2023年10月

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【てくさぽBLOG】IBM watsonx.aiを使ってみた(Part1)

こんにちは。
てくさぽBLOGメンバーの高村です。

IBM の定例イベント「Think 2023」で発表された IBM watsonx はご存じでしょうか?

AI開発の最前線を走り続けている IBM Watson は、2023年7月に企業向けAI及びデータ・プラットフォーム IBM watsonx(以下 watsonx)のサービス提供を開始しました。
なお、watsonx の概要は製品紹介ページで紹介していますので、是非ご覧ください。

今回は watsonx製品の一つ、生成AI開発プラットフォームを担う「IBM watsonx.ai」(以下 watsonx.ai)を使用し、その感想を二部構成でご紹介したいと思います。

Part1(本記事)では、watsonx.ai のご紹介とサービスのプロビジョニング、UI画面にてプロンプトを使ってみた感想を、Part2では、watsonx.ai を利用した Retrieval-Augmented Generation(RAG)検証をご紹介します。

乞うご期待ください。

ビジネスにおける生成AIの活用

2022年の ChatGPT公開を機に生成AI は脅威的なスピードで生活に普及されています。
企業も生成AI をビジネスに取り入れる動きが加速しており、例えば、OpenAI社は企業向けに ChatGPT Enterprise、Microsoft社は Azure上で Azure OpenAI Service を提供しています。

このように企業向け生成AIサービスも次々発表されている状況で、企業はビジネスの目的に合ったサービスを選ぶことが重要になってきています。

それでは、生成AI を採用する際にどのような考慮点があるでしょうか。
以下にいくつかご紹介します。

生成AI採用時の考慮点

  • 回答精度の問題:
    生成AI は状況や文脈を完全に理解しておらず、適切な回答を生成することが困難となる場合があります。
    そのため、モデルのチューニングや精度の高い回答を出せるように指示を設計する仕組みが必要です。
  • 他社との差別化:
    今後多くの企業が生成AI を活用したビジネスを展開していくと、他社との差別化がますます重要となります。
    ベンダー独自の大規模言語モデルを利用することは勿論ですが、AI開発の先駆者であるサード・パーティーが提供するモデルを利用できることなど、複数のモデルから選択できる点もポイントになります。
  • セキュリティ対策:
    ビジネスで生成AI を活用する上では機密情報の取り扱いを注意しなければいけません。
    個人情報を含んだ情報が他のユーザの回答に利用されることが無いよう、セキュリティ対策が求められます。

このように、企業が求める精度の高い AIモデルを実現でき、他社との差別化及び生産性向上を図ることが可能なサービスが watsonx.ai です。

watsonx.aiとは?

サービス提供形態

はじめにサービス提供形態をご紹介します。

2023年10月時点、watsonx.ai は IBM Cloud からの SaaS提供のみとなっています。
また、watsonx.ai を利用するには従来から提供されている Watson Studio(機械学習モデルを開発するための統合環境)と Watson Machine Learning(機械学習環境)の2つのサービスが必要です。

IBM Cloud のカタログ上では「watsonx.ai」という名前のサービスは無く、Watson Studio をプロビジョニングし Watson Machine Learning を紐づけることで、watsonx.ai が利用できるようになります。

料金は Lite/Essentials/Standard のプランが提供されています。(2023年10月時点)
Lite は容量制限のある無料プランです。機能を試したい場合はこのプランをご選択ください。
Essennsials、Standard は以下の①②③を合計した料金プラン(月額請求)です。

①プランの基本料金 ※Essentials の基本料金は$0/月です(2023年10月時点)
②基盤モデルの利用料
③Watson StudioとWatson Machine Learningの利用料

watsonx.aiの特徴

以下の図の通り、watsonx.ai は基盤モデルの選択から調整、テスト、デプロイまでを一貫して行うことができる AI開発スタジオです。

watsonx.aiの特徴

基盤モデル(Foundation Model)

watsonx.ai は基盤モデル(Foundation Model)を利用した AI開発スタジオです。

従来の機械学習による AI開発は用途ごとにモデルを作成していましたが、基盤モデルによる AI開発は大量のデータで事前学習を行い、一つの基盤モデルを作成し、用途別に少量のデータでカスタマイズしモデルを作成します。
これにより用途向けのモデルは少量のデータで学習が可能となり、今までのような学習時間やリソースを大幅に削減できます。

