2013年10月

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実際どうでしょう Vol.9「40年変わらなかったストレージの歴史が動いた!」

普段の製品・ソリューション紹介だけでは聞き出せない情報を「実際のところはどうなんだろう?」という素人視点で、専門家に聞いてみるシリーズです。

題して「実際どうでしょう」。。。どうぞ、ご覧ください。

<聞いてみて良かった(*´ω`*) メリひろ担当がエキスパートにインタビュー>

IBM 伊藤孝行様

個人のPCでも普及しているSSD、従来のハードディスクより凄く早いですよね。フラッシュ・ストレージ、半導体デバイスがサーバー利用になるとどのようなインパクトがあるのかをその道のスペシャリストである日本IBMの伊藤さんにお伺いしました。(インタビュアー:重山)

プロフィール:日本アイ・ビー・エム株式会社:伊藤 孝行さん

日本アイ・ビー・エム株式会社、ストレージ事業部、製品企画・営業推進、パートナー開発・アライアンス・OEM担当

1997年から国内独立系ストレージベンダでソリューションセールス・OEMセールスとしてストレージ業界に参画。

通信事業者向け大規模クラウドストレージインフラのほか、2009年、電機メーカーの大容量のフラッシュストレージ・HDDストレージのプロジェクトにも参画。

2011年から外資系エンタープライズフラッシュストレージベンダーの事業開発経て2013年から現職。

※2013年9月時点のプロフィールです。

 

— 先日のセミナーはありがとうございました。時間が足りなかったですね、もっとお伺いしたかったのでインタビューさせて頂きました。よろしくお願いします。(重山)

伊藤:こちらこそ、よろしくお願いします。

容量単位で国内一番の導入実績

— フラッシュ・ストレージの話に入る前に、伊藤さんのプロフィールをお聞かせください。IBMに入られたのは結構最近なのですね。

伊藤:はい。2013年2月からなので半年が経過したところです。

— 社会人のスタートは老舗の印刷会社に就職され、デジタル事業の立ちあげなどの新規事業にも参加され、そこからローエンドストレージ専業のストレージメーカーに転職、そこで更なる経験を積み、外資系フラッシュ・ストレージメーカーの事業開発を経て現在に至るということですね。

伊藤:そうです。入り口は印刷会社でしたが、子供の頃からコンピュータが好きでした。まだPCがない時代でしたが、小学校の頃の作文を読み返したら将来はコンピュータの仕事につきたいと書いていました。ローエンドストレージ専業会社の時代では、2009年~2010年当時で日本国内でかなり大容量のフラッシュ・ストレージをお客様に導入していたと思っています。新規開拓、ビジネス開発は好きな領域です。

— それだけ専門にやられていて、外からIBMやフラッシュ・ストレージを見ていらっしゃった伊藤さんが日本IBMに入られて、実際いかがですか?

伊藤:Texas Memory Systems社を買収した頃から、投資の意気込みを感じていました。IBMは、フラッシュ・ストレージ分野に関して、1,000億円の研究開発費を投じると発表しています。フラッシュストレージベンダー専業の他社は「年商」が300~400億円クラスと考えると、いかに巨額な投資かおわかりいただけると思います。

個人的にはIBMがミッドレンジの製品を自社開発のStorwizeシリーズで強化したことは新鮮な驚きでした。ハイエンドストレージのイメージが強かったためです。これによって製品ポートフォリオのバランスも取れ、お客様のビジネスの支援は万全です。

現在(2013年9月時点)、私はストレージ事業部に所属していますが、7月1日付けで、ストレージ事業部内にIBM FlashSystemの専任チームが設立され、活動しています。組織を見ても、それだけ力を入れている事がよくわかります。

 

HDDは40年前から大きく変化してないストレージ技術なのです

— なるほど、IBMが力を入れているのは分かりましたが、市場性から見たらどうでしょうか。

伊藤:現在のコンピュータのアーキテクチャとしては、性能面でストレージだけが進化から取り残されていました。ハードディスクが誕生したのが1970年です。そこから、「磁気に記録する」という観点では大きな仕組みは変わっていません。

