2022年07月

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出荷から半年、IBM Power10が市場に与えたインパクトとは?

IBM Power10 が出荷開始となって、半年あまりが経過しました。エヌアイシー・パートナーズ株式会社(以下 NI+C P)としては、フラッグシップ製品E1080 の売れ行きやお客様からの反響が気になります。

そこで、今回は再び日本アイ・ビー・エム株式会社 テクノロジー事業本部 IBM Power 第二テクニカル・セールスの 釘井 睦和氏をお招きし、最新ニュースを伺うことにしました。
この半年あまりを振り返っていただきながら、あらためて IBM Power10 の魅力を確認するとともに、今後の展開を見ていきます。

 

登場者

ゲスト

日本アイ・ビー・エム株式会社
テクノロジー事業本部
IBM Power 第二テクニカル・セールス
部長 釘井 睦和 氏

インタビュアー

エヌアイシー・パートナーズ株式会社
技術支援本部
テクニカル・サポート部
佐藤 正忠
エヌアイシー・パートナーズ株式会社
技術支援本部
ソリューション推進部
村上 文香

 

インタビュー

出荷開始から半年、IBM Power10はどう受け入れられたか

2021年9月17日にIBM Power10 のフラッグシップ製品 E1080が出荷開始されてから、半年あまり経過しました。この間、Power10はどう市場に迎えられ、どんな評価を得ていますか。

釘井) おかげさまで、滑り出しから順調に推移しています。すでに数十台以上出荷させていただいており、Power10の登場を待っていただいていたのだな、ということを実感しました。
1つ、私たちも驚いたのが、これまでエントリークラス、ミドルクラスのマシンを利用されていたお客様の中に、E1080へ移行してくださったケースがいくつかあるということです。ハイエンドを使っておられたお客様が、E1080を使ってくださるだろうことは予想していたのですが、エントリークラス、ミドルクラスからの移行は少し意外でした。

IBMでは、そうしたケースをどう分析されていますか。

釘井) 新しいものが出ているのであれば、それがいい、それも性能のよいものの方がよい、と考えるお客様がいらっしゃったのではないかと思います。
また、IBMからのオファリングに魅力を感じてくださったお客様もおられるかもしれません。例えば、保守期間が長くなるということ。新しいマシンは導入時に保守期間が始まりますから、できるだけ長く使いたいというお客様は、この機にPower10に移ろうと考えてくださいました。

さらに、半導体不足という原因もあるかもしれません。
コロナ禍や地政学的な情勢変化によって世界的に半導体の需給がひっ迫しているのは事実で、“今手に入れておかなければ、次はいつになるかわからない”という心理が、お客様の判断に影響していると思います。

もちろん、日本のお客様の中で高まっているDX気運もあります。
例えば、“システム統合を進めたい” “AI活用を始めたい” といったご要望に、Power10ならより応えやすいというのも背景にあったのではないでしょうか。

実際、弊社が提案に関わったケースでも実感しています。あるケースでは、お客様にプライベートクラウドを構築したいという意向があって、このタイミングで全面的にシステム統合を図りたいと考えられました。
既存の基幹システム、周辺システムを集約していく基盤として何が最適かを検討される中で、私たちはPower10をお勧めし、お客様も最終的にPower10がいちばんふさわしいと判断されました。

釘井) 別のケースは、調達に重点を置かれていました。既存ハードウェアの経年劣化や保守期限を考えると、新しいマシンの入手はこれ以上期間を延ばせず、どのように活用するかは同時並行で考えるとして、手に入るときに確保しておきたいというご要望でした。

 

Power10移行で享受できるメリットとは

前回のインタビューでもお伺いしましたが、Power10移行でお客様が享受できるメリットは、どこにあるでしょうか。

釘井) まず明らかなのは、ライセンスコストやエネルギーの節約効果です。
大きなデータベースを運用されているとしましょう。IBM Power E980で3台要していたとしたら、E1080はコアあたりのパフォーマンスが向上しているため、2台に集約可能です。
ライセンスコストは固定費としてかかるものであり、エネルギーコストも最近は情勢を反映して値上がり傾向が続いています。それらを少しでも抑えられれば、それだけ投資すべき対象に予算を振り向けられます。

