2022年10月

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出そろったPower10ラインナップ、ベストな適用シーンは?

2022年7月13日、IBM Power10シリーズにスケールアウト・サーバーとミッドレンジ・サーバーが追加されました。

昨年発表された E1080 と合わせると全8モデルとなり、フルラインナップが出そろったことになります。
これにより Power10 の魅力はどう増幅され、ビジネスにどのような用途の広がりを見せるのでしょうか。

今回も、日本アイ・ビー・エム株式会社 テクノロジー事業本部 IBM Power 第二テクニカル・セールス部長の釘井 睦和氏に直接伺ってみることにしました。

登場者

ゲスト

日本アイ・ビー・エム株式会社
テクノロジー事業本部
IBM Power 第二テクニカル・セールス
部長 釘井 睦和 氏

インタビュアー

エヌアイシー・パートナーズ株式会社
技術支援本部
テクニカル・サポート部
佐藤 正忠
エヌアイシー・パートナーズ株式会社
技術支援本部
ソリューション推進部
村上 文香

インタビュー

エントリーモデルからミッドレンジ・サーバーまで充実の顔ぶれ

最初に、Power10シリーズに加わった新しい顔ぶれを簡単に見ておきたいと思います。
スケールアウト・サーバーのエントリーモデルからご紹介いただいてもよろしいでしょうか。

S1014 は、4Uラックで1ソケット、最大8コア、最大1TBメモリー。このモデルはラックマウント型だけではなくデスクサイドに設置できるタワー型もあります。
S1022sは、2Uラックで最大2ソケット、最大16コア、最大2TBメモリー。

IBM Power10 には、1つのソケットにプロセッサーモジュールが1つのシングル・チップ・モジュール(SCM)と、1つのソケットにプロセッサーモジュールが2つのデュアル・チップ・モジュール(DCM)がありますが、S1014 と S1022s は SCM です。OS は AIX、Linux、IBM i で稼働します。

スケールアウト・サーバーながら、性能と拡張性に重点が置かれたモデルもありますね。

はい。S1022、L1022、S1024、L1024 の4モデルがそれらです。

S1022 は、2Uラックで最大2ソケット、最大40コア、最大4TBメモリー、S1024 は、4Uラックで、最大2ソケット、最大48コア、最大8TBメモリーというマシンスペックです。OS は AIX、Linux、IBM i で稼働します。
先頭にLの文字がついた L1022 と L1024 はスペックは基本的にそれぞれ S1022、S1024 と同じですが、これらは Linuxワークロード向けのモデルです。標準価格はSモデルより安価に設定されており、Linux で利用することが決まっているのであれば割得です。また、搭載コア数の1/4までは AIX か IBM i で稼働させることも可能です。

これらの4モデルのサーバーはスケールアウトタイプではありますが、CPU の Capacity on Demand(CoD)と Power Enterprise Pool に対応しています。

ミッドレンジ・サーバーとして E1050 が加わりました。

E1050 は、4Uラックで最大4ソケット、最大96コア、16TBメモリーというマシンスペックです。
4Uタイプとしては最大のマシン密度で、もちろん CoD や Power Enterprise Pool によるスケーリングも可能です。

ここまでで新たに発表された Power10 のモデルについて紹介してきましたが、モデルによって対応している、していないなどの注意事項があります。
S1014 と S1022s は、CoD および Power Enterprise Pool には対応していません。また、S1022 と S1022s は筐体の奥行が長いタイプで、IBMラックで使用する際にラックにエクステンダーを装着することになります。そして、E1050 では IBM i を稼働できません。

IBM Power10 スケールアウト・サーバーラインナップ
図1:IBM Power10 スケールアウト・サーバーラインナップ
ミッドレンジ・サーバー E1050
図2:ミッドレンジ・サーバー E1050

フルラインナップ登場が市場にもたらすインパクト

フルラインナップとなったことに、釘井さんとしてはどのような感想をお持ちでしょうか。

大変お待たせしました、という思いが大きいです。私もようやくほっとしました。

スケールアウト・サーバー、ミッドレンジ・サーバーの出荷が始まったことで、お客様の選択肢が大きく広がったと思います。
これらがお客様のサーバー更改や DX促進の起爆剤となってくれれば、と期待を寄せています。

