2021年03月

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企業を狙ったランサムウェアの増加で再認識されるバックアップの重要性と対策のポイント

2017年5月に世界的に大流行し、その後鎮静化していたランサムウェアの脅威が再び増大しています。

IPA(独立行政法人 情報処理推進機構)が毎年発表する「情報セキュリティ10大脅威」の組織部門においても、ここ数年、不動の第1位に君臨する「標的型攻撃による被害」の陰で「ランサムウェアによる被害」が2017年以降5位以内をキープ。
最近では多額の身代金が獲れそうな企業にターゲットを定め、データを暗号化するだけではなく機密データを窃取し、それを公開すると脅して身代金を要求するなど、標的型化の事例も報告され、高度化・巧妙化が進んでいます。

本記事では、こうした最新動向や被害の状況に触れつつランサムウェア感染からのシステム復旧を考える上で欠かせないバックアップについて、対策のポイントとそれを踏まえたお勧めのソリューションとして「IBM Spectrum Protect」を紹介します。

 

Index


 

企業を狙った標的型ランサムウェアの被害が増加中

2017年に登場し猛威を振るった「WannaCry」などのランサムウェアでは、無差別に送られる「ばらまき型」メールによって感染し、端末がロックされたユーザに対してロック解除のための身代金を要求するケースが一般的でした。
しかし、高額な身代金を支払える個人は少なく、攻撃者にとってあまりに非効率でした。

そこで攻撃者は対象を企業や団体に移し、特定のターゲットに対し下調べをしたうえで攻撃を仕掛けるようになりました。
2020年6月には、某国内大手自動車メーカーがサイバー攻撃を受け、マルウェアに感染。9つの工場で操業に影響が出ただけなく、コロナ禍でテレワーク中の従業員が社内システムにアクセス不能になるなど、深刻な事態に陥りました。

この事案では、ネットワーク偵察や感染経路の確保など入念な事前調査が行われていた可能性が指摘されており、まさに標的型ランサムウェアともいうべきものです。
結局4日をかけて工場の操業を再開したものの、その間工場の出荷が停止するなど、同社のビジネスにグローバルで大きなダメージを与えました。

 

サイバーセキュリティ+サイバーレジリエンスで、
ランサムウェアに多層的に対応

ランサムウェア感染の結果、製造業では前段で紹介した事例のように、工場の操業が止まることで利益損失に直結するほか、医療機関や社会インフラサービスなどが狙われると人命が危険にさらされたり、人々の生活に困難をきたすことも。
問題は、標的型攻撃の場合、マルウェアがひそかに侵入し時間をかけて機密情報の搾取を試みる間も業務継続が可能なのに対し、ランサムウェアに感染した場合、感染後にデータが暗号化されてしまうとデータの利用ができなくなり、一気に業務停止に至ることです。

このためランサムウェア対策では、インシデント発生を未然に防ぐ “サイバーセキュリティ” の対策だけでなく、発生したインシデントをいかに早く沈静化して本来の状態に戻すか、という “サイバーレジリエンス(セキュリティレジリエンス)” のアプローチも必要です。
様々なセキュリティ対策で侵入を防ぎつつ、万が一侵入を許してデータが暗号化されてしまった場合に、その状態から迅速に復旧するための手段を備える “多層的な対策” が求められます。

※レジリエンス=復元力、弾性

 

まずはデータバックアップ、さらには感染を迅速に検知する
仕組みを

ランサムウェアの被害に対するサイバーレジリエンスを高める上で欠かせないのが、バックアップです。
ランサムウェアに感染しデータが暗号化されてしまうと、データ利用は不可能で、もしデータバックアップがされていなければ、もはや打つ手はありません。逆に言うと、バックアップさえあれば時間や工数はかかっても、システムを初期化するなどした上で感染前のデータに戻すことができます。

では、バックアップさえとっていればOKか?というと、必ずしもそうとは言い切れません。
ランサムウェアの感染を早いタイミングで検知できなければ、復旧に用いるバックアップデータが古い世代にものになってしまい、一定期間分のデータロストが発生するためです。
ランサムウェア対策を考えると、まずは高頻度でバックアップをとること(オフラインでバックアップデータを保管するのが望ましい)を基本とし、感染したことを早期に検知して、できるだけ新しいデータで復旧する仕組みがあるのが理想的です。

