2020年09月

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【てくさぽBLOG】IBM Cloud Pak for Applicationsを導入してみた(OpenShift導入編)

IBM Cloud Pak for Applicationsの新規販売は終了いたしました。
今後のアプリケーションランタイムソリューションは、2021年1月15日に発表されたWebSphere Hybrid Editionとなります。


こんにちは。
てくさぽBLOGメンバーの岡田です。

全3回「IBM Cloud Pak for Applicationsを導入してみた」シリーズの、“OpenShift導入編” です。

本記事では、我々が実際にやってみてつまづいたポイントAWS 特有の注意事項も記載していますので、ぜひ最後までお読みください。

 

1. はじめに

概要編でも述べていますが、IBM Cloud Paks(以下 Paks)は OpenShift 上で稼働するアプリケーションのため、Paks を利用するためには OpenShift の構築が必要となります。

今回の検証では最小構成での検証を実施するために、以下の環境で実施しました。

  • AWS 上での構築
  • OpenShift バージョン4.2(検証時最新)
  • User-Provisioned Infrastructure(UPI)方式・・・ユーザーがインフラ環境を事前に用意してインストールを行う方法
  • CloudFormation テンプレートの使用

さて、以下が今回インストールする全体構成になります。Masterノード3台、Workerノード2台の構成です。

また本検証では、以下の Red Hat 社マニュアルページを利用しました。
インストールで利用する jsonファイル、yamlファイルの中身はこのマニュアル内の記載からコピー・アンド・ペーストして作成します。

1.5. CLOUDFORMATION テンプレートの使用による、AWS でのユーザーによってプロビジョニングされたインフラストラクチャーへのクラスターのインストール

 

2. 事前準備

2-1. 作業用Linux環境準備

OpenShiftのインストール作業に必要なLinux(Cent OS)環境を準備します。
詳細な手順はリンク先を参照ください。

(1)Cent OS インストールとディレクトリ作成
(2)AWS CLI インストール
(3)jqパッケージのインストール

 

2-2. インターネットドメインの取得とRoute53への登録

インターネット上から OpenShift クラスターにアクセスするためにインターネットドメインを利用できるようにAWS Route53で独自ドメインを取得・登録しました。
インターネットドメイン名:example.com(仮称)

 

2-3. インストールファイルの取得

OpenShiftのインストールに利用するファイルをRed Hatサイトからダウンロードします。

 

3. OpenShift 導入手順

3-1.AWS 環境構築

まずは AWS 環境を構築します。
今回は以下の全7項目を順番に実施しました。
詳細な手順はリンク先を参照ください。

(1)SSH プライベートキーの生成およびエージェントへの追加
(2)AWS のインストール設定ファイルの作成
(3)インフラストラクチャー名の抽出
(4)AWS での VPC の作成 ※つまづきポイントをこの後ご紹介
(5)AWS でのネットワークおよび負荷分散コンポーネントの作成
(6)AWS でのセキュリティーグループおよびロールの作成
(7)AWS インフラストラクチャーの RHCOS AMI

 

「(4)AWSでのVPCの作成」でのつまづきポイント

VPC作成のCloudFormationコマンドを実行した際にエラーが発生したので、原因と解決方法をご紹介します。

↓このコマンドでエラーが出ていますが、どこが間違っているか分かりますか?


# aws cloudformation create-stack –stack-name createvpc –template-body conf/cf_newvpc.yaml –parameters conf/cf_newvpc.json

Error parsing parameter ‘–parameters’: Expected: ‘=’, received: ‘EOF’ for input:
conf/cf_newvpc.json


パッと見、おかしいところが無さそうなのですがエラーとなっています。
検証メンバーで調査&トライ・アンド・エラーすること小一時間。。。原因は単純でした。
ファイル名を”file://”で指定していなかったのでyamlファイルやjsonファイルが読み込めなかったのです。以下が正しいコマンドになります。”file://”の後ろはフルパスで指定しているので”/”が3つ並んでます。


# aws cloudformation create-stack –stack-name createvpc –template-body file:///os42/conf/cf_newvpc.yaml –parameters file:///os42/conf/cf_newvpc.json


