2016年12月

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【今さら聞けない】モバイル・セキュリティ対策の基本

前回は、以下の記事で、セキュリティ・トレンドである SIEM の基本についてご紹介しました。

【今さら聞けない】セキュリティ・トレンド「SIEM」って?

今回は、増え続けるモバイル・デバイスとそのセキュリティ対策の基本について考察してみたいと思います。

 

増え続けるモバイル・デバイスとセキュリティ対策の遅れ

カバンや上着のポケットにいくつものモバイル機器が入っている方も多いのではないでしょうか。

会社貸与の PC や携帯、私用のスマホ、タブレット PC などなど、マルチデバイス化がかなりのスピードで進んでいます。会社からノート PC は支給されているが、個人持ちのスマホも業務に使用し、企業が認識していない IT 機器として”シャドー IT” と言われるようになって久しい昨今です。

ふと不安になるのは、このカバンを無くしたら大変なことになってしまう、ということです。

会社は紛失等の注意喚起や発生後に罰則を科すことはしますが、ある意味紛失等のリスクを個人に押し付けているとも言えます。いくら、各個人が気を付けていても盗難にあったり、紛失してしまったりすることは発生してしまうものです。

MMD 研究所の「スマートフォンの業務利用動向調査」によると、

私物のスマートフォンを業務利用していると回答した人を対象に、「私物スマートフォンのセキュリティ対策」について質問したところ、「対策をしていない」と回答した人は60.6%に上った。

出展:「業務で私物スマホを使う人の6割が「セキュリティ対策をしていない」と回答–MMD調査」、2016/11/18、CNET Japan

とのことで、業務で使用している私用のスマホが何も対策がなされていない危機的な状況にあることがわかります。

 

モバイル・デバイスの企業利用のリスクとその対策

それでは、このような増え続けるモバイル端末に、どのようなリスクがあり、対策がとれるかを考えていきたいと思います。

 

◆増大するモバイル・セキュリティ市場

まず、IDC Japan がまとめたモバイル・セキュリティの市場規模予想から企業向けのモバイル・セキュリティー市場の注目度を見てみましょう。

IDC Japan は2016年10月25日、国内の企業向けモバイルセキュリティ市場に関する調査結果を発表した。2015 年の市場規模は前年比 21.3 %増の 56 億円。2015~2020年の年間平均成長率は16.1%で、2020年の市場規模は118億円に拡大すると予測した。

出展:「広がるモバイルセキュリティ市場、2020 年まで毎年 16 %で成長」、2016/11/04, ITpro

クラウド・サービスの利用拡大、さらに情報系システムだけでなく、基幹システムまでもモバイル・デバイスの活用が広がるとの見込みもあり、企業向けのモバイル・セキュリティ市場は拡大傾向にあることがわかります。

 

◆企業システムのゲートウェイ(入口)として標的にされるモバイル・デバイス

紛失した PC やスマホ が、悪意ある取得者の手に渡れば、ログインやパスコードは破られてしまうという危機感を持っていることが重要です。また、今後は、スマホが企業をターゲットにした攻撃の開始ポイントになるとの認識が必要です。

チェック・ポイント・ソフトウェア・テクノロジーズ社は、以下のようなサイバー・セキュリティ動向予測を発表しています。

現在は、企業・組織に標的型メールを送り付けることで内部への侵入を試みるケースが多いが、今後は、そこに属する人のモバイルデバイスをターゲットとする手法が増えると予測する。「モバイル端末に入りこみ、それをゲートウェイ(入口)にする。攻撃の開始ポイントになり得る」と卯城氏は話す。

モバイルデバイスに対する攻撃はすでにいくつも確認されており、同氏は16年8月に発見された iOS のゼロデイ脆弱性「トライデント」を悪用した例を紹介した。あるジャーナリストの iPhone にスパイウェアを送り込み、その活動をモニタリングし、情報を取得していた例が確認されているという。

出展:「チェック・ポイントが2017年のサイバー攻撃を予測 ―― モバイル・IoTデバイスが標的に」、2016/12/01、business network.jp

 

前回の特集で 大手旅行代理店のケース をご紹介しましたように、これまで標的型の攻撃は “メール” が主流でしたが、今後はシャドーIT を含む “モバイル・デバイス”  に対する標的型の攻撃に気を付ける必要がありそうです。

 