基盤モデル(Foundation Model)

IBM独自の基盤モデル、サード・パーティーの基盤モデルを提供

watsonx.ai は IBM独自の基盤モデル、サード・パーティーのモデルを提供しており、用途によって選択することは勿論、最先端な技術をサービスに取り入れることが可能です。

2023年10月現在、IBM独自の基盤モデルは2つ、Hugging Face などのサード・パーティーの基盤モデルは7つ提供されています。
詳細は「watsonx.ai で使用可能なサポート対象のファウンデーション・モデル」(IBMサイト)をご確認ください。

プロンプト・ラボ

watsonx.ai では抽出や生成、分類などのタスクをプロンプトラボで調整します。

プロンプトラボには最大トークン数などのパラメータを調整する機能やサンプルプロンプトも提供されており、迅速なデプロイが可能です。こちらは後ほど試してみようと思います。

今後基盤モデルのチューニング・スタジオも提供予定です。アップデートが楽しみですね。

プロンプト・ラボを使ってみる

watsonx.ai をプロビジョニングし、UI画面からプロンプト・ラボを使用してみましょう。
(※前提としてIBM Cloudアカウントが作成されていることとします)

  • IBM Cloud のカタログ画面から「Watson Studio」を検索し、クリックします。

手順1

  • 料金プランはライトプラン、ロケーションは「ダラス(us-south)」を選択します。
    ※基盤モデルの推論とプロンプト・ラボはダラスとフランクフルトのリージョンでのみ使用可能

手順2

  • 以下の画面が表示されるので「Launch in」をプルダウンしてプラットフォームを「IBM watsonx」にします。

手順3

  • 以下の画面が表示されるので閉じます。

手順4

  • 以下の画面が表示されるので閉じます。

手順5

  • 以下の画面で「新規プロジェクト +」をクリックします。

手順6

  • プロジェクト作成画面で「空のプロジェクトを作成」をクリックします。

手順7

  • 新規プロジェクト作成画面で任意の名前を入力し「作成」をクリックします。

手順8

  • プロジェクトが作成されました。

手順9

  • 左側メニューから「すべてのプロジェクトの表示」をクリックし、作成したプロジェクトを選択します。

手順10

  • 「サービスおよび統合」を選択し「サービスの関連付け +」をクリックします。

手順11

  • 「Watson Machine Learning」にチェックを入れサービスを関連付けます。

手順12

  • Watson Machine Learning が関連付けられました。

手順13

  • ホーム画面に戻り「ファウンデーション・モデルを試し、プロンプトを作成する」をクリックします。

手順14

  • サンプル・プロンプトから「Questions about an article」を選択し、命令箇所に命令と対象のArticleを入力します。
    (今回はサンプル・プロンプトを使用してみます)

手順15

  • 「llama-2-70b-chat」は一つ以上の例を指定するとより効果的に機能するため、例の箇所に QuestionとAnswer の例を入力します。
    (このプロンプトは基盤モデル「llama-2-70b-chat」を指定しています)

手順16

  • Question へ「トマトの栽培になぜマルチを使用すべきなのか」と入力し「生成」をクリックします。

手順17

  • Answer の箇所に回答が生成されました。
    (原文と照らし合わせると、適切な箇所を参考にして生成していることがわかります)

手順18-1手順18-2

  • なお、「モデルパラメータ」をクリックすると最大トークン数などのパラメータ調整もすることが可能です。

手順19-1手順19-2

UI画面もわかり易く、サンプルをベースに目的のプロンプトを作成できそうです。
他にもコールメモの要約やコード生成などのサンプル・プロンプトがありますが、ここでのご紹介は割愛させていただきます。

基盤モデルは IBM独自の基盤モデルやオープンソースの基盤モデルが選択できますが、どれを選べばよいのか迷うところです。
基盤モデルを選択においては「watsonx.ai でのファウンデーション・モデルの選択」(IBMサイト)に考慮点が掲載されていますので、こちらを参考に選択いただければと思います。

