2013年07月

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実際どうでしょう Vol.8「Webアクセス分析業務には価値がある、しかしそれだけではツライ」

普段の製品・ソリューション紹介だけでは聞き出せない情報を「実際のところはどうなんだろう?」という素人視点で、専門家に聞いてみるシリーズです。

題して「実際どうでしょう」。。。どうぞ、ご覧ください。

 

<聞いてみて良かった(*´ω`*) メリひろ担当がエキスパートにインタビュー>

IBM 田村様インタビュー

「MERITひろば」の運営においても、Webサーバの生ログを分析したり、Google Analyticsを利用してアクセスログは見ているのですが、「ログ分析作業だけでは辛い」という担当者の心理をついた解説がわかりやすかったです。(インタビュアー:重山)

プロフィール:日本アイ・ビー・エム株式会社:田村 浩二さん(写真左)

2002年早稲田大学を卒業後、国内広告代理店へ入社。
その後、Web系システム開発会社、デジタルマーケティングコンサル・Web開発会社での勤務を経て2011年1月よりIBMの戦略フォーカスである Smarter Commerce ならびに Enerprise Marketing Management (EMM)部門へ参画。

EMM各製品のプリセールスを担当。
趣味は波乗りと釣りとデジタルマーケティングの最前線で日本のWebビジネスを改革していくこと。

※2013年7月時点のプロフィールです。

 

製品視点ではなく、お客様の商売、立場で何を解決できるのかという視点を大切に

— いきなり素人発言で恐縮ですが、IBMが提唱しているインダストリーソリューションズ、スマーターコマース、エンタープライズ・マーケティング・マネジメント(以下EMM)の分野は沢山の製品群が存在していて、良くわかりません。一つずつの製品機能は見れば”なんとなく”わかるのですが・・・(重山)

田村:いえ、お客様もそう思われているでしょう。EMMを中心に、製品視点ではなく、ソリューション、つまりお客様のビジネスにおいて、どの領域で何を解決できるのかというシナリオ視点でご紹介差し上げます。このスライドをご覧ください。

 


エンタープライズ・マーケティング・マネジメント(EMM)はプラットフォーム

 

田村: EMM(Enterprise Marketing Management、またはIntegrated Marketing Management)という考え方は、ガートナーが提唱しています。IBMはそのEMMを5つのマーケティング業務のプロセスとして定義しています。

デジタルマーケティングを含む企業のマーケティング業務には、収集、分析、決定、配信、管理というプロセスがあります。

分析の前にデータを集められるようにする、収集ですね。対象はお客様のお客様(消費者、エンドユーザ、個人)で、データはその人付随するプロファイル(誰、どこから、サイトの行動、取引履歴、コンタクト履歴)です。プロファイル情報を集めるのにも一苦労ですが、これらを人が見てわかるようにするのが分析ですね。

分析は「MERITひろば」でも実施していると伺っているGoogleAnalytics等のツールを使った分析ですね。IBMでは(旧称)Coremetricsという製品が該当します。ここまでの収集、分析は、ITツールを駆使して運営されている会社は増えてきました。

重要なのは、「この顧客には何をすべきか」という最良のマーケティングアクションを決める決定プロセスです。分析データから何を決定して、お客様にアウトバンド、インバンドを含めたコミュニケーション手段で配信して、その結果から何を得るか、このプロセス全体をどのように管理するかと続きます。

 

分析業務は次のアクションに繋がらないとわかるとつまらない作業

—- この図は全体を俯瞰できますね。私は、Web担当として、分析することに手一杯で次の決定以降の作業に繋がっていないという悩みはあります。

 

田村:はい。ちょっと乱暴な言い方ですが、分析はつらい作業ですし、次のアクションにつながらないとわかるとつまらない作業なのです。

— ありがたいです。実はその「分析はつまらない」という感覚にはすごく共感してしまいます。(笑)

田村:そうですね。この発言だけ取り上げられると私も立場上よろしくないのですが・・・(笑)しかし、お客様の本音だと思っています。

もちろん、分析には価値があるのですが、そこだけフォーカスして製品機能を語っても不十分です。

—- 発言内容はインタビュー記事を公開する前にチェックしてもらいますので、まずい解釈や表現は適切に編集しますから言ってください。(笑)

田村:はい。お願いします。(笑)

田村:実は先日、製造業のお客様への提案で、分析領域の説明はあえて減らしてみました。決定以降のプロセスの話を重点的にしたところ、ご担当者様も激しく同意してくださいました。

つぎに、業務担当者の領域別にソリューションを見てみましょう。



 

この図に製品名を大雑把に当てると以下のとおりです。

1.デジタル・マーケター向け :旧Coremetrics

2.カスタマー・リレーションシップマーケター(CRM) :旧UNICA

3.マーチャンダイジング、営業企画:DemandTec

4.マーケティング・リーダー  :旧 UNICA Marketing Operation

5.コールセンター、Web担当(注:上図には記載なし) :Tealeaf

 

Google アナリティクスでもそれなりのことができますよね?