私たちとしても、スケールアウト・サーバーの登場は待ち望んでいました。お客様のシステム規模は様々なので、これで提案の幅が広がるなとうれしく思っています。

そうですね。お客様からもビジネスパートナーの皆様からも、待ち望まれていたラインナップであることを実感しています。

「どのモデルでもPCIeスロット(Gen5相当)サポートや内蔵ストレージでのNVMe採用など、I/O全体のスループット向上が図られており、メモリー暗号化などの機能も享受できるのにシステム規模に合わせて選べるようになった」などといった歓迎の声もいただいています。手が届きやすいのでリプレース要件に合わせるのも容易である、と。

日本でもすでに導入を決めていただいたケースが出ています。

依然として半導体不足が取り沙汰されていますが、IBM Power10シリーズでのパーツ調達状況はいかがですか。

ひたすら努力を続けています。

CPU やメモリーといった、サーバーを構成する主要なパーツに関しては基本的に問題ありません。しかし、世間一般のサーバー製品全体に組みこまれるようなパーツの需給ひっ迫度合いはあまり改善していないんですね。

「安心してください」と心からは申し上げられない状況なので、ご検討いただけるのであれば早めにご決断いただくことをお勧めしたいと思います。

新しいモデルに合った適用シーンとは

新しく加わったラインナップは具体的にどのような領域に適しているでしょうか。いくつか例を教えてください。

SCMモデルである S1014 は、Oracle SE2 を搭載するのに向いています。
Oracle SE2 は Oracle Database の標準機能を実装しながら比較的低コストで利用できるため、よく選ばれているエディションです。

Oracle SE2 は1サーバーあたりのソケット数に制限があって、DCMモデルだとソケット数オーバーでライセンス違反になってしまいます。
しかし SCMモデルであれば Oracle SE2 のライセンスカウントに適合でき、使いたいデータベースを安価にご利用いただける環境を提供可能です。

先ほど CoD のお話が出ましたが、エントリー系のモデルでも初期コストを抑えながらビジネスの成長に合わせたシステム拡張ができるのはいいなと思いました。

Power10 の新しい特長といえますね。

CoD は、あらかじめ搭載された未使用(非活動)のプロセッサー/メモリー資源をシステムの停止なしに活動化して論理区画(LPAR)に追加することを可能にする機能です。
また、Power Enterprise Pool は複数のサーバー間でプロセッサー/メモリー資源を融通し合う機能です。
前に触れたとおり、S1014 と S1022s 以外のモデルが対応しています。

私たちが CoD や Power Enterprise Pool をお勧めしている領域は3つあります。

1つめは、ふだん使わないリソースへの適用です。災害対策用マシンや HA の待機系マシンがこれに相当します。
何か起きたときにしか使わないリソースなので、ふだんは最低限のスペックにしておいていざ本番から引き継いだタイミングでCPUを活動化するようにすれば、最初から大きいシステムを構築しておく必要はありません。

2つめは、ピーク性のあるワークロードへの適用です。
月次や年次の負荷は高いけれども普段はそれほど高くないという業務、例えば会計系業務がそれに当たるかもしれませんが、ほんとうに CPU性能が必要なのは1年のうち2週間程度というのであれば、従量課金にした方が絶対にお得です。
そのリソース配分も自動で行われるため、ピークが思ったより高くなったとしても特に対処は不要です。

3つめは、将来予測が難しい業務への適用です。これは増減どちらもあると思います。
新規事業を立ち上げる、あるいは今後サービスは縮小していくけどそれがいつになるかわからない、というときは必要な分だけ買っておいて、あとはクラウドライクに使っていただくというのがいいと思います。

お客様の業務にどれほどピーク性があるか測定することは可能でしょうか。

可能です。有償ですが、ラボサービスで分析支援を行っています。

プリセールスエンジニアも Excelベースのシミュレーションツールを持っていて、お客様にパフォーマンスデータを収集していただく必要はありますが、それで簡易的に測ることもできます。

実際の提案場面では、POWER9 か Power10 かで迷うことがあります。

今 POWER7 や POWER8 を使っておられるお客様で、次を POWER9 にするか Power10 にするかということですね?