 

3-2. OpenShift導入

今回は以下の全10項目を順番に実施しました。
こちらも詳細な手順はリンク先を参照ください。

(1)Bootstrapノード作成
(2)コントロールプレーン(Masterノード)の作成
(3)Workerノードの作成
(4)Bootstrapノードの初期化
(5)CLI のインストール
(6)クラスターへのログイン
(7)マシンの CSR の承認 ※つまづきポイントをこの後ご紹介
(8)Operator の初期設定
(9)Bootstrapノードの削除
(10)クラスターのインストールを完了

 

「(7)マシンの CSR の承認」でのつまづきポイント

“oc get nodes”コマンドを実行してもマスターノードのみを認識しワーカーノードを認識しなかったので、その解決方法を紹介します。
下記のとおり、oc get nodes を実行してもマスターノードしか認識していません。


# oc get nodes
NAME                     STATUS  ROLES  AGE  VERSION
ip-10-0-50-xxx.ap-northeast-1.compute.internal  Ready  master   21h  v1.14.6+8fc50dea9
ip-10-0-58-xxx.ap-northeast-1.compute.internal  Ready  master   21h  v1.14.6+8fc50dea9
ip-10-0-59-xxx.ap-northeast-1.compute.internal  Ready  master   21h  v1.14.6+8fc50dea9


保留中の証明書署名要求 (CSR) を確認するとPending になっています。


# oc get csr
NAME  AGE  REQUESTOR                            CONDITION
csr-485lx 22m system:serviceaccount:openshift-machine-config-operator:node-bootstrapper Pending
csr-9qjqw 18m system:serviceaccount:openshift-machine-config-operator:node-bootstrapper Pending


以下、省略


そこでまずは個々のCSRを承認していきましたがコマンド実行してもすぐに反映されない、また保留状態のCSRが増えていくという状態になりました。


# oc adm certificate approve csr-9qjqw
certificatesigningrequest.certificates.k8s.io/csr-9qjqw approved

# oc get csr
NAME  AGE  REQUESTOR                            CONDITION
csr-9qjqw 53m system:serviceaccount:openshift-machine-config-operator:node-bootstrapper Approved,Issued
csr-485lx 22m system:serviceaccount:openshift-machine-config-operator:node-bootstrapper Pending


以下、省略


CSRが増える一方で状況が悪化しており、出てきたCSRを個別に処理するのもキリがないためこの時点で一度諦めました。
翌日にまとめて CSR を承認するコマンドを探して実行すると、ワーカーノードが認識できました。


# oc get csr -ojson | jq -r ‘.items[] | select(.status == {} ) | .metadata.name’ | xargs oc adm certificate approve
certificatesigningrequest.certificates.k8s.io/csr-2fn5z approved
certificatesigningrequest.certificates.k8s.io/csr-4cj8b approved
certificatesigningrequest.certificates.k8s.io/csr-4lpv7 approved


以下、省略


※少しタイムラグがあるので、何回か状況確認・Approve処理を行う必要がありました。10分ぐらい間隔をあけた方がよかったです。

oc get nodesコマンドで全ノードの STATUSがReady であることを確認できます。


# oc get nodes
NAME                   STATUS  ROLES  AGE   VERSION
ip-10-0-48-xxx.ap-northeast-1.compute.internal  Ready   worker  57s   v1.14.6+8fc50dea9
ip-10-0-49-xxx.ap-northeast-1.compute.internal    Ready    worker  42m  v1.14.6+8fc50dea9
ip-10-0-50-xxx.ap-northeast-1.compute.internal  Ready    master  22h  v1.14.6+8fc50dea9
ip-10-0-58-xxx.ap-northeast-1.compute.internal  Ready    master  22h  v1.14.6+8fc50dea9
ip-10-0-59-xxx.ap-northeast-1.compute.internal  Ready    master  22h  v1.14.6+8fc50dea9


まとめて承認するコマンドが見つからなかったら、と思うとゾッとします。読者の方は事前に調べておきましょうね。

 