モバイル・セキュリティを確保する

MDM(Mobile Device Management)とは

企業のモバイル・デバイス活用は、今後進めざるを得ない状況です。そのような中で、モバイル・セキュリティを確保するには、各端末のセキュリティ設定や紛失時の対応など、様々な種類のモバイル・デバイスを統合的に効率よく管理する仕組み、MDM と呼ばれるソリューションが必要となります。

e-Wrds によると、MDM の以下のように定義されています。

MDM とは、企業などで社員に支給するスマートフォンなどの携帯情報端末のシステム設定などを統合的・効率的に管理する手法。また、それを実現するソフトウェアや情報システムなどのこと。

MDM では、社員が使用する端末の設定などを管理部門で一元的に管理し、社の方針に沿ったセキュリティ設定を施したり、使用するソフトウェアの種類やバージョンを揃えたり、利用できる機能に制限を加えたり、勝手に私用のソフトやデータを導入できないようにする。端末の紛失時に遠隔からデータを消去したり、操作できないようロックをかけたり、GPS 機能で社員の居場所をリアルタイムに把握する製品などもある。

出展:「MDM 【 Mobile Device Management 】 モバイルデバイス管理」、 e-Words

MDM のソリューションにより 企業での利用が増え続けるモバイル・デバイスを統合的、かつ効率的に管理し、セキュリティ・リスクを低減することが可能となります。

 

モバイル・セキュリティ・ソリューション導入のポイント

それでは、MDM 関連の企業のモバイル・セキュリティ・ソリューションを導入する場合のポイントを具体的に見ていきましょう。

 

【ポイント1】デバイス、コンテンツ、データの保護

はじめに、モバイル・デバイスはその性質上、端末自体を社外に持出し利用します。リモート・ワークも増えることが予想され、個人所有のデバイスの利活用の課題も含め紛失、盗難にあった場合の対策を検討すべきです。その対策の実現には、以下の機能を有した製品、ソリューションの選定が必要となります。

  1. 会社から貸与、および個人所有のデバイス(BYOD)まで、多彩なモバイル端末に実装して管理できる
  2. 企業が独自開発のモバイル・アプリケーションを安全化し、データ漏えいから保護できる (※1)
  3. モバイル端末で安全にファイルや文書を利用・共有できる(※2)
【ポイント2】不正アクセスと詐欺の検知・対策

次に、不正アクセスや詐欺といった脅威のターゲットがモバイル・デバイスにも広がりつつあります。会社提供、個人所有に限らずインストールできるアプリケーションやアクセスできるサイトを抑止し、不正を検知する必要があります。以下の対応が重要なポイントになります。

  1. 無許可のモバイル・アクセスを防ぐことができる
  2. モバイル・マルウェアや不正アプリケーションを検知できる
  3. クラウド・ベースの脅威インテリジェンス(最後に確認された場所などの情報の集合体)をもとにした分析ができる
【ポイント3】セキュリティ・インテリジェンス(※3)への対応

最後に、現在では、セキュリティ・ポイント毎の脅威の監視・検知だけの対策では限界となってきており、脅威の侵入を前提とした統合的な対策が求められています。モバイル・デバイスが脅威の入口として、また脅威そのものとして、その振る舞いの傾向を監視対象とすべきです。

  1. モバイルを含むセキュリティ・イベント全体での傾向を特定できる
  2. 企業が潜在的な攻撃に素早く対処でき、誤検出の結果を排除できる
  3. イベントやセキュリティ・ログなどの情報をリアルタイム収集し、手間なく分析が可能である

MDM を始めとし、モバイル・アプリケーション管理(MAM)(※1)やモバイル・コンテンツ管理(MCM)(※2) を統合的に実現するモバイル・セキュリティ・ソリューションを導入することにより、社員個人に任せていたモバイル・セキュリティ対策を企業全体の課題として人的コストを増大せずに実現することが可能です。

(※1) モバイル・アプリケーション管理(MAM):”ラッピング”、”モバイル・アプリコンテナ”などの技術を使って、デバイス全体ではなく、業務アプリケーションとそのデータを管理するシステム

(※2) モバイル・コンテンツ管理(MCM) : モバイル・デバイスを対象として、閲覧、コピー、期限設定による削除など企業文書を安全に管理する機能を提供するシステム

(※3)セキュリティ・インテリジェンス : イベントログやセキュリティ・ログに加えて、ネットワーク・トラフィック情報をリアルタイム収集し、自動的に正規化、知見を活かした提供ルールに基づいて分析する機能