システム統合もご要望が高そうですよね。Power10は基本性能が高いので、既存環境を移してもまだまだ余力があると思います。
余力があると判明したことで、“周辺システムもここへ移したい” “ここでAI推論をさせたらどうか” “開発環境をここに置いてもいいのでは” などと考えるお客様は多いと思います。

釘井) そうですね。それに、企業情報システムのモダナイゼーションにも有効です。近年はビジネスアジリティの獲得に向けたアプリケーションのクラウドネイティブ化対応に注目が集まっており、それを実現する手段として、コンテナ技術があります。
IBM Power10は、コンテナ環境 Red Hat OpenShiftの基盤となるRed Hat Enterprise Linux CoreOS(以下、RHCOS)でも動きますから、コンテナ化したアプリケーションを動かしたいというとき、TCOの削減という点でも可用性や堅牢性という点でも大きなメリットがあります。

また、1台のIBM Power10でAIXやIBM i、Red Hat Enterprise Linux(以下、RHEL)、RHCOSなど複数の区画を立ち上げ、事業環境の変化に合わせてハードウェア資源をそれらに対して動的に再配分できます。これは、キャパシティー・オンデマンドと呼ばれる機能です。
もしかすると、なにかの事情で今すぐにアプリケーションをコンテナ化するのは困難という場合もあるかもしれません。しかし、既存システム環境をひとまず移行しておき、機が熟したらその区画のすぐ隣で、RHELやRHCOSを立ち上げ、相互に連携させるといったことも、Power10なら比較的容易に実現できます。

Power10は、セキュリティーが堅牢であることもお勧めポイントですよね。

釘井) x86サーバーに比べて脆弱性が非常に少ないということもあります。
Power10の場合は、Power9比で4倍の処理能力を持つ暗号化アクセラレーターを積んでいますし、将来のデータ脅威に備え、耐量子暗号および完全準同型暗号などもサポートしています。
わかりやすく管理できるセキュリティー管理ツールも提供しており、経営層から情報システム部門、現場の方々まで、安心してお使いいただける製品であることを自負しています。

最近発表された「IBM i Merlin」はインパクトがありました。

釘井) 「IBM i Merlin」は、クラウドに対応したモダンな世界へお客様が移行しようとするときに支援するものを提供したいという思いから開発されたもので、正式名称を「IBM i Modernization Engine for Lifecycle Integration」といいます。
「IBM i Merlin」はツールの集合体でいろいろ考えられているのですが、まずはコードの開発に重点が置かれており、統合開発環境(IDE)を備えています。ここで、DevOps環境をセットアップしたり、IBM iの開発を既存のDevOps環境に統合したりすることができるので、機能の公開や利用が容易になります。
「IBM i Merlin」上で提供するツールはすべてOpenShiftのコンテナで実行し、ユーザーはこれをブラウザー・インターフェースで利用します。Power10でDXを進めたいというお客様に最適な機能です。

Power環境に「IBM i Merlin」登場
図1 Power環境に「IBM i Merlin」登場

OpenShiftという観点では、 クラウド・ネイティブなアプリケーション開発に必要なソフトウェア製品を事前にセットアップ、これによりプライベートクラウドを数時間で展開できるIBM Power Systems Private Cloud Rack Solutionというものもあります。
実稼働環境向けに最適化されたフル・スタック構成の Power Private Cloud Rack Starter Deployment と開発環境向けでシングル・サーバー構成のPower Private Cloud Starter Solutionという2つのソリューションがあり、両方ともハードウェアおよびソフトウェアを最適化した組み合わせでセットアップできるため、プライベートクラウド環境構築期間を大幅に短縮可能です。
こちらはIBM Powerでモダンなプライベートクラウドを構築していきたいというお客様にお勧めです。

 

いよいよスケールアウト&ミッドレンジシステムが登場

今後の展開としては、スケールアウト&ミッドレンジシステムの登場がありますね。

釘井) はい、そう遠くないうちにご案内できると思います。詳細は「乞うご期待」というところですが、さらに幅広いお客様、それこそ100倍以上のお客様にPower10の実力を享受していただけると思っています。
IBMにとってこの2022年は数年に一度の非常に重要な時期になると思います。また、次のモデルはIBM以上にパートナー企業の皆様に販売いただく機会も多くなりますから、現在、お届けするべき情報を水面下で準備しているところです。