4. AWS特有の注意事項

AWSネットワークの理解は必須

Red Hat社のマニュアルページの内容を利用して jsonファイルと yamlファイルを用意し、CloudFormationコマンドを実行すれば AWS コンポーネントや OpenShift ノードなど必要なコンポーネントが自動的に作成されますが、自動的に作成されるが故に、ロードバランサー、サブネット、EC2インスタンスなどのコンポーネント間の接続の関係性が分かりづらいと思いました。
AWS マネージメントコンソールでなにが作成されたかを確認できますが、AWS のネットワークを理解していないと全体像の把握が難しくその点が苦労しました。

 

CloudFormation 特有のインストール時のクセを理解し慣れる

CloudFormation でのインストールでは、それ以前に実行して出力された値を次の CloudFormation コマンドで用いる jsonファイルに転記して利用する、という操作を繰り返します。特に UPI方式では転記する項目も回数も多かったので、Excel でどの項目がどのフェーズの jsonファイルに転記するのかを整理してインストールを進めました。

またそのような CloudFormation の特徴から、事前に設定ファイルをすべて用意して順番に実行する、ということができませんのでインストール作業は時間に余裕を持って行いましょう。

 

5. まとめ

本記事で OpenShift を AWS 上で UPI インストールする流れを確認いただけましたでしょうか。

必要なインフラのコンポーネントをインストーラが自動的に作成してくれる IPI (Installer Provisioned Infrastructure) 方式と比べると作業工程が多くなりますが、本番環境のお客様要件に対し常に IPI方式で構築できるとは限らないと想定し、UPI方式を学んでおくことは大変有用だと思いますので参考になれば幸いです。

本記事の内容で構築した環境に、この後 Paks をインストールすることが可能となります。Paks の種類によって必要リソースは異なりますが UPI方式での手順は同じです。

次回は、この OpenShift の環境に Cloud Pak for Application をインストールしてみた内容をお伝えします。

 

お問い合わせ

この記事に関するご質問は下記までご連絡ください。

エヌアイシー・パートナーズ株式会社
技術支援本部

E-Mail:nicp_support@NIandC.co.jp
 
 