— この図は、どの業務のお客様に何を話すのかという整理ができていいですね。

では、ここまで聞いておきながら更に素人質問をしますが、Google Analytics(以下GA)があれば分析から決定作業につなげるレポートまで対応できているのではないかと思っていますが、いかがでしょうか。配信・管理は別だとは思いますが。GAは無料で使えますし。他の分析ツールと比較したことはないのですが、機能に遜色はないのではないかと思っています。

 

田村:良い質問ですね。

では、先ほどは5つのプロセスの話をしましたが、次はそのプロセスに製品を当て込んだスライドをご覧ください。


 

 

 

田村:英語の資料ですみません。一番左のCollectが収集、以下Analyze(分析)、Decide(決定)、Deliver(配信)、Integrate(統合、管理)のプロセスをレイヤーに分けて記述しています。丸の枠の中が各製品機能に該当します。

— あ、右上に新製品の「Tealeaf(ティーリーフ)」が入っていますね。ロゴ画像で、丸の囲みではないですが。

 

田村:新製品なので後から資料に足しているがバレましたね(笑)

Tealeafについては、後ほど紹介させてください。

先ほどの質問に戻りますが、分析ツールの話は、Analyzeのレイヤーの「Digital Analytics」の丸の中の話になるのです。

—- 全体から見ると本当に一部分なのですね。

 

特定の領域だけで製品比較に注力しているだけでは全体の課題解決には到達できない

 

田村:はい。この領域で、GAや他社のエンタープライズ向け製品・・という比較に注力していても全体の課題解決にはなかなか到達できません。

— なるほど、Web担当者だけの視点ではありがちな議論ですね。

おや?Analyzeのレイヤーにある丸囲みの「Impression Attribution」とは何でしょうか。

 

田村:ネット広告業界において、アトリビューションとは、広告効果測定のことを示し、ここ数年昔から使われている効果測定の考え方のひとつです。クリックの前の「露出(インプレッション)」が後の成果にどれだけ貢献したかを理解する為の効果測定の手法です。

—- MarketingROIの領域ですね。知ったかぶりですみません。以前、広告代理店やデジタルマーケティング会社に在籍されていた田村さんなら当たり前の領域かも知れませんが、システムインテグレーター界隈の人間には馴染みがあまりない言葉に感じました。

では、先ほど触れた「Tealeaf」について教えて下さい。

 

サイト訪問者の行動を後からビデオ再生のように確認できる画期的なソフトウェア

田村:TealeafはWebサイトにおいて、利用者が直面した障害や問題などを可視化するソフトウェアです。利用者のWeb上での動線を再現することができる画期的なソフトです。

例えば、先日のサッカー日本代表戦を例にすると、試合結果が1対1だったと示すのがWeb分析ソフトウェアです。一方、その90分間に何があったのか、本田が後半46分に相手のハンドを誘ってPKを決めて・・・という過程を教えてくれるのがTealeafです。

—- 分かりやすい例えです。(笑)それにしても、どうしてそのようなユーザが見たWeb行動を再生できるのでしょうか。通常のツールはブラウザのクッキー情報を取得して分析対象としているだけで、そのような個別のトレースは難しいと思うのですが・・・

田村:Tealeafはパケットをキャプチャしているのです。クッキーベースの製品とは根本的に違います。これによって、特定のサイト訪問者のWeb行動をビデオ再生しているように見て取れますので、非常に分かりやすいのです。ちょっと売込み宣伝になりますが、現時点で明確な競合製品もなく、引き合いが多い製品です。

—- でも、お高いのですよね?(笑)

田村:確かに定価で1千万円台(注:インタビュー時点での価格)ですが、PV(ページビュー)課金でご利用いただけますし、売上が発生するチャネルにおいて、Webが占める割合が高い、高くしたいお客様にとっては非常に有効なツールです。

 

Web分析市場は100億円、しかしビッグデータ市場で考えると3,000億円市場

—- この分野は今後も成長していくのですね。

田村:はい。少しマーケットの話をします。Web分析だけに限るとマーケットは100億円規模です。しかし、ビッグデータ市場として考えると3,000億円市場になるのです。