今はサーバーの価格が市況的に上がっていて、価格だけを見れば Power10 の方が割高に見えます。
しかし、Power10 はソケットあたりの最大コア数が増えてより多くのワークロードを集約できる点や、消費電力を半分に抑えながらスループットを平均約30%向上させているエネルギー効率、加えて実質的な保守期間など、いろいろ総合的に考えると Power10 の方がメリットは大きいと思います。

予算が許されるのであれば Power10 をお勧めしたいですね。

ハイブリッドクラウドでのオンプレミス基盤としてはどうでしょうか。スケールアウト・サーバーやミッドレンジ・サーバーでもこういう使い方はできますか。

できます。

例えば、SAP の提供している RISE with SAP というサービスでは、Powerサーバーを利用するお客様に対しオンプレミスで稼働するアーキテクチャと一貫して使用可能な RISE with SAP S/4HANA on Power が IBM Cloud上で提供されます。

実際、IBM Power Virtual Server の本番利用は着実に増えてきています。
IBM のみならずビジネスパートナーの皆様の提案が実を結びつつあるのだと思います。
当初は開発・検証用、DR用途としての利用が多かったのですが、本番利用としてもすごくいい感じに伸びてきました。これからさらに伸ばしたいですね。

お客様の課題解決のためリセラーと知恵を絞るのがNI+C Pの使命

10-12月に発表される予定のアップグレードについて、可能な範囲で教えてください。

確実にわかっていることは、メモリー容量の増大です。
先ほど最大何TB といったのは10月から12月発表分を加味した数字で、現時点で構成できるのはその半分です。必要メモリーが増えそうと最初からわかっているのであれば、それを考慮して構成されるのがいいでしょう。
しかし、Power10 では 8TBメモリーで9割以上のワークロードは吸収できると思います。

ありがとうございます。Power10シリーズの様々な最新情報をお伺いすることができました。
NI+C P ではいただいた情報を踏まえ、提案製品のアドバイスやクロスセルを含め、システム全体への継続的な提案支援を行っていきます。構成作成といった詳細提案もお手伝いしています。
お客様の課題を解決するための方法をリセラー企業の方々と一緒に知恵を絞り、提案を行うのが私たちの使命だと考えています。

そうですね。フルラインナップとなり、お客様の選択肢が広がったのは大きな機会だと思います。

Old to New のリプレースにとどまらない DX推進や OpenShift の採用といった新しいワークロードの創出、そのような未来に広がる提案を、今後も御社と一緒に進めていけたらと願っています。