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2025年08月04日

【てくさぽBLOG】IBM watsonx OrchestrateのADKを使ってみた

こんにちは。 てくさぽBLOGメンバーの高村です。 早速ですが、今年5月に開催されたIBMの年次イベント「Think2025」で、watsonx Orchestrateの新機能が発表されました!その中の一つとして、開発者向けの「Agent Development Kit(以下、ADK)」があります。今回はこのADKを活用し、watsonx Orchestrate環境への接続やエージェントの追加といった操作を行い、その使用感をご紹介します。  なお、watsonx Orchestrateについては、今年2月、3月に公開した「watsonx OrchestrateやってみたBLOG」でご紹介しておりますので、是非こちらもご一読ください。 【てくさぽBLOG】IBM watsonx Orchestrateを使ってみた(Part1) 【てくさぽBLOG】IBM watsonx Orchestrateを使ってみた(Part2) 目次 はじめに ADKとは? ADK使ってみた さいごに お問い合わせ はじめに Think2025で発表された新機能は、6月に環境へ追加されました。それ以前の環境とは、メニュー構成や操作方法、機能名称に変更があります。 例えばこれまで「Skill」と呼ばれていたものが「Tool」へと名称変更されています。 アップデート後の環境につきましては、別ブログにて改めて詳しくご紹介させていただく予定ですので、ぜひご期待ください! ADKとは? まずはADKについてご紹介します。ADKとは開発者向けにwatsonx OrchestrateのAgentやToolをスクラッチ開発するための開発キットになります。ローカル端末などに導入し、pythonベースで開発を行うことができます。 また、ADKとは別に、watsonx Orchestrate Developer Editionをローカル端末に導入することで、ADKで開発したAgentやToolのテストが可能になります。なお、watsonx Orchestrate Developer EditionはDockerコンテナ上で動作し、現時点のハードウェア要件はCPUは最小8コア、メモリは最小16GBが必要です。詳細はInstalling the watsonx Orchestrate Developer Editionをご確認ください。   ADKとwatsonx Orchestrate Developer Editionを利用することで、コードの迅速な作成・修正や柔軟なカスタマイズに加え、環境へのデプロイ前にローカルでテスト・修正が可能となり、作業効率の向上が期待できます。 ADK使ってみた 前述ではADKでAgent開発し、watsonx Orchestrate Developer Editionで動作確認、SaaS watsonx Orchestrateへインポートする構築の流れをお話しましたが、今回の検証における動作確認は検証環境として利用しているIBM Cloud 上のwatsonx Orchestrate利用します。よって前述したwatsonx Orchestrate Developer Editionは利用せず、ADKからwatsonx Orchestrate検証環境へAgentとToolを直接インポートし、動作確認を行いたいと思います。また、ADKのインストール先は自分の端末ではなく、IBM Cloud上に構築したUbuntuのVirtual Server Instance(以下、VSI)を使用します。検証環境の構成イメージは下記の図の通りです。 尚、ADKのインストール要件はPython 3.11以上、Pip、そして仮想環境(以下venv)が必要です。詳細については、Getting started with the ADKをご確認ください。 それでは早速使ってみましょう! VSIのプロビジョニング まずはADKをインストールするVSIをプロビジョニングします。本ブログではプロビジョニング方法について詳しく記載いたしませんが、手順は「【てくさぽBLOG】IBM Power Virtual ServerのAIX環境とIBM Cloud Object Storageを接続してみた(Part1)」のVSI for VPCの作成をご参考ください。 OSはUbuntu 22.04 LTS Jammy Jellyfish Minimal Install、リソースは2vCPU,4GB RAMで作成しました。VSI作成時にSSH鍵が必要なるので作成を忘れないようにしてください。 作成すると数分で起動します。端末からSSHログインするため浮動IPが必要になります。赤枠で囲った浮動IPを作成しインスタンスに紐づけします。以上でVSIの作成は完了です。 Ubuntuの設定 ターミナルを開きsshでUbuntuにログインします。私はWindowsのコマンドプロンプトを使用しました。Ubuntuユーザでログイン後、rootパスワードを設定し、スイッチできるようにします。 ubuntu@nicptestvsi:~$ sudo passwd root New password: Retype new password: passwd: password updated successfully ubuntu@nicptestvsi:~$ su - pythonのバージョンを確認したところ3.10.12でした。ADKの要件は3.11以上ですので、バージョンアップが必要になります。最初は3.13にバージョンアップしてみたのですが、後続作業と最新バージョンではパッケージが合わなかったのかうまく動かず…仕切り直して3.11を利用することにしました! root@nicptestvsi:~# apt install python3.11 バージョンアップ後、デフォルトバージョンとして3.11を指定します。 root@nicptestvsi:~# sudo update-alternatives --install /usr/bin/python3 python3 /usr/bin/python3.10 1 sudo update-alternatives --install /usr/bin/python3 python3 /usr/bin/python3.11 2 sudo update-alternatives --config python3 update-alternatives: using /usr/bin/python3.10 to provide /usr/bin/python3 (python3) in auto mode update-alternatives: using /usr/bin/python3.11 to provide /usr/bin/python3 (python3) in auto mode There are 2 choices for the alternative python3 (providing /usr/bin/python3).Selection Path Priority Status ------------------------------------------------------------ * 0 /usr/bin/python3.11 2 auto mode 1 /usr/bin/python3.10 1 manual mode 2 /usr/bin/python3.11 2 manual modePress <enter> to keep the current choice[*], or type selection number: 2 root@nicptestvsi:~# root@nicptestvsi:~# python3 --version Python 3.11.13 次に下記コマンドを実行して任意のvenvを作成します。 