2023年03月

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【てくさぽBLOG】IBM Power Virtual ServerのAIX環境とIBM Cloud Object Storageを接続してみた(Part1)

こんにちは。
てくさぽBLOGメンバーの 高村です。

2021年に IBM Power Virtual Server(以下 PowerVS)のプロビジョニング、バックアップ、x86環境との接続をトライしたやってみたBLOG「IBM Power Virtual Server でAIX環境を作ってみた」を公開しました。
今回は PowerVS から IBM COS へバックアップ取得を想定し、AIX環境から Proxyサーバ経由で IBM COS へファイル転送を行う手順をご紹介します。

IBM COS については以前のブログ「【早わかり】IBM Cloud Object Storageを見積してみよう」でご紹介しているのでご覧ください。

それでは早速構築手順をご紹介いたします。

1)接続イメージのご説明

図の赤い線が今回検証したプライベートネットワーク経由の PowerVS から IBM COS の接続です。青い線はパブリックネットワーク経由で端末から各サービスに接続する経路になります。

接続イメージ

まず PowerVS と IBM Cloud(x86環境)接続ですが、両者はネットワークが独立に管理されているため直接通信はできません。そのため、Direct Link Connect を作成して接続します。

次に IBM COS と PowerVS の接続ですが、パブリックネットワーク経由で IBM COS のパブリックエンドポイントへアクセス可能ですが、プライベートネットワーク経由から IBM COS のプライベートエンドポイントへは直接アクセスすることは出来ません(2023年2月現在)。
プライベートネットワークから接続する場合は IBM Cloud の x86環境を経由して IBM COS に接続する必要があります。

今回は IBM Cloud の x86環境に Proxyサーバを立て Proxyサーバ経由で接続する方法を試してみたいと思います。
なお、構築手順は Qiita の BLOG「Power Virtual ServerからICOSにファイルをアップロードする」を参考にさせて頂きました。

2)IBM Power Virtual Serverの作成

・PowerVSの作成はこちらのBLOG「IBM Power Virtual Server でAIX環境を作ってみた」でご紹介しましたが、プロビジョニング画面がアップデートされました。
IBM Cloud にログインし、カタログから「Workspace for Power Virtual Server」をクリックします。

Workspace for Power Virtual Server

・ワークスペースを作成します。
ワークスペースは、PowerVSのデプロイする場所をゾーン毎に作成できる無償の作業環境です。任意のワークスペース名を入力し、リージョンは “東京04” を選択して作成します。

ワークスペースを作成

・PowerVS を作成した後にプライベートネットワークを作成するとうまくネットワークが認識されなかったので、先にプライベートネットワークを作成します。
左側メニューから「サブネット」をクリックします。プライベートネットワーク用に192.168.1.0/24のサブネットを作成します。

プライベートネットワークを作成

・次に「仮想サーバ・インスタンス」を選択しインスタンスを作成します。

インスタンスを作成

・今回は以下の構成でインスタンスを作成します。

  • インスタンス名:任意の名前
  • CPU:0.25
  • CPUタイプ:上限なし共有プロセッサー
  • メモリ:4GB
  • ストレージボリューム:Tier3(SSD)30GB
  • OS:AIX7.3 TL1
  • プライベートネットワーク:192.168.1.0/24

右側の月額費用を確認し「作成」をクリックします。

月額費用

・仮想サーバインスタンスの画面に戻り、しばらくするとプロビジョニングが完了しました。
ここまでは特に問題無く進みほっとします。

仮想サーバインスタンスの画面

3)VSI for VPCの作成

・次にProxy Serverを作成します。今回はVSI for VPCにProxy Serverをたてます。

「ナビゲーションメニュー」から「VPCインフラストラクチャー」を選択します。
左のメニューから「VPC」を選択し、「作成」をクリックします。

VPCインフラストラクチャー

VPC は以下のパラメータで作成しました。

  • 地域:アジア太平洋
  • リージョン:東京
  • 名前:任意の名前
  • リソースグループ:Default
  • ssh許可
  • ping許可

VPCパラメータ

・サブネットの追加をクリックしてサブネットを追加します。
以下のパラメータで作成しました。

  • 名前:sn-20230214-01(デフォルト値)
  • ゾーン:東京1(東京1-3を選択可)
  • リソースグループ:Default
  • アドレス接頭部:10.244.0.0/18
  • アドレスの数:256
  • IP範囲:10.244.0.0/24
  • パブリックゲートウェイ:接続無し

