を記載してください。\n\n").concat(passages).concat("\n\n[question]: ").concat(query_text).concat("[/INST]") 以上で設定は完了です。 さっそく Assistant から問い合わせをしてみます。 右下の「Preview」をクリックします。 チャットから S1014 の特徴について問い合わせしてみます。約18秒後に以下の回答が返ってきました。 「Inspect」をクリックすると、Discovery の検索結果が以下の通り watsonx.ai に渡されていることがわかります。 <s>[INST] <<SYS>> あなたは親切で、礼儀正しく、誠実なアシスタントです。常に安全を保ちながら、できるだけ役立つように答えてください。答えは簡潔に日本語で回答してください。回答には、有害、非倫理的、人種差別的、性差別的、有毒、危険、または違法なコンテンツを含めてはいけません。回答が社会的に偏見がなく、本質的に前向きであることを確認してください。 質問が意味をなさない場合、または事実に一貫性がない場合は、正しくないことに答えるのではなく、その理由を説明してください。質問の答えがわからない場合は、誤った情報を共有しないでください。 <</SYS>> 質問に答えることで、次のエージェントの応答を生成します。タイトルが付いたいくつかの文書が提供されます。答えが異なる文書から得られた場合は、あらゆる可能性について言及し、文書のタイトルを使用してトピックまたは領域を区切ってください。与えられた文書に基づいて回答できない場合は、回答がない旨を記載してください。[title]: IBM Power S1014 柔軟かつセキュアなハイブリッドクラウド・インフ ラストラクチャーで俊敏性を実現[document]: 1 コ ア 当 た り 4 つ の M a t r i x Math Acceleratorによる迅速 なAI推論のために洞察と自動 化を合理化 業界標準のDIMMより2倍優 れたメモリーの信頼性と可用 性を提供 IBM® Power® S1014 は、1ソケット、4U Power10プロセッサーをベースにしたサー バーで、IBM AIX®、IBM iまたは Linux®上のビジネス・クリティカルなワークロード 向けに設計されています。Power S1014を使用することで、ワークロードはより 少数のサーバーに統合され、ソフトウェア・ライセンスの数、電力と冷却のコスト を削減します。Power S1014サーバーは、プロセッサー上でのメモリー暗号化を 使用してエンドツーエンドからデータを安全に保護し、ラック型またはタワーフォー ム・ファクターで購入できます。 プロセッサー・レベルでのメモリー暗号化と、POWER9 と比較してすべてのコア で4倍の暗号化エンジンによりコアからクラウドまでのデータを保護 ますます高度に分散した環境に存在するデータには、もはや境界線を設定すること は不可能です。 [question]: S1014の特徴は?[/INST] Assistant と Discovery のみの連携で検索した結果は以下の通りです。watsonx.ai を使用した方がより簡潔で分かりやすい回答を得られることが分かります。 8. 言語モデルを変えて問い合わせの検証 言語モデルを "llama-2-70b" にして同様の問い合わせをしたところ、約24秒後に回答が返ってきました。箇条書きで丁寧な印象です。 言語モデルを "elyza-japanese" にした際は10秒ほどで回答がありました。主語として「S1014の特徴は」とあることで、問いに対する回答が分かりやすくなっています。 言語モデルを変えて試した結果、llama-2-70B は箇条書きで回答し丁寧な印象を受けましたが、回答が得られるまでに24秒かかりました。一方 Granite-japanese や elyza-japanese はシンプルな回答を生成し、Granite-japanese は18秒、elyza-japanese は10秒というより短い時間で回答を得られました。 Watson Discovery の検索結果に基づき watsonx.ai で回答を生成するので、ある程度時間がかかると予想していましたが、elyza-japanese は速い回答で主語を添えてわかりやすく回答してくれました。 また、llama-2-70B は汎用的で使いやすいモデルですが、プロントで「日本語で回答して」と指示をしても問い合わせ内容によっては英語で回答することがありました。日本語の回答精度を求める場合は、Granite-japanese や elyza-japanese を使用した方が精度の高い回答を得ることができます。 モデルを変えて問い合わせてみると、モデルごとに得意なタスクが異なることがわかりました。数百億のパラメータで訓練された大規模言語モデルを一概に選択するのではなく、言語やタスクの特性に合わせて最適なモデルを選定することが重要になりそうですね。 さいごに いかがでしたでしょうか。Github から提供されているスターターキットを使って Assistant、Discovery、watsonx.ai を繋げてみましたが、ほどんど躓くことなく UI から簡単に設定することができました。 接続自体に高度な難しさは感じませんでしたが、問い合わせに対して正確な情報を得るためには Assistant の検索設定を調整する必要があります。今回は1つの PDFファイルの検索を行いましたが、複数の PDFファイルから情報を引き出す際には Assistant で query を設定することで特定の PDFファイルからの検索が可能です。 