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2025年08月04日

【てくさぽBLOG】IBM watsonx OrchestrateのADKを使ってみた

こんにちは。 てくさぽBLOGメンバーの高村です。 早速ですが、今年5月に開催されたIBMの年次イベント「Think2025」で、watsonx Orchestrateの新機能が発表されました!その中の一つとして、開発者向けの「Agent Development Kit(以下、ADK)」があります。今回はこのADKを活用し、watsonx Orchestrate環境への接続やエージェントの追加といった操作を行い、その使用感をご紹介します。  なお、watsonx Orchestrateについては、今年2月、3月に公開した「watsonx OrchestrateやってみたBLOG」でご紹介しておりますので、是非こちらもご一読ください。 【てくさぽBLOG】IBM watsonx Orchestrateを使ってみた(Part1) 【てくさぽBLOG】IBM watsonx Orchestrateを使ってみた(Part2) 目次 はじめに ADKとは? ADK使ってみた さいごに お問い合わせ はじめに Think2025で発表された新機能は、6月に環境へ追加されました。それ以前の環境とは、メニュー構成や操作方法、機能名称に変更があります。 例えばこれまで「Skill」と呼ばれていたものが「Tool」へと名称変更されています。 アップデート後の環境につきましては、別ブログにて改めて詳しくご紹介させていただく予定ですので、ぜひご期待ください! ADKとは? まずはADKについてご紹介します。ADKとは開発者向けにwatsonx OrchestrateのAgentやToolをスクラッチ開発するための開発キットになります。ローカル端末などに導入し、pythonベースで開発を行うことができます。 また、ADKとは別に、watsonx Orchestrate Developer Editionをローカル端末に導入することで、ADKで開発したAgentやToolのテストが可能になります。なお、watsonx Orchestrate Developer EditionはDockerコンテナ上で動作し、現時点のハードウェア要件はCPUは最小8コア、メモリは最小16GBが必要です。詳細はInstalling the watsonx Orchestrate Developer Editionをご確認ください。   ADKとwatsonx Orchestrate Developer Editionを利用することで、コードの迅速な作成・修正や柔軟なカスタマイズに加え、環境へのデプロイ前にローカルでテスト・修正が可能となり、作業効率の向上が期待できます。 ADK使ってみた 前述ではADKでAgent開発し、watsonx Orchestrate Developer Editionで動作確認、SaaS watsonx Orchestrateへインポートする構築の流れをお話しましたが、今回の検証における動作確認は検証環境として利用しているIBM Cloud 上のwatsonx Orchestrate利用します。よって前述したwatsonx Orchestrate Developer Editionは利用せず、ADKからwatsonx Orchestrate検証環境へAgentとToolを直接インポートし、動作確認を行いたいと思います。また、ADKのインストール先は自分の端末ではなく、IBM Cloud上に構築したUbuntuのVirtual Server Instance(以下、VSI)を使用します。検証環境の構成イメージは下記の図の通りです。 尚、ADKのインストール要件はPython 3.11以上、Pip、そして仮想環境(以下venv)が必要です。詳細については、Getting started with the ADKをご確認ください。 それでは早速使ってみましょう! VSIのプロビジョニング まずはADKをインストールするVSIをプロビジョニングします。本ブログではプロビジョニング方法について詳しく記載いたしませんが、手順は「【てくさぽBLOG】IBM Power Virtual ServerのAIX環境とIBM Cloud Object Storageを接続してみた(Part1)」のVSI for VPCの作成をご参考ください。 OSはUbuntu 22.04 LTS Jammy Jellyfish Minimal Install、リソースは2vCPU,4GB RAMで作成しました。VSI作成時にSSH鍵が必要なるので作成を忘れないようにしてください。 作成すると数分で起動します。端末からSSHログインするため浮動IPが必要になります。赤枠で囲った浮動IPを作成しインスタンスに紐づけします。以上でVSIの作成は完了です。 Ubuntuの設定 ターミナルを開きsshでUbuntuにログインします。私はWindowsのコマンドプロンプトを使用しました。Ubuntuユーザでログイン後、rootパスワードを設定し、スイッチできるようにします。 ubuntu@nicptestvsi:~$ sudo passwd root New password: Retype new password: passwd: password updated successfully ubuntu@nicptestvsi:~$ su - pythonのバージョンを確認したところ3.10.12でした。ADKの要件は3.11以上ですので、バージョンアップが必要になります。最初は3.13にバージョンアップしてみたのですが、後続作業と最新バージョンではパッケージが合わなかったのかうまく動かず…仕切り直して3.11を利用することにしました! root@nicptestvsi:~# apt install python3.11 バージョンアップ後、デフォルトバージョンとして3.11を指定します。 root@nicptestvsi:~# sudo update-alternatives --install /usr/bin/python3 python3 /usr/bin/python3.10 1 sudo update-alternatives --install /usr/bin/python3 python3 /usr/bin/python3.11 2 sudo update-alternatives --config python3 update-alternatives: using /usr/bin/python3.10 to provide /usr/bin/python3 (python3) in auto mode update-alternatives: using /usr/bin/python3.11 to provide /usr/bin/python3 (python3) in auto mode There are 2 choices for the alternative python3 (providing /usr/bin/python3).Selection Path Priority Status ------------------------------------------------------------ * 0 /usr/bin/python3.11 2 auto mode 1 /usr/bin/python3.10 1 manual mode 2 /usr/bin/python3.11 2 manual modePress <enter> to keep the current choice[*], or type selection number: 2 root@nicptestvsi:~# root@nicptestvsi:~# python3 --version Python 3.11.13 次に下記コマンドを実行して任意のvenvを作成します。 