NI+C Pは、IBMパートナー企業の中でもは日本で数少ない一次販売店で、Power10のこともとても重視してくださっています。ご支援なしにPower10の新しい価値を市場にお届けすることはできません。
今後ともよろしくお願いいたします。

こちらこそよろしくお願いいたします。NI+C Pとしても、われわれのお客様がPower10の次のモデルに期待されているのを実感しているので、リリースを心待ちにしています。
Power10では、基幹業務の維持のみならず、プラスアルファの業務を動かす基盤として採用しようという動きがお客様の中で進んでいるように思います。今までの業務を守るだけではなく、攻めるという位置づけでインフラ基盤を考えられているのは非常に心強く、われわれも全面的にバックアップしていきたいと考えています。
本日はありがとうございました。

 
 


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エヌアイシー・パートナーズ株式会社
企画本部 事業企画部

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関連情報

 

 

その他の記事

2025年07月11日

【参加レポート】Domino Hub 2025

公開日:2025-07-11 みなさまこんにちは。ソリューション企画部 松田です。 2025年6月19日・20日と2日間に渡って開催された「Domino Hub 2025」に参加しました。これは HCL Ambassador有志が企画・実行する Dominoコミュニティイベントです。去年に続き、今回が3回目の開催となります。 昨年同様、今回もエヌアイシー・パートナーズはスポンサーとしてご支援させていただき、両日参加いたしました。そのレポートをお送りします。 目次 イベント概要 セッション内容 - Domino 14.5 リリース 特徴的機能とライセンス改定 -ロードマップ -お客様事例:曽根田工業様 最後に 関連情報 お問い合わせ イベント概要 「Domino Hub」は、HCL Ambassadorが主宰となり、Dominoの利用者、開発者、ソリューションベンダーが一堂に会するコミュニティイベントです。今回は1日目がオンライン、2日目はオンサイトのみの開催でした。 特に2日目は参加率が非常に高かったとのことで、会場も大変盛況でした。結婚式場としても使われている今回の会場は、中庭から陽の光が差し込み、解放感があるラグジュアリーな空間で、一般的なビジネスミーティングよりも上質な雰囲気が感じられました。 併せて展示ブースも設置され、Dominoアプリケーションがスマートフォンやブラウザで使えるようになる「HCL Nomad」などのHCL製品とともに、様々なビジネスパートナー様の多彩な関連製品が数多く展示・紹介されていました。 セッション内容 2日間で全22セッションが行われました。セッションはHCLをはじめ、HCL Ambassadorから、様々な開発ベンダー、製品ベンダー、エンドユーザーからの事例紹介などのセッション、そしてパネルディスカッションがありました。まずHCLからのセッション内でのトピックをお伝えします。機能のみならずライセンスまわりで大きなニュースもありました。 Domino 14.5 リリース 特徴的機能とライセンス改定 Domino Hubの2日前、2025年6月17日にリリースされました。 Domino IQ 特徴的な機能で最も注目すべき、今回もご説明に時間を割かれていたのが「Domino IQ」です。 一言で言えば「Domino内にローカルでLLMを持たせ、蓄積されてきたDominoアプリ内の情報も取り込み、セキュアな環境で生成AIを用いた業務を実現する」ものです。 企業内業務で生成AIをどのように実装し利用していくかは今、皆様の大きな関心事項であられると思います。自社のDomino環境内で、Dominoアプリケーションを用い、Notesクライアントからそれが実現できることになります。 (画像クリックで拡大) Nomad for Web COM対応 またNomad for WebがCOMに対応したことにより、これまではNotesクライアントだけでしかできなかったExcelやPowerPointを埋め込んだDiminoアプリもブラウザから利用できるようになりました。 ライセンスダッシュボード:DLAUの統合 これまでGitHubからダウンロードしてセットアップしていたDomino License Analysis Utility (DLAU)がDomino内にデフォルトで統合され、The Domino License Administration (DLA) となりました。 (画像クリックで拡大) ライセンス改定 そしてライセンスにも大きなベネフィットが付加されました。CCB Termライセンスにはこれまで「Domino Leapで5アプリケーションまで開発・利用が可能」という権利が含まれていましたが、2025年7月1日からその制限がなくなりました。すなわち「2025年7月1日以後有効なCCB Termライセンスをお持ちのお客様は、Domino Leapのフル機能が利用できる」となります。 同時に、Domino Leapライセンスの利用範囲であるHCL Enterprise Integrator(HEI)の利用権利も含まれます。