2013年12月

03

実際どうでしょう Vol.10「IT業界で25年継承される設計思想とは?」

普段の製品・ソリューション紹介だけでは聞き出せない情報を「実際のところはどうなんだろう?」という素人視点で、専門家に聞いてみるシリーズです。

題して「実際どうでしょう」。。。どうぞ、ご覧ください。

今回は、以前動画撮影にご協力いただいたエバンジェリストの安井様にインタビューをさせていただきました。

<聞いてみて良かった(*´ω`*) メリひろ担当がエキスパートにインタビュー>

yasui-san

安井様は、大学の教壇でも活躍されており、1話では完結しないぐらいさまざまな引き出しをもっておられました。

プロフィール:日本アイ・ビー・エム株式会社 安井賢克 さん

IBM システムズ & テクノロジー・エバンジェリスト

日本アイ・ビー・エムに入社。当初は、旧藤沢事業所で生産管理に従事する。

その後、AS400の初期メンバーに参画し、2008年からPower Systemsのエバンジェリストとして活躍中。

新しいことをするのが好き。

「ビジネス用のコンピュータとは何か」を大学生に興味をもってもらおうと、大学の教壇に立ち、意欲的に活動をしている。

※2013年11月時点のプロフィールです。

大学での講義が実際のビジネスに役立っている

— 今回は、インタビューにご協力いただきありがとうございます。(インタビューアー:重山)

※以前は、「IBM i for Business Intelligence」という内容で動画撮影いただきました。

安井:動画の撮影も緊張しますが、インタビューも緊張しますね。

— インタビューでは、あらかじめ参考にいただいている資料を元に会話を膨らましていますので、気楽にお願いします。
まず、IBM iと急に入っても固くなってしまうので安井さんのプロフィールを教えてください。社会人当初より日本IBMにいらっしゃるのですか。

安井:はい。大学卒業後これまでずっと日本IBMで働いてきました。当初は、旧藤沢事業所で、生産管理に従事し、ジョブ・ローテーションの際に、AS/400の初期メンバーに参画しました。

その後、2008年からPower Systemsのエバンジェリストを担当しています。エバンジェリストという制度が始まったのも、ちょうどこの時期でエバンジェリストの中では1番の古株です。(笑)
また最近では、“アカデミック・イニシアティブ”というプログラムがあり、大学で講義をしたりしています。

— そのような制度があるのですね。大学ではどのような内容を教えているのですか。

安井:大学では、「ビジネス用のコンピュータとは何か」を理解してもらうのを目的にした授業を受け持っています。学生は日頃からPCやスマホには触れているが、社会人になると今までとは違うシステムに触れるので、その際にすぐに適応できる人材の育成を意識しているようです。

ビジネス用のコンピュータという意味では、その現場にいるということから、私に白羽の矢がたちました。当初はIBM iに早い段階で触ってもらおうとも思いましたが、製品機能を習得するよりも、ビジネス用のコンピュータの特徴とかあり方に興味を持ち理解してもらうことに主眼を置いています。

講座タイトルに「ビジネス」とあって、ちょうど就職活動を意識する学年を主な対象にしていることから、毎年100名を超える履修希望者がおり、手前味噌ではありますが人気講義の一つだと言っても良いかも知れません。(笑)

また、他の大学院で社会人にも教えていますが、少人数ではあっても社会人が自ら時間とお金を投資しているわけですから皆さん積極的で、質問やツッコミ何でもありの、雑談のような議論のような授業の進め方をしています。

ただカバーしなければならないポイントはありますので、それなりに時間調整には苦労しますが。

— 私は大学時代、情報系ではなかったので、その講義には興味があります。
大学の講義とエバンジェリストとしての2足のわらじは大変なイメージですが・・・

安井:よく大変でしょ?と言われますが、私もこれらの活動を通じて多くを学んでいます。

大学生はIBM i , System zやIBMのビジョンに無関係に生活している人たちです。例えば、以前「スマータープラネット」を学生に説明する機会がありましたが、学生にわかりやすい言葉や表現に希釈するため、それなりの手間隙をかけた事前の準備が欠かせません。

この時間は、私にとって良い学びとなり、その後の仕事でお客様とのコミュニケーションにおいても応用することができ、大学での講義は実はビジネスにも役立っています。

— では、大学生の立場にたって、質問させていただきます。(笑)
いただいた資料に「25年間継続されている設計思想」とありますが、ちょうど私が生まれたのと同時期ですね。それが今でも受け継がれているって、何だか感慨深いです。