python3 -m venv /path/to/nicpse/project/your-venv-adktest <環境のパスを指定 venvを活性化してログインします。下記コマンド結果のようにvenvに入れましたらUbuntuの設定は完了です。 root@nicptestvsi:~# source /path/to/nicpse/project/your-venv-adktest/bin/activate (your-venv-adktest) root@nicptestvsi:~# ADKのインストール 以下コマンドを実行してADKをインストールします。ADKは6月時点で1.5.1が最新バージョンです。 (your-venv-adktest) root@nicptestvsi:~# pip install ibm-watsonx-orchestrate Collecting ibm-watsonx-orchestrate Downloading ibm_watsonx_orchestrate-1.5.1-py3-none-any.whl.metadata (1.4 kB) Collecting certifi>=2024.8.30 (from ibm-watsonx-orchestrate) Downloading certifi-2025.6.15-py3-none-any.whl.metadata (2.4 kB) Collecting click<8.2.0,>=8.0.0 (from ibm-watsonx-orchestrate) Downloading click-8.1.8-py3-none-any.whl.metadata (2.3 kB) Collecting docstring-parser<1.0,>=0.16 (from ibm-watsonx-orchestrate) Downloading docstring_parser-0.16-py3-none-any.whl.metadata (3.0 kB) Collecting httpx<1.0.0,>=0.28.1 (from ibm-watsonx-orchestrate) Downloading httpx-0.28.1-py3-none-any.whl.metadata (7.1 kB) ----中略---- (your-venv-adktest) root@nicptestvsi:~# orchestrate --version ADK Version: 1.5.1 ADKの環境設定 次にADKの環境設定を行います。watsonx OrchestrateのインスタンスIDが必要になるため、watsonx OrchestrateのSetting画面に入り確認します。下記画面をご参考にしてください。 環境設定コマンドはこちらになります。-nの後はvenv名を指定し、-uの後はインスタンスIDを指定します。 (your-venv-adktest) root@nicptestvsi:~# orchestrate env add -n <仮想環境名> -u <環境のインスタンスID> [INFO] - Environment 'my-name' has been created [INFO] - Existing environment with name 'nicpse' found. Would you like to update the environment 'nicpse'? (Y/n)y [INFO] - Environment 'nicpse' has been created 以下コマンドを実行して、IBM Cloud上のwatsonx Orchestrateと認証設定をします。APIキーの取得方法は「【てくさぽBLOG】IBM watsonx.aiを使ってみた(Part2)」のAPIキーの取得をご確認ください。尚、リモート環境に対する認証は2時間ごとに期限切れになります。期限が切れた場合は再度認証する必要があります。 (your-venv-adktest) root@nicptestvsi:~# orchestrate env activate nicpse --apikey <APIキー> [INFO] - Environment 'my-ibmcloud-saas-account' is now active [INFO] - Environment 'nicpse' is now active 下記コマンドを実行してCLIから利用できる環境のリストを表示します。IBM Cloud上のwatsonx Orchestrateがactiveとなっていました! (your-venv-adktest) root@nicptestvsi:~# orchestrate env list nicpse https://api.us-south.watson-orchestrate.cloud.ibm.com/instances/XXXXXXXX (active) local http://localhost:XXXX Toolとagentのインポート 次にToolとAgentのインポートを行います。ToolとはAgentがタスクを実行する際に利用する機能です。今回は、IBM様より共有いただいたyfinanceを活用したToolおよびAgentのコードを、ADKを用いてインポートします。なお、yfinanceはヤフーファイナンスから株価などの金融データを取得するためのPythonライブラリです。 最初にToolのインポートを行います。下記の様に、scpなどでToolファイルとrequirements.txtをディレクトリにアップロードしておきます。requirementsファイルは他のモジュールと依存関係がある場合使用します。 (your-venv-adktest) root@nicptestvsi:~/orchestrate_tool/py/source_02# ls -l total 12 -rw-r--r-- 1 root root 0 Jun 24 04:42 __init__.py drwxr-xr-x 2 root root 4096 Jun 24 04:38 __pycache__ -rw-rw-r-- 1 ubuntu ubuntu 8 Jun 24 03:02 requirements.txt -rw-rw-r-- 1 ubuntu ubuntu 1778 Jun 24 02:46 yfinance_agent.py 下記コマンドを実行してToolファイルとrequirementsファイルをインポートします。