 

 まとめ

企業で活用が進むモバイル・デバイスですが、個人所有の端末を含め、そのセキュリティー対策は遅れており、MDM などの対策は急務となっています。今回の特集”モバイル・セキュリティ”に関する当記事のポイントは以下になります。

  • 企業でのモバイル・デバイスの活用は更に進むが、個人デバイスやシャドーIT 含め、対策が遅れている
  • モバイル・セキュリティーの市場規模は年 16 % 以上の伸びで推移することが予測されており、拡大傾向である
  • 今後、モバイル・デバイスは、標的型攻撃のゲートウェイとしてターゲットになる可能性がある
  • MDM(Mobile Device Management)はモバイル・デバイスのシステム設定などを統合的に管理する手法でモバイル・セキュリティを確保する上で必要なソリューション
  •  モバイル・セキュリティ・ソリューション導入のポイントは、以下の3つ
    1.  デバイス、コンテンツ、データの保護
    2.  不正アクセスと詐欺の管理
    3.  セキュリティ・インテリジェンスへの対応

 

 

モバイル・セキュリティの実現はIBM MaaS360で

 

今回は、企業のモバイル・セキュリティの確保のための MDM、そして、MAM、MCM の重要性について考えてきました。ここで、それらの機能を有する IBM の統合的なモバイル・セキュリティ・ソリューション、IBM MaaS360 をご紹介したいと思います。

IBM MaaS360 は、スマートフォンやタブレット端末に対して、自社のセキュリティ・ポリシーに応じ、遠隔操作(リモートロック/ワイプ)や端末管理を、異種混在の状態でも一元管理することができるソリューションです。

maas360-001

モバイル・デバイス管理(MDM)、モバイル・アプリケーション管理(MAM)、モバイル・コンテンツ管理(MCM)、を包括した、エンタープライズ・モビリティ管理(EMM)を実現するソリューションで、SaaS型、自社運用型(オンプレミス)の2つのタイプを提供します。

< IBM MaaS360 の特長 >
MDM
機能
  • ロック、ワイプ、パスワード変更、位置情報
  • 迅速なモバイル・デバイス登録を実現、管理者、ユーザそれぞれ負担を軽減
  • インベントリーやデバイス・ポリシーの管理と制御を提供
MAM
機能
  • 企業領域から私用領域へのコピーが制限
  • 特にユーザー所有のデバイスから安全にメールやWeb アクセスができるアプリケーションを提供
  • 企業領域から私用領域へのコピーが制限
MCM
機能
  • データ漏えい防止機能で重要情報を保護
  • コンテナ向けにドキュメントを配布、認証によって使用許可を与えます
  • データ漏えい防止機能で重要情報を保護

 

モバイル関連のイベントやセキュリティ・ログも次世代SIEMのIBM QRadarで

 

“モバイル・セキュリティ・ソリューション導入のポイント” の3つ目に “セキュリティ・インテリジェンスへの対応” について述べましたが、各セキュリティ・ポイント毎の監視・検知では、日々進化する脅威を完全に防ぐことはできません。企業のモバイル・デバイスの活用が進み、攻撃のゲートウェイとして注目されている中、モバイル関連のイベント、セキュリティ・ログなどの情報を収集し、統合的に検知・分析する仕組みが必須です。

前回の特集でも紹介しました次世代 SIEM の IBM QRadar 製品は、デバイス・サポート・モジュール (DSM) と呼ばれるプラグイン・ファイルを使用することにより、各種セキュリティ製品からのイベントの収集を行うことができます。MaaS360 もサポートしており、MaaS360用の DSM を使用し MaaS360コンソールよりイベント・ログを収集することができます。

qradar1

包括的なモバイル・セキュリティ、および管理を実現する、IBM MaaS360、モバイル関連のイベント、セキュリティ・ログ情報を含む、次世代SIEM を実現する IBM Security Qradar をご紹介しました。

当特集記事が、今後 モバイル・セキュリティを検討する中で、少しでもご参考になれば幸いです。

 