サブネットを追加

・最後に「仮想プライベート・クラウドの作成」をクリックします。
VPCのプロビジョニングが完了しました。

VPCのプロビジョニングが完了

・次に作成した VPC に VSI を作成します。
左側のメニューから「仮想サーバ・インスタンス」を選択し「作成」をクリックします。

VPC に VSI を作成

VSI は以下のパラメーターで作成しました。

  • インスタンス名:任意の名前
  • アーキテクチャー:Intel x86アーキテクチャー
  • ホスティングタイプ:パブリック(マルチテナント)
  • 地域:アジア太平洋
  • リージョン:東京
  • ゾーン:東京2
  • 名前:proxy-test(任意の名前)
  • リソースグループ:Default
  • オペレーティングシステム:RedHatEnterprise Linux
  • バージョン:ibm-redhat-9-0-minimal-amd64-1
  • プロファイル:2vCPU, メモリ4GB
  • 配置グループ:デフォルト値
  • ブート・ボリューム:デフォルト値
  • データ・ボリューム:デフォルト値
  • ネットワーキング:tok-vpc-01(先ほど作成したVPCを選択)
  • アドレス接頭部:10.244.64.0/18
  • IP範囲:10.244.64.0/24

・パラメーターを入力したら右側画面の金額を確認し「仮想サーバの作成」をクリックします。

金額を確認

プロビジョニングが完了しました。PowerVS よりもプロビジョニングは速かったです。

プロビジョニングが完了

・作成したVSI(RHEL)に Tera term を使用し SSH でログインします。

作成したVSI(RHEL)に Tera term を使用し SSH でログイン

ログインしようと試みましたが、rootユーザのデフォルトパスワードでログインが出来ません。
調べたところレスキューモードで初期パスワードの再設定が必要であることがわかりました!
今更ですが、私は現場から離れかれこれ10数年、Linux のレスキューモードは初めてです。いきなりハードルが高くなりました…

そしていざレスキューモード!と思い、VNCコンソール画面を開こうと思ったら…今度は VNCコンソールがグレーアウトされ開けません。
今回検証で使用するユーザは所有者ユーザではないため、こちら(IBMサイト)の説明にある通りVNC/シリアルコンソールの使用には権限の付与が必要であることがわかりました。更に回り道です。お付き合いください😢

・IBM Cloudサービスへのアクセス権限はアクセス管理システム “IBM Cloud Identity and Access Management(以下 IAM)” で設定することができます。
IBM Cloud画面の「管理」⇒「アクセス(IAM)」⇒「ユーザー」をクリックします。

IBM Cloud画面

・「アクセス権限の割り当て+」をクリックします。

アクセス権限の割り当て+

・「ポリシーの作成」でサービスから「VPC Infrastructure Services」を選択します。

VPC Infrastructure Services

・「リソース」は「すべて」、「役割とアクション」はサービス・アクセスで「Console Administrator」、「プラットフォーム・アクセス」は「Operator」以上を選択し、最後に追加をクリックして完了です。

「リソース」「役割とアクション」「プラットフォーム・アクセス」

・VNCコンソールが開けるようになりました!

VNCコンソール

・やっとレスキューモードの準備が整いました。
レスキューモードは RHEL の Customer Portal「23.3. 起動時のrootパスワードのリセット」の手順を参考に行いました。ここでは手順は記載しませんが、Customer Portal の手順で問題なくパスワード設定ができます。システム再起動からすばやく [e]キーを押して起動プロセスを中断しなければいけないので目を凝らして行いました!
(ご参考に下の画面は起動プロセス中断直後の画面です。)

起動プロセス中断直後

・VNCコンソールから rootログインをしてみたところ、無事ログインできました!
今回の検証では検証用のユーザを作成してsuして作業したいと思います。

ログイン完了

・Teraterm から検証用ユーザで SSHログインし、root にスイッチします。
無事ログインできました。

Teraterm から検証用ユーザで SSHログイン

4)Direct Link Connectの作成

前述した通り、PowerVS と VPC を接続するため Direct Link Connect を作成します。

・作成した PowerVS のワークスペース(PowerVS_Tokyo_01)に入り、左側メニューの「クラウド接続」をクリック、「作成」をクリックします。

Direct Link Connect を作成

以下のパラメーターで作成しました。

  • 名前:任意の名前
  • 速度:1Gbps(50Mbpsから選択可)
  • グローバルルーティング:選択無し
  • Enable IBM Cloud Transit Gateway:選択無し(Transit Gatewayを使用する場合はチェックします)
  • 宛先の構成:VPC
  • VPC名:tok-vpc-01(作成済みのVPC)
  • サブネット:PowerVSで作成したプライベートサブネット

・作成をクリックします。
しばらくすると Direct Link Connect の状況が “確立済み” になりました。以前は Case起票をしてプロビジョニングを行う必要がありましたが、ユーザーの操作からできるようになり使いやすくなりましたね。