例えばIBM Digital Aalytics Accelerator(DAA)はWeb分析ソリューションとしてこの3,000億円マーケットに投入されています。IBMではSaaSベースでクイックに始められる製品からデータを自社内で抱えて、深く見ていく製品まで揃っているのです。

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—- DAAのご紹介も先日MERITひろばの動画で解説いただきありがとうございます。マーケティング担当だけでなく、田村さんファンの方も是非ご覧いただきたいです。

田村:いえいえ、私ではなくソリューション、製品を見て下さい。(笑)

 

次ですが、レイヤー図一番下にある「Digital Data Exchange」とは何でしょうか。

 

会社の垣根を越えてデータ共有する仕組みで顧客に最適な体験を提供する

田村:はい。これは、自社Webサイトの管理外のデータとも連携していく仕組みです。広告業界では以前より、広告の枠情報を会社を超えて共有する仕組みがあります。広告在庫の需要と供給を個別のシステムを越えて共有するプラットフォームですね。

近年はさらに、DSP(デマンド・サイド・プラットフォーム)、RTB(リアルタイム・ビッディング)、DMP(データ・マネージメント・プラットフォーム)といった広告を最適な人に、適正な価格で効率よく配信するためのプラットフォームが注目されています。これらは少し専門的過ぎるので、今回は割愛します。

— 会社の垣根を越えてデータ共有する仕組みが広告、デジタルマーケティングの世界では広がっているということですね。共有するというキーワードで思い出しのですが、ライバル企業のWebサイトのアクセス数やサイト訪問者属性をこっそり調べる方法なんて存在するのでしょうか?

 

田村:さすがに、競合サイトの情報をとることはできませんが、データ交換プラットフォームというのは、必要に応じて自社サイトの訪問データを社内外のアプリケーションと連携して、顧客に最適な体験を提供するという試みです。

— すごい視野の広い活動ですね。ここまで話を伺って、データ分析の領域だけしか考えていなかった自分が恥ずかしいです。冒頭の5プロセスを含めて全ての領域でサービスできるのがIBMの強みなのですね。

 

田村:ありがとうございます。そうです、例えば件の図の左下にTag Managerと書いてありますよね。これは、ひとつのタグを自社のWebに埋め込むだけで、あらゆるプロセスのデータ取得、管理ができるようになります。もちろん、IBM製品で統一すればタグはひとつですが、提携済みテクノロジーベンダーのJavaScriptタグも統一管理できるのがTag Managerです。

DataExchangeという意味ではIBMはサービスに利用している生データを提供できるのも強みです。GAもAdobeもレポートになる前の生データは提供してくれないが、IBMなら可能です。そのデータをSalesForceにつなげる等のデータ活用する機会がお客様に提供されます。

— 確かにGAを使っていても、分析結果のレポートは提供されますが、例えばユーザのIPアドレスなどのGAが使っている元データは提供されないですよね。この視点は忘れがちですが、デジタルマーケティングを本気でやるなら必要な情報だと思います。

田村:そのとおりです。

 

「サイトの最適化」だけでなく「顧客体験の最適化」が重要

— 今回のプロセスの話は良く聞いていると「商い」として当たり前の視点ばかりですね。確かに製品はハイテク化、細分化していますが、お客様との会話では、このような商いの視点をもっていれば、課題の洗い出しも解決の提示もスムーズになりそうです。

では、最後になりますが、田村さんご自身のデジタルマーケティングに対する思いをIBMビジネスとつなげて一言お願いします。

田村:はい。私は、「サイトの最適化」だけでなく「顧客体験の最適化」が重要だと常々思っています。

初めてサイトに来たお客様とリピーターでは、体験も目的も違う。コンバージョンレートだけで図ることはできないのです。 分析ツールだけでお客様をハッピーにできるとは思っていません。

IBMでは本日ご紹介させていただいたように、EMM,スマーターコマースを中心に部分的なソリューションから全体最適を視野に入れた中長期の話をお客様と共有できるのが強みです。

— お忙しいところありがとうございました。私もMERITひろばを見に来てくださった方の立場でWeb運営するように意識していきたいと思います。Tealeafを導入する価値があるぐらいの立派なサイトにしていきたいです。