その他の記事

2025年08月04日

【てくさぽBLOG】IBM watsonx OrchestrateのADKを使ってみた

こんにちは。 てくさぽBLOGメンバーの高村です。 早速ですが、今年5月に開催されたIBMの年次イベント「Think2025」で、watsonx Orchestrateの新機能が発表されました!その中の一つとして、開発者向けの「Agent Development Kit(以下、ADK)」があります。今回はこのADKを活用し、watsonx Orchestrate環境への接続やエージェントの追加といった操作を行い、その使用感をご紹介します。  なお、watsonx Orchestrateについては、今年2月、3月に公開した「watsonx OrchestrateやってみたBLOG」でご紹介しておりますので、是非こちらもご一読ください。 【てくさぽBLOG】IBM watsonx Orchestrateを使ってみた(Part1) 【てくさぽBLOG】IBM watsonx Orchestrateを使ってみた(Part2) 目次 はじめに ADKとは? ADK使ってみた さいごに お問い合わせ はじめに Think2025で発表された新機能は、6月に環境へ追加されました。それ以前の環境とは、メニュー構成や操作方法、機能名称に変更があります。 例えばこれまで「Skill」と呼ばれていたものが「Tool」へと名称変更されています。 アップデート後の環境につきましては、別ブログにて改めて詳しくご紹介させていただく予定ですので、ぜひご期待ください! ADKとは? まずはADKについてご紹介します。ADKとは開発者向けにwatsonx OrchestrateのAgentやToolをスクラッチ開発するための開発キットになります。ローカル端末などに導入し、pythonベースで開発を行うことができます。 また、ADKとは別に、watsonx Orchestrate Developer Editionをローカル端末に導入することで、ADKで開発したAgentやToolのテストが可能になります。なお、watsonx Orchestrate Developer EditionはDockerコンテナ上で動作し、現時点のハードウェア要件はCPUは最小8コア、メモリは最小16GBが必要です。詳細はInstalling the watsonx Orchestrate Developer Editionをご確認ください。   ADKとwatsonx Orchestrate Developer Editionを利用することで、コードの迅速な作成・修正や柔軟なカスタマイズに加え、環境へのデプロイ前にローカルでテスト・修正が可能となり、作業効率の向上が期待できます。 ADK使ってみた 前述ではADKでAgent開発し、watsonx Orchestrate Developer Editionで動作確認、SaaS watsonx Orchestrateへインポートする構築の流れをお話しましたが、今回の検証における動作確認は検証環境として利用しているIBM Cloud 上のwatsonx Orchestrate利用します。よって前述したwatsonx Orchestrate Developer Editionは利用せず、ADKからwatsonx Orchestrate検証環境へAgentとToolを直接インポートし、動作確認を行いたいと思います。また、ADKのインストール先は自分の端末ではなく、IBM Cloud上に構築したUbuntuのVirtual Server Instance(以下、VSI)を使用します。検証環境の構成イメージは下記の図の通りです。 尚、ADKのインストール要件はPython 3.11以上、Pip、そして仮想環境(以下venv)が必要です。詳細については、Getting started with the ADKをご確認ください。 それでは早速使ってみましょう! VSIのプロビジョニング まずはADKをインストールするVSIをプロビジョニングします。本ブログではプロビジョニング方法について詳しく記載いたしませんが、手順は「【てくさぽBLOG】IBM Power Virtual ServerのAIX環境とIBM Cloud Object Storageを接続してみた(Part1)」のVSI for VPCの作成をご参考ください。 OSはUbuntu 22.04 LTS Jammy Jellyfish Minimal Install、リソースは2vCPU,4GB RAMで作成しました。VSI作成時にSSH鍵が必要なるので作成を忘れないようにしてください。 作成すると数分で起動します。端末からSSHログインするため浮動IPが必要になります。赤枠で囲った浮動IPを作成しインスタンスに紐づけします。以上でVSIの作成は完了です。 Ubuntuの設定 ターミナルを開きsshでUbuntuにログインします。私はWindowsのコマンドプロンプトを使用しました。Ubuntuユーザでログイン後、rootパスワードを設定し、スイッチできるようにします。 ubuntu@nicptestvsi:~$ sudo passwd root New password: Retype new password: passwd: password updated successfully ubuntu@nicptestvsi:~$ su - pythonのバージョンを確認したところ3.10.12でした。ADKの要件は3.11以上ですので、バージョンアップが必要になります。最初は3.13にバージョンアップしてみたのですが、後続作業と最新バージョンではパッケージが合わなかったのかうまく動かず…仕切り直して3.11を利用することにしました! root@nicptestvsi:~# apt install python3.11 バージョンアップ後、デフォルトバージョンとして3.11を指定します。 root@nicptestvsi:~# sudo update-alternatives --install /usr/bin/python3 python3 /usr/bin/python3.10 1 sudo update-alternatives --install /usr/bin/python3 python3 /usr/bin/python3.11 2 sudo update-alternatives --config python3 update-alternatives: using /usr/bin/python3.10 to provide /usr/bin/python3 (python3) in auto mode update-alternatives: using /usr/bin/python3.11 to provide /usr/bin/python3 (python3) in auto mode There are 2 choices for the alternative python3 (providing /usr/bin/python3).Selection Path Priority Status ------------------------------------------------------------ * 0 /usr/bin/python3.11 2 auto mode 1 /usr/bin/python3.10 1 manual mode 2 /usr/bin/python3.11 2 manual modePress <enter> to keep the current choice[*], or type selection number: 2 root@nicptestvsi:~# root@nicptestvsi:~# python3 --version Python 3.11.13 次に下記コマンドを実行して任意のvenvを作成します。 