企業情報を取得するstock_infoと株価を取得するstock_quoteの2つのToolがインポートされました。 (your-venv-adktest) root@nicptestvsi:~/orchestrate_tool/py/source_02# orchestrate tools import -k python -f "./yfinance_agent.py" -r "./requirements.txt" [INFO] - Using requirement file: "./requirements.txt" [INFO] - Tool 'stock_info' imported successfully [INFO] - Tool 'stock_quote' imported successfully listコマンドを実行するとインポートされたToolを確認できます。 (your-venv-adktest) root@nicptestvsi:# orchestrate tools list ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┳━━━━┳ ┃ Name ┃ Description ┃ Permission ┃ Type ┃ Toolkit ┃ App ID ┃ ┡━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╇━━━━╇ │───────────┼────────────┼── │ send_mail_brevo │ send a meil using Brevo. │ write_only │ python │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ ├─────────────────────────────────┼──── │ stock_quote │ 企業のTickerSymbolを用いて株価… │ read_only │ python │ │ │ ├─────────────────────────────────┼──── │ Untitled_6160RC │ No description │ read_only │ openapi │ │ │ ├─────────────────────────────────┼──── │ stock_info │ 企業のTickerSymbolを用いて企業… │ read_only │ python │ │ │ └─────────────────────────────────┴──── 次にAgentをインポートします。下記コマンドを実行します。 (your-venv-adktest) root@nicptestvsi:~/orchestrate_tool/py/source_02# orchestrate agents import -f ./yfinance_agent.yaml agent listコマンドでインポート済みのAgentを確認できました。Agentが使用するToolも表示されています。 (your-venv-adktest) # orchestrate agents list ┏━━━━━━━━━━━━━━━┳━━━━━━━━━━━━━━━┳━━━━━━━━ ┃ Name ┃ Description ┃ LLM ┃ Style ┃ Collaborators ┃ Tools ┃ Knowledge Base ┃  ┡━━━━━━━━━━━━━━━╇━━━━━━━━━━━━━━━╇━━━━━━━━ │ yfinance_age… │ 企業の会社情… │ watsonx/meta- │ react │ │ stock_info, │ │ │ │ │ llama/llama-3 │ │ │ stock_quote │ │ ││ │ │ -2-90b-vision ││ │ -instruct │ │  IBM Cloud上のwatsonx Orchestrateで動作確認 インポートしたAgentとToolをIBM Cloud上のwatsonx Orchestrateで確認します。 watsonx Orchestrateへログインし、BuildからAgent Builderを選択します。 yfinanceエージェントが表示されているので、クリックします。 クリックすると、Agent作成画面に入ります。UIから基盤モデルを変更したり、Agentの振る舞いなど変更することができます。 スクロールして、Toolsetを確認するとADKからインポートしたToolが登録されています。 右のPreviewからAgentの動きを確認することができます。今回はDeployせずPreviewで確認します。入力欄には「IBMの株価は?」と質問してみます。しばらくすると本日の株価が回答されました。Show Reasoningを開くと推論過程を確認することができます。株価を取得するTool「stock_quote」を使用し、AIがユーザの入力から自動的にTicker symbolを入力していることがわかります。 次に「IBMの企業情報」と質問をします。しばらくするとAIがユーザの入力からTicker symbolを入力し、Tool「stock_info」を利用して企業情報を取得、回答されました。ユーザの入力内容からAgentが使用するToolを選択し、実行していることがわかります。   さいごに ADKのご紹介とADKを使ってToolとAgentのインポートを行いました。 ADKのインストールおよび設定について、Pythonバージョンの設定やvenvの作成でつまずく部分はありましたが、venvが作成できればその後の設定はスムーズに進められました。 今回はVSI上のUbuntuサーバにADKをインストールしましたが、ご自身の端末に導入することで、より気軽にAgent開発を行えるかと思います。なお、今回は検証対象外でしたが、watsonx Orchestrate Developer Editionを利用する場合は、インストール要件としてやや高めのスペックが必要になる点にご注意ください。 検証時のADKのバージョンは1.5.1でしたが、7月末では1.8.0が最新バージョンとなっています。比較的頻繁にアップデートされますので適宜Release Notesをご確認ください。バージョンアップでコマンドオプションも変更される場合があるため、マニュアルを確認するかコマンドに`--help`を付与してパラメータを確認することをおすすめします。   お問い合わせ この記事に関するご質問は以下の宛先までご連絡ください。 エヌアイシー・パートナーズ株式会社 技術企画本部 E-mail:nicp_support@NIandC.co.jp   .anchor{ display: block; margin-top:-20px; padding-top:40px; }

