2022年12月

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ハイブリッドクラウド時代に求められるAIを活用したIT運用管理 ~AIで自動化し、IT運用管理を最適化するIBM Cloud Pak for AIOps~

生産性向上を目指し DX に取り組んでいる企業では、ハイブリッドクラウド環境で稼働するシステムの増加に伴い運用管理ツールが増え続け、様々な環境から発生する膨大な数のインシデントチェックとその対応がこれまで以上に IT運用管理者の負担となってきています。
この複雑化したIT運用管理の課題に対して、今、注目されているのが「AIによる自動化」です。

本コラムでは、IT環境の異常に対する自己検知、診断、対応を行う過程をAIにより自動化し、IT のコントロール性、効率性、ビジネス継続性の向上を実現する「IBM Cloud Pak for AIOps」についてご紹介します。

ハイブリッドクラウド化により複雑化するIT運用管理の課題

生産性向上を目指して DX を推進する企業の多くは基幹系システムがオンプレミスで稼働する一方、クラウド上で稼働するシステムも増加しています。
オンプレミスとクラウドが混在した状態で複数のシステムを運用しているためトラブル発生時の原因究明や解決のために複数の運用管理ツールを複合的に利用する必要があり、IT運用管理の現場の大きな負担となっています。

例えば、1つの環境で稼働するシステムであれば障害発生箇所とその対応方法は特定のツールを利用して情報収集し判断ができるため比較的障害箇所を把握しやすいですが、システム自体がオンプレミスとクラウド環境の両方を使っているように複数の環境でシステムが稼働していると環境ごとに異なるツールに収集される膨大なイベントやアラートに対して原因を特定するまでの工程が多く、時間もかかります。

現場では熟練した技術者が常に不足している状態でこの負担が恒常化すれば、あってはならない「見逃し」や「対処の遅れ」によるサービス停止が危惧されます。
そのため、いざ障害が発生した際に素早くトラブルシュートができないのではないか?という危機感を持っている管理者は少なくないのではないでしょうか。

先に述べた通り、オンプレミス・クラウド両方の環境で構成されたシステムのインシデントチェックとその対応には、複数のツールを利用して膨大なイベントやアラートを収集・判別し、迅速にトラブルシュートする必要があります。
また、オンプレミス・クラウド双方において情報を収集・分析し、早急な対応が必要な案件をフィルタリングして抽出しなければなりません。

そこで注目されているのが、今回ご紹介する「AIによる自動化」です。

複雑化したシステムのインシデントチェックと、その対応に自動化が有効な理由

インシデントチェックとその対応は環境ごとに次のような工程に分かれており、各工程で人手を介する場合相応の時間がかかります。

  • (1)イベントの検知
  • (2)インシデント発生箇所の特定
  • (3)インシデントの診断
  • (4)インシデントへの対応
  • (5)インシデント対応実施および修復完了

これを最適化・高度化するのが、AI による自動化されたフィルタリング機能です。

まず、複数のツールすべてのイベントを一元収集し自動的にグルーピングして対応アクションを紐づけることにより、(1)検知・(2)特定・(3)診断までの時間を大幅に短縮します。

AI はこれまでの管理知識や経験則を学習しているため、長年担当した熟練技術者や専任の管理者が不在であっても対応が可能です。
さらに、定型のイベントやアラートに対しては Red Hat Ansible Automation(※1)などの自動化ツールで事前に対処方法を確立しておけば、人手を使わず自動で障害対応を実行することが可能です。
そのため、(5)対応完了までの時間も大きく短縮することができます。

AI による自動化を活用すれば、膨大な数のイベントやアラートを人がすべてチェックする必要はなくなります。
早急な対処が必要な重要インシデントのみを AI がフィルタリングで絞り込んでくれるため、管理者はイベントやアラートを見逃すことなく障害が起きる前に対応することができ、システム監視と発生したイベントの解決を効率化することが可能になるのです。

※1:Red Hat Ansible Automationは、米国Red Hat社が開発するオープンソースの構成管理(自動化)ツール。サーバー構築から構成の変更、動作確認、確認作業まで一連の作業を自動化することができる。

インシデントチェック対応の自動化

IBM Cloud Pak for AIOpsが解決する3つのIT運用の課題

IT運用ツールチェーン全体に先進的な AI を実装することで、膨大なイベントやアラート通知をフィルタリングし重要で対処が必要な案件のみに絞り込んでシステム監視を効率化するのが、AIOpsプラットフォーム「IBM Cloud Pak for AIOps(以下 AIOps)」です。