python3 -m venv /path/to/nicpse/project/your-venv-adktest <環境のパスを指定 venvを活性化してログインします。下記コマンド結果のようにvenvに入れましたらUbuntuの設定は完了です。 root@nicptestvsi:~# source /path/to/nicpse/project/your-venv-adktest/bin/activate (your-venv-adktest) root@nicptestvsi:~# ADKのインストール 以下コマンドを実行してADKをインストールします。ADKは6月時点で1.5.1が最新バージョンです。 (your-venv-adktest) root@nicptestvsi:~# pip install ibm-watsonx-orchestrate Collecting ibm-watsonx-orchestrate Downloading ibm_watsonx_orchestrate-1.5.1-py3-none-any.whl.metadata (1.4 kB) Collecting certifi>=2024.8.30 (from ibm-watsonx-orchestrate) Downloading certifi-2025.6.15-py3-none-any.whl.metadata (2.4 kB) Collecting click<8.2.0,>=8.0.0 (from ibm-watsonx-orchestrate) Downloading click-8.1.8-py3-none-any.whl.metadata (2.3 kB) Collecting docstring-parser<1.0,>=0.16 (from ibm-watsonx-orchestrate) Downloading docstring_parser-0.16-py3-none-any.whl.metadata (3.0 kB) Collecting httpx<1.0.0,>=0.28.1 (from ibm-watsonx-orchestrate) Downloading httpx-0.28.1-py3-none-any.whl.metadata (7.1 kB) ----中略---- (your-venv-adktest) root@nicptestvsi:~# orchestrate --version ADK Version: 1.5.1 ADKの環境設定 次にADKの環境設定を行います。watsonx OrchestrateのインスタンスIDが必要になるため、watsonx OrchestrateのSetting画面に入り確認します。下記画面をご参考にしてください。 環境設定コマンドはこちらになります。-nの後はvenv名を指定し、-uの後はインスタンスIDを指定します。 (your-venv-adktest) root@nicptestvsi:~# orchestrate env add -n <仮想環境名> -u <環境のインスタンスID> [INFO] - Environment 'my-name' has been created [INFO] - Existing environment with name 'nicpse' found. Would you like to update the environment 'nicpse'? (Y/n)y [INFO] - Environment 'nicpse' has been created 以下コマンドを実行して、IBM Cloud上のwatsonx Orchestrateと認証設定をします。APIキーの取得方法は「【てくさぽBLOG】IBM watsonx.aiを使ってみた(Part2)」のAPIキーの取得をご確認ください。尚、リモート環境に対する認証は2時間ごとに期限切れになります。期限が切れた場合は再度認証する必要があります。 (your-venv-adktest) root@nicptestvsi:~# orchestrate env activate nicpse --apikey <APIキー> [INFO] - Environment 'my-ibmcloud-saas-account' is now active [INFO] - Environment 'nicpse' is now active 下記コマンドを実行してCLIから利用できる環境のリストを表示します。IBM Cloud上のwatsonx Orchestrateがactiveとなっていました! (your-venv-adktest) root@nicptestvsi:~# orchestrate env list nicpse https://api.us-south.watson-orchestrate.cloud.ibm.com/instances/XXXXXXXX (active) local http://localhost:XXXX Toolとagentのインポート 次にToolとAgentのインポートを行います。ToolとはAgentがタスクを実行する際に利用する機能です。今回は、IBM様より共有いただいたyfinanceを活用したToolおよびAgentのコードを、ADKを用いてインポートします。なお、yfinanceはヤフーファイナンスから株価などの金融データを取得するためのPythonライブラリです。 最初にToolのインポートを行います。下記の様に、scpなどでToolファイルとrequirements.txtをディレクトリにアップロードしておきます。requirementsファイルは他のモジュールと依存関係がある場合使用します。 (your-venv-adktest) root@nicptestvsi:~/orchestrate_tool/py/source_02# ls -l total 12 -rw-r--r-- 1 root root 0 Jun 24 04:42 __init__.py drwxr-xr-x 2 root root 4096 Jun 24 04:38 __pycache__ -rw-rw-r-- 1 ubuntu ubuntu 8 Jun 24 03:02 requirements.txt -rw-rw-r-- 1 ubuntu ubuntu 1778 Jun 24 02:46 yfinance_agent.py 下記コマンドを実行してToolファイルとrequirementsファイルをインポートします。