さいごに

いかがでしたでしょうか。
watsonx.ai のご紹介とサービスのプロビジョニング、UI画面にてプロンプトを使ってみた感想をご紹介しました。

watsonx.ai には複数の基盤モデルが用意され、今後基盤モデルのチューニングスタジオもリリース予定されています。
目的にあったモデルの選定、検証は考慮が必要ですが、カスタマイズの幅が広く、ビジネスの目的にあったAIモデルを実現できますね。

次回の Part2 では、watsonx.ai を利用した Retrieval-Augmented Generation(RAG)の検証結果をご紹介します。
watsonx.ai をビジネスにどのように繋げられるかのヒントになると思いますので、ぜひご覧いただければ幸いです。

お問い合わせ

この記事に関するご質問は下記までご連絡ください。

エヌアイシー・パートナーズ株式会社
E-Mail:nicp_support@NIandC.co.jp

 

その他の記事

2025年07月11日

【参加レポート】Domino Hub 2025

公開日:2025-07-11 みなさまこんにちは。ソリューション企画部 松田です。 2025年6月19日・20日と2日間に渡って開催された「Domino Hub 2025」に参加しました。これは HCL Ambassador有志が企画・実行する Dominoコミュニティイベントです。去年に続き、今回が3回目の開催となります。 昨年同様、今回もエヌアイシー・パートナーズはスポンサーとしてご支援させていただき、両日参加いたしました。そのレポートをお送りします。 目次 イベント概要 セッション内容 - Domino 14.5 リリース 特徴的機能とライセンス改定 -ロードマップ -お客様事例:曽根田工業様 最後に 関連情報 お問い合わせ イベント概要 「Domino Hub」は、HCL Ambassadorが主宰となり、Dominoの利用者、開発者、ソリューションベンダーが一堂に会するコミュニティイベントです。今回は1日目がオンライン、2日目はオンサイトのみの開催でした。 特に2日目は参加率が非常に高かったとのことで、会場も大変盛況でした。結婚式場としても使われている今回の会場は、中庭から陽の光が差し込み、解放感があるラグジュアリーな空間で、一般的なビジネスミーティングよりも上質な雰囲気が感じられました。 併せて展示ブースも設置され、Dominoアプリケーションがスマートフォンやブラウザで使えるようになる「HCL Nomad」などのHCL製品とともに、様々なビジネスパートナー様の多彩な関連製品が数多く展示・紹介されていました。 セッション内容 2日間で全22セッションが行われました。セッションはHCLをはじめ、HCL Ambassadorから、様々な開発ベンダー、製品ベンダー、エンドユーザーからの事例紹介などのセッション、そしてパネルディスカッションがありました。まずHCLからのセッション内でのトピックをお伝えします。機能のみならずライセンスまわりで大きなニュースもありました。 Domino 14.5 リリース 特徴的機能とライセンス改定 Domino Hubの2日前、2025年6月17日にリリースされました。 Domino IQ 特徴的な機能で最も注目すべき、今回もご説明に時間を割かれていたのが「Domino IQ」です。 一言で言えば「Domino内にローカルでLLMを持たせ、蓄積されてきたDominoアプリ内の情報も取り込み、セキュアな環境で生成AIを用いた業務を実現する」ものです。 企業内業務で生成AIをどのように実装し利用していくかは今、皆様の大きな関心事項であられると思います。自社のDomino環境内で、Dominoアプリケーションを用い、Notesクライアントからそれが実現できることになります。 (画像クリックで拡大) Nomad for Web COM対応 またNomad for WebがCOMに対応したことにより、これまではNotesクライアントだけでしかできなかったExcelやPowerPointを埋め込んだDiminoアプリもブラウザから利用できるようになりました。 ライセンスダッシュボード:DLAUの統合 これまでGitHubからダウンロードしてセットアップしていたDomino License Analysis Utility (DLAU)がDomino内にデフォルトで統合され、The Domino License Administration (DLA) となりました。 (画像クリックで拡大) ライセンス改定 そしてライセンスにも大きなベネフィットが付加されました。CCB Termライセンスにはこれまで「Domino Leapで5アプリケーションまで開発・利用が可能」という権利が含まれていましたが、2025年7月1日からその制限がなくなりました。すなわち「2025年7月1日以後有効なCCB Termライセンスをお持ちのお客様は、Domino Leapのフル機能が利用できる」となります。 同時に、Domino Leapライセンスの利用範囲であるHCL Enterprise Integrator(HEI)の利用権利も含まれます。