AIOps は、IBM Research の120を超える特許と自然言語理解(NLU)、機械学習(ML)、自然言語処理(NLP)といった、最も優れた IBM Watsonテクノロジーを活用してシステム環境全体でデータを解析します。
IT環境の異常に対する自己検知、診断、対応を行う過程を自動化し、リスクと埋もれた技術資産を特定します。

これにより、基幹業務のワークロードにおけるインシデントを確実に評価、診断、解決できるようになり、IT のコントロール性、効率性、ビジネス継続性を向上させて複雑化するハイブリッド/マルチクラウド環境に対応した運用のモダナイゼーションを実現し、次の3つのメリットを実現してIT運用の課題を解決します。

1. データの一元収集と解析によるアジャイルでプロアクティブな運用管理

エンティティ・リンキング(知識ベースに結びつけ)によって構造化データと非構造化データを合わせて理解し、自然言語処理、機械学習テクノロジーを活用することで正確な診断および解決のリコメンデーションを行います。

IT環境から発生する様々なイベントやアラートを一元収集しこのテクノロジーを活用し解析することで、複雑化した複数のシステム環境における異常をリアルタイムで検知・分析することができるようになります。

AIOps を活用し IT運用の中核に AI を据えてすべてのビジネスワークフローに適用することで、アプリケーションとインフラストラクチャーの管理を集約し、問題を検知し解決する時間を短縮することが可能になります。

複数データを全体で処理することによってのみ理解できる固有の洞察を得ることも可能です。
トポロジー機能によるアプリケーションやクラスターの可視化、問題の発生個所とその影響範囲の把握、および問題解決に向けて迅速に対応が可能なため、アジャイルでプロアクティブな継続的に向上していく AI主導の運用管理を実現します。

2. インシデントチェック・対応を自動化して障害運用を効率化

AI/ML を活用したイベント分析により、関連イベントをグルーピングするとともに問題のコンテキストを把握します。
また、問題に対する Next Best Action を提示することで、イベント通知量を軽減すると同時に実行可能で効率的な障害運用を推奨することも大きな特長です。

Slack といった Chatツールへの情報連携によって、関連するイベントやトポロジーの情報、過去の類似事象、次に行うべきアクションを合わせて Chat内で提示してくれるので、早期に対応を開始することができます。
さらに、相関関係・因果関係・パターン特定により、洞察の根拠に関してステークホルダーにわかりやすい推論および説明があるので対応も迅速に実施できます。

これにより、今まで検知できなかった問題やその影響範囲を自動検知し早期に対応を開始するとともに、ホットスポットとボトルネックの可視化、財務的影響についての情報活用、早急に取り組まなければならない問題の優先順位付けなどの洞察を提供することで、次に行うべきアクションを自動的に提示し、解決時間を短縮します。

3. インシデント管理ツールチェーンによる予測保守で品質と生産性を向上

運用チームの働く場所で実行し既存のツール・プロセスワークフローを活用することで、ITデリバリーを加速し効率性を向上させます。

これらのデータはプロセスに組み込まれ運用チームに専門家のガイドを提供するため、お客様環境における傾向を把握した上で障害発生を予測することができ、事前に対応を行うことで障害発生を予防することにつながります。

また、AIOps の AI による早期の異常検知や次に行うべきアクションの提示には、運用コストの削減や ITサービスの品質向上も見込まれます。
さらに、サービスを可能な限り迅速に復元するように最適化されており、これにより最高レベルのサービス品質と可用性が維持されます。

ツール・プロセスワークフロー

まとめ

AIOps はマルチクラウド・ハイブリッドクラウドで利用される様々なツールによって生成されるイベントやアラートを一元収集し、収集したデータを AI で解析することで従来の手作業では発見できなかった問題を早期に明らかにしていくために有効な製品です。

また、膨大なイベントやアラート通知をフィルタリングし重要かつ対処が必要な案件のみに絞り込むことでシステム監視を効率化するとともに、対処が必要なインシデントに対してはその対処方法を提示してくれるのも、AIOps の大きな特長です。

さらに AIOps はどのようなソースからでもデータを取り込み、ローカル、ハイブリッド、マルチクラウド環境を横断して管理するだけではなく、お客様が選んだ様々なコラボレーションプラットフォームとの連携や IT運用ツールとの相互運用が可能で、様々なクラウドでも洞察を直接ワークフローにつなげることができます。