 

ランサムウェアの感染を “ふるまい検知” して通知。
確実な復旧を実現する「IBM Spectrum Protect」

ここからは、サイバーレジリエンスまで考慮した有望なランサムウェア対策の1つとして、データ保護ソリューション「IBM Spectrum Protect」を紹介します。

この製品(ソフトウェア)がすぐれているのは、ランサムウェアに感染したことを検知し管理者にメール通知してくれる点です。
ランサムウェアに感染すると、ファイル数やデータ量が急増する一方本来増えるはずの重複排除率が逆に減少する、といった、通常では考えられない現象が見られます。
IBM Spectrum Protect では、バックアップ対象データを統計的に分析することで、こうした平常時と異なる “ふるまい” を検知。即座に管理者へメール通知します。これによって、感染後できるだけ早期のデータ復旧が可能になります。

また、ランサムウェアによってはバックアップからの復旧を不可能にするため、バックアップデータの破壊を試みるものもありますが、IBM Spectrum Protect では、サーバーからアクセス不能な保護領域を確保し、最大500世代の増分バックアップを実現(セーフガード・コピー)。生命線ともいうべき感染前のクリーンなバックアップデータをしっかり保護し、確実なデータ復旧へと導きます。


 

効率的なバックアップ・アーカイブ・階層管理を実現

バックアップの対象となるクライアントと管理サーバーで構成される「IBM Spectrum Protect」は、以下のような優れた機能により、効率的なバックアップ・アーカイブ・階層管理を実現します。

 

1.真の永久増分バックアップで、バックアップウィンドウを最小化

定期的なバックアップデータの合成で、フルバックアップを更新する他社の永久増分バックアップと異なり、「IBM Spectrum Protect」の永久増分バックアップはフルバックアップの取得は初回のみで、その後は増加した分のバックアップだけで OK。
バックアップの合成にともなう時間とシステムリソースの消費を回避できます。さらに、複数のバックアップサーバーに存在する同一データをブロックレベルで 1つにまとめ(重複排除)、ストレージ容量の削減に貢献します。

 

2.高速転送機能で、低品質WAN環境でも安定的なデータ転送を実現

永久増分バックアップと重複排除により遠隔地バックアップの時間短縮を実現する「IBM Spectrum Protect」ですが、標準搭載の高速転送機能(Aspera Fast Adaptive Secure Protocol)は、海外など脆弱なWAN環境においても安定した高速転送を実現します。

 

3.オンプレミスだけでなく、クラウド環境も含めた統合バックアップ

オンプレミス環境(物理・仮想)はもちろん、クラウド環境も含めて統合的にバックアップを管理できます。
しかも、上りのデータ転送料が無料というメリットを活かし、長期保存のデータをクラウドにバックアップ(アーカイブ)したり、オンプレミス←→クラウド間のレプリケーションで DR環境を構築する、といった活用シナリオに対応します。

 

このほか「IBM Spectrum Protect」は、バックアップ対象の複数サーバーを単一ダッシュボードから統合管理できるオペレーションズ・センターを提供。
管理者は場所を問わず、必要な時にブラウザ上で各種バックアップの実行や健全性の確認などが可能。「コロナ禍で、バックアップのために出社するのは避けたい」「リモートでバックアップ状況を把握・管理したい」といったニーズにも対応します。

ランサムウェアの対策として、またニューノーマル対応のデータ保全・バックアップ対策として、この機会に「IBM Spectrum Protect」を検討してみてはいかがでしょう。

 
 