Direct Link Connect の状況

5)AIXで静的ルーティングの設定

・PowerVS から VPC への静的ルートを設定します。
AIX なので smit を使用します。

PowerVS から VPC への静的ルートを設定1

PowerVS から VPC への静的ルートを設定2

・netstatコマンドで静的ルーティングが設定されたことを確認します。

netstatコマンド

・pingコマンドで疎通を確認します。

pingコマンド

これで PowerVS から VSI に接続ができるようになりました。
PowerVS、VSI のプロビジョニングはスムーズでしたが慣れない RHEL の操作と IAM の仕組みの理解に時間がかかりました。IAM の仕組みについては今後整理してご紹介したいと思います。

6)IBM COSの設定

・IBM COS にバケットを作成します。
今回は以前作成した Liteプランのストレージインスタンスにバケットを追加します。
以下のパラメータで作成しました。

  • バケット名:任意の名前
  • 回復力:Regional
  • ストレージクラス:Smart Tier

IBM COS にバケットを作成

・バケットが作成されました。
こちらのバケットにファイルを転送します。(バケット自体に課金は発生しません)

バケットが作成

これでサービスのプロビジョニングができました。
あらかじめ準備していた手順通りには進みませんでした…が全体の半分まで完了です!!

さいごに

IBM Cloud も初めて、慣れない Linux の構築、VNCコンソールが開けないトラブルなど…多々問題にあたり苦戦しましたがなんとか全体の半分まで完了しました。
10数年ぶりの構築作業でしたがデリバリSEの感覚が残っていてよかったです。

次回は AIX の設定、RHEL の Proxy の設定、ファイル転送試験です。
実際作業してみてわかった点をご紹介予定ですので是非ご覧ください。

お問い合わせ

この記事に関するご質問は下記までご連絡ください。

エヌアイシー・パートナーズ株式会社
E-Mail:nicp_support@NIandC.co.jp

 