田村:こちらこそ、ありがとうございました。採用お待ちしております。

編集後記
田村さんは広告業界、IT構築、デジタルマーケティングという3つ領域での知識と経験に長けているので、全体を俯瞰しながらも専門的な事を解説してくださいました。また、IBMのこの領域に対する力の入れ具合も強く、今後も目が離せないソリューション領域だと改めて思いました。 (重山)

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2025年08月04日

【てくさぽBLOG】IBM watsonx OrchestrateのADKを使ってみた

こんにちは。 てくさぽBLOGメンバーの高村です。 早速ですが、今年5月に開催されたIBMの年次イベント「Think2025」で、watsonx Orchestrateの新機能が発表されました!その中の一つとして、開発者向けの「Agent Development Kit(以下、ADK)」があります。今回はこのADKを活用し、watsonx Orchestrate環境への接続やエージェントの追加といった操作を行い、その使用感をご紹介します。  なお、watsonx Orchestrateについては、今年2月、3月に公開した「watsonx OrchestrateやってみたBLOG」でご紹介しておりますので、是非こちらもご一読ください。 【てくさぽBLOG】IBM watsonx Orchestrateを使ってみた(Part1) 【てくさぽBLOG】IBM watsonx Orchestrateを使ってみた(Part2) 目次 はじめに ADKとは? ADK使ってみた さいごに お問い合わせ はじめに Think2025で発表された新機能は、6月に環境へ追加されました。それ以前の環境とは、メニュー構成や操作方法、機能名称に変更があります。 例えばこれまで「Skill」と呼ばれていたものが「Tool」へと名称変更されています。 アップデート後の環境につきましては、別ブログにて改めて詳しくご紹介させていただく予定ですので、ぜひご期待ください! ADKとは? まずはADKについてご紹介します。ADKとは開発者向けにwatsonx OrchestrateのAgentやToolをスクラッチ開発するための開発キットになります。ローカル端末などに導入し、pythonベースで開発を行うことができます。 また、ADKとは別に、watsonx Orchestrate Developer Editionをローカル端末に導入することで、ADKで開発したAgentやToolのテストが可能になります。なお、watsonx Orchestrate Developer EditionはDockerコンテナ上で動作し、現時点のハードウェア要件はCPUは最小8コア、メモリは最小16GBが必要です。詳細はInstalling the watsonx Orchestrate Developer Editionをご確認ください。   ADKとwatsonx Orchestrate Developer Editionを利用することで、コードの迅速な作成・修正や柔軟なカスタマイズに加え、環境へのデプロイ前にローカルでテスト・修正が可能となり、作業効率の向上が期待できます。 ADK使ってみた 前述ではADKでAgent開発し、watsonx Orchestrate Developer Editionで動作確認、SaaS watsonx Orchestrateへインポートする構築の流れをお話しましたが、今回の検証における動作確認は検証環境として利用しているIBM Cloud 上のwatsonx Orchestrate利用します。よって前述したwatsonx Orchestrate Developer Editionは利用せず、ADKからwatsonx Orchestrate検証環境へAgentとToolを直接インポートし、動作確認を行いたいと思います。また、ADKのインストール先は自分の端末ではなく、IBM Cloud上に構築したUbuntuのVirtual Server Instance(以下、VSI)を使用します。検証環境の構成イメージは下記の図の通りです。 尚、ADKのインストール要件はPython 3.11以上、Pip、そして仮想環境(以下venv)が必要です。詳細については、Getting started with the ADKをご確認ください。 それでは早速使ってみましょう! VSIのプロビジョニング まずはADKをインストールするVSIをプロビジョニングします。本ブログではプロビジョニング方法について詳しく記載いたしませんが、手順は「【てくさぽBLOG】IBM Power Virtual ServerのAIX環境とIBM Cloud Object Storageを接続してみた(Part1)」のVSI for VPCの作成をご参考ください。 OSはUbuntu 22.04 LTS Jammy Jellyfish Minimal Install、リソースは2vCPU,4GB RAMで作成しました。VSI作成時にSSH鍵が必要なるので作成を忘れないようにしてください。 作成すると数分で起動します。端末からSSHログインするため浮動IPが必要になります。赤枠で囲った浮動IPを作成しインスタンスに紐づけします。以上でVSIの作成は完了です。 Ubuntuの設定 ターミナルを開きsshでUbuntuにログインします。私はWindowsのコマンドプロンプトを使用しました。Ubuntuユーザでログイン後、rootパスワードを設定し、スイッチできるようにします。 ubuntu@nicptestvsi:~$ sudo passwd root New password: Retype new password: passwd: password updated successfully ubuntu@nicptestvsi:~$ su - pythonのバージョンを確認したところ3.10.12でした。ADKの要件は3.11以上ですので、バージョンアップが必要になります。最初は3.13にバージョンアップしてみたのですが、後続作業と最新バージョンではパッケージが合わなかったのかうまく動かず…仕切り直して3.11を利用することにしました! root@nicptestvsi:~# apt install python3.11 バージョンアップ後、デフォルトバージョンとして3.11を指定します。 