このように PDF などの非構造化データを検索対象として精度の高い回答を得るには、Discovery において文書の構造を明確に定義し、Assistant の検索設定を調整することが必要です。 実際にヘルプデスクなどの Webチャットで利用する場合は、Assistant にあらかじめ用意した回答をルールベースで回答させ、それでも解決できない問い合わせについては Discovery を通じて検索を行い、watsonx.ai を用いて回答を生成するという流れが効果的です。 ただし、生成AI によって生成される回答は常に”100%正確な回答”ではないので、より高い精度の回答を追求するためにはプロンプトの調整などチューニングを施すことが必要です。その結果、より使いやすい Webチャットの実現が期待できます。 お問い合わせ エヌアイシー・パートナーズ株式会社E-Mail:nicp_support@NIandC.co.jp   .highlighter { background: linear-gradient(transparent 50%, #ffff52 90% 90%, transparent 90%); } .anchor{ display: block; margin-top:-20px; padding-top:40px; } .btn_A{ height:30px; } .btn_A a{ display:block; width:100%; height:100%; text-decoration: none; background:#eb6100; text-align:center; border:1px solid #FFFFFF; color:#FFFFFF; font-size:16px; border-radius:50px; -webkit-border-radius:50px; -moz-border-radius:50px; box-shadow:0px 0px 0px 4px #eb6100; transition: all 0.5s ease; } .btn_A a:hover{ background:#f56500; color:#999999; margin-left:0px; margin-top:0px; box-shadow:0px 0px 0px 4px #f56500; } .bigger { font-size: larger; }

2024年01月16日

【イベント開催レポート】IBM watsonx.ai ハンズオンセミナー

こんにちは。ソリューション推進部です。 2023年12月12日に、エヌアイシー・パートナーズ株式会社として初めてのハンズオンセミナー『「IBM watsonx.ai 」を利用したRAGのハンズオンセミナー』を開催しました。 今回のハンズオンセミナーは、以下の2つのことを目的として行いました。 パートナー様に製品の紹介とハンズオンを合わせて体験いただくことで、製品をより深く知っていただくこと 製品を活用したビジネスの新たな応用の可能性を見つけ出していただくこと 私たちのチームでは、パートナー様にご紹介・ご説明する製品を「実際に触ってみること」を大切にしています。これは私たち自身の技術力の向上という目的もありますが、パートナー様に私たちのリアルな経験を交えながら製品のご説明をすることが、お客様の具体的な課題発掘や案件創出に繋がっていると考えているためです。 今回のハンズオンを通して、パートナー様ご自身が製品の価値を体感しご理解いただくことで、新しいビジネス展開のイメージを創出するお役に立ちたいと考えました。 それでは、今回実施したセミナーの内容について簡単にご紹介いたします。 目次 レポート watsonx.ai紹介講義 ハンズオン実施 IBMさまによる最新情報紹介・講義 さいごに お問い合わせ レポート 1. watsonx.ai紹介講義 ハンズオンを実施する前に、watsonx.ai と RAG についての講義を行いました。 国内では生成AIビジネスが加速し、競争力やセキュリティなどの課題が増えています。これらの課題を解決する製品として、IBM watsonx をご紹介しました。 watsonx は「watsonx.ai」「watsonx.governance」「watsonx.data」という3つの製品から成り立っています。watsonx.ai は、基盤モデルをベースとした AI開発スタジオです。 ここでは、IBM が信頼できるデータを用いて事前に学習した基盤モデルや Hugging Face, Inc.* と連携したオープンソースの基盤モデルが利用可能で、ビジネスの状況や要件に応じて最適な基盤モデルを選択することが可能です。 また、RAG についての概念や利点、活用が期待されるシーンもご説明しました。RAG を用いた具体的なユースケースとしては、IBM Watson Speech to Text や Watson Discovery、watsonx.ai を活用したコールセンター業務の事例や、watsonx Assistant や Watson Discovery、watsonx.ai を活用した ECサイトの問い合わせの事例を取り上げました。 時間の制約からこれら2つの事例しかご紹介できませんでしたが、今後、watsonx.ai を活用した多様な事例を私たち自身も理解し、パートナーさまと共に議論を深めていきたいと思います。 *Hugging Face, Inc.:機械学習 アプリケーションを作成するためのツールを開発しているアメリカの企業。 2. ハンズオン実施 ハンズオンでは、受講者の方々に「RAG」を活用した watsonx.ai の Foundation Model(LLM)への問い合わせを体験していただきました。 