特に、

  • マルチクラウド・ハイブリッドクラウドにおいてフルスタックの可観測性を提供し、環境を理解・判断して迅速にアクションを促す洞察を提供する「IBM Observability by Instana
  • AIを活用し、アプリケーションのためのリソース配置を自動的に最適化するAIOpsソリューション「Turbonomic ARM for IBM Cloud Paks
  • AIライフサイクル管理機能(継続的学習、公平性、ドリフトモニタリング、データリネージュ、など)を提供する「Cloud Pak for Data

と連携させることによってハイブリッド・マルチクラウド環境の効率的な管理を実現し、クラウドのメリットを最大化させることができます。

エヌアイシー・パートナーズは IBM認定ディストリビューターとして、ARM(Turbonomic)や APM(Instana)製品などとともに、AIOpsソリューションの拡張提案についてご支援します。

AIOpsソリューションに関するお悩みは、ぜひエヌアイシー・パートナーズへご相談ください。

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2025年07月11日

【参加レポート】Domino Hub 2025

公開日:2025-07-11 みなさまこんにちは。ソリューション企画部 松田です。 2025年6月19日・20日と2日間に渡って開催された「Domino Hub 2025」に参加しました。これは HCL Ambassador有志が企画・実行する Dominoコミュニティイベントです。去年に続き、今回が3回目の開催となります。 昨年同様、今回もエヌアイシー・パートナーズはスポンサーとしてご支援させていただき、両日参加いたしました。そのレポートをお送りします。 目次 イベント概要 セッション内容 - Domino 14.5 リリース 特徴的機能とライセンス改定 -ロードマップ -お客様事例:曽根田工業様 最後に 関連情報 お問い合わせ イベント概要 「Domino Hub」は、HCL Ambassadorが主宰となり、Dominoの利用者、開発者、ソリューションベンダーが一堂に会するコミュニティイベントです。今回は1日目がオンライン、2日目はオンサイトのみの開催でした。 特に2日目は参加率が非常に高かったとのことで、会場も大変盛況でした。結婚式場としても使われている今回の会場は、中庭から陽の光が差し込み、解放感があるラグジュアリーな空間で、一般的なビジネスミーティングよりも上質な雰囲気が感じられました。 併せて展示ブースも設置され、Dominoアプリケーションがスマートフォンやブラウザで使えるようになる「HCL Nomad」などのHCL製品とともに、様々なビジネスパートナー様の多彩な関連製品が数多く展示・紹介されていました。 セッション内容 2日間で全22セッションが行われました。セッションはHCLをはじめ、HCL Ambassadorから、様々な開発ベンダー、製品ベンダー、エンドユーザーからの事例紹介などのセッション、そしてパネルディスカッションがありました。まずHCLからのセッション内でのトピックをお伝えします。機能のみならずライセンスまわりで大きなニュースもありました。 Domino 14.5 リリース 特徴的機能とライセンス改定 Domino Hubの2日前、2025年6月17日にリリースされました。 Domino IQ 特徴的な機能で最も注目すべき、今回もご説明に時間を割かれていたのが「Domino IQ」です。 一言で言えば「Domino内にローカルでLLMを持たせ、蓄積されてきたDominoアプリ内の情報も取り込み、セキュアな環境で生成AIを用いた業務を実現する」ものです。 企業内業務で生成AIをどのように実装し利用していくかは今、皆様の大きな関心事項であられると思います。自社のDomino環境内で、Dominoアプリケーションを用い、Notesクライアントからそれが実現できることになります。 (画像クリックで拡大) Nomad for Web COM対応 またNomad for WebがCOMに対応したことにより、これまではNotesクライアントだけでしかできなかったExcelやPowerPointを埋め込んだDiminoアプリもブラウザから利用できるようになりました。 ライセンスダッシュボード:DLAUの統合 これまでGitHubからダウンロードしてセットアップしていたDomino License Analysis Utility (DLAU)がDomino内にデフォルトで統合され、The Domino License Administration (DLA) となりました。 (画像クリックで拡大) ライセンス改定 そしてライセンスにも大きなベネフィットが付加されました。CCB Termライセンスにはこれまで「Domino Leapで5アプリケーションまで開発・利用が可能」という権利が含まれていましたが、2025年7月1日からその制限がなくなりました。すなわち「2025年7月1日以後有効なCCB Termライセンスをお持ちのお客様は、Domino Leapのフル機能が利用できる」となります。 同時に、Domino Leapライセンスの利用範囲であるHCL Enterprise Integrator(HEI)の利用権利も含まれます。