root@nicptestvsi:~# sudo update-alternatives --install /usr/bin/python3 python3 /usr/bin/python3.10 1 sudo update-alternatives --install /usr/bin/python3 python3 /usr/bin/python3.11 2 sudo update-alternatives --config python3 update-alternatives: using /usr/bin/python3.10 to provide /usr/bin/python3 (python3) in auto mode update-alternatives: using /usr/bin/python3.11 to provide /usr/bin/python3 (python3) in auto mode There are 2 choices for the alternative python3 (providing /usr/bin/python3).Selection Path Priority Status ------------------------------------------------------------ * 0 /usr/bin/python3.11 2 auto mode 1 /usr/bin/python3.10 1 manual mode 2 /usr/bin/python3.11 2 manual modePress <enter> to keep the current choice[*], or type selection number: 2 root@nicptestvsi:~# root@nicptestvsi:~# python3 --version Python 3.11.13 次に下記コマンドを実行して任意のvenvを作成します。 python3 -m venv /path/to/nicpse/project/your-venv-adktest <環境のパスを指定 venvを活性化してログインします。下記コマンド結果のようにvenvに入れましたらUbuntuの設定は完了です。 root@nicptestvsi:~# source /path/to/nicpse/project/your-venv-adktest/bin/activate (your-venv-adktest) root@nicptestvsi:~# ADKのインストール 以下コマンドを実行してADKをインストールします。ADKは6月時点で1.5.1が最新バージョンです。 (your-venv-adktest) root@nicptestvsi:~# pip install ibm-watsonx-orchestrate Collecting ibm-watsonx-orchestrate Downloading ibm_watsonx_orchestrate-1.5.1-py3-none-any.whl.metadata (1.4 kB) Collecting certifi>=2024.8.30 (from ibm-watsonx-orchestrate) Downloading certifi-2025.6.15-py3-none-any.whl.metadata (2.4 kB) Collecting click<8.2.0,>=8.0.0 (from ibm-watsonx-orchestrate) Downloading click-8.1.8-py3-none-any.whl.metadata (2.3 kB) Collecting docstring-parser<1.0,>=0.16 (from ibm-watsonx-orchestrate) Downloading docstring_parser-0.16-py3-none-any.whl.metadata (3.0 kB) Collecting httpx<1.0.0,>=0.28.1 (from ibm-watsonx-orchestrate) Downloading httpx-0.28.1-py3-none-any.whl.metadata (7.1 kB) ----中略---- (your-venv-adktest) root@nicptestvsi:~# orchestrate --version ADK Version: 1.5.1 ADKの環境設定 次にADKの環境設定を行います。watsonx OrchestrateのインスタンスIDが必要になるため、watsonx OrchestrateのSetting画面に入り確認します。下記画面をご参考にしてください。 環境設定コマンドはこちらになります。-nの後はvenv名を指定し、-uの後はインスタンスIDを指定します。 (your-venv-adktest) root@nicptestvsi:~# orchestrate env add -n <仮想環境名> -u <環境のインスタンスID> [INFO] - Environment 'my-name' has been created [INFO] - Existing environment with name 'nicpse' found. Would you like to update the environment 'nicpse'? (Y/n)y [INFO] - Environment 'nicpse' has been created 以下コマンドを実行して、IBM Cloud上のwatsonx Orchestrateと認証設定をします。APIキーの取得方法は「【てくさぽBLOG】IBM watsonx.aiを使ってみた(Part2)」のAPIキーの取得をご確認ください。尚、リモート環境に対する認証は2時間ごとに期限切れになります。期限が切れた場合は再度認証する必要があります。 (your-venv-adktest) root@nicptestvsi:~# orchestrate env activate nicpse --apikey <APIキー> [INFO] - Environment 'my-ibmcloud-saas-account' is now active [INFO] - Environment 'nicpse' is now active 下記コマンドを実行してCLIから利用できる環境のリストを表示します。IBM Cloud上のwatsonx Orchestrateがactiveとなっていました! (your-venv-adktest) root@nicptestvsi:~# orchestrate env list nicpse https://api.us-south.watson-orchestrate.cloud.ibm.com/instances/XXXXXXXX (active) local http://localhost:XXXX Toolとagentのインポート 次にToolとAgentのインポートを行います。ToolとはAgentがタスクを実行する際に利用する機能です。今回は、IBM様より共有いただいたyfinanceを活用したToolおよびAgentのコードを、ADKを用いてインポートします。なお、yfinanceはヤフーファイナンスから株価などの金融データを取得するためのPythonライブラリです。 最初にToolのインポートを行います。下記の様に、scpなどでToolファイルとrequirements.txtをディレクトリにアップロードしておきます。requirementsファイルは他のモジュールと依存関係がある場合使用します。 (your-venv-adktest) root@nicptestvsi:~/orchestrate_tool/py/source_02# ls -l total 12 -rw-r--r-- 1 root root 0 Jun 24 04:42 __init__.py drwxr-xr-x 2 root root 4096 Jun 24 04:38 __pycache__ -rw-rw-r-- 1 ubuntu ubuntu 8 Jun 24 03:02 requirements.txt -rw-rw-r-- 1 ubuntu ubuntu 1778 Jun 24 02:46 yfinance_agent.py 下記コマンドを実行してToolファイルとrequirementsファイルをインポートします。