こちらの図のとおり、この30年でCPUパフォーマンスは年率で60%向上しているにも関わらず、ディスクは同5%です。

プロセッサーとディスクの性能向上のギャップ

 

— 年率60%という数値も凄いですが、比較するとそれほど差があったのですね。

 

10時間が1時間へ、まさに桁違いのパフォーマンス

伊藤:システム導入案件においても、そもそもストレージがボトルネック(改善ポイント)だと認識されていない場合もあるぐらいです。

— コンシューマPCにSSDが利用されている現在、半導体ストレージは認知されてきていると思いますが、はやりサーバー製品でフラッシュを使うとなるとお値段が・・・・・

伊藤:そうですね、フラッシュの場合従来のディスクストレージとくらべても容量単価が15倍〜20倍高いのは事実です。今後、普及と共にもっと下がるとは思いますが、価格を比較するとフラッシュ・ストレージの方が高いのは変わらないと思います。

— 私も、このインタビューを続けてきて、少しわかったことがあります。高価格の製品は希少価値で高いのではなく、その投資に見合うだけの効果が期待できるからだと思います。

伊藤:先にそう言っていただけると、話しやすいです。(笑)実際の話ですが、例えば半導体回路の設計で現在はシュミレーションに10時間かかっているのが1時間になる場合の対費用効果は明らかですよね。工程が短くなる、品質があがって収益性が高くなる、競争優位になるという競争優位性の教科書のような効果が出ます。

— それにしても、1/10の時間短縮は劇的な効果ですね。

伊藤:そうなのです。SSDも速いのですが、3倍から5倍の性能しか出せない事が実情で、その理由はSASインターフェース等、ハードディスクをエミュレーションしていることによるオーバーヘッドがあります。オールフラッシュ・ストレージであるIBM FlashSystemなら、フラッシュメモリーチップの性能を最大限発揮する専用のハードウェア設計となっている事から、桁違いの性能を得られる場面が出てくるのです。

「10時間が8時間に短縮されます」だと、「現状のままでいいか」と思われるお客様でも、1/10の1時間に改善されるならば、お客様の事業課題も大きく変化します。そういったご提案が出来るのも、この製品の強みです。

また、システムの一部であるストレージのコストが高いのではなく、システム全体の投資コストはむしろ下がる事が多いのです。

IBM FlashSystem 3つのポイント

 

2012年頃からマーケットが動いている

— エンタープライズ領域においても、フラッシュは最新テクノロジーではなく、導入検討が当たり前の年になっているのですね。

伊藤:そうですね、これは個人的な印象ですが、2012年くらいからマーケットにおけるフラッシュ・ストレージの許容性が変わってきたと感じています。3年ほどで大きな普及期がくると思います。

例えば企業における仮想化のテクノロジー、つまりHyper-V,VMwareは現在では日本でも当たり前ですが、米国やアーリーアダプターと呼ばれる先行着手ユーザから3年遅れで、やっと日本で大きく普及しました。

— こういった飛躍的な進化はIT業界にいてワクワクする要素の一つですね。どんどん進化していくのが楽しみです。

伊藤:逆説的な話で恐縮ですが、テクノロジーという意味では、実はNANDフラッシュメモリは、微細化の限界が近づいていまして、いまのままでは3年ほどで限界がやってくると言われています。

— NANDフラッシュメモリーの半導体技術の限界として、それ以上微細化できないということでしょうか?

伊藤:はい。この20年で13世代もの進化の結果、線幅はマイクロメートル(μm:0.001mm)からナノメートル(nm:0.001μm)へ進化し、チップあたりの容量は4,000〜8,000倍に増えました。詳細は割愛しますが、書き換え寿命は微細化と反比例しますので、現在主流の32nm、24nmの先の1xnmに到達した以降の次世代NANDフラッシュ技術では製品化が難しいと言われています。

そうは言っても、構造を3次元化するなどの次の技術が開発されてきていますので、何かしらの方法で進化はしていくと思います。

 

フラッシュ・ストレージの導入検討は経営効果からのアプローチが鍵

— なるほど、それは知りませんでした。 次ですが、IBMのALLフラッシュ・ストレージのロードマップの強みなどは先日のセミナーでも勉強させていただいたのですが、最後の方のいわゆる導入検討の段階がお時間が少なくて省略されてしまいましたが、改めてお聞かせ下さい。