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2024年04月08日

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2024年01月16日

【イベント開催レポート】IBM watsonx.ai ハンズオンセミナー

こんにちは。ソリューション推進部です。 2023年12月12日に、エヌアイシー・パートナーズ株式会社として初めてのハンズオンセミナー『「IBM watsonx.ai 」を利用したRAGのハンズオンセミナー』を開催しました。 今回のハンズオンセミナーは、以下の2つのことを目的として行いました。 パートナー様に製品の紹介とハンズオンを合わせて体験いただくことで、製品をより深く知っていただくこと 製品を活用したビジネスの新たな応用の可能性を見つけ出していただくこと 私たちのチームでは、パートナー様にご紹介・ご説明する製品を「実際に触ってみること」を大切にしています。これは私たち自身の技術力の向上という目的もありますが、パートナー様に私たちのリアルな経験を交えながら製品のご説明をすることが、お客様の具体的な課題発掘や案件創出に繋がっていると考えているためです。 今回のハンズオンを通して、パートナー様ご自身が製品の価値を体感しご理解いただくことで、新しいビジネス展開のイメージを創出するお役に立ちたいと考えました。 それでは、今回実施したセミナーの内容について簡単にご紹介いたします。 目次 レポート watsonx.ai紹介講義 ハンズオン実施 IBMさまによる最新情報紹介・講義 さいごに お問い合わせ レポート 1. watsonx.ai紹介講義 ハンズオンを実施する前に、watsonx.ai と RAG についての講義を行いました。 国内では生成AIビジネスが加速し、競争力やセキュリティなどの課題が増えています。これらの課題を解決する製品として、IBM watsonx をご紹介しました。 watsonx は「watsonx.ai」「watsonx.governance」「watsonx.data」という3つの製品から成り立っています。watsonx.ai は、基盤モデルをベースとした AI開発スタジオです。 ここでは、IBM が信頼できるデータを用いて事前に学習した基盤モデルや Hugging Face, Inc.* と連携したオープンソースの基盤モデルが利用可能で、ビジネスの状況や要件に応じて最適な基盤モデルを選択することが可能です。 また、RAG についての概念や利点、活用が期待されるシーンもご説明しました。RAG を用いた具体的なユースケースとしては、IBM Watson Speech to Text や Watson Discovery、watsonx.ai を活用したコールセンター業務の事例や、watsonx Assistant や Watson Discovery、watsonx.ai を活用した ECサイトの問い合わせの事例を取り上げました。 時間の制約からこれら2つの事例しかご紹介できませんでしたが、今後、watsonx.ai を活用した多様な事例を私たち自身も理解し、パートナーさまと共に議論を深めていきたいと思います。 *Hugging Face, Inc.:機械学習 アプリケーションを作成するためのツールを開発しているアメリカの企業。 2. ハンズオン実施 ハンズオンでは、受講者の方々に「RAG」を活用した watsonx.ai の Foundation Model(LLM)への問い合わせを体験していただきました。 RAG とは「Retrieval-Augmented Generation」の略で、LLM への問い合わせをする際に、事前に用意したベクターストアへデータ(今回はPDF)を取り込んでおき、問い合わせプロンプトをもとにベクターストアを検索し、その結果を付与して LLM へ問い合わせを行う、というテクノロジーです。 RAG を使うことで、一般公開されていない社内情報を活用して LLM を利用することが可能となるため、自社での利用やお客様の課題を解決するための方法として有効であると考えています。 ハンズオンの環境につきましては、準備に時間をかけずスムーズに始められるよう、事前に弊社にて PC や RAG を利用するための Jupyter Notebook を用意いたしました。 また、watsonx.ai では複数の Foundation Model を利用できるため、複数のモデルを使って挙動の違いを確認してみたり、取り込む PDFファイルを追加することで回答がどう変わるのか、など、ご自身で自由に検証をする時間を多く設けました。皆さまそれぞれに前提スキルは異なっていたかもしれませんが、「体験の時間が足りない…」ということはなかったかと思います。 今回ベクターストアへ取り込むのは PDF のみとしましたが、テキストファイルや PowerPoint なども取り込むことができるので、応用できる使い方が非常に広いということを理解いただけたのではないかと感じています。 3. IBMさまによる最新情報紹介・講義 日本アイ・ビー・エム データ・AI・オートメーション事業部 四元さまに「watsonx」に関して、最新事例と製品アップデート情報の2本立てで講義をしていただきました。 事例においては、IBM社内の watsonx活用事例(AskIT)は特筆すべきと言えるでしょう。 AskIT は、IBMの自然言語処理(NLP)能力を活かし、30万件を超えるサポートチケットから抽出された知見をもとに、重要なサポートトピックに迅速に対処する AIアシスタントとして開発されたそうです。このツールは4ヶ月で133,000人の IBM社員に利用され、問い合わせの75%以上が AI によるチャットで解決されるなど、非常に大きな成果を上げています。 製品アップデート情報のメインは、12月に発表された「watsonx.governance」でした。 AI を組織として採用するためには倫理感のある意思決定が必須であり、watsonx.governance は AIガバナンスとして以下の3つの機能を提供する製品である、というご説明をいただきました。 AIライフサイクルを通してAIモデルの実態を把握するための「モデル・インベントリ」 AIの性能や課題の管理などを行う「評価・モニタリング」 総合監視画面を提供しリスクを可視化する「モデル・リスクガバナンス」 モデル・インベントリでは、他社の AI商品である「Amazon SageMaker」「Azure Machine Learning」などの AIモデルも合わせて管理・監視できることが非常に興味深いです。 watsonx は、AIワークフローを一貫してサポートすることで倫理的かつ透明性の高い AI利用を可能にしています。これらの技術革新は私たちが直面している数多くの課題に対する解決策を見出し、先進的なビジネス環境を促進していく上での重要なステップと言えるでしょう。 日本アイ・ビー・エム株式会社 データ・AI・オートメーション事業部 四元 さま さいごに セミナー後には、参加いただいたパートナーさまとご支援いただいた IBMさまとの懇親会を開催いたしました。 当懇親会を通してパートナー様の生成AI に対する取り組みや課題を直に伺うことができ、大変有意義な場となりました。 2023年12月18日に弊社は10周年を迎えました。10年間で培った経験を糧にし、今後さらに新しい取り組みにチャレンジしていきたいと考えております。 本年も、ブログを通してパートナーの皆さまへ様々な情報をお届けさせていただきます!今後ともどうぞよろしくお願いいたします。 懇親会会場 お問い合わせ エヌアイシー・パートナーズ株式会社E-Mail:nicp_support@NIandC.co.jp   .highlighter { background: linear-gradient(transparent 50%, #ffff52 90% 90%, transparent 90%); } .anchor{ display: block; margin-top:-20px; padding-top:40px; } .btn_A{ height:30px; } .btn_A a{ display:block; width:100%; height:100%; text-decoration: none; background:#eb6100; text-align:center; border:1px solid #FFFFFF; color:#FFFFFF; font-size:16px; border-radius:50px; -webkit-border-radius:50px; -moz-border-radius:50px; box-shadow:0px 0px 0px 4px #eb6100; transition: all 0.5s ease; } .btn_A a:hover{ background:#f56500; color:#999999; margin-left:0px; margin-top:0px; box-shadow:0px 0px 0px 4px #f56500; } .bigger { font-size: larger; }

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