企業情報を取得するstock_infoと株価を取得するstock_quoteの2つのToolがインポートされました。 (your-venv-adktest) root@nicptestvsi:~/orchestrate_tool/py/source_02# orchestrate tools import -k python -f "./yfinance_agent.py" -r "./requirements.txt" [INFO] - Using requirement file: "./requirements.txt" [INFO] - Tool 'stock_info' imported successfully [INFO] - Tool 'stock_quote' imported successfully listコマンドを実行するとインポートされたToolを確認できます。 (your-venv-adktest) root@nicptestvsi:# orchestrate tools list ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┳━━━━┳ ┃ Name ┃ Description ┃ Permission ┃ Type ┃ Toolkit ┃ App ID ┃ ┡━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╇━━━━╇ │───────────┼────────────┼── │ send_mail_brevo │ send a meil using Brevo. │ write_only │ python │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ ├─────────────────────────────────┼──── │ stock_quote │ 企業のTickerSymbolを用いて株価… │ read_only │ python │ │ │ ├─────────────────────────────────┼──── │ Untitled_6160RC │ No description │ read_only │ openapi │ │ │ ├─────────────────────────────────┼──── │ stock_info │ 企業のTickerSymbolを用いて企業… │ read_only │ python │ │ │ └─────────────────────────────────┴──── 次にAgentをインポートします。下記コマンドを実行します。 (your-venv-adktest) root@nicptestvsi:~/orchestrate_tool/py/source_02# orchestrate agents import -f ./yfinance_agent.yaml agent listコマンドでインポート済みのAgentを確認できました。Agentが使用するToolも表示されています。 (your-venv-adktest) # orchestrate agents list ┏━━━━━━━━━━━━━━━┳━━━━━━━━━━━━━━━┳━━━━━━━━ ┃ Name ┃ Description ┃ LLM ┃ Style ┃ Collaborators ┃ Tools ┃ Knowledge Base ┃  ┡━━━━━━━━━━━━━━━╇━━━━━━━━━━━━━━━╇━━━━━━━━ │ yfinance_age… │ 企業の会社情… │ watsonx/meta- │ react │ │ stock_info, │ │ │ │ │ llama/llama-3 │ │ │ stock_quote │ │ ││ │ │ -2-90b-vision ││ │ -instruct │ │  IBM Cloud上のwatsonx Orchestrateで動作確認 インポートしたAgentとToolをIBM Cloud上のwatsonx Orchestrateで確認します。 watsonx Orchestrateへログインし、BuildからAgent Builderを選択します。 yfinanceエージェントが表示されているので、クリックします。 クリックすると、Agent作成画面に入ります。UIから基盤モデルを変更したり、Agentの振る舞いなど変更することができます。 スクロールして、Toolsetを確認するとADKからインポートしたToolが登録されています。 右のPreviewからAgentの動きを確認することができます。今回はDeployせずPreviewで確認します。入力欄には「IBMの株価は?」と質問してみます。しばらくすると本日の株価が回答されました。Show Reasoningを開くと推論過程を確認することができます。株価を取得するTool「stock_quote」を使用し、AIがユーザの入力から自動的にTicker symbolを入力していることがわかります。 次に「IBMの企業情報」と質問をします。しばらくするとAIがユーザの入力からTicker symbolを入力し、Tool「stock_info」を利用して企業情報を取得、回答されました。ユーザの入力内容からAgentが使用するToolを選択し、実行していることがわかります。   さいごに ADKのご紹介とADKを使ってToolとAgentのインポートを行いました。 ADKのインストールおよび設定について、Pythonバージョンの設定やvenvの作成でつまずく部分はありましたが、venvが作成できればその後の設定はスムーズに進められました。 今回はVSI上のUbuntuサーバにADKをインストールしましたが、ご自身の端末に導入することで、より気軽にAgent開発を行えるかと思います。なお、今回は検証対象外でしたが、watsonx Orchestrate Developer Editionを利用する場合は、インストール要件としてやや高めのスペックが必要になる点にご注意ください。 検証時のADKのバージョンは1.5.1でしたが、7月末では1.8.0が最新バージョンとなっています。比較的頻繁にアップデートされますので適宜Release Notesをご確認ください。バージョンアップでコマンドオプションも変更される場合があるため、マニュアルを確認するかコマンドに`--help`を付与してパラメータを確認することをおすすめします。   お問い合わせ この記事に関するご質問は以下の宛先までご連絡ください。 エヌアイシー・パートナーズ株式会社 技術企画本部 E-mail:nicp_support@NIandC.co.jp   .anchor{ display: block; margin-top:-20px; padding-top:40px; }