伊藤:先ほどの投資コストの話の延長になりますが、「フラッシュ・ストレージの導入検討は経営効果から入り、必ずしもハード売りではない」と思っています。お客様は大きく分けると3つのタイプに分かれます。

ひとつは、投資効果が明確なケース。例えば統合ストレージ基盤を刷新した通販事業者様のように注文受付システムの応答速度が早くないとお客様を獲得できないのが明確な場合はすぐに導入が決まります。

2つ目は、システム部門が多忙というのもあるとは思いますが、投資効果を算出できていないケースです。例えばOracle等のDBサーバーのI/Oがボトルネックだと現状把握しているが、そのままIBM FlashSystemに載せ替え移植した場合に、データ処理性能の劇的な改善がどの程度なのかを把握していないため、導入検討が進まないケースです。

3つ目は、ディスクストレージのI/Oボトルネックに気がついていない等のケースで、認知して頂くために、効果的なご提案が必要です。

— 認知・啓蒙活動には「MERITひろば」でも貢献させていただきます!(笑)

伊藤:是非ご協力ください。私もセールスだけでなく、経営課題を解決するという視点で活動していきます。

— 今後のIBMのロードマップも注目しています。またアップデートがありましたら教えて下さい。本日はありがとうございました。

伊藤:こちらこそ、ありがとうございました。

 

導入効果予測「Oracle DB アセスメントサービス」実施中

パフォーマンス課題で悩まれているOracle DBユーザ様へ
“現状のOracleDB処理時間のレポート”と“FlashSystem導入後の効果予測”を無償でご提供するサービスを実施しています。

「バッチ処理が時間内に終わらない」
「チューニングも限界」
「クライアント集中で遅くなる」

上記インタビューのとおり、これらの課題はディスクI/Oが原因かも知れません。Oracle DBユーザー様に、DB,アプリははそのままで、FlashSytemを導入した場合、何がどのように早くなるのかのレポートサービスを無償で実施しています。

お客様には、標準で稼働しているOracle AWRというツールのデータを送っていただくだけの簡単な作業です。

 

編集後記

伊藤さんは2009年の時点で、大手放送局の動画管理プロジェクトを担当し、約23テラバイトのSSD(半導体ディスク)ストレージも納入したそうです。

この分野では国内ではトップセールスだそうです。だからといって、イケイケな雰囲気ではなく、物静かに、しかし情熱的で知的で・・・と素敵な方でした。私も専門性を持ちながら幅広い知識をもったビジネスパーソンになりたいです。 (重山)