安井:重山さん、若いですね。その設計思想に関しては、ご説明させていただきますね。

interview_ibmi_01

 

仮想化環境においても変わらない IBM i の価値

25年間継続されている設計思想

 

安井:変わらない設計思想とありますが、変わるものと変わらないものがあります。

— 奥が深そうですね。詳しく教えて下さい。

安井:はい。なるべくわかりやすくご説明させていただきます。

まず、IBM i は、フランク・ソルティスという技術者が設計したのですが、ソルティスは、“究極のビジネスコンピュータを作ろう”という思想のもと、テクノロジーやビジネスだけではなく哲学レベルで考えました。

その設計思想で変わらないものとして、下記の4点を代表的なものとしてあげることができます。

  1. アプリケーション資産継承
  2. 必要機能一式を統合
  3. 誤動作を防ぎセキュリティー向上
  4. パフォーマンス追求、ディスク管理の手間削減

まず、1点目「アプリケーション資産継承」です。
アプリケーションはテクノロジーの進化によって影響を受けやすいのですが、テクノロジーはどんどん進化しても、ビジネスは必ずしもそれと同期して変わるとは限りません。

ビジネス・プロセスとかそれを支えるアプリケーションの変更は、全く別の視点から行なわれるはずです。

そこで、テクノロジーとビジネスとを切り離すための両者間のクッションとして機能する、仮想的なマシンとでも呼ぶべき階層:
TIMI(Technology Independent Machine Interface)を導入する事を考えました。

これによって例えばプロセッサーのビット数が上がるといったような、土台になるテクノロジーの変更があったとしても、ユーザはアプリケーションの修正やリコンパイルをせずにそのまま利用することができます。

— PCでは32Bitから64Bitになると動かなくなるアプリがありますので、レベルが違うかも知れませんが、すごいなと思ってしまいます。

安井:ユーザから長く愛されているのはこの思想が貢献していると思います。

2点目は「必要機能一式を統合」です。
IBM iは今でこそ大きな拡張性を持っていますが、元々は中堅・中小のお客様をターゲットに開発されたシステムでした。そのようなお客様は必ずしも多くのシステム要員を抱えていませんから、導入後に「すぐに使える」というのはビジネスでは大事なポイントです。

また、サーバーとして求められる機能一式が、最初から製品の中に含まれていますから、万が一トラブルに見舞われたとしても、お客様はどのベンダーのどのモジュールに問題があるのかを、切り分けるために悩む必要がありません。

—  スマホで言うとアップルのiPhoneのように製品のトータルの完成度を維持できる仕組みが品質やサポートに良い影響を与えるのですね。AS/400ユーザの安心感はこの“統合“が効いているのですね。

安井:そうですね、3点目が「誤動作を防ぎセキュリティー向上」です。

データにはすべて意味があります。それをコンピュータにも認識させることを思想として取り入れました。
例えば、データに「商品番号」と「価格」があるとします。消費税の計算をする場合に、価格ではなく商品番号の方に消費税をかける演算は人間ならしないですよね。

聞くと当たり前ですが、コンピュータにとって、文字列、数値はどちらも単なる0と1の並びにすぎず、データの意味は理解できません。データには意味があるとしてその属性を明確にし、実行できる演算内容(メソッド)をそこに紐付けるような仕組みを採用しました。

これは今で言うところの「オブジェクト指向」の考え方ですが、そのような言葉さえなかった時代にすでにこの考えを採用していました。

—  データに意味を持たせることによって、誤作動を減らすという発想はなかなか思いつかない気がします。

安井:ビジネス用のコンピュータなので、経理、経営など、複数の部門が一台の上で同時に複数アプリケーションを動かすことになるので、この思想は重要です。

最後、4点目は「パフォーマンス追求」です。

近代のマシンにおいては、CPUの動作サイクルはナノ(10のマイナス9乗)セカンド以下、HDDはミリ(10のマイナス3乗)セカンド台のレスポンスです。

HDDはシステムの中ですごく遅いのです。最近になってSSDなどが普及してきましたが、当時はこのHDDに頼らないシステムを考えたのです。

つまり、できるだけメモリだけでアプリケーションを動かそう、それを効果的に行なうためにもHDDとメモリの区分けをなくそうという設計です。そしてこらら4つの点は、実際はAS/400の前身であるSystem/38からの思想なので、35年前からになりますね。