2025年07月11日

【参加レポート】Domino Hub 2025

公開日:2025-07-11 みなさまこんにちは。ソリューション企画部 松田です。 2025年6月19日・20日と2日間に渡って開催された「Domino Hub 2025」に参加しました。これは HCL Ambassador有志が企画・実行する Dominoコミュニティイベントです。去年に続き、今回が3回目の開催となります。 昨年同様、今回もエヌアイシー・パートナーズはスポンサーとしてご支援させていただき、両日参加いたしました。そのレポートをお送りします。 目次 イベント概要 セッション内容 - Domino 14.5 リリース 特徴的機能とライセンス改定 -ロードマップ -お客様事例:曽根田工業様 最後に 関連情報 お問い合わせ イベント概要 「Domino Hub」は、HCL Ambassadorが主宰となり、Dominoの利用者、開発者、ソリューションベンダーが一堂に会するコミュニティイベントです。今回は1日目がオンライン、2日目はオンサイトのみの開催でした。 特に2日目は参加率が非常に高かったとのことで、会場も大変盛況でした。結婚式場としても使われている今回の会場は、中庭から陽の光が差し込み、解放感があるラグジュアリーな空間で、一般的なビジネスミーティングよりも上質な雰囲気が感じられました。 併せて展示ブースも設置され、Dominoアプリケーションがスマートフォンやブラウザで使えるようになる「HCL Nomad」などのHCL製品とともに、様々なビジネスパートナー様の多彩な関連製品が数多く展示・紹介されていました。 セッション内容 2日間で全22セッションが行われました。セッションはHCLをはじめ、HCL Ambassadorから、様々な開発ベンダー、製品ベンダー、エンドユーザーからの事例紹介などのセッション、そしてパネルディスカッションがありました。まずHCLからのセッション内でのトピックをお伝えします。機能のみならずライセンスまわりで大きなニュースもありました。 Domino 14.5 リリース 特徴的機能とライセンス改定 Domino Hubの2日前、2025年6月17日にリリースされました。 Domino IQ 特徴的な機能で最も注目すべき、今回もご説明に時間を割かれていたのが「Domino IQ」です。 一言で言えば「Domino内にローカルでLLMを持たせ、蓄積されてきたDominoアプリ内の情報も取り込み、セキュアな環境で生成AIを用いた業務を実現する」ものです。 企業内業務で生成AIをどのように実装し利用していくかは今、皆様の大きな関心事項であられると思います。自社のDomino環境内で、Dominoアプリケーションを用い、Notesクライアントからそれが実現できることになります。 (画像クリックで拡大) Nomad for Web COM対応 またNomad for WebがCOMに対応したことにより、これまではNotesクライアントだけでしかできなかったExcelやPowerPointを埋め込んだDiminoアプリもブラウザから利用できるようになりました。 ライセンスダッシュボード:DLAUの統合 これまでGitHubからダウンロードしてセットアップしていたDomino License Analysis Utility (DLAU)がDomino内にデフォルトで統合され、The Domino License Administration (DLA) となりました。 (画像クリックで拡大) ライセンス改定 そしてライセンスにも大きなベネフィットが付加されました。CCB Termライセンスにはこれまで「Domino Leapで5アプリケーションまで開発・利用が可能」という権利が含まれていましたが、2025年7月1日からその制限がなくなりました。すなわち「2025年7月1日以後有効なCCB Termライセンスをお持ちのお客様は、Domino Leapのフル機能が利用できる」となります。 同時に、Domino Leapライセンスの利用範囲であるHCL Enterprise Integrator(HEI)の利用権利も含まれます。これでCCB Termライセンスのみで、追加費用なく「ブラウザによるノーコード/ローコード開発」「基幹業務とDominoアプリケーションの連携」が可能になります。 さらにCCB Termで利用できるSametime Chatで添付ファイルと画像添付も可能になりました。 ロードマップ Domino、Notes、Verse、Nomadなど各ソリューションについてのロードマップも紹介されました。先々の計画は出てこないものですが、このようにHCLから明確に提示されることにより、Dominoをお使いのお客様はこれからも安心して利用を継続していただけると思います。 