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2025年08月04日

【てくさぽBLOG】IBM watsonx OrchestrateのADKを使ってみた

こんにちは。 てくさぽBLOGメンバーの高村です。 早速ですが、今年5月に開催されたIBMの年次イベント「Think2025」で、watsonx Orchestrateの新機能が発表されました!その中の一つとして、開発者向けの「Agent Development Kit(以下、ADK)」があります。今回はこのADKを活用し、watsonx Orchestrate環境への接続やエージェントの追加といった操作を行い、その使用感をご紹介します。  なお、watsonx Orchestrateについては、今年2月、3月に公開した「watsonx OrchestrateやってみたBLOG」でご紹介しておりますので、是非こちらもご一読ください。 【てくさぽBLOG】IBM watsonx Orchestrateを使ってみた(Part1) 【てくさぽBLOG】IBM watsonx Orchestrateを使ってみた(Part2) 目次 はじめに ADKとは? ADK使ってみた さいごに お問い合わせ はじめに Think2025で発表された新機能は、6月に環境へ追加されました。それ以前の環境とは、メニュー構成や操作方法、機能名称に変更があります。 例えばこれまで「Skill」と呼ばれていたものが「Tool」へと名称変更されています。 アップデート後の環境につきましては、別ブログにて改めて詳しくご紹介させていただく予定ですので、ぜひご期待ください! ADKとは? まずはADKについてご紹介します。ADKとは開発者向けにwatsonx OrchestrateのAgentやToolをスクラッチ開発するための開発キットになります。ローカル端末などに導入し、pythonベースで開発を行うことができます。 また、ADKとは別に、watsonx Orchestrate Developer Editionをローカル端末に導入することで、ADKで開発したAgentやToolのテストが可能になります。なお、watsonx Orchestrate Developer EditionはDockerコンテナ上で動作し、現時点のハードウェア要件はCPUは最小8コア、メモリは最小16GBが必要です。詳細はInstalling the watsonx Orchestrate Developer Editionをご確認ください。   ADKとwatsonx Orchestrate Developer Editionを利用することで、コードの迅速な作成・修正や柔軟なカスタマイズに加え、環境へのデプロイ前にローカルでテスト・修正が可能となり、作業効率の向上が期待できます。 ADK使ってみた 前述ではADKでAgent開発し、watsonx Orchestrate Developer Editionで動作確認、SaaS watsonx Orchestrateへインポートする構築の流れをお話しましたが、今回の検証における動作確認は検証環境として利用しているIBM Cloud 上のwatsonx Orchestrate利用します。よって前述したwatsonx Orchestrate Developer Editionは利用せず、ADKからwatsonx Orchestrate検証環境へAgentとToolを直接インポートし、動作確認を行いたいと思います。また、ADKのインストール先は自分の端末ではなく、IBM Cloud上に構築したUbuntuのVirtual Server Instance(以下、VSI)を使用します。検証環境の構成イメージは下記の図の通りです。 尚、ADKのインストール要件はPython 3.11以上、Pip、そして仮想環境(以下venv)が必要です。詳細については、Getting started with the ADKをご確認ください。 それでは早速使ってみましょう! VSIのプロビジョニング まずはADKをインストールするVSIをプロビジョニングします。本ブログではプロビジョニング方法について詳しく記載いたしませんが、手順は「【てくさぽBLOG】IBM Power Virtual ServerのAIX環境とIBM Cloud Object Storageを接続してみた(Part1)」のVSI for VPCの作成をご参考ください。 OSはUbuntu 22.04 LTS Jammy Jellyfish Minimal Install、リソースは2vCPU,4GB RAMで作成しました。VSI作成時にSSH鍵が必要なるので作成を忘れないようにしてください。 作成すると数分で起動します。端末からSSHログインするため浮動IPが必要になります。赤枠で囲った浮動IPを作成しインスタンスに紐づけします。以上でVSIの作成は完了です。 Ubuntuの設定 ターミナルを開きsshでUbuntuにログインします。私はWindowsのコマンドプロンプトを使用しました。Ubuntuユーザでログイン後、rootパスワードを設定し、スイッチできるようにします。 ubuntu@nicptestvsi:~$ sudo passwd root New password: Retype new password: passwd: password updated successfully ubuntu@nicptestvsi:~$ su - pythonのバージョンを確認したところ3.10.12でした。ADKの要件は3.11以上ですので、バージョンアップが必要になります。最初は3.13にバージョンアップしてみたのですが、後続作業と最新バージョンではパッケージが合わなかったのかうまく動かず…仕切り直して3.11を利用することにしました! root@nicptestvsi:~# apt install python3.11 バージョンアップ後、デフォルトバージョンとして3.11を指定します。 root@nicptestvsi:~# sudo update-alternatives --install /usr/bin/python3 python3 /usr/bin/python3.10 1 sudo update-alternatives --install /usr/bin/python3 python3 /usr/bin/python3.11 2 sudo update-alternatives --config python3 update-alternatives: using /usr/bin/python3.10 to provide /usr/bin/python3 (python3) in auto mode update-alternatives: using /usr/bin/python3.11 to provide /usr/bin/python3 (python3) in auto mode There are 2 choices for the alternative python3 (providing /usr/bin/python3).Selection Path Priority Status ------------------------------------------------------------ * 0 /usr/bin/python3.11 2 auto mode 1 /usr/bin/python3.10 1 manual mode 2 /usr/bin/python3.11 2 manual modePress <enter> to keep the current choice[*], or type selection number: 2 root@nicptestvsi:~# root@nicptestvsi:~# python3 --version Python 3.11.13 次に下記コマンドを実行して任意のvenvを作成します。 