企業情報を取得するstock_infoと株価を取得するstock_quoteの2つのToolがインポートされました。 (your-venv-adktest) root@nicptestvsi:~/orchestrate_tool/py/source_02# orchestrate tools import -k python -f "./yfinance_agent.py" -r "./requirements.txt" [INFO] - Using requirement file: "./requirements.txt" [INFO] - Tool 'stock_info' imported successfully [INFO] - Tool 'stock_quote' imported successfully listコマンドを実行するとインポートされたToolを確認できます。 (your-venv-adktest) root@nicptestvsi:# orchestrate tools list ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┳━━━━┳ ┃ Name ┃ Description ┃ Permission ┃ Type ┃ Toolkit ┃ App ID ┃ ┡━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╇━━━━╇ │───────────┼────────────┼── │ send_mail_brevo │ send a meil using Brevo. │ write_only │ python │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ ├─────────────────────────────────┼──── │ stock_quote │ 企業のTickerSymbolを用いて株価… │ read_only │ python │ │ │ ├─────────────────────────────────┼──── │ Untitled_6160RC │ No description │ read_only │ openapi │ │ │ ├─────────────────────────────────┼──── │ stock_info │ 企業のTickerSymbolを用いて企業… │ read_only │ python │ │ │ └─────────────────────────────────┴──── 次にAgentをインポートします。下記コマンドを実行します。 (your-venv-adktest) root@nicptestvsi:~/orchestrate_tool/py/source_02# orchestrate agents import -f ./yfinance_agent.yaml agent listコマンドでインポート済みのAgentを確認できました。Agentが使用するToolも表示されています。 (your-venv-adktest) # orchestrate agents list ┏━━━━━━━━━━━━━━━┳━━━━━━━━━━━━━━━┳━━━━━━━━ ┃ Name ┃ Description ┃ LLM ┃ Style ┃ Collaborators ┃ Tools ┃ Knowledge Base ┃  ┡━━━━━━━━━━━━━━━╇━━━━━━━━━━━━━━━╇━━━━━━━━ │ yfinance_age… │ 企業の会社情… │ watsonx/meta- │ react │ │ stock_info, │ │ │ │ │ llama/llama-3 │ │ │ stock_quote │ │ ││ │ │ -2-90b-vision ││ │ -instruct │ │  IBM Cloud上のwatsonx Orchestrateで動作確認 インポートしたAgentとToolをIBM Cloud上のwatsonx Orchestrateで確認します。 watsonx Orchestrateへログインし、BuildからAgent Builderを選択します。 yfinanceエージェントが表示されているので、クリックします。 クリックすると、Agent作成画面に入ります。UIから基盤モデルを変更したり、Agentの振る舞いなど変更することができます。 スクロールして、Toolsetを確認するとADKからインポートしたToolが登録されています。 右のPreviewからAgentの動きを確認することができます。今回はDeployせずPreviewで確認します。入力欄には「IBMの株価は?」と質問してみます。しばらくすると本日の株価が回答されました。Show Reasoningを開くと推論過程を確認することができます。株価を取得するTool「stock_quote」を使用し、AIがユーザの入力から自動的にTicker symbolを入力していることがわかります。 次に「IBMの企業情報」と質問をします。しばらくするとAIがユーザの入力からTicker symbolを入力し、Tool「stock_info」を利用して企業情報を取得、回答されました。ユーザの入力内容からAgentが使用するToolを選択し、実行していることがわかります。   さいごに ADKのご紹介とADKを使ってToolとAgentのインポートを行いました。 ADKのインストールおよび設定について、Pythonバージョンの設定やvenvの作成でつまずく部分はありましたが、venvが作成できればその後の設定はスムーズに進められました。 今回はVSI上のUbuntuサーバにADKをインストールしましたが、ご自身の端末に導入することで、より気軽にAgent開発を行えるかと思います。なお、今回は検証対象外でしたが、watsonx Orchestrate Developer Editionを利用する場合は、インストール要件としてやや高めのスペックが必要になる点にご注意ください。 検証時のADKのバージョンは1.5.1でしたが、7月末では1.8.0が最新バージョンとなっています。比較的頻繁にアップデートされますので適宜Release Notesをご確認ください。バージョンアップでコマンドオプションも変更される場合があるため、マニュアルを確認するかコマンドに`--help`を付与してパラメータを確認することをおすすめします。   お問い合わせ この記事に関するご質問は以下の宛先までご連絡ください。 エヌアイシー・パートナーズ株式会社 技術企画本部 E-mail:nicp_support@NIandC.co.jp   .anchor{ display: block; margin-top:-20px; padding-top:40px; }