— うーん、すごいです。ここまでの設計思想を伺っていると、ハードウェア中心の考えではないのですね。

安井:その通りです。「マシン」の定義はハードウェアではなく、ソフトウェア的に構成されたマシンと考えたのです。

システム全体をこのように考えて作り上げられたマシンは、商用システムとしては他に例を見た事がありません。

—  本当に勉強になります。まだ、インタビューのスタートのつもりで「設計思想」をお伺いしたら、これほど深く、マシンとユーザについて考えられていたので感動しました。例えとして適切かどうかわかりませんが、「ロボット(工学)三原則」を聞いた時のように、最小限で完璧な組み合わせの思想だと思いました。

私自身はIBM i を使ったことは無いのですが、よく「とにかく壊れない、止まらない」と聞いていたので、ハードウェアとしての堅牢性が高いイメージを持っていましたが、それだけではなかったのですね。

安井:はい。IBM iには、もっと沢山の技術が盛り込まれており、進化し続けています。そして、どのような技術なのかという点に目が行き勝ちですが、設計者のソルティス博士もその著書の中で言っているように、どうしてその技術が実装されたのか? という根っこのところを理解する事も大事なのだと思います。

—  安井さんの講義を受けた学生も社会人になって、すごく助かっていると思いますよ。

安井:そうあってほしいです。(笑)

このように学生への講義でもマシンの歴史を話しているのですが、製品が世の中で長く使われる、市場で信頼を得るには「アプリケーション資産継承」が一番重要なのは揺らがないと思います。

—  次のテーマとして、「IBM iの運用コストの優位点」と「IBM iの今後」についてお伺いしていと思います。

両テーマとも、ここまでの設計思想を聞いておくと、その延長上の話としてわかりやすくなりそうです。

次回に続く

Vol.13 IT業界で25年継承される設計思想とは? その2

編集後記

私は社内のインフラを管理する仕事にも携わっており、アプリケーションの資産継承の重要性を少しは理解しているつもりですが、ハード新調やOSのバージョンが変わってもアプリはそのまま使えるというのは、対費用効果の面でインパクトがあると思いました。