python3 -m venv /path/to/nicpse/project/your-venv-adktest <環境のパスを指定 venvを活性化してログインします。下記コマンド結果のようにvenvに入れましたらUbuntuの設定は完了です。 root@nicptestvsi:~# source /path/to/nicpse/project/your-venv-adktest/bin/activate (your-venv-adktest) root@nicptestvsi:~# ADKのインストール 以下コマンドを実行してADKをインストールします。ADKは6月時点で1.5.1が最新バージョンです。 (your-venv-adktest) root@nicptestvsi:~# pip install ibm-watsonx-orchestrate Collecting ibm-watsonx-orchestrate Downloading ibm_watsonx_orchestrate-1.5.1-py3-none-any.whl.metadata (1.4 kB) Collecting certifi>=2024.8.30 (from ibm-watsonx-orchestrate) Downloading certifi-2025.6.15-py3-none-any.whl.metadata (2.4 kB) Collecting click<8.2.0,>=8.0.0 (from ibm-watsonx-orchestrate) Downloading click-8.1.8-py3-none-any.whl.metadata (2.3 kB) Collecting docstring-parser<1.0,>=0.16 (from ibm-watsonx-orchestrate) Downloading docstring_parser-0.16-py3-none-any.whl.metadata (3.0 kB) Collecting httpx<1.0.0,>=0.28.1 (from ibm-watsonx-orchestrate) Downloading httpx-0.28.1-py3-none-any.whl.metadata (7.1 kB) ----中略---- (your-venv-adktest) root@nicptestvsi:~# orchestrate --version ADK Version: 1.5.1 ADKの環境設定 次にADKの環境設定を行います。watsonx OrchestrateのインスタンスIDが必要になるため、watsonx OrchestrateのSetting画面に入り確認します。下記画面をご参考にしてください。 環境設定コマンドはこちらになります。-nの後はvenv名を指定し、-uの後はインスタンスIDを指定します。 (your-venv-adktest) root@nicptestvsi:~# orchestrate env add -n <仮想環境名> -u <環境のインスタンスID> [INFO] - Environment 'my-name' has been created [INFO] - Existing environment with name 'nicpse' found. Would you like to update the environment 'nicpse'? (Y/n)y [INFO] - Environment 'nicpse' has been created 以下コマンドを実行して、IBM Cloud上のwatsonx Orchestrateと認証設定をします。APIキーの取得方法は「【てくさぽBLOG】IBM watsonx.aiを使ってみた(Part2)」のAPIキーの取得をご確認ください。尚、リモート環境に対する認証は2時間ごとに期限切れになります。期限が切れた場合は再度認証する必要があります。 (your-venv-adktest) root@nicptestvsi:~# orchestrate env activate nicpse --apikey <APIキー> [INFO] - Environment 'my-ibmcloud-saas-account' is now active [INFO] - Environment 'nicpse' is now active 下記コマンドを実行してCLIから利用できる環境のリストを表示します。IBM Cloud上のwatsonx Orchestrateがactiveとなっていました! (your-venv-adktest) root@nicptestvsi:~# orchestrate env list nicpse https://api.us-south.watson-orchestrate.cloud.ibm.com/instances/XXXXXXXX (active) local http://localhost:XXXX Toolとagentのインポート 次にToolとAgentのインポートを行います。ToolとはAgentがタスクを実行する際に利用する機能です。今回は、IBM様より共有いただいたyfinanceを活用したToolおよびAgentのコードを、ADKを用いてインポートします。なお、yfinanceはヤフーファイナンスから株価などの金融データを取得するためのPythonライブラリです。 最初にToolのインポートを行います。下記の様に、scpなどでToolファイルとrequirements.txtをディレクトリにアップロードしておきます。requirementsファイルは他のモジュールと依存関係がある場合使用します。 (your-venv-adktest) root@nicptestvsi:~/orchestrate_tool/py/source_02# ls -l total 12 -rw-r--r-- 1 root root 0 Jun 24 04:42 __init__.py drwxr-xr-x 2 root root 4096 Jun 24 04:38 __pycache__ -rw-rw-r-- 1 ubuntu ubuntu 8 Jun 24 03:02 requirements.txt -rw-rw-r-- 1 ubuntu ubuntu 1778 Jun 24 02:46 yfinance_agent.py 下記コマンドを実行してToolファイルとrequirementsファイルをインポートします。