python3 -m venv /path/to/nicpse/project/your-venv-adktest <環境のパスを指定 venvを活性化してログインします。下記コマンド結果のようにvenvに入れましたらUbuntuの設定は完了です。 root@nicptestvsi:~# source /path/to/nicpse/project/your-venv-adktest/bin/activate (your-venv-adktest) root@nicptestvsi:~# ADKのインストール 以下コマンドを実行してADKをインストールします。ADKは6月時点で1.5.1が最新バージョンです。 (your-venv-adktest) root@nicptestvsi:~# pip install ibm-watsonx-orchestrate Collecting ibm-watsonx-orchestrate Downloading ibm_watsonx_orchestrate-1.5.1-py3-none-any.whl.metadata (1.4 kB) Collecting certifi>=2024.8.30 (from ibm-watsonx-orchestrate) Downloading certifi-2025.6.15-py3-none-any.whl.metadata (2.4 kB) Collecting click<8.2.0,>=8.0.0 (from ibm-watsonx-orchestrate) Downloading click-8.1.8-py3-none-any.whl.metadata (2.3 kB) Collecting docstring-parser<1.0,>=0.16 (from ibm-watsonx-orchestrate) Downloading docstring_parser-0.16-py3-none-any.whl.metadata (3.0 kB) Collecting httpx<1.0.0,>=0.28.1 (from ibm-watsonx-orchestrate) Downloading httpx-0.28.1-py3-none-any.whl.metadata (7.1 kB) ----中略---- (your-venv-adktest) root@nicptestvsi:~# orchestrate --version ADK Version: 1.5.1 ADKの環境設定 次にADKの環境設定を行います。watsonx OrchestrateのインスタンスIDが必要になるため、watsonx OrchestrateのSetting画面に入り確認します。下記画面をご参考にしてください。 環境設定コマンドはこちらになります。-nの後はvenv名を指定し、-uの後はインスタンスIDを指定します。 (your-venv-adktest) root@nicptestvsi:~# orchestrate env add -n <仮想環境名> -u <環境のインスタンスID> [INFO] - Environment 'my-name' has been created [INFO] - Existing environment with name 'nicpse' found. Would you like to update the environment 'nicpse'? (Y/n)y [INFO] - Environment 'nicpse' has been created 以下コマンドを実行して、IBM Cloud上のwatsonx Orchestrateと認証設定をします。APIキーの取得方法は「【てくさぽBLOG】IBM watsonx.aiを使ってみた(Part2)」のAPIキーの取得をご確認ください。尚、リモート環境に対する認証は2時間ごとに期限切れになります。期限が切れた場合は再度認証する必要があります。 (your-venv-adktest) root@nicptestvsi:~# orchestrate env activate nicpse --apikey <APIキー> [INFO] - Environment 'my-ibmcloud-saas-account' is now active [INFO] - Environment 'nicpse' is now active 下記コマンドを実行してCLIから利用できる環境のリストを表示します。IBM Cloud上のwatsonx Orchestrateがactiveとなっていました! (your-venv-adktest) root@nicptestvsi:~# orchestrate env list nicpse https://api.us-south.watson-orchestrate.cloud.ibm.com/instances/XXXXXXXX (active) local http://localhost:XXXX Toolとagentのインポート 次にToolとAgentのインポートを行います。ToolとはAgentがタスクを実行する際に利用する機能です。今回は、IBM様より共有いただいたyfinanceを活用したToolおよびAgentのコードを、ADKを用いてインポートします。なお、yfinanceはヤフーファイナンスから株価などの金融データを取得するためのPythonライブラリです。 最初にToolのインポートを行います。下記の様に、scpなどでToolファイルとrequirements.txtをディレクトリにアップロードしておきます。requirementsファイルは他のモジュールと依存関係がある場合使用します。 (your-venv-adktest) root@nicptestvsi:~/orchestrate_tool/py/source_02# ls -l total 12 -rw-r--r-- 1 root root 0 Jun 24 04:42 __init__.py drwxr-xr-x 2 root root 4096 Jun 24 04:38 __pycache__ -rw-rw-r-- 1 ubuntu ubuntu 8 Jun 24 03:02 requirements.txt -rw-rw-r-- 1 ubuntu ubuntu 1778 Jun 24 02:46 yfinance_agent.py 下記コマンドを実行してToolファイルとrequirementsファイルをインポートします。