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2024年04月08日

【てくさぽBLOG】watsonx Assistant + Watson Discovery + watsonx.aiを連携してみた

こんにちは。てくさぽBLOGメンバーの高村です。 ビジネスへの生成AI の取り込みに注目が集まっている今日、watsonx.ai をどう活用すればいいのか、多くのお客様からお問い合わせ頂いています。そこで前回の「【てくさぽBLOG】IBM watsonx.aiを使ってみた(Part2)」では、watsonx.ai のユースケースとして Retrieval-Augmented Generation(以下 RAG)をご紹介しました。 今回は、RAG の仕組みを利用し AIチャットボットを提供する「watsonx Assistant(以下 Assistant)」と検索エンジン機能を提供する「Watson Discovery(以下 Discovery)」、「watsonx.ai」を組み合わせた連携ソリューションをご紹介します。 目次 AssistantとDiscoveryの連携 watsonx.aiを取り入れた連携 Assistant + Discovery + watsonx.aiを連携してみた さいごに お問い合わせ AssistantとDiscoveryの連携 本来なら各製品を一つのブログで詳しくご説明したいところですが、今回は連携した結果についてのご紹介となりますので、Assistant と Discovery については今後のブログであらためてご紹介したいと思います。 Assistant は watsonx の大規模言語モデルが搭載され、自然言語の問い合わせを理解し、適切な回答を返すことができるチャットボット機能を提供する製品です。一方 Discovery はドキュメントから適切な情報を検索する検索エンジン機能、パターンや傾向を読み取る分析エンジンとしての機能を備えた製品です。 Assistant と Discovery を組合わせたユースケースでは Assistant にあらかじめ回答を用意してルールベースで回答させ、答えることが難しい問い合わせに対しては Discovery の検索結果を利用して回答します。 watsonx.aiを取り入れた連携 上記の連携では Discovery の検索結果がユーザーに表示される仕組みとなっていますが、watsonx.ai を介して回答を提供することでDiscovery が得た検索結果をさらに整理し、より理解しやすい形での返答が実現できます。 Assistant + Discovery + watsonx.aiを連携してみた Assistant、Discovery、watsonx.ai を連携してみます。 事前準備 利用環境 今回は IBM Cloud で提供される SaaS を利用して検証します。なお、Assistant と Discovery の Plusプランは30日間無償期間が付属されていますので、是非ご活用ください。 watsonx Assistant:Plusプラン(30日間無償期間あり、以降は有償) Watson Discovery:Plusプラン(30日間無償期間あり、以降は有償) watsonx.ai:Essentialプラン(有償) 検証の目的 検証では構築手順の他、以下の点を確認します。 「Assistant + Discovery + watsonx.ai」と「Assistant + Discovery」の連携による回答の違いを比較 言語モデルを変えて問い合わせを行い、回答の違いの比較 実施手順 以下の流れで検証を実施します。 Assistantのプロビジョニング Discoveryのプロビジョニング、検索対象とするデータの取り込み※取り込むデータは「IBM Power S1014 データシート」のS1014のPDF watsonx.aiのプロビジョニング Assistantの初期設定 Assistantのカスタム拡張機能からDiscoveryを繋げる Assistantのカスタム拡張機能からwatsonx.aiを繋げる Assistantアクションの作成、問い合わせの検証 言語モデルを変えて問い合わせの検証 検証実施 1. Assistantのプロビジョニング はじめに Assistant のプロビジョニングを行います。 IBM Cloud にログインし、カタログ画面から "Assistant" を選択します。 ロケーションとプランを選択し「作成」をクリックします。 しばらくすると以下の画面の様に、Assistant がプロビジョニングされます。 2. Discoveryのプロビジョニング 次に Discovery をプロビジョニングします。 カタログ画面から "Discovery" を選択します。 ロケーションとプランを選択し「作成」をクリックします。 しばらくすると以下の画面の様に、Discovery がプロビジョニングされます。※ここで、資格情報内にある「API鍵」と「URL」をメモに控えます 「Watson Discoveryの起動」をクリックし「New Project +」をクリックします。 Project name に任意の名前を入力、Project type では「Conversational Serch」を選択し「Next」をクリックします。 作成されたプロジェクトをクリックします。 「Integration Deploy」をクリックします。 「API Information」タブをクリックし「Project ID」をメモに控えます。 次に検索対象の PDF を Discovery に取り込みます。 「Manage collections」から「New collection +」をクリックし、「Collection name」に任意の名前を入力、「Select language」を「Japanese」に設定します。 