企業情報を取得するstock_infoと株価を取得するstock_quoteの2つのToolがインポートされました。 (your-venv-adktest) root@nicptestvsi:~/orchestrate_tool/py/source_02# orchestrate tools import -k python -f "./yfinance_agent.py" -r "./requirements.txt" [INFO] - Using requirement file: "./requirements.txt" [INFO] - Tool 'stock_info' imported successfully [INFO] - Tool 'stock_quote' imported successfully listコマンドを実行するとインポートされたToolを確認できます。 (your-venv-adktest) root@nicptestvsi:# orchestrate tools list ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┳━━━━┳ ┃ Name ┃ Description ┃ Permission ┃ Type ┃ Toolkit ┃ App ID ┃ ┡━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╇━━━━╇ │───────────┼────────────┼── │ send_mail_brevo │ send a meil using Brevo. │ write_only │ python │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ ├─────────────────────────────────┼──── │ stock_quote │ 企業のTickerSymbolを用いて株価… │ read_only │ python │ │ │ ├─────────────────────────────────┼──── │ Untitled_6160RC │ No description │ read_only │ openapi │ │ │ ├─────────────────────────────────┼──── │ stock_info │ 企業のTickerSymbolを用いて企業… │ read_only │ python │ │ │ └─────────────────────────────────┴──── 次にAgentをインポートします。下記コマンドを実行します。 (your-venv-adktest) root@nicptestvsi:~/orchestrate_tool/py/source_02# orchestrate agents import -f ./yfinance_agent.yaml agent listコマンドでインポート済みのAgentを確認できました。Agentが使用するToolも表示されています。 (your-venv-adktest) # orchestrate agents list ┏━━━━━━━━━━━━━━━┳━━━━━━━━━━━━━━━┳━━━━━━━━ ┃ Name ┃ Description ┃ LLM ┃ Style ┃ Collaborators ┃ Tools ┃ Knowledge Base ┃  ┡━━━━━━━━━━━━━━━╇━━━━━━━━━━━━━━━╇━━━━━━━━ │ yfinance_age… │ 企業の会社情… │ watsonx/meta- │ react │ │ stock_info, │ │ │ │ │ llama/llama-3 │ │ │ stock_quote │ │ ││ │ │ -2-90b-vision ││ │ -instruct │ │  IBM Cloud上のwatsonx Orchestrateで動作確認 インポートしたAgentとToolをIBM Cloud上のwatsonx Orchestrateで確認します。 watsonx Orchestrateへログインし、BuildからAgent Builderを選択します。 yfinanceエージェントが表示されているので、クリックします。 クリックすると、Agent作成画面に入ります。UIから基盤モデルを変更したり、Agentの振る舞いなど変更することができます。 スクロールして、Toolsetを確認するとADKからインポートしたToolが登録されています。 右のPreviewからAgentの動きを確認することができます。今回はDeployせずPreviewで確認します。入力欄には「IBMの株価は?」と質問してみます。しばらくすると本日の株価が回答されました。Show Reasoningを開くと推論過程を確認することができます。株価を取得するTool「stock_quote」を使用し、AIがユーザの入力から自動的にTicker symbolを入力していることがわかります。 次に「IBMの企業情報」と質問をします。しばらくするとAIがユーザの入力からTicker symbolを入力し、Tool「stock_info」を利用して企業情報を取得、回答されました。ユーザの入力内容からAgentが使用するToolを選択し、実行していることがわかります。   さいごに ADKのご紹介とADKを使ってToolとAgentのインポートを行いました。 ADKのインストールおよび設定について、Pythonバージョンの設定やvenvの作成でつまずく部分はありましたが、venvが作成できればその後の設定はスムーズに進められました。 今回はVSI上のUbuntuサーバにADKをインストールしましたが、ご自身の端末に導入することで、より気軽にAgent開発を行えるかと思います。なお、今回は検証対象外でしたが、watsonx Orchestrate Developer Editionを利用する場合は、インストール要件としてやや高めのスペックが必要になる点にご注意ください。 検証時のADKのバージョンは1.5.1でしたが、7月末では1.8.0が最新バージョンとなっています。比較的頻繁にアップデートされますので適宜Release Notesをご確認ください。バージョンアップでコマンドオプションも変更される場合があるため、マニュアルを確認するかコマンドに`--help`を付与してパラメータを確認することをおすすめします。   お問い合わせ この記事に関するご質問は以下の宛先までご連絡ください。 エヌアイシー・パートナーズ株式会社 技術企画本部 E-mail:nicp_support@NIandC.co.jp   .anchor{ display: block; margin-top:-20px; padding-top:40px; }