企業情報を取得するstock_infoと株価を取得するstock_quoteの2つのToolがインポートされました。 (your-venv-adktest) root@nicptestvsi:~/orchestrate_tool/py/source_02# orchestrate tools import -k python -f "./yfinance_agent.py" -r "./requirements.txt" [INFO] - Using requirement file: "./requirements.txt" [INFO] - Tool 'stock_info' imported successfully [INFO] - Tool 'stock_quote' imported successfully listコマンドを実行するとインポートされたToolを確認できます。 (your-venv-adktest) root@nicptestvsi:# orchestrate tools list ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┳━━━━┳ ┃ Name ┃ Description ┃ Permission ┃ Type ┃ Toolkit ┃ App ID ┃ ┡━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╇━━━━╇ │───────────┼────────────┼── │ send_mail_brevo │ send a meil using Brevo. │ write_only │ python │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ ├─────────────────────────────────┼──── │ stock_quote │ 企業のTickerSymbolを用いて株価… │ read_only │ python │ │ │ ├─────────────────────────────────┼──── │ Untitled_6160RC │ No description │ read_only │ openapi │ │ │ ├─────────────────────────────────┼──── │ stock_info │ 企業のTickerSymbolを用いて企業… │ read_only │ python │ │ │ └─────────────────────────────────┴──── 次にAgentをインポートします。下記コマンドを実行します。 (your-venv-adktest) root@nicptestvsi:~/orchestrate_tool/py/source_02# orchestrate agents import -f ./yfinance_agent.yaml agent listコマンドでインポート済みのAgentを確認できました。Agentが使用するToolも表示されています。 (your-venv-adktest) # orchestrate agents list ┏━━━━━━━━━━━━━━━┳━━━━━━━━━━━━━━━┳━━━━━━━━ ┃ Name ┃ Description ┃ LLM ┃ Style ┃ Collaborators ┃ Tools ┃ Knowledge Base ┃  ┡━━━━━━━━━━━━━━━╇━━━━━━━━━━━━━━━╇━━━━━━━━ │ yfinance_age… │ 企業の会社情… │ watsonx/meta- │ react │ │ stock_info, │ │ │ │ │ llama/llama-3 │ │ │ stock_quote │ │ ││ │ │ -2-90b-vision ││ │ -instruct │ │  IBM Cloud上のwatsonx Orchestrateで動作確認 インポートしたAgentとToolをIBM Cloud上のwatsonx Orchestrateで確認します。 watsonx Orchestrateへログインし、BuildからAgent Builderを選択します。 yfinanceエージェントが表示されているので、クリックします。 クリックすると、Agent作成画面に入ります。UIから基盤モデルを変更したり、Agentの振る舞いなど変更することができます。 スクロールして、Toolsetを確認するとADKからインポートしたToolが登録されています。 右のPreviewからAgentの動きを確認することができます。今回はDeployせずPreviewで確認します。入力欄には「IBMの株価は?」と質問してみます。しばらくすると本日の株価が回答されました。Show Reasoningを開くと推論過程を確認することができます。株価を取得するTool「stock_quote」を使用し、AIがユーザの入力から自動的にTicker symbolを入力していることがわかります。 次に「IBMの企業情報」と質問をします。しばらくするとAIがユーザの入力からTicker symbolを入力し、Tool「stock_info」を利用して企業情報を取得、回答されました。ユーザの入力内容からAgentが使用するToolを選択し、実行していることがわかります。   さいごに ADKのご紹介とADKを使ってToolとAgentのインポートを行いました。 ADKのインストールおよび設定について、Pythonバージョンの設定やvenvの作成でつまずく部分はありましたが、venvが作成できればその後の設定はスムーズに進められました。 今回はVSI上のUbuntuサーバにADKをインストールしましたが、ご自身の端末に導入することで、より気軽にAgent開発を行えるかと思います。なお、今回は検証対象外でしたが、watsonx Orchestrate Developer Editionを利用する場合は、インストール要件としてやや高めのスペックが必要になる点にご注意ください。 検証時のADKのバージョンは1.5.1でしたが、7月末では1.8.0が最新バージョンとなっています。比較的頻繁にアップデートされますので適宜Release Notesをご確認ください。バージョンアップでコマンドオプションも変更される場合があるため、マニュアルを確認するかコマンドに`--help`を付与してパラメータを確認することをおすすめします。   お問い合わせ この記事に関するご質問は以下の宛先までご連絡ください。 エヌアイシー・パートナーズ株式会社 技術企画本部 E-mail:nicp_support@NIandC.co.jp   .anchor{ display: block; margin-top:-20px; padding-top:40px; }