2025年07月11日

【参加レポート】Domino Hub 2025

公開日:2025-07-11 みなさまこんにちは。ソリューション企画部 松田です。 2025年6月19日・20日と2日間に渡って開催された「Domino Hub 2025」に参加しました。これは HCL Ambassador有志が企画・実行する Dominoコミュニティイベントです。去年に続き、今回が3回目の開催となります。 昨年同様、今回もエヌアイシー・パートナーズはスポンサーとしてご支援させていただき、両日参加いたしました。そのレポートをお送りします。 目次 イベント概要 セッション内容 - Domino 14.5 リリース 特徴的機能とライセンス改定 -ロードマップ -お客様事例:曽根田工業様 最後に 関連情報 お問い合わせ イベント概要 「Domino Hub」は、HCL Ambassadorが主宰となり、Dominoの利用者、開発者、ソリューションベンダーが一堂に会するコミュニティイベントです。今回は1日目がオンライン、2日目はオンサイトのみの開催でした。 特に2日目は参加率が非常に高かったとのことで、会場も大変盛況でした。結婚式場としても使われている今回の会場は、中庭から陽の光が差し込み、解放感があるラグジュアリーな空間で、一般的なビジネスミーティングよりも上質な雰囲気が感じられました。 併せて展示ブースも設置され、Dominoアプリケーションがスマートフォンやブラウザで使えるようになる「HCL Nomad」などのHCL製品とともに、様々なビジネスパートナー様の多彩な関連製品が数多く展示・紹介されていました。 セッション内容 2日間で全22セッションが行われました。セッションはHCLをはじめ、HCL Ambassadorから、様々な開発ベンダー、製品ベンダー、エンドユーザーからの事例紹介などのセッション、そしてパネルディスカッションがありました。まずHCLからのセッション内でのトピックをお伝えします。機能のみならずライセンスまわりで大きなニュースもありました。 Domino 14.5 リリース 特徴的機能とライセンス改定 Domino Hubの2日前、2025年6月17日にリリースされました。 Domino IQ 特徴的な機能で最も注目すべき、今回もご説明に時間を割かれていたのが「Domino IQ」です。 一言で言えば「Domino内にローカルでLLMを持たせ、蓄積されてきたDominoアプリ内の情報も取り込み、セキュアな環境で生成AIを用いた業務を実現する」ものです。 企業内業務で生成AIをどのように実装し利用していくかは今、皆様の大きな関心事項であられると思います。自社のDomino環境内で、Dominoアプリケーションを用い、Notesクライアントからそれが実現できることになります。 (画像クリックで拡大) Nomad for Web COM対応 またNomad for WebがCOMに対応したことにより、これまではNotesクライアントだけでしかできなかったExcelやPowerPointを埋め込んだDiminoアプリもブラウザから利用できるようになりました。 ライセンスダッシュボード:DLAUの統合 これまでGitHubからダウンロードしてセットアップしていたDomino License Analysis Utility (DLAU)がDomino内にデフォルトで統合され、The Domino License Administration (DLA) となりました。 (画像クリックで拡大) ライセンス改定 そしてライセンスにも大きなベネフィットが付加されました。CCB Termライセンスにはこれまで「Domino Leapで5アプリケーションまで開発・利用が可能」という権利が含まれていましたが、2025年7月1日からその制限がなくなりました。すなわち「2025年7月1日以後有効なCCB Termライセンスをお持ちのお客様は、Domino Leapのフル機能が利用できる」となります。 同時に、Domino Leapライセンスの利用範囲であるHCL Enterprise Integrator(HEI)の利用権利も含まれます。これでCCB Termライセンスのみで、追加費用なく「ブラウザによるノーコード/ローコード開発」「基幹業務とDominoアプリケーションの連携」が可能になります。 さらにCCB Termで利用できるSametime Chatで添付ファイルと画像添付も可能になりました。 ロードマップ Domino、Notes、Verse、Nomadなど各ソリューションについてのロードマップも紹介されました。先々の計画は出てこないものですが、このようにHCLから明確に提示されることにより、Dominoをお使いのお客様はこれからも安心して利用を継続していただけると思います。 