企業が自社の価値を高めるために、デジタルビジネスに取り組むケースが増加しています。
デジタルビジネスを成功させるための重要な要素の1つとして離脱率の低下があります。
利便性・レスポンス(スピード)・充実した機能をユーザーへ提供することが離脱率の低下につながり、最終的には顧客満足度を高め売り上げ増加に寄与します。
当コラムでは、デジタルビジネスの増加に伴うアプリケーション環境の大きな変化を解説するとともに、クラウドネイティブ環境の可視化に強みをもつ「IBM Observability by Instana」をご紹介します。
Index
- システムのパフォーマンスがビジネスに直結する時代
- アプリケーション環境のパフォーマンスを高度に監視する「APM」
- APMと従来型モニタリングとの違い
- AIを活用したIT運用環境高度化ソリューションをご提案します
- Instanaで不透明なシステムを理解のできる透明なシステムへ
- この記事に関するお問い合わせ
- 関連ページ
システムのパフォーマンスがビジネスに直結する時代
スマートフォンの普及やコロナ禍を背景にデジタルビジネスが増加しています。
その目的は販路拡大による売り上げ増加が主ですが、利便性向上・顧客満足度の向上という効果も生まれます。
デジタルビジネスの1つ目の例として、Webバンキングアプリによる銀行振込やキャッシュレス決済アプリがあります。
このようなスマホアプリでは確実に素早く処理をする必要があるため、アプリケーションの応答時間と24時間365日利用できる可用性が利用者の満足度に直結しています。
2つ目の例として、チケットの Webサイトでの販売を始めとした ECサイトやショッピングアプリがあります。
これらを提供している企業はオンラインでモノやサービスを販売し収益を得ているため、サービスの安定稼働や安定した応答時間、いつでも利用できる可用性が求められます。
これら2つの例を見ても分かる通り、デジタルサービスにおいてはユーザーに継続して利用してもらうことが重要な要素ですが、そのためには利用できる機能はもちろんのこと、アプリケーションの応答時間や可用性も大きな要素となります。
しかし、アプリケーション環境の適切なパフォーマンスを維持するためには、これまでのような死活監視や閾値 (しきいち) をベースにしたシステム監視では「本当に何が原因でパフォーマンス劣化が起きているか?」が把握できず、不十分です。
そのため、アプリケーションの応答時間を監視し、障害発生時に迅速に復旧するための新たなソリューションが求められているのです。
アプリケーション環境のパフォーマンスを高度に監視する「APM」
デジタルでのビジネスの比率を大きくする場合、従来のようなウォーターフォール型での開発方式ではアプリケーションを提供するまでに時間がかかってしまい、ビジネスのスピード感に欠け、他社に遅れを取ってしまうケースも出てきます。
そのため、アプリケーション開発に関して以下のような変化が必要になっています。
1. デプロイ頻度の変化
1つ目は、継続的なソフトウェアデプロイメントの頻度の変化です。
アジャイル開発スタイルの採用を進めることで、従来よりも継続的かつ高頻度でリリースを繰り返すことができます。
その際、リリースしたサービスのパフォーマンスや応答性能に問題が生じていないかをリリースごとに把握し、問題がある場合には早急に改善する必要があります。
2. 技術的複雑性
2つ目は、技術的な複雑性です。
アプリケーションの修正を素早く実施するためにはマイクロサービス・アーキテクチャを採用することが有効です。
マイクロサービスで作成されたアプリケーションは小さく分けられた機能毎に改修・リリースができるため、修正しデプロイするまでにかかる時間を短縮できます。
しかしながら、同時に追加機能毎に連携するコンポーネントは増え、各サービス間の現状の依存関係を把握し発生した問題に対処することが難しくなっていきます。
特にハイブリッドクラウドやマルチクラウド環境、Kubernetes などのクラウドネイティブのサービスを組み合わせて利用する場合は、個々の環境毎でのモニタリングはできても、アプリケーションとしての稼働を管理するためには利用している環境全体を通した管理が必要です。
3. DevOpsの採用
3つ目は、DevOpsの採用です。
開発担当と運用担当が連携・協力してフレキシブルかつスピーディーに開発することができるのが DevOps ( Development and Operations) です。
DevOps を採用することで、開発・運用を密に連携し、開発したアプリケーションを本番運用に載せるまでの期間を短縮化できるようになるのがメリットです。
しかし、障害やパフォーマンスの問題が発生すると、チームでそれに対応するために多くの時間が割かれることになります。問題に対応している間は新規の開発を止めざるを得なくなるため、素早く問題を解決する必要があります。そのため、問題の原因を早期に発見・特定するための直感的に利用できるツールが求められます。
これらのような変化によって生じる課題を解決するためにアプリケーション環境のパフォーマンス監視を実現できるのが、APM (Application Performance Management = アプリケーション・パフォーマンス管理) です。
APMと従来型モニタリングとの違い
従来型モニタリングでは、システムを構成するハードウェアとソフトウェアが正常に稼動しているかについて、個々の状態を把握することに主眼がおかれていました。
しかし、それはハードウェアの障害やソフトウェアの異常を素早く検知することに役立つ一方で、ハードウェアの故障やソフトウェアの停止をともなわないアプリケーションの性能低下などが検知できません。
そのため、「アプリケーション応答速度の極端な悪化」や「アプリケーション利用時の頻繁なエラー画面の出力」などの異常については利用者側からの申告で気づくことが少なくありませんでした。
また、従来型モニタリングの多くは、各環境で利用されている言語やプログラムにあわせて事前の導入と構成・設定が必要です。
それに加えサービス間の依存関係が把握できず固定の閾値を超えたかどうかの確認しかできないため、このようなアプローチではダイナミックに変化しつづけるクラウドネイティブ環境には追随していくことは困難です。
従来型のモニタリングとは違い、APM は以下の様にアプリケーションが本番環境で正常に動作していることをモニタリングして、システムやアプリケーションが利用者に提供している「サービスの品質」と「システムの状態」を可視化し、トランザクションのパフォーマンスの状態を測定することができます。
- どれだけの利用者がシステムにアクセスしているのか?