これでCCB Termライセンスのみで、追加費用なく「ブラウザによるノーコード/ローコード開発」「基幹業務とDominoアプリケーションの連携」が可能になります。 さらにCCB Termで利用できるSametime Chatで添付ファイルと画像添付も可能になりました。 ロードマップ Domino、Notes、Verse、Nomadなど各ソリューションについてのロードマップも紹介されました。先々の計画は出てこないものですが、このようにHCLから明確に提示されることにより、Dominoをお使いのお客様はこれからも安心して利用を継続していただけると思います。 Dominoのロードマップ(画像クリックで拡大) Notesのロードマップ(画像クリックで拡大) Nomad, VerseといったエンドユーザーのUI部分が短期間でバージョンアップされていく。(画像クリックで拡大) お客様事例:曽根田工業 様 Dominoユーザーの有限会社曽根田工業 代表取締役 曽根田 直樹 様より、Domino事例のご講演がありました。曽根田様は2001年に静岡県磐田市で個人で企業され、切削機械の刃物を製造されています。曽根田様のお話で非常に興味深かった部分を抜粋致します。 "独立・起業するにあたり、前職で使っていたNotes/Dominoを自社でも使うことにした。現在は大手メーカーからの発注依頼や過去に作った品番の再発注など数多く受けており、当時のCAD/CAMのデータや販売管理データなどをDominoに入れて運用している。 オンプレミス環境のリスクやセキュリティ、IT技術のトレンドに合わせてクラウド化を検討した場合、Dominoからは離れたほうがいいのではないか?と思い、他社SaaS製品も検討しトライアルで利用登録をした。 しばらく触れずにいたところ、アカウント情報に登録していた支払い口座から利用料の引き落としがされていなかったためアカウントが凍結、さらに保存していたデータも突然消去されてしまっていた。支払いが滞っただけで中身まで削除されてしまうようなシステムには会社の大事な資産であるデータを載せられないので、「Dominoを『やめることを止める』判断」をした。" Dominoから他製品への移行を検討され断念されるお客様は多く、その理由は「Dominoの業務アプリケーションを、サービス内容を落とさずに別プラットフォームに移行することがはなはだ困難である」ということをよくお聞きしますが、この点にも意外な理由が潜んでいました。 最後に 初の2年連続開催となった今年のDominoHubは、コミュニティの力を象徴するかのような盛り上がりを見せました。14.5のリリース、生成AIの実装、ライセンス強化など、今後のDominoの発展を確信させる要素が数多く披露されたほか、実際のユーザー事例も非常に示唆に富むものでした。加えてロードマップの提示による未来への安心感も得られました。 DominoHubは単なる情報共有の場に留まらず、技術、コミュニティ、そしてビジネスの未来を交差させる特別な場となっています。これからもこのような取り組みが継続していき、多くのDominoユーザー、デベロッパー、そして販売パートナーが更なる価値を引き出していけることを楽しみにしています。これからもDominoと私たちの未来を築いていきましょう。 関連情報 「Domino Hub」大阪開催 Domino Hubは、2025年9月18日に大阪でのオンサイト開催が決定致しました。詳細およびお申し込みについては、こちらのリンクからご確認ください。 お問い合わせ エヌアイシー・パートナーズ株式会社E-mail:voice_partners@niandc.co.jp   .highlighter { background: linear-gradient(transparent 50%, #ffff52 90% 90%, transparent 90%); } .anchor{ display: block; margin-top:-20px; padding-top:40px; } .btn_A{ height:30px; } .btn_A a{ display:block; width:100%; height:100%; text-decoration: none; background:#eb6100; text-align:center; border:1px solid #FFFFFF; color:#FFFFFF; font-size:16px; border-radius:50px; -webkit-border-radius:50px; -moz-border-radius:50px; box-shadow:0px 0px 0px 4px #eb6100; transition: all 0.5s ease; } .btn_A a:hover{ background:#f56500; color:#999999; margin-left:0px; margin-top:0px; box-shadow:0px 0px 0px 4px #f56500; } .bigger { font-size: larger; } figcaption { color: #7c7f78; font-size: smaller; }