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2024年04月08日

【てくさぽBLOG】watsonx Assistant + Watson Discovery + watsonx.aiを連携してみた

こんにちは。てくさぽBLOGメンバーの高村です。 ビジネスへの生成AI の取り込みに注目が集まっている今日、watsonx.ai をどう活用すればいいのか、多くのお客様からお問い合わせ頂いています。そこで前回の「【てくさぽBLOG】IBM watsonx.aiを使ってみた(Part2)」では、watsonx.ai のユースケースとして Retrieval-Augmented Generation(以下 RAG)をご紹介しました。 今回は、RAG の仕組みを利用し AIチャットボットを提供する「watsonx Assistant(以下 Assistant)」と検索エンジン機能を提供する「Watson Discovery(以下 Discovery)」、「watsonx.ai」を組み合わせた連携ソリューションをご紹介します。 目次 AssistantとDiscoveryの連携 watsonx.aiを取り入れた連携 Assistant + Discovery + watsonx.aiを連携してみた さいごに お問い合わせ AssistantとDiscoveryの連携 本来なら各製品を一つのブログで詳しくご説明したいところですが、今回は連携した結果についてのご紹介となりますので、Assistant と Discovery については今後のブログであらためてご紹介したいと思います。 Assistant は watsonx の大規模言語モデルが搭載され、自然言語の問い合わせを理解し、適切な回答を返すことができるチャットボット機能を提供する製品です。一方 Discovery はドキュメントから適切な情報を検索する検索エンジン機能、パターンや傾向を読み取る分析エンジンとしての機能を備えた製品です。 Assistant と Discovery を組合わせたユースケースでは Assistant にあらかじめ回答を用意してルールベースで回答させ、答えることが難しい問い合わせに対しては Discovery の検索結果を利用して回答します。 watsonx.aiを取り入れた連携 上記の連携では Discovery の検索結果がユーザーに表示される仕組みとなっていますが、watsonx.ai を介して回答を提供することでDiscovery が得た検索結果をさらに整理し、より理解しやすい形での返答が実現できます。 Assistant + Discovery + watsonx.aiを連携してみた Assistant、Discovery、watsonx.ai を連携してみます。 事前準備 利用環境 今回は IBM Cloud で提供される SaaS を利用して検証します。なお、Assistant と Discovery の Plusプランは30日間無償期間が付属されていますので、是非ご活用ください。 watsonx Assistant:Plusプラン(30日間無償期間あり、以降は有償) Watson Discovery:Plusプラン(30日間無償期間あり、以降は有償) watsonx.ai:Essentialプラン(有償) 検証の目的 検証では構築手順の他、以下の点を確認します。 「Assistant + Discovery + watsonx.ai」と「Assistant + Discovery」の連携による回答の違いを比較 言語モデルを変えて問い合わせを行い、回答の違いの比較 実施手順 以下の流れで検証を実施します。 Assistantのプロビジョニング Discoveryのプロビジョニング、検索対象とするデータの取り込み※取り込むデータは「IBM Power S1014 データシート」のS1014のPDF watsonx.aiのプロビジョニング Assistantの初期設定 Assistantのカスタム拡張機能からDiscoveryを繋げる Assistantのカスタム拡張機能からwatsonx.aiを繋げる Assistantアクションの作成、問い合わせの検証 言語モデルを変えて問い合わせの検証 検証実施 1. Assistantのプロビジョニング はじめに Assistant のプロビジョニングを行います。 IBM Cloud にログインし、カタログ画面から "Assistant" を選択します。 ロケーションとプランを選択し「作成」をクリックします。 しばらくすると以下の画面の様に、Assistant がプロビジョニングされます。 2. Discoveryのプロビジョニング 次に Discovery をプロビジョニングします。 カタログ画面から "Discovery" を選択します。 ロケーションとプランを選択し「作成」をクリックします。 しばらくすると以下の画面の様に、Discovery がプロビジョニングされます。※ここで、資格情報内にある「API鍵」と「URL」をメモに控えます 「Watson Discoveryの起動」をクリックし「New Project +」をクリックします。 Project name に任意の名前を入力、Project type では「Conversational Serch」を選択し「Next」をクリックします。 作成されたプロジェクトをクリックします。 「Integration Deploy」をクリックします。 「API Information」タブをクリックし「Project ID」をメモに控えます。 次に検索対象の PDF を Discovery に取り込みます。 「Manage collections」から「New collection +」をクリックし、「Collection name」に任意の名前を入力、「Select language」を「Japanese」に設定します。 Upload files の領域に PDF をドラッグアンドドロップして「Finish」をクリックします。 アップロードが完了しました。次に、Smart Document Understanding機能(以下 SDU)を利用して PDF内のヘッダーやテキストなどのフィールドを定義します。 