- 利用者はシステムを快適に利用できているのか?
- 応答時間やエラー発生の有無は?
さらに、パフォーマンスが正常でない場合もしくは悪化した場合は、問題の原因となっている障害個所を特定することができるため素早く問題を解決できるようになり、利用者への影響を最小限に抑えることができます。
APM は企業のビジネスにとって重要な中核となるアプリケーション環境を監視し、パフォーマンスの安定化・早期復旧するために最も重要な監視ツールであることが分かります。
Instanaで不透明なシステムを理解のできる透明なシステムへ
デジタルプラットフォームの効率的な監視および迅速な障害個所の特定など、特にクラウドネイティブ環境の可視化に強みをもっている APM が「IBM Observability by Instana」(以下 Instana)です。
Instana は、大きく「自動化」「コンテキストの把握と解析」「インテリジェントなアクション」の3つの特長を持っています。
1. 自動化
1ホストにつき1つのエージェントを導入するだけでエージェントがホスト上で稼働しているテクノロジーを検知し、テクノロジー応じたセンサーを自動的にロードして観測を開始します。
また、すべてのリクエストをトレースし、メトリックは一秒単位で収集することでリアルタイムに近い情報を可視化します。
2. コンテキストの把握と解析
センサーにより収集したすべてのリクエストを解析し、コンポーネント、サービス、リクエストを論理的にグループ化・自動的に解析し、システムの振る舞いや状況をコンテキストとして把握することが可能です。
また、収集したデータを継続的に依存関係モデルに編成し、各コンポーネント、各サービスの依存関係を把握し、リアルタイムで可視化します。
これにより複雑な環境がわかりやすくリアルタイムに可視化され、監視画面をドリルダウンしていくことでコンポーネント間の関係性が容易に把握できます。
図1:依存性マップ
図2:エラーからブレイクダウンして詳細を確認
3. インテリジェントなアクション
ナレッジベースのアプローチを利用してデータを解析し提示することで、状況の把握できない不透明なシステムを理解のできる透明なシステムへと変え、サービスやインフラストラクチャの状態を分析して問題を検出します。
Instana には、サポートを提供するコンポーネントに対して Instana のチームがグルーピングし整理・集約した、実際のユーザーからのフィードバックにより改善されたインシデント情報が組み込まれています。
また、各サービスの応答状況の監視においては単純・固定的な閾値での監視だけでは利用者からみたサービス状況を正確に把握することが難しいため、ゴールデン・シグナルと呼ばれる負荷、応答性能、エラー数、リソース飽和状況といったメトリクスを監視することで利用者目線での影響を把握でき、素早く対応できます。
Instana ではこれらに対して機械学習を活用することで、エラー応答の急増やパフォーマンスの劣化、負荷の急激な上昇・低下といった様々なインシデントをとらえます。
これによりトラブルシューティングが迅速化されることに加え、監視によるオーバーヘッドが極めて低くシステムに負担がかかりません。
また、効率的に問題解決できるため、運用工数の削減とシステム稼働率の向上が可能です。
図3:Websites & Mobile Apps
AIを活用したIT運用環境高度化ソリューションをご提案します
今回ご紹介した Instana は、オンプレミス版だけでなく SaaS版でのご提供もできるため、サーバ不要ですぐにサービスとして利用することが可能です。
また、CPUコアやメモリー、利用機能に応じた利用料金が設定されているほかのツールとは異なりノード単位の課金方式を採用しているため、利用する機能に依存せずにライセンス費用が固定化できることも大きなメリットです。
エヌアイシー・パートナーズでは、IBM認定ディストリビューターとして、APM の「IBM Observability by Instana」に加え、パフォーマンスとコストを最適化し IT運用を効率化するアプリケーション・リソース管理 (ARM) 製品の「Turbonomic」、AI の活用による優れた洞察や推奨事項を既存のワークフローに取り込んで、変化する状況での迅速なイノベーション、運用コストの削減、IT運用 (ITOps) の変革を実現する「IBM Cloud Pak for AIOps」を連携させた「AIOpsソリューション」への拡張提案についてもご支援しています。
この記事を読んでソリューションに興味を持たれた方は、ぜひ、弊社までご相談ください。
この記事に関するお問い合わせ
エヌアイシー・パートナーズ株式会社
企画本部 事業企画部
この記事に関するお問い合せは以下のボタンよりお願いいたします。
関連情報
- IBM Observability by Instana (製品情報)
– マルチ ハイブリッド クラウドにおいてフルスタックの可観測性を提供。環境を理解・判断し、迅速にアクションを促す洞察をします。 - Turbonomic ARM for IBM Cloud Paks (製品情報)
– AIを活⽤し、アプリケーションのためのリソース配置を⾃動的に最適化するAIOpsソリューションです。 - IBM Cloud Pak for AIOps (製品情報)
– IT運用の中核に AI を据えてすべてのビジネス ワークフローに適用し、アプリケーションとインフラストラクチャーの管理を集約します。