これでCCB Termライセンスのみで、追加費用なく「ブラウザによるノーコード/ローコード開発」「基幹業務とDominoアプリケーションの連携」が可能になります。 さらにCCB Termで利用できるSametime Chatで添付ファイルと画像添付も可能になりました。 ロードマップ Domino、Notes、Verse、Nomadなど各ソリューションについてのロードマップも紹介されました。先々の計画は出てこないものですが、このようにHCLから明確に提示されることにより、Dominoをお使いのお客様はこれからも安心して利用を継続していただけると思います。 Dominoのロードマップ(画像クリックで拡大) Notesのロードマップ(画像クリックで拡大) Nomad, VerseといったエンドユーザーのUI部分が短期間でバージョンアップされていく。(画像クリックで拡大) お客様事例:曽根田工業 様 Dominoユーザーの有限会社曽根田工業 代表取締役 曽根田 直樹 様より、Domino事例のご講演がありました。曽根田様は2001年に静岡県磐田市で個人で起業され、切削機械の刃物を製造されています。曽根田様のお話で非常に興味深かった部分を抜粋致します。 "独立・起業するにあたり、前職で使っていたNotes/Dominoを自社でも使うことにした。現在は大手メーカーからの発注依頼や過去に作った品番の再発注など数多く受けており、当時のCAD/CAMのデータや販売管理データなどをDominoに入れて運用している。 オンプレミス環境のリスクやセキュリティ、IT技術のトレンドに合わせてクラウド化を検討した場合、Dominoからは離れたほうがいいのではないか?と思い、他社SaaS製品も検討しトライアルで利用登録をした。 しばらく触れずにいたところ、アカウント情報に登録していた支払い口座から利用料の引き落としがされていなかったためアカウントが凍結、さらに保存していたデータも突然消去されてしまっていた。支払いが滞っただけで中身まで削除されてしまうようなシステムには会社の大事な資産であるデータを載せられないので、「Dominoを『やめることを止める』判断」をした。" Dominoから他製品への移行を検討され断念されるお客様は多く、その理由は「Dominoの業務アプリケーションを、サービス内容を落とさずに別プラットフォームに移行することがはなはだ困難である」ということをよくお聞きしますが、この点にも意外な理由が潜んでいました。 最後に 初の2年連続開催となった今年のDominoHubは、コミュニティの力を象徴するかのような盛り上がりを見せました。14.5のリリース、生成AIの実装、ライセンス強化など、今後のDominoの発展を確信させる要素が数多く披露されたほか、実際のユーザー事例も非常に示唆に富むものでした。加えてロードマップの提示による未来への安心感も得られました。 DominoHubは単なる情報共有の場に留まらず、技術、コミュニティ、そしてビジネスの未来を交差させる特別な場となっています。これからもこのような取り組みが継続していき、多くのDominoユーザー、デベロッパー、そして販売パートナーが更なる価値を引き出していけることを楽しみにしています。これからもDominoと私たちの未来を築いていきましょう。 関連情報 「Domino Hub」大阪開催 Domino Hubは、2025年9月18日に大阪でのオンサイト開催が決定致しました。詳細およびお申し込みについては、こちらのリンクからご確認ください。 お問い合わせ エヌアイシー・パートナーズ株式会社E-mail:voice_partners@niandc.co.jp   .highlighter { background: linear-gradient(transparent 50%, #ffff52 90% 90%, transparent 90%); } .anchor{ display: block; margin-top:-20px; padding-top:40px; } .btn_A{ height:30px; } .btn_A a{ display:block; width:100%; height:100%; text-decoration: none; background:#eb6100; text-align:center; border:1px solid #FFFFFF; color:#FFFFFF; font-size:16px; border-radius:50px; -webkit-border-radius:50px; -moz-border-radius:50px; box-shadow:0px 0px 0px 4px #eb6100; transition: all 0.5s ease; } .btn_A a:hover{ background:#f56500; color:#999999; margin-left:0px; margin-top:0px; box-shadow:0px 0px 0px 4px #f56500; } .bigger { font-size: larger; } figcaption { color: #7c7f78; font-size: smaller; }