これでCCB Termライセンスのみで、追加費用なく「ブラウザによるノーコード/ローコード開発」「基幹業務とDominoアプリケーションの連携」が可能になります。 さらにCCB Termで利用できるSametime Chatで添付ファイルと画像添付も可能になりました。 ロードマップ Domino、Notes、Verse、Nomadなど各ソリューションについてのロードマップも紹介されました。先々の計画は出てこないものですが、このようにHCLから明確に提示されることにより、Dominoをお使いのお客様はこれからも安心して利用を継続していただけると思います。 Dominoのロードマップ(画像クリックで拡大) Notesのロードマップ(画像クリックで拡大) Nomad, VerseといったエンドユーザーのUI部分が短期間でバージョンアップされていく。(画像クリックで拡大) お客様事例:曽根田工業 様 Dominoユーザーの有限会社曽根田工業 代表取締役 曽根田 直樹 様より、Domino事例のご講演がありました。曽根田様は2001年に静岡県磐田市で個人で起業され、切削機械の刃物を製造されています。曽根田様のお話で非常に興味深かった部分を抜粋致します。 "独立・起業するにあたり、前職で使っていたNotes/Dominoを自社でも使うことにした。現在は大手メーカーからの発注依頼や過去に作った品番の再発注など数多く受けており、当時のCAD/CAMのデータや販売管理データなどをDominoに入れて運用している。 オンプレミス環境のリスクやセキュリティ、IT技術のトレンドに合わせてクラウド化を検討した場合、Dominoからは離れたほうがいいのではないか?と思い、他社SaaS製品も検討しトライアルで利用登録をした。 しばらく触れずにいたところ、アカウント情報に登録していた支払い口座から利用料の引き落としがされていなかったためアカウントが凍結、さらに保存していたデータも突然消去されてしまっていた。支払いが滞っただけで中身まで削除されてしまうようなシステムには会社の大事な資産であるデータを載せられないので、「Dominoを『やめることを止める』判断」をした。" Dominoから他製品への移行を検討され断念されるお客様は多く、その理由は「Dominoの業務アプリケーションを、サービス内容を落とさずに別プラットフォームに移行することがはなはだ困難である」ということをよくお聞きしますが、この点にも意外な理由が潜んでいました。 最後に 初の2年連続開催となった今年のDominoHubは、コミュニティの力を象徴するかのような盛り上がりを見せました。14.5のリリース、生成AIの実装、ライセンス強化など、今後のDominoの発展を確信させる要素が数多く披露されたほか、実際のユーザー事例も非常に示唆に富むものでした。加えてロードマップの提示による未来への安心感も得られました。 DominoHubは単なる情報共有の場に留まらず、技術、コミュニティ、そしてビジネスの未来を交差させる特別な場となっています。これからもこのような取り組みが継続していき、多くのDominoユーザー、デベロッパー、そして販売パートナーが更なる価値を引き出していけることを楽しみにしています。これからもDominoと私たちの未来を築いていきましょう。 関連情報 「Domino Hub」大阪開催 Domino Hubは、2025年9月18日に大阪でのオンサイト開催が決定致しました。詳細およびお申し込みについては、こちらのリンクからご確認ください。 お問い合わせ エヌアイシー・パートナーズ株式会社E-mail:voice_partners@niandc.co.jp   .highlighter { background: linear-gradient(transparent 50%, #ffff52 90% 90%, transparent 90%); } .anchor{ display: block; margin-top:-20px; padding-top:40px; } .btn_A{ height:30px; } .btn_A a{ display:block; width:100%; height:100%; text-decoration: none; background:#eb6100; text-align:center; border:1px solid #FFFFFF; color:#FFFFFF; font-size:16px; border-radius:50px; -webkit-border-radius:50px; -moz-border-radius:50px; box-shadow:0px 0px 0px 4px #eb6100; transition: all 0.5s ease; } .btn_A a:hover{ background:#f56500; color:#999999; margin-left:0px; margin-top:0px; box-shadow:0px 0px 0px 4px #f56500; } .bigger { font-size: larger; } figcaption { color: #7c7f78; font-size: smaller; }