Upload files の領域に PDF をドラッグアンドドロップして「Finish」をクリックします。 アップロードが完了しました。次に、Smart Document Understanding機能(以下 SDU)を利用して PDF内のヘッダーやテキストなどのフィールドを定義します。 SDU は、PDFをはじめとする非構造化データの文書構造を理解して検索や分析の精度を向上させる機能です。例えばタイトルと定義した箇所を検索キーとしたり、検索対象をテキストと定義した箇所のみとするなど可能になります。 「Identify Field」タブをクリックします。 取り込んだ PDF が表示されるので右側の Field labels からヘッダー箇所やタイトル箇所などをドラッグアンドドロップして指定していきます。 ページの定義が終わったら「Submit page」をクリックして次の頁を定義していきます。 SDU では数ページ指定すると自動的にヘッダー箇所やテキスト箇所を認識してくれるので、何ページもあるドキュメントには便利な機能です。 今回は SDU を使って PDF の文書構造を定義しました。SDU以外の Discovery の機能については、また別の機会にご紹介したいと思います。 3. watsonx.aiのプロビジョニング ※watsonx.ai のプロビジョニング方法は「【てくさぽBLOG】IBM watsonx.aiを使ってみた(Part1)」をご参照ください。 4. Assistantの初期設定 Assistant の初期設定を行います。 Assistant を起動します。 起動後、以下の項目を入力します。 Assistant name:任意の名前を入力 Assistant Language:「English」を選択※日本語を選択することが可能ですが、Assistant のスターターキットは英語での利用を想定しているため今回はEinglishを選択します Assistant の公開先を「web」に設定します。※"Tell us about your self" 以降はご自身の情報を入力ください 入力後「Next」をクリックします。 デフォルトのチャットUI を利用するため「Next」をクリックします。 プレビュー画面が表示されるので「Create」をクリックします。(以下の画面は「Create」が隠れてしまっています) 「Congratulations!」と表示されたら初期設定は完了です。 5. Assistantのカスタム拡張機能からDiscoveryを繋げる 「Githubのassistant-toolkit」から "watson-discovery-query-openapi.jsonファイル" をダウンロードします。 Assistant のメニューから「Integration」をクリックします。 下にスクロールし「Build custom extension」をクリックします。 以下の画面が表示されるので「Next」をクリックします。 「Extension name」に任意の名前を入力し「Next」をクリックします。 先程ダウンロードした watson-discovery-query-openapi.jsonファイルをドラッグアンドドロップでアップロードします。 以下の画面が表示されるので「Finish」をクリックします。 追加した Extension の「Add +」をクリックします。 以下の画面が表示されるので「Next」をクリックします。 以下の画面が表示されるので、選択および入力します。 Authentication type:「Basic auth」を選択 Username:「apikey」と入力 Password:メモに控えたWatson DiscoveryのAPI鍵 discovery_url:メモに控えたWatson DiscoveryのURLから"http://"を除いた値 ※以下の画面ショットは discovery_url入力箇所が切れてしまっていますが、実際は「Servers」の下に discovery_url の項目があります 以下の画面が表示されるので「Finish」をクリックします。 Extension が「Open」となっていることを確認します。 これで watsonx Assistant と Watson Discovery が連携できました。 6. Assistantのカスタム拡張機能からwatsonx.aiを繋げる 次に、Assistant のカスタム拡張機能から watsonx.ai を利用できるように設定します。 設定には IBM Cloud の APIキーと watsonx.ai のプロジェクトID が必要です。取得方法は「【てくさぽBLOG】IBM watsonx.aiを使ってみた(Part2)」をご参照ください。なお、今回は東京リージョンで watsonx.ai をプロビジョニングします。 Github の「assistant-toolkit」から "watsonx-openapi.json" をダウンロードします。 Visual Studio Code などで東京リージョンの URL に編集し保存します。 Discovery の連携と同様に、Assistant のメニューから「Integration」「Build custom extension」をクリックします。 以下の画面が表示されるので、任意の Extension name を入力して「Next」をクリックします。 編集した watson-discovery-query-openapi.jsonファイルをドラッグアンドドロップでアップロードして「Next」をクリックします。 以下の画面が表示されるので「Finish」をクリックします。 