2025年06月30日

APMとARMのシームレスな連携で効率的な統合アプリケーション運用管理を実現する ~Instana+Turbonomicのシナジー~

公開日:2025-06-30 ワークロードが変化しつづけるハイブリッド・クラウド環境下においては、アプリケーションスタックが複雑化し、分散され、流動的となり、それがアーキテクチャーと、正しい設計および変化する需要に対応できる十分なリソースの提供を難しくしています。 複雑化したIT環境で、システムの正常性やパフォーマンスリスクに対応するためには、アプリケーションの運用管理において、アプリケーションとインフラ両方の情報を一元管理します。そして、統合的に参照することができ、システムの変調を見逃さない高度な可観測性を実現するアプリケーションの運用の高度化が重要となります。 本コラムでは、アプリケーションパフォーマンス監視(APM)ツール「IBM Instana Observability」(以下 Instana)とアプリケーション・リソース管理(ARM)ソリューション「IBM Turbonomic」の連携で生まれる、統合アプリケーション運用管理の相乗効果について紹介します。 目次 1. 複雑化したIT環境に求められるAPMによる可視化とアプリケーションの運用高度化 2. アプリケーションリソース管理の課題を解決するARMの活用 3. APMとARMの統合が可能にするアプリケーションの運用管理の効率化 4. InstanaとTurbonomicの連携による、一元的な管理の相乗効果 5. InstanaとTurbonomicの連携による、統合的なアプリケーションの運用管理の価値 6. まとめ お問い合わせ 1. 複雑化したIT環境に求められるAPMによる可視化とアプリケーションの運用高度化 アプリケーションの稼働環境がオンプレミスだけでなくクラウド環境へ拡大しています。クラウド上では様々なクラウドネイティブなサービスが稼働しており、それを利用することはコスト面・スピード面で必然となっています。しかし、クラウドネイティブ環境が増え続けることで複雑化しがちであり、そのような複雑なクラウドネイティブ環境の運用監視をいかに効率的に行うか、がビジネスにおいて大きな課題となっています。 システムを構成するハードウェアとソフトウェアが正常に稼動しているかについて、個々の状態を把握することに主眼がおかれた従来型モニタリングは、ハードウェアの障害やソフトウェアの異常を素早く検知することに役立つ一方で、ハードウェアの故障やサービスの停止をともなわないアプリケーションの性能低下などが検知することが難しく、原因の特定に非常に多くの時間がかかります。 また、従来型モニタリングの多くは、各環境で利用されている言語やプログラムにあわせた事前の導入と構成・設定が必要なだけではなく、サービス間の依存関係が把握できず、固定の閾値を超えたかどうかの確認しかできないため、ダイナミックに変化しつづけるクラウドネイティブ環境に追随していくことは困難です。 これに対して、アプリケーションのパフォーマンスを監視し、問題が発生した際に迅速に検知し、解決するのが、アプリケーションパフォーマンス管理(Application Performance Management: APM)による「アプリケーションの運用高度化」です。 APMにより、アプリケーションが本番環境で正常に動作していることをモニタリングして、システムやアプリケーションが利用者に提供している「サービスの品質」と「システムの状態」を可視化し、トランザクションのパフォーマンスの状態を測定するのが可能になります。 IBMのAPMツール「Instana」は、「自動化」「コンテキストの把握と解析」「インテリジェントなアクション」の特長を持ち、デジタルプラットフォームの効率的な管理および迅速な障害個所の特定など、クラウドネイティブ環境の可視化を実現しアプリケーションの可用性向上に貢献します。 2. アプリケーションリソース管理の課題を解決するARMの活用 一方、アプリケーションが安定したパフォーマンスを提供し続けるには、アプリケーションがユーザからのリクエストを処理するため必要なリソースを確保することが前提条件となります。 そのためには、適切なリソースを割り当て、必要に応じて増減させる管理をする必要があります。その上で、利用者の要望を実現する高度な機能とストレスのない使いやすいUX/UIの提供、24時間365日無停止での安定したサービスの継続、急激なアクセスの増加にも耐える拡張性や俊敏性が求められます。