SDU は、PDFをはじめとする非構造化データの文書構造を理解して検索や分析の精度を向上させる機能です。例えばタイトルと定義した箇所を検索キーとしたり、検索対象をテキストと定義した箇所のみとするなど可能になります。 「Identify Field」タブをクリックします。 取り込んだ PDF が表示されるので右側の Field labels からヘッダー箇所やタイトル箇所などをドラッグアンドドロップして指定していきます。 ページの定義が終わったら「Submit page」をクリックして次の頁を定義していきます。 SDU では数ページ指定すると自動的にヘッダー箇所やテキスト箇所を認識してくれるので、何ページもあるドキュメントには便利な機能です。 今回は SDU を使って PDF の文書構造を定義しました。SDU以外の Discovery の機能については、また別の機会にご紹介したいと思います。 3. watsonx.aiのプロビジョニング ※watsonx.ai のプロビジョニング方法は「【てくさぽBLOG】IBM watsonx.aiを使ってみた(Part1)」をご参照ください。 4. Assistantの初期設定 Assistant の初期設定を行います。 Assistant を起動します。 起動後、以下の項目を入力します。 Assistant name:任意の名前を入力 Assistant Language:「English」を選択※日本語を選択することが可能ですが、Assistant のスターターキットは英語での利用を想定しているため今回はEinglishを選択します Assistant の公開先を「web」に設定します。※"Tell us about your self" 以降はご自身の情報を入力ください 入力後「Next」をクリックします。 デフォルトのチャットUI を利用するため「Next」をクリックします。 プレビュー画面が表示されるので「Create」をクリックします。(以下の画面は「Create」が隠れてしまっています) 「Congratulations!」と表示されたら初期設定は完了です。 5. Assistantのカスタム拡張機能からDiscoveryを繋げる 「Githubのassistant-toolkit」から "watson-discovery-query-openapi.jsonファイル" をダウンロードします。 Assistant のメニューから「Integration」をクリックします。 下にスクロールし「Build custom extension」をクリックします。 以下の画面が表示されるので「Next」をクリックします。 「Extension name」に任意の名前を入力し「Next」をクリックします。 先程ダウンロードした watson-discovery-query-openapi.jsonファイルをドラッグアンドドロップでアップロードします。 以下の画面が表示されるので「Finish」をクリックします。 追加した Extension の「Add +」をクリックします。 以下の画面が表示されるので「Next」をクリックします。 以下の画面が表示されるので、選択および入力します。 Authentication type:「Basic auth」を選択 Username:「apikey」と入力 Password:メモに控えたWatson DiscoveryのAPI鍵 discovery_url:メモに控えたWatson DiscoveryのURLから"http://"を除いた値 ※以下の画面ショットは discovery_url入力箇所が切れてしまっていますが、実際は「Servers」の下に discovery_url の項目があります 以下の画面が表示されるので「Finish」をクリックします。 Extension が「Open」となっていることを確認します。 これで watsonx Assistant と Watson Discovery が連携できました。 6. Assistantのカスタム拡張機能からwatsonx.aiを繋げる 次に、Assistant のカスタム拡張機能から watsonx.ai を利用できるように設定します。 設定には IBM Cloud の APIキーと watsonx.ai のプロジェクトID が必要です。取得方法は「【てくさぽBLOG】IBM watsonx.aiを使ってみた(Part2)」をご参照ください。なお、今回は東京リージョンで watsonx.ai をプロビジョニングします。 Github の「assistant-toolkit」から "watsonx-openapi.json" をダウンロードします。 Visual Studio Code などで東京リージョンの URL に編集し保存します。 Discovery の連携と同様に、Assistant のメニューから「Integration」「Build custom extension」をクリックします。 以下の画面が表示されるので、任意の Extension name を入力して「Next」をクリックします。 編集した watson-discovery-query-openapi.jsonファイルをドラッグアンドドロップでアップロードして「Next」をクリックします。 以下の画面が表示されるので「Finish」をクリックします。 追加した Extension の「Add +」をクリックします。 以下の画面が表示されるので、選択および入力します。 Authentication type:「Oauth 2.0」を選択 Grant type:「Custom apikey」を入力 apikey:取得済みのIBM CloudのAPIキー Client authentication:「Send as Body」を選択 Header prefix:Bearer(デフォルト) Servers:https://jp-tok.ml.cloud.ibm.com(自動入力) 以下の画面が表示されるので「Finish」をクリックします。 Extension が「Open」となっていることを確認します。 これで Assistant と watsonx.ai が連携できました。 7. 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2024年01月16日