Dominoのロードマップ(画像クリックで拡大) Notesのロードマップ(画像クリックで拡大) Nomad, VerseといったエンドユーザーのUI部分が短期間でバージョンアップされていく。(画像クリックで拡大) お客様事例:曽根田工業 様 Dominoユーザーの有限会社曽根田工業 代表取締役 曽根田 直樹 様より、Domino事例のご講演がありました。曽根田様は2001年に静岡県磐田市で個人で起業され、切削機械の刃物を製造されています。曽根田様のお話で非常に興味深かった部分を抜粋致します。 "独立・起業するにあたり、前職で使っていたNotes/Dominoを自社でも使うことにした。現在は大手メーカーからの発注依頼や過去に作った品番の再発注など数多く受けており、当時のCAD/CAMのデータや販売管理データなどをDominoに入れて運用している。 オンプレミス環境のリスクやセキュリティ、IT技術のトレンドに合わせてクラウド化を検討した場合、Dominoからは離れたほうがいいのではないか?と思い、他社SaaS製品も検討しトライアルで利用登録をした。 しばらく触れずにいたところ、アカウント情報に登録していた支払い口座から利用料の引き落としがされていなかったためアカウントが凍結、さらに保存していたデータも突然消去されてしまっていた。支払いが滞っただけで中身まで削除されてしまうようなシステムには会社の大事な資産であるデータを載せられないので、「Dominoを『やめることを止める』判断」をした。" Dominoから他製品への移行を検討され断念されるお客様は多く、その理由は「Dominoの業務アプリケーションを、サービス内容を落とさずに別プラットフォームに移行することがはなはだ困難である」ということをよくお聞きしますが、この点にも意外な理由が潜んでいました。 最後に 初の2年連続開催となった今年のDominoHubは、コミュニティの力を象徴するかのような盛り上がりを見せました。14.5のリリース、生成AIの実装、ライセンス強化など、今後のDominoの発展を確信させる要素が数多く披露されたほか、実際のユーザー事例も非常に示唆に富むものでした。加えてロードマップの提示による未来への安心感も得られました。 DominoHubは単なる情報共有の場に留まらず、技術、コミュニティ、そしてビジネスの未来を交差させる特別な場となっています。これからもこのような取り組みが継続していき、多くのDominoユーザー、デベロッパー、そして販売パートナーが更なる価値を引き出していけることを楽しみにしています。これからもDominoと私たちの未来を築いていきましょう。 関連情報 「Domino Hub」大阪開催 Domino Hubは、2025年9月18日に大阪でのオンサイト開催が決定致しました。詳細およびお申し込みについては、こちらのリンクからご確認ください。 お問い合わせ エヌアイシー・パートナーズ株式会社E-mail:voice_partners@niandc.co.jp   .highlighter { background: linear-gradient(transparent 50%, #ffff52 90% 90%, transparent 90%); } .anchor{ display: block; margin-top:-20px; padding-top:40px; } .btn_A{ height:30px; } .btn_A a{ display:block; width:100%; height:100%; text-decoration: none; background:#eb6100; text-align:center; border:1px solid #FFFFFF; color:#FFFFFF; font-size:16px; border-radius:50px; -webkit-border-radius:50px; -moz-border-radius:50px; box-shadow:0px 0px 0px 4px #eb6100; transition: all 0.5s ease; } .btn_A a:hover{ background:#f56500; color:#999999; margin-left:0px; margin-top:0px; box-shadow:0px 0px 0px 4px #f56500; } .bigger { font-size: larger; } figcaption { color: #7c7f78; font-size: smaller; }

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