さらには、システム上で実行されるアプリケーションが、事前に定義されたセキュリティポリシーやルールに完全に適合していなくてはなりません。 しかし、アプリケーションスタックが複雑化し、ワークロードが変化しつづけるハイブリッド・クラウド環境下で、従来のインフラ中心のアプローチや手動ツールを使った人手主体の管理や監視手法だけで24時間365日アプリケーションリソースを維持管理し、適切なリソースを予測し確保し続けることは非常に困難です。 また、リソース不足にならないように、必要以上の余剰な CPU/メモリ/ディスクなどのサーバリソースを持たせることは、コスト面で大きな負担となります。さらに、多頻度のリリースに対応しうる高速・高効率で、継続的な品質担保に対応することが求められる一方で、高スキルのIT人材が、慢性的に不足していることも現状の管理体制の大きな負担となっています。 これに対して、コンピュートリソースの不足を早期に把握し、最適化を行い人手をかけずに適切な意思決定を適切なタイミングで行うことで、アプリケーションのレスポンスを維持するのが、アプリケーションリソース管理(Application Resource Management : ARM)です。 IBM の AI駆動型ARMソリューション「IBM Turbonomic ARM」は、アプリケーションからインフラまでをフルスタックで可視化し、アプリケーションが必要とする ITリソースを最適化します。そして、AI を用いてアプリケーションパフォーマンス、コンプライアンスおよびコストの継続的な管理を可能にします。 3. APMとARMの統合が可能にするアプリケーションの運用管理の効率化 アプリケーション運用管理の効率化は、宣言的に定義されたシステムのあるべき状態にシステムを制御する各種のオーケストレータによって、APMとARMを活用し徹底して自動化することで実現できます。ただし、システムで現在起きている問題のリアルタイムでの監視や、オーケストレータを介した問題へ自動に対処することはもちろん、あるべき姿へ迅速に回帰する「クローズドループサイクル(循環生産)」型のプロセスを実現することが不可欠となります。 このプロセスにおいて、APMとARMをそれぞれ独立した状態で活用するだけでは、目的に応じた画面の切り替えやツールごとの設定・操作などに非常に手間が掛かります。 APMであるInstanaとARMであるTurbonomicを連携することで、「統合的なアプリケーションの運用管理」を実現し、運用管理作業効率を向上することで以下のような効果を発揮します。 (1)ワンストップでインフラやアプリUXなどのパフォーマンスを統合管理できる (2)素早く問題の発生を検知し原因を特定できる (3)新規の監視対象を自動で認識でき個別の作業が不要となる (4)メンテナンスに工数がかからない 4. InstanaとTurbonomicの連携による、一元的な管理の相乗効果 InstanaとTurbonomicを連携させ、双方向の統合を設定することで、画面を切り替えることなく、1ヵ所・1画面の一元化された操作で、効率的に統合的なアプリケーションの運用管理を行うことが可能です。 InstanaとTurbonomic の連携による相乗効果には、次のようなものか挙げられます。 (1)アプリケーションレベルからインフラレベルまで統一管理できる TurbonomicにInstanaの情報を連携することにより、1つの画面でインフラからアプリケーションレベルまでアプリケーション・スタック全体を統合的に可視化し、操作もシームレスに連携することで、パフォーマンスのリスクを把握しリソースを最適化するための積極的な推奨策を得るとともに、リスクの軽減や迅速な判断をすることが可能になります。 (2)故障が発生する前に予兆を検知して事前に対応できる アプリケーション視点でのパフォーマンス・障害分析とインフラ観点でのリソース分析と最適化を同時に行うことで、障害の発生を未然に防ぐための対策を実施できるようになるため、アプリケーションの可用性を向上することができるようになります。 そのため、リソースの輻輳を最小限に抑えることができ、その効果として、平均修復時間(MTTR)と平均故障間隔(MTBF)を改善し、機会損失を最小限に抑えます。 (3)パフォーマンスに影響するリソースを理解し対応ができるようになる Instanaは、Turbonomicの実行したアクションと監視対象アプリケーションのパフォーマンスへの影響について、履歴の記録を得ることができます。また、Turbonomicによって提供されるリソース自動最適化機能を統合し、IT環境全体の集約された性能を最適な状態に維持します。