RAG とは「Retrieval-Augmented Generation」の略で、LLM への問い合わせをする際に、事前に用意したベクターストアへデータ(今回はPDF)を取り込んでおき、問い合わせプロンプトをもとにベクターストアを検索し、その結果を付与して LLM へ問い合わせを行う、というテクノロジーです。 RAG を使うことで、一般公開されていない社内情報を活用して LLM を利用することが可能となるため、自社での利用やお客様の課題を解決するための方法として有効であると考えています。 ハンズオンの環境につきましては、準備に時間をかけずスムーズに始められるよう、事前に弊社にて PC や RAG を利用するための Jupyter Notebook を用意いたしました。 また、watsonx.ai では複数の Foundation Model を利用できるため、複数のモデルを使って挙動の違いを確認してみたり、取り込む PDFファイルを追加することで回答がどう変わるのか、など、ご自身で自由に検証をする時間を多く設けました。皆さまそれぞれに前提スキルは異なっていたかもしれませんが、「体験の時間が足りない…」ということはなかったかと思います。 今回ベクターストアへ取り込むのは PDF のみとしましたが、テキストファイルや PowerPoint なども取り込むことができるので、応用できる使い方が非常に広いということを理解いただけたのではないかと感じています。 3. IBMさまによる最新情報紹介・講義 日本アイ・ビー・エム データ・AI・オートメーション事業部 四元さまに「watsonx」に関して、最新事例と製品アップデート情報の2本立てで講義をしていただきました。 事例においては、IBM社内の watsonx活用事例(AskIT)は特筆すべきと言えるでしょう。 AskIT は、IBMの自然言語処理(NLP)能力を活かし、30万件を超えるサポートチケットから抽出された知見をもとに、重要なサポートトピックに迅速に対処する AIアシスタントとして開発されたそうです。このツールは4ヶ月で133,000人の IBM社員に利用され、問い合わせの75%以上が AI によるチャットで解決されるなど、非常に大きな成果を上げています。 製品アップデート情報のメインは、12月に発表された「watsonx.governance」でした。 AI を組織として採用するためには倫理感のある意思決定が必須であり、watsonx.governance は AIガバナンスとして以下の3つの機能を提供する製品である、というご説明をいただきました。 AIライフサイクルを通してAIモデルの実態を把握するための「モデル・インベントリ」 AIの性能や課題の管理などを行う「評価・モニタリング」 総合監視画面を提供しリスクを可視化する「モデル・リスクガバナンス」 モデル・インベントリでは、他社の AI商品である「Amazon SageMaker」「Azure Machine Learning」などの AIモデルも合わせて管理・監視できることが非常に興味深いです。 watsonx は、AIワークフローを一貫してサポートすることで倫理的かつ透明性の高い AI利用を可能にしています。これらの技術革新は私たちが直面している数多くの課題に対する解決策を見出し、先進的なビジネス環境を促進していく上での重要なステップと言えるでしょう。 日本アイ・ビー・エム株式会社 データ・AI・オートメーション事業部 四元 さま さいごに セミナー後には、参加いただいたパートナーさまとご支援いただいた IBMさまとの懇親会を開催いたしました。 当懇親会を通してパートナー様の生成AI に対する取り組みや課題を直に伺うことができ、大変有意義な場となりました。 2023年12月18日に弊社は10周年を迎えました。10年間で培った経験を糧にし、今後さらに新しい取り組みにチャレンジしていきたいと考えております。 本年も、ブログを通してパートナーの皆さまへ様々な情報をお届けさせていただきます!今後ともどうぞよろしくお願いいたします。 懇親会会場 お問い合わせ エヌアイシー・パートナーズ株式会社E-Mail:nicp_support@NIandC.co.jp   .highlighter { background: linear-gradient(transparent 50%, #ffff52 90% 90%, transparent 90%); } .anchor{ display: block; margin-top:-20px; padding-top:40px; } .btn_A{ height:30px; } .btn_A a{ display:block; width:100%; height:100%; text-decoration: none; background:#eb6100; text-align:center; border:1px solid #FFFFFF; color:#FFFFFF; font-size:16px; border-radius:50px; -webkit-border-radius:50px; -moz-border-radius:50px; box-shadow:0px 0px 0px 4px #eb6100; transition: all 0.5s ease; } .btn_A a:hover{ background:#f56500; color:#999999; margin-left:0px; margin-top:0px; box-shadow:0px 0px 0px 4px #f56500; } .bigger { font-size: larger; }

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