2025年07月11日

【参加レポート】Domino Hub 2025

公開日:2025-07-11 みなさまこんにちは。ソリューション企画部 松田です。 2025年6月19日・20日と2日間に渡って開催された「Domino Hub 2025」に参加しました。これは HCL Ambassador有志が企画・実行する Dominoコミュニティイベントです。去年に続き、今回が3回目の開催となります。 昨年同様、今回もエヌアイシー・パートナーズはスポンサーとしてご支援させていただき、両日参加いたしました。そのレポートをお送りします。 目次 イベント概要 セッション内容 - Domino 14.5 リリース 特徴的機能とライセンス改定 -ロードマップ -お客様事例:曽根田工業様 最後に 関連情報 お問い合わせ イベント概要 「Domino Hub」は、HCL Ambassadorが主宰となり、Dominoの利用者、開発者、ソリューションベンダーが一堂に会するコミュニティイベントです。今回は1日目がオンライン、2日目はオンサイトのみの開催でした。 特に2日目は参加率が非常に高かったとのことで、会場も大変盛況でした。結婚式場としても使われている今回の会場は、中庭から陽の光が差し込み、解放感があるラグジュアリーな空間で、一般的なビジネスミーティングよりも上質な雰囲気が感じられました。 併せて展示ブースも設置され、Dominoアプリケーションがスマートフォンやブラウザで使えるようになる「HCL Nomad」などのHCL製品とともに、様々なビジネスパートナー様の多彩な関連製品が数多く展示・紹介されていました。 セッション内容 2日間で全22セッションが行われました。セッションはHCLをはじめ、HCL Ambassadorから、様々な開発ベンダー、製品ベンダー、エンドユーザーからの事例紹介などのセッション、そしてパネルディスカッションがありました。まずHCLからのセッション内でのトピックをお伝えします。機能のみならずライセンスまわりで大きなニュースもありました。 Domino 14.5 リリース 特徴的機能とライセンス改定 Domino Hubの2日前、2025年6月17日にリリースされました。 Domino IQ 特徴的な機能で最も注目すべき、今回もご説明に時間を割かれていたのが「Domino IQ」です。 一言で言えば「Domino内にローカルでLLMを持たせ、蓄積されてきたDominoアプリ内の情報も取り込み、セキュアな環境で生成AIを用いた業務を実現する」ものです。 企業内業務で生成AIをどのように実装し利用していくかは今、皆様の大きな関心事項であられると思います。自社のDomino環境内で、Dominoアプリケーションを用い、Notesクライアントからそれが実現できることになります。 (画像クリックで拡大) Nomad for Web COM対応 またNomad for WebがCOMに対応したことにより、これまではNotesクライアントだけでしかできなかったExcelやPowerPointを埋め込んだDiminoアプリもブラウザから利用できるようになりました。 ライセンスダッシュボード:DLAUの統合 これまでGitHubからダウンロードしてセットアップしていたDomino License Analysis Utility (DLAU)がDomino内にデフォルトで統合され、The Domino License Administration (DLA) となりました。 (画像クリックで拡大) ライセンス改定 そしてライセンスにも大きなベネフィットが付加されました。CCB Termライセンスにはこれまで「Domino Leapで5アプリケーションまで開発・利用が可能」という権利が含まれていましたが、2025年7月1日からその制限がなくなりました。すなわち「2025年7月1日以後有効なCCB Termライセンスをお持ちのお客様は、Domino Leapのフル機能が利用できる」となります。 同時に、Domino Leapライセンスの利用範囲であるHCL Enterprise Integrator(HEI)の利用権利も含まれます。これでCCB Termライセンスのみで、追加費用なく「ブラウザによるノーコード/ローコード開発」「基幹業務とDominoアプリケーションの連携」が可能になります。 さらにCCB Termで利用できるSametime Chatで添付ファイルと画像添付も可能になりました。 ロードマップ Domino、Notes、Verse、Nomadなど各ソリューションについてのロードマップも紹介されました。先々の計画は出てこないものですが、このようにHCLから明確に提示されることにより、Dominoをお使いのお客様はこれからも安心して利用を継続していただけると思います。 