2025年06月26日

次世代型のインフラ構築を実現するIBM Fusion HCIがクラウドシフトを加速

公開日:2025-06-26 クラウドファースト時代となり、企業のインフラ構築においてもクラウドネイティブなアーキテクチャをめざす潮流が高まりつつあります。なかでも重要な技術とされるのが、コンテナベースの基盤づくりで、アプリケーションをコンテナ化できれば、その移植性や効率性、スケーラビリティなどが大きく高まり、ビジネスの展開を高速化できると期待が集まっています。 しかし、基盤のコンテナ化は、これまでのシステム構築のあり方と大きく“作法”が異なり、専門のナレッジやスキルが求められます。ただでさえ IT人材が不足している今日、一朝一夕に移行するのは難しく、この点が多くの企業にとって大きなジレンマとなっています。 貴社においても、 「クラウド移行は進めたものの、残るオンプレミスシステムとどう連携させればいいのか」 「自社で腰を据えてAI活用に取り組みたいが、社内リソースが足りない」 などのお悩みはないでしょうか。 今回は、企業が課題を抱えがちな次世代型のインフラ構築をあっさり実現するソリューションIBM Fusion HCIを紹介します。 目次 インフラ基盤が抱える課題 IBM Fusion HCIの概要 インフラ基盤が抱える課題への最適策 IBM Fusion HCIを利用したユースケース 次世代のインフラ基盤への鍵を握るIBM Fusion HCI お問い合わせ インフラ基盤が抱える課題 今日、企業情報システムのインフラ基盤は様々な意味で岐路に立っているといえます。これまで同様の手法では、刻一刻と変化し続けるビジネス環境を受けとめきれず企業競争力を低下させる恐れもあります。 例えば、具体的な危惧の内容として次のようなものがあります。 1. クラウドネイティブなアーキテクチャ導入の高い難易度 クラウドネイティブなアーキテクチャは柔軟性やスケーラビリティを重視した設計手法で、ビジネススピードの向上にも貢献します。しかしその導入には既存のシステムとは手法が異なるため、互換性確保や高度な専門知識を持つ人材の確保といった点に障壁があります。また、従来型の開発手法から移行する際には、文化的変革や技術的理解のギャップが課題になっています。結果、プロジェクトを立ち上げたものの頓挫してしまった、というケースも発生しています。 2. マルチクラウド戦略を推進する上での壁 マルチクラウド戦略とは複数のクラウドサービスを使い分けることで、効率的なリソース管理やリスク分散を実現することを指します。多くの企業が「オンプレとクラウドを統合」または「複数のクラウド環境を最適化」したいと考えています。 しかし、相互接続性やデータ移動に大きな課題があります。また、異なるプロバイダ間での運用調整やコスト管理の複雑化も実践の妨げになりがちです。特に、各クラウド特有の設計要件への対応やパブリッククラウドとプライベートクラウド間のデータ連携には多くのリソースとノウハウが必要です。 3. 自社AIワークロードの拡大 AIワークロードの拡大は、迅速なデータ処理や大量データ解析を可能にします。しかし、これに伴って高性能なインフラ整備が求められます。既存のインフラでは計算負荷が高く、パフォーマンスが著しく制限されるためです。慎重に選定を進めなければ計算資源の増加による費用の急増が発生するリスクがあります。 エッジ環境でのデータ処理や通信コストの抑制に対応できる基盤という観点も重視しなければなりません。開発プロセスの最適化や適切な AIモデルの選定なども大きな課題です。 4. VMware基盤のコスト問題 すべての企業に当てはまるわけではありませんが、仮想化基盤として VMware を採用するのは普遍的なソリューションであり、信頼性の高い仮想化テクノロジーを提供します。 しかし、近年そのコスト問題が大きく取り沙汰されており、ライセンス料や運用費用の高さが企業にとって大きな負担となっています。長期的な予算圧迫を招く可能性があり、特に運用規模が拡大していくビジネス環境の場合、コスト管理が難航するリスクがあります。さらに、技術的な側面では仮想マシン単位でしか運用管理できないという点があり、リソースの効率的な活用に限界があります。 IBM Fusion HCIの概要 IBM Fusion HCI は、上記のようなインフラ課題を解決するために登場したハイパーコンバージドインフラ(HCI)ソリューションです。コンテナ(Red Hat OpenShift、以下 OpenShift)ベースのシステムを構築するために必要な機能をあらかじめすべてパッケージ化しており、コンテナ専用のオール・イン・ワンソリューションといえます。 具体的に必要な機能とは、統合運用管理ダッシュボード、ストレージファイルシステム、バックアップリストア、コンテナ、仮想マシンを指しており、オプションでデータ連携カタログも選択できます。納品後最短4時間で構築が完了し、すぐに使用を開始することができます。 