2025年07月11日

【参加レポート】Domino Hub 2025

公開日:2025-07-11 みなさまこんにちは。ソリューション企画部 松田です。 2025年6月19日・20日と2日間に渡って開催された「Domino Hub 2025」に参加しました。これは HCL Ambassador有志が企画・実行する Dominoコミュニティイベントです。去年に続き、今回が3回目の開催となります。 昨年同様、今回もエヌアイシー・パートナーズはスポンサーとしてご支援させていただき、両日参加いたしました。そのレポートをお送りします。 目次 イベント概要 セッション内容 - Domino 14.5 リリース 特徴的機能とライセンス改定 -ロードマップ -お客様事例:曽根田工業様 最後に 関連情報 お問い合わせ イベント概要 「Domino Hub」は、HCL Ambassadorが主宰となり、Dominoの利用者、開発者、ソリューションベンダーが一堂に会するコミュニティイベントです。今回は1日目がオンライン、2日目はオンサイトのみの開催でした。 特に2日目は参加率が非常に高かったとのことで、会場も大変盛況でした。結婚式場としても使われている今回の会場は、中庭から陽の光が差し込み、解放感があるラグジュアリーな空間で、一般的なビジネスミーティングよりも上質な雰囲気が感じられました。 併せて展示ブースも設置され、Dominoアプリケーションがスマートフォンやブラウザで使えるようになる「HCL Nomad」などのHCL製品とともに、様々なビジネスパートナー様の多彩な関連製品が数多く展示・紹介されていました。 セッション内容 2日間で全22セッションが行われました。セッションはHCLをはじめ、HCL Ambassadorから、様々な開発ベンダー、製品ベンダー、エンドユーザーからの事例紹介などのセッション、そしてパネルディスカッションがありました。まずHCLからのセッション内でのトピックをお伝えします。機能のみならずライセンスまわりで大きなニュースもありました。 Domino 14.5 リリース 特徴的機能とライセンス改定 Domino Hubの2日前、2025年6月17日にリリースされました。 Domino IQ 特徴的な機能で最も注目すべき、今回もご説明に時間を割かれていたのが「Domino IQ」です。 一言で言えば「Domino内にローカルでLLMを持たせ、蓄積されてきたDominoアプリ内の情報も取り込み、セキュアな環境で生成AIを用いた業務を実現する」ものです。 企業内業務で生成AIをどのように実装し利用していくかは今、皆様の大きな関心事項であられると思います。自社のDomino環境内で、Dominoアプリケーションを用い、Notesクライアントからそれが実現できることになります。 (画像クリックで拡大) Nomad for Web COM対応 またNomad for WebがCOMに対応したことにより、これまではNotesクライアントだけでしかできなかったExcelやPowerPointを埋め込んだDiminoアプリもブラウザから利用できるようになりました。 ライセンスダッシュボード:DLAUの統合 これまでGitHubからダウンロードしてセットアップしていたDomino License Analysis Utility (DLAU)がDomino内にデフォルトで統合され、The Domino License Administration (DLA) となりました。 (画像クリックで拡大) ライセンス改定 そしてライセンスにも大きなベネフィットが付加されました。CCB Termライセンスにはこれまで「Domino Leapで5アプリケーションまで開発・利用が可能」という権利が含まれていましたが、2025年7月1日からその制限がなくなりました。すなわち「2025年7月1日以後有効なCCB Termライセンスをお持ちのお客様は、Domino Leapのフル機能が利用できる」となります。 同時に、Domino Leapライセンスの利用範囲であるHCL Enterprise Integrator(HEI)の利用権利も含まれます。これでCCB Termライセンスのみで、追加費用なく「ブラウザによるノーコード/ローコード開発」「基幹業務とDominoアプリケーションの連携」が可能になります。 さらにCCB Termで利用できるSametime Chatで添付ファイルと画像添付も可能になりました。 ロードマップ Domino、Notes、Verse、Nomadなど各ソリューションについてのロードマップも紹介されました。先々の計画は出てこないものですが、このようにHCLから明確に提示されることにより、Dominoをお使いのお客様はこれからも安心して利用を継続していただけると思います。 