追加した Extension の「Add +」をクリックします。 以下の画面が表示されるので、選択および入力します。 Authentication type:「Oauth 2.0」を選択 Grant type:「Custom apikey」を入力 apikey:取得済みのIBM CloudのAPIキー Client authentication:「Send as Body」を選択 Header prefix:Bearer(デフォルト) Servers:https://jp-tok.ml.cloud.ibm.com(自動入力) 以下の画面が表示されるので「Finish」をクリックします。 Extension が「Open」となっていることを確認します。 これで Assistant と watsonx.ai が連携できました。 7. Assistantアクションの作成、問い合わせの検証 Github の「assistant-toolkit」から "discovery-watsonx-actions.json" をダウンロードします。 Assistant の「Actions」から「Global Setting」をクリックします。 「Upload/Download」タブをクリックし、Uploadスペースに discovery-watsonx-actions.json をドラッグアンドドロップしてアップロードします。 以下の画面が表示されるので「Upload and replace」をクリックします。 以下の画面の通り、3つのアクションが作成されます。 メニューから「Variables」「Created by you」をクリックします。 「discovery_project_id」の値をメモに控えていた Discovery のプロジェクトID を入力し「Save」をクリックします。 「watsonx_project_id」の値をメモに控えて置いた watsonx.ai のプロジェクトID を入力し「Save」をクリックします。 「model_id」の値で watsonx.ai で使用する言語モデルを指定します。2024年2月29日に GA された日本語で訓練された Granite-japaneseモデルを使用するため、「ibm/granite-8b-japanese」を入力し「Save」をクリックします。(その他変数はデフォルト値とします) 「Actions」から「Generate Answer」を選択し、「model_input」の値を以下の例の様に日本語に変更します。 例: ("<s>[INST] <<SYS>>\nあなたは親切で、礼儀正しく、誠実なアシスタントです。常に安全を保ちながら、できるだけ役立つように答えてください。答えは簡潔に日本語で回答してください。回答には、有害、非倫理的、人種差別的、性差別的、有毒、危険、または違法なコンテンツを含めてはいけません。回答が社会的に偏見がなく、本質的に前向きであることを確認してください。\n\n質問が意味をなさない場合、または事実に一貫性がない場合は、正しくないことに答えるのではなく、その理由を説明してください。質問の答えがわからない場合は、誤った情報を共有しないでください。\n<</SYS>>\n\n質問に答えることで、次のエージェントの応答を生成します。タイトルが付いたいくつかの文書が提供されます。答えが異なる文書から得られた場合は、あらゆる可能性について言及し、文書のタイトルを使用してトピックまたは領域を区切ってください。与えられた文書に基づいて回答できない場合は、回答がない旨を記載してください。\n\n").concat(passages).concat("\n\n[question]: ").concat(query_text).concat("[/INST]") 以上で設定は完了です。 さっそく Assistant から問い合わせをしてみます。 右下の「Preview」をクリックします。 チャットから S1014 の特徴について問い合わせしてみます。約18秒後に以下の回答が返ってきました。 「Inspect」をクリックすると、Discovery の検索結果が以下の通り watsonx.ai に渡されていることがわかります。 <s>[INST] <<SYS>> あなたは親切で、礼儀正しく、誠実なアシスタントです。常に安全を保ちながら、できるだけ役立つように答えてください。答えは簡潔に日本語で回答してください。回答には、有害、非倫理的、人種差別的、性差別的、有毒、危険、または違法なコンテンツを含めてはいけません。回答が社会的に偏見がなく、本質的に前向きであることを確認してください。 質問が意味をなさない場合、または事実に一貫性がない場合は、正しくないことに答えるのではなく、その理由を説明してください。質問の答えがわからない場合は、誤った情報を共有しないでください。 <</SYS>> 質問に答えることで、次のエージェントの応答を生成します。タイトルが付いたいくつかの文書が提供されます。答えが異なる文書から得られた場合は、あらゆる可能性について言及し、文書のタイトルを使用してトピックまたは領域を区切ってください。与えられた文書に基づいて回答できない場合は、回答がない旨を記載してください。[title]: IBM Power S1014 柔軟かつセキュアなハイブリッドクラウド・インフ ラストラクチャーで俊敏性を実現[document]: 1 コ ア 当 た り 4 つ の M a t r i x Math Acceleratorによる迅速 なAI推論のために洞察と自動 化を合理化 業界標準のDIMMより2倍優 れたメモリーの信頼性と可用 性を提供 IBM® Power® S1014 は、1ソケット、4U Power10プロセッサーをベースにしたサー バーで、IBM AIX®、IBM iまたは Linux®上のビジネス・クリティカルなワークロード 向けに設計されています。