Dominoのロードマップ(画像クリックで拡大) Notesのロードマップ(画像クリックで拡大) Nomad, VerseといったエンドユーザーのUI部分が短期間でバージョンアップされていく。(画像クリックで拡大) お客様事例:曽根田工業 様 Dominoユーザーの有限会社曽根田工業 代表取締役 曽根田 直樹 様より、Domino事例のご講演がありました。曽根田様は2001年に静岡県磐田市で個人で起業され、切削機械の刃物を製造されています。曽根田様のお話で非常に興味深かった部分を抜粋致します。 "独立・起業するにあたり、前職で使っていたNotes/Dominoを自社でも使うことにした。現在は大手メーカーからの発注依頼や過去に作った品番の再発注など数多く受けており、当時のCAD/CAMのデータや販売管理データなどをDominoに入れて運用している。 オンプレミス環境のリスクやセキュリティ、IT技術のトレンドに合わせてクラウド化を検討した場合、Dominoからは離れたほうがいいのではないか?と思い、他社SaaS製品も検討しトライアルで利用登録をした。 しばらく触れずにいたところ、アカウント情報に登録していた支払い口座から利用料の引き落としがされていなかったためアカウントが凍結、さらに保存していたデータも突然消去されてしまっていた。支払いが滞っただけで中身まで削除されてしまうようなシステムには会社の大事な資産であるデータを載せられないので、「Dominoを『やめることを止める』判断」をした。" Dominoから他製品への移行を検討され断念されるお客様は多く、その理由は「Dominoの業務アプリケーションを、サービス内容を落とさずに別プラットフォームに移行することがはなはだ困難である」ということをよくお聞きしますが、この点にも意外な理由が潜んでいました。 最後に 初の2年連続開催となった今年のDominoHubは、コミュニティの力を象徴するかのような盛り上がりを見せました。14.5のリリース、生成AIの実装、ライセンス強化など、今後のDominoの発展を確信させる要素が数多く披露されたほか、実際のユーザー事例も非常に示唆に富むものでした。加えてロードマップの提示による未来への安心感も得られました。 DominoHubは単なる情報共有の場に留まらず、技術、コミュニティ、そしてビジネスの未来を交差させる特別な場となっています。これからもこのような取り組みが継続していき、多くのDominoユーザー、デベロッパー、そして販売パートナーが更なる価値を引き出していけることを楽しみにしています。これからもDominoと私たちの未来を築いていきましょう。 関連情報 「Domino Hub」大阪開催 Domino Hubは、2025年9月18日に大阪でのオンサイト開催が決定致しました。詳細およびお申し込みについては、こちらのリンクからご確認ください。 お問い合わせ エヌアイシー・パートナーズ株式会社E-mail:voice_partners@niandc.co.jp   .highlighter { background: linear-gradient(transparent 50%, #ffff52 90% 90%, transparent 90%); } .anchor{ display: block; margin-top:-20px; padding-top:40px; } .btn_A{ height:30px; } .btn_A a{ display:block; width:100%; height:100%; text-decoration: none; background:#eb6100; text-align:center; border:1px solid #FFFFFF; color:#FFFFFF; font-size:16px; border-radius:50px; -webkit-border-radius:50px; -moz-border-radius:50px; box-shadow:0px 0px 0px 4px #eb6100; transition: all 0.5s ease; } .btn_A a:hover{ background:#f56500; color:#999999; margin-left:0px; margin-top:0px; box-shadow:0px 0px 0px 4px #f56500; } .bigger { font-size: larger; } figcaption { color: #7c7f78; font-size: smaller; }

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