【イベント開催レポート】IBM watsonx.ai ハンズオンセミナー

こんにちは。ソリューション推進部です。 2023年12月12日に、エヌアイシー・パートナーズ株式会社として初めてのハンズオンセミナー『「IBM watsonx.ai 」を利用したRAGのハンズオンセミナー』を開催しました。 今回のハンズオンセミナーは、以下の2つのことを目的として行いました。 パートナー様に製品の紹介とハンズオンを合わせて体験いただくことで、製品をより深く知っていただくこと 製品を活用したビジネスの新たな応用の可能性を見つけ出していただくこと 私たちのチームでは、パートナー様にご紹介・ご説明する製品を「実際に触ってみること」を大切にしています。これは私たち自身の技術力の向上という目的もありますが、パートナー様に私たちのリアルな経験を交えながら製品のご説明をすることが、お客様の具体的な課題発掘や案件創出に繋がっていると考えているためです。 今回のハンズオンを通して、パートナー様ご自身が製品の価値を体感しご理解いただくことで、新しいビジネス展開のイメージを創出するお役に立ちたいと考えました。 それでは、今回実施したセミナーの内容について簡単にご紹介いたします。 目次 レポート watsonx.ai紹介講義 ハンズオン実施 IBMさまによる最新情報紹介・講義 さいごに お問い合わせ レポート 1. watsonx.ai紹介講義 ハンズオンを実施する前に、watsonx.ai と RAG についての講義を行いました。 国内では生成AIビジネスが加速し、競争力やセキュリティなどの課題が増えています。これらの課題を解決する製品として、IBM watsonx をご紹介しました。 watsonx は「watsonx.ai」「watsonx.governance」「watsonx.data」という3つの製品から成り立っています。watsonx.ai は、基盤モデルをベースとした AI開発スタジオです。 ここでは、IBM が信頼できるデータを用いて事前に学習した基盤モデルや Hugging Face, Inc.* と連携したオープンソースの基盤モデルが利用可能で、ビジネスの状況や要件に応じて最適な基盤モデルを選択することが可能です。 また、RAG についての概念や利点、活用が期待されるシーンもご説明しました。RAG を用いた具体的なユースケースとしては、IBM Watson Speech to Text や Watson Discovery、watsonx.ai を活用したコールセンター業務の事例や、watsonx Assistant や Watson Discovery、watsonx.ai を活用した ECサイトの問い合わせの事例を取り上げました。 時間の制約からこれら2つの事例しかご紹介できませんでしたが、今後、watsonx.ai を活用した多様な事例を私たち自身も理解し、パートナーさまと共に議論を深めていきたいと思います。 *Hugging Face, Inc.:機械学習 アプリケーションを作成するためのツールを開発しているアメリカの企業。 2. ハンズオン実施 ハンズオンでは、受講者の方々に「RAG」を活用した watsonx.ai の Foundation Model(LLM)への問い合わせを体験していただきました。 RAG とは「Retrieval-Augmented Generation」の略で、LLM への問い合わせをする際に、事前に用意したベクターストアへデータ(今回はPDF)を取り込んでおき、問い合わせプロンプトをもとにベクターストアを検索し、その結果を付与して LLM へ問い合わせを行う、というテクノロジーです。 RAG を使うことで、一般公開されていない社内情報を活用して LLM を利用することが可能となるため、自社での利用やお客様の課題を解決するための方法として有効であると考えています。 ハンズオンの環境につきましては、準備に時間をかけずスムーズに始められるよう、事前に弊社にて PC や RAG を利用するための Jupyter Notebook を用意いたしました。 また、watsonx.ai では複数の Foundation Model を利用できるため、複数のモデルを使って挙動の違いを確認してみたり、取り込む PDFファイルを追加することで回答がどう変わるのか、など、ご自身で自由に検証をする時間を多く設けました。皆さまそれぞれに前提スキルは異なっていたかもしれませんが、「体験の時間が足りない…」ということはなかったかと思います。 