2025年06月30日

APMとARMのシームレスな連携で効率的な統合アプリケーション運用管理を実現する ~Instana+Turbonomicのシナジー~

公開日:2025-06-30 ワークロードが変化しつづけるハイブリッド・クラウド環境下においては、アプリケーションスタックが複雑化し、分散され、流動的となり、それがアーキテクチャーと、正しい設計および変化する需要に対応できる十分なリソースの提供を難しくしています。 複雑化したIT環境で、システムの正常性やパフォーマンスリスクに対応するためには、アプリケーションの運用管理において、アプリケーションとインフラ両方の情報を一元管理します。そして、統合的に参照することができ、システムの変調を見逃さない高度な可観測性を実現するアプリケーションの運用の高度化が重要となります。 本コラムでは、アプリケーションパフォーマンス監視(APM)ツール「IBM Instana Observability」(以下 Instana)とアプリケーション・リソース管理(ARM)ソリューション「IBM Turbonomic」の連携で生まれる、統合アプリケーション運用管理の相乗効果について紹介します。 目次 1. 複雑化したIT環境に求められるAPMによる可視化とアプリケーションの運用高度化 2. アプリケーションリソース管理の課題を解決するARMの活用 3. APMとARMの統合が可能にするアプリケーションの運用管理の効率化 4. InstanaとTurbonomicの連携による、一元的な管理の相乗効果 5. InstanaとTurbonomicの連携による、統合的なアプリケーションの運用管理の価値 6. まとめ お問い合わせ 1. 複雑化したIT環境に求められるAPMによる可視化とアプリケーションの運用高度化 アプリケーションの稼働環境がオンプレミスだけでなくクラウド環境へ拡大しています。クラウド上では様々なクラウドネイティブなサービスが稼働しており、それを利用することはコスト面・スピード面で必然となっています。しかし、クラウドネイティブ環境が増え続けることで複雑化しがちであり、そのような複雑なクラウドネイティブ環境の運用監視をいかに効率的に行うか、がビジネスにおいて大きな課題となっています。 システムを構成するハードウェアとソフトウェアが正常に稼動しているかについて、個々の状態を把握することに主眼がおかれた従来型モニタリングは、ハードウェアの障害やソフトウェアの異常を素早く検知することに役立つ一方で、ハードウェアの故障やサービスの停止をともなわないアプリケーションの性能低下などが検知することが難しく、原因の特定に非常に多くの時間がかかります。 また、従来型モニタリングの多くは、各環境で利用されている言語やプログラムにあわせた事前の導入と構成・設定が必要なだけではなく、サービス間の依存関係が把握できず、固定の閾値を超えたかどうかの確認しかできないため、ダイナミックに変化しつづけるクラウドネイティブ環境に追随していくことは困難です。 これに対して、アプリケーションのパフォーマンスを監視し、問題が発生した際に迅速に検知し、解決するのが、アプリケーションパフォーマンス管理(Application Performance Management: APM)による「アプリケーションの運用高度化」です。 APMにより、アプリケーションが本番環境で正常に動作していることをモニタリングして、システムやアプリケーションが利用者に提供している「サービスの品質」と「システムの状態」を可視化し、トランザクションのパフォーマンスの状態を測定するのが可能になります。 IBMのAPMツール「Instana」は、「自動化」「コンテキストの把握と解析」「インテリジェントなアクション」の特長を持ち、デジタルプラットフォームの効率的な管理および迅速な障害個所の特定など、クラウドネイティブ環境の可視化を実現しアプリケーションの可用性向上に貢献します。 2. アプリケーションリソース管理の課題を解決するARMの活用 一方、アプリケーションが安定したパフォーマンスを提供し続けるには、アプリケーションがユーザからのリクエストを処理するため必要なリソースを確保することが前提条件となります。 そのためには、適切なリソースを割り当て、必要に応じて増減させる管理をする必要があります。その上で、利用者の要望を実現する高度な機能とストレスのない使いやすいUX/UIの提供、24時間365日無停止での安定したサービスの継続、急激なアクセスの増加にも耐える拡張性や俊敏性が求められます。