Dominoのロードマップ(画像クリックで拡大) Notesのロードマップ(画像クリックで拡大) Nomad, VerseといったエンドユーザーのUI部分が短期間でバージョンアップされていく。(画像クリックで拡大) お客様事例:曽根田工業 様 Dominoユーザーの有限会社曽根田工業 代表取締役 曽根田 直樹 様より、Domino事例のご講演がありました。曽根田様は2001年に静岡県磐田市で個人で起業され、切削機械の刃物を製造されています。曽根田様のお話で非常に興味深かった部分を抜粋致します。 "独立・起業するにあたり、前職で使っていたNotes/Dominoを自社でも使うことにした。現在は大手メーカーからの発注依頼や過去に作った品番の再発注など数多く受けており、当時のCAD/CAMのデータや販売管理データなどをDominoに入れて運用している。 オンプレミス環境のリスクやセキュリティ、IT技術のトレンドに合わせてクラウド化を検討した場合、Dominoからは離れたほうがいいのではないか?と思い、他社SaaS製品も検討しトライアルで利用登録をした。 しばらく触れずにいたところ、アカウント情報に登録していた支払い口座から利用料の引き落としがされていなかったためアカウントが凍結、さらに保存していたデータも突然消去されてしまっていた。支払いが滞っただけで中身まで削除されてしまうようなシステムには会社の大事な資産であるデータを載せられないので、「Dominoを『やめることを止める』判断」をした。" Dominoから他製品への移行を検討され断念されるお客様は多く、その理由は「Dominoの業務アプリケーションを、サービス内容を落とさずに別プラットフォームに移行することがはなはだ困難である」ということをよくお聞きしますが、この点にも意外な理由が潜んでいました。 最後に 初の2年連続開催となった今年のDominoHubは、コミュニティの力を象徴するかのような盛り上がりを見せました。14.5のリリース、生成AIの実装、ライセンス強化など、今後のDominoの発展を確信させる要素が数多く披露されたほか、実際のユーザー事例も非常に示唆に富むものでした。加えてロードマップの提示による未来への安心感も得られました。 DominoHubは単なる情報共有の場に留まらず、技術、コミュニティ、そしてビジネスの未来を交差させる特別な場となっています。これからもこのような取り組みが継続していき、多くのDominoユーザー、デベロッパー、そして販売パートナーが更なる価値を引き出していけることを楽しみにしています。これからもDominoと私たちの未来を築いていきましょう。 関連情報 「Domino Hub」大阪開催 Domino Hubは、2025年9月18日に大阪でのオンサイト開催が決定致しました。詳細およびお申し込みについては、こちらのリンクからご確認ください。 お問い合わせ エヌアイシー・パートナーズ株式会社E-mail:voice_partners@niandc.co.jp   .highlighter { background: linear-gradient(transparent 50%, #ffff52 90% 90%, transparent 90%); } .anchor{ display: block; margin-top:-20px; padding-top:40px; } .btn_A{ height:30px; } .btn_A a{ display:block; width:100%; height:100%; text-decoration: none; background:#eb6100; text-align:center; border:1px solid #FFFFFF; color:#FFFFFF; font-size:16px; border-radius:50px; -webkit-border-radius:50px; -moz-border-radius:50px; box-shadow:0px 0px 0px 4px #eb6100; transition: all 0.5s ease; } .btn_A a:hover{ background:#f56500; color:#999999; margin-left:0px; margin-top:0px; box-shadow:0px 0px 0px 4px #f56500; } .bigger { font-size: larger; } figcaption { color: #7c7f78; font-size: smaller; }

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