今回ベクターストアへ取り込むのは PDF のみとしましたが、テキストファイルや PowerPoint なども取り込むことができるので、応用できる使い方が非常に広いということを理解いただけたのではないかと感じています。 3. IBMさまによる最新情報紹介・講義 日本アイ・ビー・エム データ・AI・オートメーション事業部 四元さまに「watsonx」に関して、最新事例と製品アップデート情報の2本立てで講義をしていただきました。 事例においては、IBM社内の watsonx活用事例(AskIT)は特筆すべきと言えるでしょう。 AskIT は、IBMの自然言語処理(NLP)能力を活かし、30万件を超えるサポートチケットから抽出された知見をもとに、重要なサポートトピックに迅速に対処する AIアシスタントとして開発されたそうです。このツールは4ヶ月で133,000人の IBM社員に利用され、問い合わせの75%以上が AI によるチャットで解決されるなど、非常に大きな成果を上げています。 製品アップデート情報のメインは、12月に発表された「watsonx.governance」でした。 AI を組織として採用するためには倫理感のある意思決定が必須であり、watsonx.governance は AIガバナンスとして以下の3つの機能を提供する製品である、というご説明をいただきました。 AIライフサイクルを通してAIモデルの実態を把握するための「モデル・インベントリ」 AIの性能や課題の管理などを行う「評価・モニタリング」 総合監視画面を提供しリスクを可視化する「モデル・リスクガバナンス」 モデル・インベントリでは、他社の AI商品である「Amazon SageMaker」「Azure Machine Learning」などの AIモデルも合わせて管理・監視できることが非常に興味深いです。 watsonx は、AIワークフローを一貫してサポートすることで倫理的かつ透明性の高い AI利用を可能にしています。これらの技術革新は私たちが直面している数多くの課題に対する解決策を見出し、先進的なビジネス環境を促進していく上での重要なステップと言えるでしょう。 日本アイ・ビー・エム株式会社 データ・AI・オートメーション事業部 四元 さま さいごに セミナー後には、参加いただいたパートナーさまとご支援いただいた IBMさまとの懇親会を開催いたしました。 当懇親会を通してパートナー様の生成AI に対する取り組みや課題を直に伺うことができ、大変有意義な場となりました。 2023年12月18日に弊社は10周年を迎えました。10年間で培った経験を糧にし、今後さらに新しい取り組みにチャレンジしていきたいと考えております。 本年も、ブログを通してパートナーの皆さまへ様々な情報をお届けさせていただきます!今後ともどうぞよろしくお願いいたします。 懇親会会場 お問い合わせ エヌアイシー・パートナーズ株式会社E-Mail:nicp_support@NIandC.co.jp   .highlighter { background: linear-gradient(transparent 50%, #ffff52 90% 90%, transparent 90%); } .anchor{ display: block; margin-top:-20px; padding-top:40px; } .btn_A{ height:30px; } .btn_A a{ display:block; width:100%; height:100%; text-decoration: none; background:#eb6100; text-align:center; border:1px solid #FFFFFF; color:#FFFFFF; font-size:16px; border-radius:50px; -webkit-border-radius:50px; -moz-border-radius:50px; box-shadow:0px 0px 0px 4px #eb6100; transition: all 0.5s ease; } .btn_A a:hover{ background:#f56500; color:#999999; margin-left:0px; margin-top:0px; box-shadow:0px 0px 0px 4px #f56500; } .bigger { font-size: larger; }

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