Power S1014を使用することで、ワークロードはより 少数のサーバーに統合され、ソフトウェア・ライセンスの数、電力と冷却のコスト を削減します。Power S1014サーバーは、プロセッサー上でのメモリー暗号化を 使用してエンドツーエンドからデータを安全に保護し、ラック型またはタワーフォー ム・ファクターで購入できます。 プロセッサー・レベルでのメモリー暗号化と、POWER9 と比較してすべてのコア で4倍の暗号化エンジンによりコアからクラウドまでのデータを保護 ますます高度に分散した環境に存在するデータには、もはや境界線を設定すること は不可能です。 [question]: S1014の特徴は?[/INST] Assistant と Discovery のみの連携で検索した結果は以下の通りです。watsonx.ai を使用した方がより簡潔で分かりやすい回答を得られることが分かります。 8. 言語モデルを変えて問い合わせの検証 言語モデルを "llama-2-70b" にして同様の問い合わせをしたところ、約24秒後に回答が返ってきました。箇条書きで丁寧な印象です。 言語モデルを "elyza-japanese" にした際は10秒ほどで回答がありました。主語として「S1014の特徴は」とあることで、問いに対する回答が分かりやすくなっています。 言語モデルを変えて試した結果、llama-2-70B は箇条書きで回答し丁寧な印象を受けましたが、回答が得られるまでに24秒かかりました。一方 Granite-japanese や elyza-japanese はシンプルな回答を生成し、Granite-japanese は18秒、elyza-japanese は10秒というより短い時間で回答を得られました。 Watson Discovery の検索結果に基づき watsonx.ai で回答を生成するので、ある程度時間がかかると予想していましたが、elyza-japanese は速い回答で主語を添えてわかりやすく回答してくれました。 また、llama-2-70B は汎用的で使いやすいモデルですが、プロントで「日本語で回答して」と指示をしても問い合わせ内容によっては英語で回答することがありました。日本語の回答精度を求める場合は、Granite-japanese や elyza-japanese を使用した方が精度の高い回答を得ることができます。 モデルを変えて問い合わせてみると、モデルごとに得意なタスクが異なることがわかりました。数百億のパラメータで訓練された大規模言語モデルを一概に選択するのではなく、言語やタスクの特性に合わせて最適なモデルを選定することが重要になりそうですね。 さいごに いかがでしたでしょうか。Github から提供されているスターターキットを使って Assistant、Discovery、watsonx.ai を繋げてみましたが、ほどんど躓くことなく UI から簡単に設定することができました。 接続自体に高度な難しさは感じませんでしたが、問い合わせに対して正確な情報を得るためには Assistant の検索設定を調整する必要があります。今回は1つの PDFファイルの検索を行いましたが、複数の PDFファイルから情報を引き出す際には Assistant で query を設定することで特定の PDFファイルからの検索が可能です。 このように PDF などの非構造化データを検索対象として精度の高い回答を得るには、Discovery において文書の構造を明確に定義し、Assistant の検索設定を調整することが必要です。 実際にヘルプデスクなどの Webチャットで利用する場合は、Assistant にあらかじめ用意した回答をルールベースで回答させ、それでも解決できない問い合わせについては Discovery を通じて検索を行い、watsonx.ai を用いて回答を生成するという流れが効果的です。 ただし、生成AI によって生成される回答は常に”100%正確な回答”ではないので、より高い精度の回答を追求するためにはプロンプトの調整などチューニングを施すことが必要です。その結果、より使いやすい Webチャットの実現が期待できます。 お問い合わせ エヌアイシー・パートナーズ株式会社E-Mail:nicp_support@NIandC.co.jp   .highlighter { background: linear-gradient(transparent 50%, #ffff52 90% 90%, transparent 90%); } .anchor{ display: block; margin-top:-20px; padding-top:40px; } .btn_A{ height:30px; } .btn_A a{ display:block; width:100%; height:100%; text-decoration: none; background:#eb6100; text-align:center; border:1px solid #FFFFFF; color:#FFFFFF; font-size:16px; border-radius:50px; -webkit-border-radius:50px; -moz-border-radius:50px; box-shadow:0px 0px 0px 4px #eb6100; transition: all 0.5s ease; } .btn_A a:hover{ background:#f56500; color:#999999; margin-left:0px; margin-top:0px; box-shadow:0px 0px 0px 4px #f56500; } .bigger { font-size: larger; }