図1:IBM Fusion HCI概念図 これにより、企業において統合データ管理やクラウドとの透過的アクセス、アプリケーションの高速化といった次世代志向のインフラ構築が実現します。また、IBM Fusion HCI はサーバー/スイッチも統合管理でき、サポートを IBM に統一できるという点においても企業の運用管理負荷を大きく軽減することが可能です。AI を含む負荷の高いワークロードにも対応できます。 このプラットフォームで、データ管理、計算リソース、ストレージを効率的に統合できるため、AIアプリケーションの実行に必要な環境がシームレスに整います。例えば、AIモデルのトレーニングや推論処理を高速化するために計算資源にスケーラビリティをもたせるといったことも可能です。さらに、セキュリティ面でも信頼性の高い機能が提供されており、企業の重要なデータを安全に保護します。 インフラ基盤が抱える課題への最適策 IBM Fusion HCI は 導入しやすく柔軟でパフォーマンスに優れたインフラ基盤 です。コンテナベースのシステム構築を進めたい企業にとって最適の選択肢といえ、そのメリットとしては次のようなものがあります。 1. クラウドネイティブへのスムーズな移行を実現 Red Hat OpenShift を基盤とし、これをあらかじめパッケージした HCI であるため、ユーザーはクラウドネイティブなコンテナ基盤を導入する際に設計を始めとした複雑な調整を省けます。また、専用インストーラーを搭載しており導入をスムーズに進めることができるため、製品が到着したその日からデジタルトランスフォーメーションに着手することが可能です。 2. マルチクラウド/エッジ環境への移行 IBM Fusion HCI は、オンプレミス、パブリッククラウド、エッジ環境のどこでも稼働することができます。特に、ハイブリッドクラウドのアプローチを強化するために設計された新しいサービス「IBM Cloud Satellite」を活用すれば、IBM Cloud サービスのメリットを IBM Fusion HCI の環境にも容易に拡張できます。 例えば、データが特定の地域に留まる必要がある法規制に従う際に、IBM Cloud Satellite はその地域でのデプロイメントをサポートしつつ IBM Cloud が提供する最新の AI、セキュリティ、ストレージ機能をオンプレミス環境で利用できます。 この透過的なデータ連携能力は、マルチクラウド環境のデータ制御に大きな力を発揮します。 3. AIワークロードに対する優れた対応力 セルフ型オンプレミスクラウドの提供 IBM Fusion HCI は AIワークロードに特化した柔軟で高度なインフラ基盤を提供します。強みは、watsonx との連携によるセルフ型オンプレミスクラウドの構築が可能 である点です。この連携により、クラウドの利便性をオンプレミス環境に取り入れ、AIモデルのトレーニングやインファレンス(推論)作業をシームレスかつ効率的に進められます。 AI処理に最適化された設計 IBM Fusion HCI には高速な AI処理を実現する設計が施されています。NVIDIA GPU の活用を可能とし、AIモデルのトレーニングや推論の速度を飛躍的に向上させます。また、watsonx.data と組み合わせることでデータクエリのパフォーマンスを従来インフラの最大90倍まで高速化 することが可能です。 エンタープライズグレードのデータ基盤 IBM Fusion HCI はデータレイクハウスとしての機能を提供し、AIワークロードに必要なデータ収集・分析基盤の構築を支援します。エンタープライズ規模の大容量データ管理に対応し高い柔軟性と拡張性を持つため、DX を推進する企業にとって理想的な選択肢と言えます。 4. コスト削減と効率性の向上 VMwareのライセンス費用をカット IBM Fusion HCI は、VMware を利用した仮想化基盤の代替として大幅なコスト削減の可能性とします。物理サーバー上に Red Hat OpenShift環境を直接構築する仕組みによって VMwareライセンス費用や運用コストを削減すると同時に、OpenShift利用における費用も最適化できます。 効率的なリソース管理 コンテナ単位での精細なリソース管理を実現する IBM Fusion HCI は、従来の仮想マシン管理よりも大きな効率性を発揮します。これにより、仮想化環境の課題(例:仮想マシン単位でしかリソースを扱えない問題)を解消し、リソースの使用効率を最大化します。 運用負荷とコストの削減 IBM Fusion HCI は設計・導入・運用にかかる負担を軽減し、運用管理の効率化を達成します。IBM による一元的なサポートが可能なため、トラブル発生時の対応が迅速かつスムーズです。また、watsonx を活用した次世代ワークロードに最適化されており、最新技術を活用しながら長期的なライセンスコストの抑制を実現します。 5. 