2025年07月11日

【参加レポート】Domino Hub 2025

公開日:2025-07-11 みなさまこんにちは。ソリューション企画部 松田です。 2025年6月19日・20日と2日間に渡って開催された「Domino Hub 2025」に参加しました。これは HCL Ambassador有志が企画・実行する Dominoコミュニティイベントです。去年に続き、今回が3回目の開催となります。 昨年同様、今回もエヌアイシー・パートナーズはスポンサーとしてご支援させていただき、両日参加いたしました。そのレポートをお送りします。 目次 イベント概要 セッション内容 - Domino 14.5 リリース 特徴的機能とライセンス改定 -ロードマップ -お客様事例:曽根田工業様 最後に 関連情報 お問い合わせ イベント概要 「Domino Hub」は、HCL Ambassadorが主宰となり、Dominoの利用者、開発者、ソリューションベンダーが一堂に会するコミュニティイベントです。今回は1日目がオンライン、2日目はオンサイトのみの開催でした。 特に2日目は参加率が非常に高かったとのことで、会場も大変盛況でした。結婚式場としても使われている今回の会場は、中庭から陽の光が差し込み、解放感があるラグジュアリーな空間で、一般的なビジネスミーティングよりも上質な雰囲気が感じられました。 併せて展示ブースも設置され、Dominoアプリケーションがスマートフォンやブラウザで使えるようになる「HCL Nomad」などのHCL製品とともに、様々なビジネスパートナー様の多彩な関連製品が数多く展示・紹介されていました。 セッション内容 2日間で全22セッションが行われました。セッションはHCLをはじめ、HCL Ambassadorから、様々な開発ベンダー、製品ベンダー、エンドユーザーからの事例紹介などのセッション、そしてパネルディスカッションがありました。まずHCLからのセッション内でのトピックをお伝えします。機能のみならずライセンスまわりで大きなニュースもありました。 Domino 14.5 リリース 特徴的機能とライセンス改定 Domino Hubの2日前、2025年6月17日にリリースされました。 Domino IQ 特徴的な機能で最も注目すべき、今回もご説明に時間を割かれていたのが「Domino IQ」です。 一言で言えば「Domino内にローカルでLLMを持たせ、蓄積されてきたDominoアプリ内の情報も取り込み、セキュアな環境で生成AIを用いた業務を実現する」ものです。 企業内業務で生成AIをどのように実装し利用していくかは今、皆様の大きな関心事項であられると思います。自社のDomino環境内で、Dominoアプリケーションを用い、Notesクライアントからそれが実現できることになります。 (画像クリックで拡大) Nomad for Web COM対応 またNomad for WebがCOMに対応したことにより、これまではNotesクライアントだけでしかできなかったExcelやPowerPointを埋め込んだDiminoアプリもブラウザから利用できるようになりました。 ライセンスダッシュボード:DLAUの統合 これまでGitHubからダウンロードしてセットアップしていたDomino License Analysis Utility (DLAU)がDomino内にデフォルトで統合され、The Domino License Administration (DLA) となりました。 (画像クリックで拡大) ライセンス改定 そしてライセンスにも大きなベネフィットが付加されました。CCB Termライセンスにはこれまで「Domino Leapで5アプリケーションまで開発・利用が可能」という権利が含まれていましたが、2025年7月1日からその制限がなくなりました。すなわち「2025年7月1日以後有効なCCB Termライセンスをお持ちのお客様は、Domino Leapのフル機能が利用できる」となります。 同時に、Domino Leapライセンスの利用範囲であるHCL Enterprise Integrator(HEI)の利用権利も含まれます。これでCCB Termライセンスのみで、追加費用なく「ブラウザによるノーコード/ローコード開発」「基幹業務とDominoアプリケーションの連携」が可能になります。 さらにCCB Termで利用できるSametime Chatで添付ファイルと画像添付も可能になりました。 ロードマップ Domino、Notes、Verse、Nomadなど各ソリューションについてのロードマップも紹介されました。先々の計画は出てこないものですが、このようにHCLから明確に提示されることにより、Dominoをお使いのお客様はこれからも安心して利用を継続していただけると思います。 