2024年01月16日

【イベント開催レポート】IBM watsonx.ai ハンズオンセミナー

こんにちは。ソリューション推進部です。 2023年12月12日に、エヌアイシー・パートナーズ株式会社として初めてのハンズオンセミナー『「IBM watsonx.ai 」を利用したRAGのハンズオンセミナー』を開催しました。 今回のハンズオンセミナーは、以下の2つのことを目的として行いました。 パートナー様に製品の紹介とハンズオンを合わせて体験いただくことで、製品をより深く知っていただくこと 製品を活用したビジネスの新たな応用の可能性を見つけ出していただくこと 私たちのチームでは、パートナー様にご紹介・ご説明する製品を「実際に触ってみること」を大切にしています。これは私たち自身の技術力の向上という目的もありますが、パートナー様に私たちのリアルな経験を交えながら製品のご説明をすることが、お客様の具体的な課題発掘や案件創出に繋がっていると考えているためです。 今回のハンズオンを通して、パートナー様ご自身が製品の価値を体感しご理解いただくことで、新しいビジネス展開のイメージを創出するお役に立ちたいと考えました。 それでは、今回実施したセミナーの内容について簡単にご紹介いたします。 目次 レポート watsonx.ai紹介講義 ハンズオン実施 IBMさまによる最新情報紹介・講義 さいごに お問い合わせ レポート 1. watsonx.ai紹介講義 ハンズオンを実施する前に、watsonx.ai と RAG についての講義を行いました。 国内では生成AIビジネスが加速し、競争力やセキュリティなどの課題が増えています。これらの課題を解決する製品として、IBM watsonx をご紹介しました。 watsonx は「watsonx.ai」「watsonx.governance」「watsonx.data」という3つの製品から成り立っています。watsonx.ai は、基盤モデルをベースとした AI開発スタジオです。 ここでは、IBM が信頼できるデータを用いて事前に学習した基盤モデルや Hugging Face, Inc.* と連携したオープンソースの基盤モデルが利用可能で、ビジネスの状況や要件に応じて最適な基盤モデルを選択することが可能です。 また、RAG についての概念や利点、活用が期待されるシーンもご説明しました。RAG を用いた具体的なユースケースとしては、IBM Watson Speech to Text や Watson Discovery、watsonx.ai を活用したコールセンター業務の事例や、watsonx Assistant や Watson Discovery、watsonx.ai を活用した ECサイトの問い合わせの事例を取り上げました。 時間の制約からこれら2つの事例しかご紹介できませんでしたが、今後、watsonx.ai を活用した多様な事例を私たち自身も理解し、パートナーさまと共に議論を深めていきたいと思います。 *Hugging Face, Inc.:機械学習 アプリケーションを作成するためのツールを開発しているアメリカの企業。 2. ハンズオン実施 ハンズオンでは、受講者の方々に「RAG」を活用した watsonx.ai の Foundation Model(LLM)への問い合わせを体験していただきました。 RAG とは「Retrieval-Augmented Generation」の略で、LLM への問い合わせをする際に、事前に用意したベクターストアへデータ(今回はPDF)を取り込んでおき、問い合わせプロンプトをもとにベクターストアを検索し、その結果を付与して LLM へ問い合わせを行う、というテクノロジーです。 RAG を使うことで、一般公開されていない社内情報を活用して LLM を利用することが可能となるため、自社での利用やお客様の課題を解決するための方法として有効であると考えています。 ハンズオンの環境につきましては、準備に時間をかけずスムーズに始められるよう、事前に弊社にて PC や RAG を利用するための Jupyter Notebook を用意いたしました。 また、watsonx.ai では複数の Foundation Model を利用できるため、複数のモデルを使って挙動の違いを確認してみたり、取り込む PDFファイルを追加することで回答がどう変わるのか、など、ご自身で自由に検証をする時間を多く設けました。皆さまそれぞれに前提スキルは異なっていたかもしれませんが、「体験の時間が足りない…」ということはなかったかと思います。 今回ベクターストアへ取り込むのは PDF のみとしましたが、テキストファイルや PowerPoint なども取り込むことができるので、応用できる使い方が非常に広いということを理解いただけたのではないかと感じています。 3. IBMさまによる最新情報紹介・講義 日本アイ・ビー・エム データ・AI・オートメーション事業部 四元さまに「watsonx」に関して、最新事例と製品アップデート情報の2本立てで講義をしていただきました。 事例においては、IBM社内の watsonx活用事例(AskIT)は特筆すべきと言えるでしょう。 AskIT は、IBMの自然言語処理(NLP)能力を活かし、30万件を超えるサポートチケットから抽出された知見をもとに、重要なサポートトピックに迅速に対処する AIアシスタントとして開発されたそうです。このツールは4ヶ月で133,000人の IBM社員に利用され、問い合わせの75%以上が AI によるチャットで解決されるなど、非常に大きな成果を上げています。 製品アップデート情報のメインは、12月に発表された「watsonx.governance」でした。 AI を組織として採用するためには倫理感のある意思決定が必須であり、watsonx.governance は AIガバナンスとして以下の3つの機能を提供する製品である、というご説明をいただきました。 AIライフサイクルを通してAIモデルの実態を把握するための「モデル・インベントリ」 AIの性能や課題の管理などを行う「評価・モニタリング」 総合監視画面を提供しリスクを可視化する「モデル・リスクガバナンス」 モデル・インベントリでは、他社の AI商品である「Amazon SageMaker」「Azure Machine Learning」などの AIモデルも合わせて管理・監視できることが非常に興味深いです。 watsonx は、AIワークフローを一貫してサポートすることで倫理的かつ透明性の高い AI利用を可能にしています。これらの技術革新は私たちが直面している数多くの課題に対する解決策を見出し、先進的なビジネス環境を促進していく上での重要なステップと言えるでしょう。 日本アイ・ビー・エム株式会社 データ・AI・オートメーション事業部 四元 さま さいごに セミナー後には、参加いただいたパートナーさまとご支援いただいた IBMさまとの懇親会を開催いたしました。 当懇親会を通してパートナー様の生成AI に対する取り組みや課題を直に伺うことができ、大変有意義な場となりました。 2023年12月18日に弊社は10周年を迎えました。10年間で培った経験を糧にし、今後さらに新しい取り組みにチャレンジしていきたいと考えております。 本年も、ブログを通してパートナーの皆さまへ様々な情報をお届けさせていただきます!今後ともどうぞよろしくお願いいたします。 懇親会会場 お問い合わせ エヌアイシー・パートナーズ株式会社E-Mail:nicp_support@NIandC.co.jp   .highlighter { background: linear-gradient(transparent 50%, #ffff52 90% 90%, transparent 90%); } .anchor{ display: block; margin-top:-20px; padding-top:40px; } .btn_A{ height:30px; } .btn_A a{ display:block; width:100%; height:100%; text-decoration: none; background:#eb6100; text-align:center; border:1px solid #FFFFFF; color:#FFFFFF; font-size:16px; border-radius:50px; -webkit-border-radius:50px; -moz-border-radius:50px; box-shadow:0px 0px 0px 4px #eb6100; transition: all 0.5s ease; } .btn_A a:hover{ background:#f56500; color:#999999; margin-left:0px; margin-top:0px; box-shadow:0px 0px 0px 4px #f56500; } .bigger { font-size: larger; }

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