Dominoのロードマップ(画像クリックで拡大) Notesのロードマップ(画像クリックで拡大) Nomad, VerseといったエンドユーザーのUI部分が短期間でバージョンアップされていく。(画像クリックで拡大) お客様事例:曽根田工業 様 Dominoユーザーの有限会社曽根田工業 代表取締役 曽根田 直樹 様より、Domino事例のご講演がありました。曽根田様は2001年に静岡県磐田市で個人で起業され、切削機械の刃物を製造されています。曽根田様のお話で非常に興味深かった部分を抜粋致します。 "独立・起業するにあたり、前職で使っていたNotes/Dominoを自社でも使うことにした。現在は大手メーカーからの発注依頼や過去に作った品番の再発注など数多く受けており、当時のCAD/CAMのデータや販売管理データなどをDominoに入れて運用している。 オンプレミス環境のリスクやセキュリティ、IT技術のトレンドに合わせてクラウド化を検討した場合、Dominoからは離れたほうがいいのではないか?と思い、他社SaaS製品も検討しトライアルで利用登録をした。 しばらく触れずにいたところ、アカウント情報に登録していた支払い口座から利用料の引き落としがされていなかったためアカウントが凍結、さらに保存していたデータも突然消去されてしまっていた。支払いが滞っただけで中身まで削除されてしまうようなシステムには会社の大事な資産であるデータを載せられないので、「Dominoを『やめることを止める』判断」をした。" Dominoから他製品への移行を検討され断念されるお客様は多く、その理由は「Dominoの業務アプリケーションを、サービス内容を落とさずに別プラットフォームに移行することがはなはだ困難である」ということをよくお聞きしますが、この点にも意外な理由が潜んでいました。 最後に 初の2年連続開催となった今年のDominoHubは、コミュニティの力を象徴するかのような盛り上がりを見せました。14.5のリリース、生成AIの実装、ライセンス強化など、今後のDominoの発展を確信させる要素が数多く披露されたほか、実際のユーザー事例も非常に示唆に富むものでした。加えてロードマップの提示による未来への安心感も得られました。 DominoHubは単なる情報共有の場に留まらず、技術、コミュニティ、そしてビジネスの未来を交差させる特別な場となっています。これからもこのような取り組みが継続していき、多くのDominoユーザー、デベロッパー、そして販売パートナーが更なる価値を引き出していけることを楽しみにしています。これからもDominoと私たちの未来を築いていきましょう。 関連情報 「Domino Hub」大阪開催 Domino Hubは、2025年9月18日に大阪でのオンサイト開催が決定致しました。詳細およびお申し込みについては、こちらのリンクからご確認ください。 お問い合わせ エヌアイシー・パートナーズ株式会社E-mail:voice_partners@niandc.co.jp   .highlighter { background: linear-gradient(transparent 50%, #ffff52 90% 90%, transparent 90%); } .anchor{ display: block; margin-top:-20px; padding-top:40px; } .btn_A{ height:30px; } .btn_A a{ display:block; width:100%; height:100%; text-decoration: none; background:#eb6100; text-align:center; border:1px solid #FFFFFF; color:#FFFFFF; font-size:16px; border-radius:50px; -webkit-border-radius:50px; -moz-border-radius:50px; box-shadow:0px 0px 0px 4px #eb6100; transition: all 0.5s ease; } .btn_A a:hover{ background:#f56500; color:#999999; margin-left:0px; margin-top:0px; box-shadow:0px 0px 0px 4px #f56500; } .bigger { font-size: larger; } figcaption { color: #7c7f78; font-size: smaller; }

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