Dominoのロードマップ(画像クリックで拡大) Notesのロードマップ(画像クリックで拡大) Nomad, VerseといったエンドユーザーのUI部分が短期間でバージョンアップされていく。(画像クリックで拡大) お客様事例:曽根田工業 様 Dominoユーザーの有限会社曽根田工業 代表取締役 曽根田 直樹 様より、Domino事例のご講演がありました。曽根田様は2001年に静岡県磐田市で個人で起業され、切削機械の刃物を製造されています。曽根田様のお話で非常に興味深かった部分を抜粋致します。 "独立・起業するにあたり、前職で使っていたNotes/Dominoを自社でも使うことにした。現在は大手メーカーからの発注依頼や過去に作った品番の再発注など数多く受けており、当時のCAD/CAMのデータや販売管理データなどをDominoに入れて運用している。 オンプレミス環境のリスクやセキュリティ、IT技術のトレンドに合わせてクラウド化を検討した場合、Dominoからは離れたほうがいいのではないか?と思い、他社SaaS製品も検討しトライアルで利用登録をした。 しばらく触れずにいたところ、アカウント情報に登録していた支払い口座から利用料の引き落としがされていなかったためアカウントが凍結、さらに保存していたデータも突然消去されてしまっていた。支払いが滞っただけで中身まで削除されてしまうようなシステムには会社の大事な資産であるデータを載せられないので、「Dominoを『やめることを止める』判断」をした。" Dominoから他製品への移行を検討され断念されるお客様は多く、その理由は「Dominoの業務アプリケーションを、サービス内容を落とさずに別プラットフォームに移行することがはなはだ困難である」ということをよくお聞きしますが、この点にも意外な理由が潜んでいました。 最後に 初の2年連続開催となった今年のDominoHubは、コミュニティの力を象徴するかのような盛り上がりを見せました。14.5のリリース、生成AIの実装、ライセンス強化など、今後のDominoの発展を確信させる要素が数多く披露されたほか、実際のユーザー事例も非常に示唆に富むものでした。加えてロードマップの提示による未来への安心感も得られました。 DominoHubは単なる情報共有の場に留まらず、技術、コミュニティ、そしてビジネスの未来を交差させる特別な場となっています。これからもこのような取り組みが継続していき、多くのDominoユーザー、デベロッパー、そして販売パートナーが更なる価値を引き出していけることを楽しみにしています。これからもDominoと私たちの未来を築いていきましょう。 関連情報 「Domino Hub」大阪開催 Domino Hubは、2025年9月18日に大阪でのオンサイト開催が決定致しました。詳細およびお申し込みについては、こちらのリンクからご確認ください。 お問い合わせ エヌアイシー・パートナーズ株式会社E-mail:voice_partners@niandc.co.jp   .highlighter { background: linear-gradient(transparent 50%, #ffff52 90% 90%, transparent 90%); } .anchor{ display: block; margin-top:-20px; padding-top:40px; } .btn_A{ height:30px; } .btn_A a{ display:block; width:100%; height:100%; text-decoration: none; background:#eb6100; text-align:center; border:1px solid #FFFFFF; color:#FFFFFF; font-size:16px; border-radius:50px; -webkit-border-radius:50px; -moz-border-radius:50px; box-shadow:0px 0px 0px 4px #eb6100; transition: all 0.5s ease; } .btn_A a:hover{ background:#f56500; color:#999999; margin-left:0px; margin-top:0px; box-shadow:0px 0px 0px 4px #f56500; } .bigger { font-size: larger; } figcaption { color: #7c7f78; font-size: smaller; }

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