さらには、システム上で実行されるアプリケーションが、事前に定義されたセキュリティポリシーやルールに完全に適合していなくてはなりません。 しかし、アプリケーションスタックが複雑化し、ワークロードが変化しつづけるハイブリッド・クラウド環境下で、従来のインフラ中心のアプローチや手動ツールを使った人手主体の管理や監視手法だけで24時間365日アプリケーションリソースを維持管理し、適切なリソースを予測し確保し続けることは非常に困難です。 また、リソース不足にならないように、必要以上の余剰な CPU/メモリ/ディスクなどのサーバリソースを持たせることは、コスト面で大きな負担となります。さらに、多頻度のリリースに対応しうる高速・高効率で、継続的な品質担保に対応することが求められる一方で、高スキルのIT人材が、慢性的に不足していることも現状の管理体制の大きな負担となっています。 これに対して、コンピュートリソースの不足を早期に把握し、最適化を行い人手をかけずに適切な意思決定を適切なタイミングで行うことで、アプリケーションのレスポンスを維持するのが、アプリケーションリソース管理(Application Resource Management : ARM)です。 IBM の AI駆動型ARMソリューション「IBM Turbonomic ARM」は、アプリケーションからインフラまでをフルスタックで可視化し、アプリケーションが必要とする ITリソースを最適化します。そして、AI を用いてアプリケーションパフォーマンス、コンプライアンスおよびコストの継続的な管理を可能にします。 3. APMとARMの統合が可能にするアプリケーションの運用管理の効率化 アプリケーション運用管理の効率化は、宣言的に定義されたシステムのあるべき状態にシステムを制御する各種のオーケストレータによって、APMとARMを活用し徹底して自動化することで実現できます。ただし、システムで現在起きている問題のリアルタイムでの監視や、オーケストレータを介した問題へ自動に対処することはもちろん、あるべき姿へ迅速に回帰する「クローズドループサイクル(循環生産)」型のプロセスを実現することが不可欠となります。 このプロセスにおいて、APMとARMをそれぞれ独立した状態で活用するだけでは、目的に応じた画面の切り替えやツールごとの設定・操作などに非常に手間が掛かります。 APMであるInstanaとARMであるTurbonomicを連携することで、「統合的なアプリケーションの運用管理」を実現し、運用管理作業効率を向上することで以下のような効果を発揮します。 (1)ワンストップでインフラやアプリUXなどのパフォーマンスを統合管理できる (2)素早く問題の発生を検知し原因を特定できる (3)新規の監視対象を自動で認識でき個別の作業が不要となる (4)メンテナンスに工数がかからない 4. InstanaとTurbonomicの連携による、一元的な管理の相乗効果 InstanaとTurbonomicを連携させ、双方向の統合を設定することで、画面を切り替えることなく、1ヵ所・1画面の一元化された操作で、効率的に統合的なアプリケーションの運用管理を行うことが可能です。 InstanaとTurbonomic の連携による相乗効果には、次のようなものか挙げられます。 (1)アプリケーションレベルからインフラレベルまで統一管理できる TurbonomicにInstanaの情報を連携することにより、1つの画面でインフラからアプリケーションレベルまでアプリケーション・スタック全体を統合的に可視化し、操作もシームレスに連携することで、パフォーマンスのリスクを把握しリソースを最適化するための積極的な推奨策を得るとともに、リスクの軽減や迅速な判断をすることが可能になります。 (2)故障が発生する前に予兆を検知して事前に対応できる アプリケーション視点でのパフォーマンス・障害分析とインフラ観点でのリソース分析と最適化を同時に行うことで、障害の発生を未然に防ぐための対策を実施できるようになるため、アプリケーションの可用性を向上することができるようになります。 そのため、リソースの輻輳を最小限に抑えることができ、その効果として、平均修復時間(MTTR)と平均故障間隔(MTBF)を改善し、機会損失を最小限に抑えます。 (3)パフォーマンスに影響するリソースを理解し対応ができるようになる Instanaは、Turbonomicの実行したアクションと監視対象アプリケーションのパフォーマンスへの影響について、履歴の記録を得ることができます。また、Turbonomicによって提供されるリソース自動最適化機能を統合し、IT環境全体の集約された性能を最適な状態に維持します。