障害時の運用負荷負担削減 IBM Fusion HCI は、システムの信頼性を高めるために設計された自動監視および報告機能である CallHome機能を搭載しています。そのため、障害発生時に IBM に自動通知でき、運用負担を軽減することができます。統合管理コンソールによりシステムの状態を一元的に確認できるため、トラブルシューティングも容易に行うことができます。 IBM Fusion HCIを利用したユースケース 1. IoTサービスでの利用 製造業で IoTサービスを開始したいという場合、製品や生産機械から IoTデータを収集し、このデータをクラウドなど IoTサービスの拠点に送る必要があります。しかし、生産拠点によってはセキュリティやネットワーク要件が厳しくデータをクラウドに出せないということもあります。 そこで、条件の厳しい工場には IBM Fusion HCI を設置しクラウド同様の IoTサービスを展開することで、エンドユーザーにデータから得られる知見を提供できます。 2. マルチクラウドでの利用 すでに進んでいるクラウド移行を統一管理したい場合にも IBM Fusion HCI は活躍します。例えば、複数クラウドの OpenShift環境に統一したセキュリティポリシーを適用するとした場合、お客様サイトの IBM Fusion HCI を起点として IBM Cloud を介して様々なロケーションの OpenShiftサービスを一元化できます。ポリシーをアップデートする際も変更が自動的に反映されるため、運用管理の負荷が大きく軽減できます。 3. AIワークロードでの利用 AIデータ処理を IBM Fusion HCI上の NVIDIA A100 GPU で実行することができます。これにより、大規模な AIシステムを構成するコアシステムやクラウド上の AIアプリケーションのデータへライブストリーミングすることができます。また、エッジで処理を終えてから、コアシステムやクラウド上のデータレイクやデータウェアハウスに送信するといったことも可能です。 図2:エッジのIBM Fusion HCIでAIデータ処理を実行 次世代のインフラ基盤への鍵を握るIBM Fusion HCI 未来志向のインフラ基盤に求められるのは「柔軟性」「効率性」「スピード」「安全性」です。IBM Fusion HCI は、これらすべてを備えた次世代型のソリューションとして、顧客提案の新しい切り札になると考えられます。 エヌアイシー・パートナーズは、IBM ソフトウェア/ハードウェアの認定ディストリビューターとして、IBM Fusion HCI のお客様への提案をサポートします。また、IBM のソフトウェア製品およびハードウェア製品を組み合わせた最適な提案を提供するとともに、製品の特長や利点をお客様にわかりやすく説明し、お客様・パートナー様のビジネスをサポートしています。 「お客様のニーズや要件に合わせて総合的なIBMソリューションを提案したい」 「IBM製品の機能や適用方法についての問い合わせに適切に対応したい」 「IBM製品の特長や利点を活かしてお客様ビジネスに最適なプランを提示したい」 といったご要望をお持ちの際は、お気軽にエヌアイシー・パートナーズへご相談ください。 お問い合わせ この記事に関するお問い合せは以下のボタンよりお願いいたします。お問い合わせ   .highlighter { background: linear-gradient(transparent 50%, #ffff52 90% 90%, transparent 90%); } .anchor{ display: block; margin-top:-20px; padding-top:40px; } .btn_A{ height:26px; } .btn_A a{ display:block; width:100%; height:100%; text-decoration: none; background:#eb6100; text-align:center; border:1px solid #FFFFFF; color:#FFFFFF; font-size:16px; border-radius:50px; -webkit-border-radius:50px; -moz-border-radius:50px; box-shadow:0px 0px 0px 4px #eb6100; transition: all 0.5s ease; } .btn_A a:hover{ background:#f56500; color:#999999; margin-left:0px; margin-top:0px; box-shadow:0px 0px 0px 4px #f56500; } .bigger { font-size: larger; }

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