これにより、ユーザは、単一の場所から一元的にアプリケーションを監視し、リアルタイムのデータと需要に基づいた状況に合わせて、需要に則したリソース割りあて・確保の決定を実行することができます。 InstanaとTurbonomicの統合によって、クラウド環境やKubernetesのリソース費用を正確に把握できるようになるため、十分に活用されていないリソースやオーバープロビジョニングされたリソースを最適化するための推奨案が得られます。これを元に、ハイブリッド(セルフ・マネージド)やクラウドネイティブ、Kubernetesのワークロードのパフォーマンス改善、効率化、コンプライアンス対応、コスト削減を促進し、クラウドの無駄を削減するとともに、その効果を向上させることが可能になります。 5. InstanaとTurbonomicの連携による、統合的なアプリケーションの運用管理の価値 このようにInstanaとTurbonomicを連携させることで、お客様は、インフラ・アプリケーションを統合的に可視化できるようになるだけでなく、アプリケーションのパフォーマンスリスクに素早く対応することが可能になります。 また、Turbonomicと連携できるAPMはInstanaだけではなく、お客様が、現在お使いになっているAPMとも連携することも可能です。さらには下図のロードマップのように、APM+ARMだけでなく、他のソリューションとも連携させることで、お客様のアプリケーションの運用高度化をさらに進め、ビジネスにより大きな価値をもたらすことができます。 図1:InstanaとTurbonomicの連携によるアプリケーションの運用高度化 6. まとめ このように、InstanaとTurbonomicを連携させた一元的な操作によって、複雑化したIT環境においても、ワンストップでインフラやアプリUXなどを監視・管理し、リソースの無駄やクラウド費用の増加なしに、アプリケーションに最適なリソースを動的に割りあてることができます。これにより、効率的なアプリケーションの管理の実現と、期待どおりのパフォーマンスを発揮して顧客のニーズを満たすことが可能になります。 エヌアイシー・パートナーズ株式会社は、IBMソフトウェア(SW)とハードウェア(HW)の認定ディストリビュータとして、InstanaおよびTurbonomicに関する支援が可能です。 お客様のニーズや要件に合わせて、IBMのSWとHWを組み合わせた最適な提案やカスタマイズの支援、IBM製品の特長・利点をお客様にわかりやすく説明し、お客様・パートナー様のビジネスに最適な提案でサポートいたします。 「シナジー効果の高いInstanaおよびTurbonomicに絡めたセールスをサポートしてほしい」といったご要望があれば、いつでもお気軽にお問い合わせ・ご相談ください。 お問い合わせ この記事に関するお問い合せは以下のボタンよりお願いいたします。お問い合わせ   .highlighter { background: linear-gradient(transparent 50%, #ffff52 90% 90%, transparent 90%); } .anchor{ display: block; margin-top:-20px; padding-top:40px; } .btn_A{ height:26px; } .btn_A a{ display:block; width:100%; height:100%; text-decoration: none; background:#eb6100; text-align:center; border:1px solid #FFFFFF; color:#FFFFFF; font-size:16px; border-radius:50px; -webkit-border-radius:50px; -moz-border-radius:50px; box-shadow:0px 0px 0px 4px #eb6100; transition: all 0.5s ease; } .btn_A a:hover{ background:#f56500; color:#999999; margin-left:0px; margin-top:0px; box-shadow:0px 0px 0px 4px #f56500; } .bigger { font-size: larger; }

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