これにより、ユーザは、単一の場所から一元的にアプリケーションを監視し、リアルタイムのデータと需要に基づいた状況に合わせて、需要に則したリソース割りあて・確保の決定を実行することができます。 InstanaとTurbonomicの統合によって、クラウド環境やKubernetesのリソース費用を正確に把握できるようになるため、十分に活用されていないリソースやオーバープロビジョニングされたリソースを最適化するための推奨案が得られます。これを元に、ハイブリッド(セルフ・マネージド)やクラウドネイティブ、Kubernetesのワークロードのパフォーマンス改善、効率化、コンプライアンス対応、コスト削減を促進し、クラウドの無駄を削減するとともに、その効果を向上させることが可能になります。 5. InstanaとTurbonomicの連携による、統合的なアプリケーションの運用管理の価値 このようにInstanaとTurbonomicを連携させることで、お客様は、インフラ・アプリケーションを統合的に可視化できるようになるだけでなく、アプリケーションのパフォーマンスリスクに素早く対応することが可能になります。 また、Turbonomicと連携できるAPMはInstanaだけではなく、お客様が、現在お使いになっているAPMとも連携することも可能です。さらには下図のロードマップのように、APM+ARMだけでなく、他のソリューションとも連携させることで、お客様のアプリケーションの運用高度化をさらに進め、ビジネスにより大きな価値をもたらすことができます。 図1:InstanaとTurbonomicの連携によるアプリケーションの運用高度化 6. まとめ このように、InstanaとTurbonomicを連携させた一元的な操作によって、複雑化したIT環境においても、ワンストップでインフラやアプリUXなどを監視・管理し、リソースの無駄やクラウド費用の増加なしに、アプリケーションに最適なリソースを動的に割りあてることができます。これにより、効率的なアプリケーションの管理の実現と、期待どおりのパフォーマンスを発揮して顧客のニーズを満たすことが可能になります。 エヌアイシー・パートナーズ株式会社は、IBMソフトウェア(SW)とハードウェア(HW)の認定ディストリビュータとして、InstanaおよびTurbonomicに関する支援が可能です。 お客様のニーズや要件に合わせて、IBMのSWとHWを組み合わせた最適な提案やカスタマイズの支援、IBM製品の特長・利点をお客様にわかりやすく説明し、お客様・パートナー様のビジネスに最適な提案でサポートいたします。 「シナジー効果の高いInstanaおよびTurbonomicに絡めたセールスをサポートしてほしい」といったご要望があれば、いつでもお気軽にお問い合わせ・ご相談ください。 お問い合わせ この記事に関するお問い合せは以下のボタンよりお願いいたします。お問い合わせ   .highlighter { background: linear-gradient(transparent 50%, #ffff52 90% 90%, transparent 90%); } .anchor{ display: block; margin-top:-20px; padding-top:40px; } .btn_A{ height:26px; } .btn_A a{ display:block; width:100%; height:100%; text-decoration: none; background:#eb6100; text-align:center; border:1px solid #FFFFFF; color:#FFFFFF; font-size:16px; border-radius:50px; -webkit-border-radius:50px; -moz-border-radius:50px; box-shadow:0px 0px 0px 4px #eb6100; transition: all 0.5s ease; } .btn_A a:hover{ background:#f56500; color:#999999; margin-left:0px; margin-top:0px; box-shadow:0px 0px 0px 4px #f56500; } .bigger { font-size: larger; }

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