2020年09月

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DRで考えるべきITシステム復旧の3つの指標と実現方法を解説。BCPとの違いは?効率的な対策は?

近年、大規模な自然災害が増加していることから DR の重要性が高まっています。
DR は「Disaster Recovery」の略であり、文字どおり「災害時にどう復旧するか」という対策を指します。

ひと言で「災害からの復旧」と言っても対策は多岐にわたり、求める対策のレベルによって運用にかかるコストにも違いがあります。
どこまで対策をすればいいのか、悩む企業も多いのではないでしょうか。

今、改めて押さえておきたい DR の基本・指標と、実現するための方法について解説します。

 

Index


 

DRの基本と、BCPとの違い

DR は、地震や台風などの自然災害などが発生した際にシステムをスムーズに復旧させるための対策のことです。

似たものとして「BCP(事業継続計画)」があり、どちらも緊急事態への対策を検討するものですが、BCP が事業全般を継続するための計画を策定するのに対し、DR は「システムを災害発生から復旧させること」に重点を置いています。
特に、自社オフィスやデータセンターなどが台風や地震といった災害により物理的に利用できなくなってしまった際に、どう復旧するかがポイントとなります。

 

DRで最初に検討すべき3つの指標

DR 対策を検討する場合は、システムを「いつまでに」「どの状態に」復旧すればよいのかをしっかり定めましょう。その際に、指標となるのが以下の3つです。

  • RTO(Recovery Time Objective/目標復旧時間):
    「いつまでに、システムを復旧すればよいか」の目標を定めた指標
  • RPO(Recovery Point Objective/目標復旧時点):
    「いつのデータに、復旧できればよいか」の目標を定めた指標
  • RLO(Recovery Level Objective/目標復旧レベル):
    「処理能力や品質などをどのレベルまで、復旧できればよいか」の目標を定めた指標

これらの指標は、例えば「災害発生から3日以内に(RTO)」「前日のデータで(RPO)」「通常の半数程度の処理に対応できる(RLO)」ように復旧する、といった形で目標を定めることを指します。
これらの指標を組み合わせて対策を検討することになりますが、その方法は「バックアップの頻度」「復旧方法(手動/自動など)」により大きく5つのレベルに分けられます。

レベル1:スタンバイなし/バックアップリストア(手動)
レベル2:コールドスタンバイ/バックアップリストア(手動)
レベル3:コールドスタンバイ/プログラムによるバッチコピー
レベル4:ホットスタンバイ/ツールによる非同期コピー
レベル5:ホットスタンバイ/ツールによるリアルタイムコピー

レベルが上がるにつれ RPO・RTO を短くでき、システムダウンの時間を最小限に抑えられますが、コストも高くなります。すべてのシステムを高いレベルで運用すればよいわけではなく、システムごとに指標を定めどのレベルで運用するかを検討することが重要です。

例えば「更新頻度の低い、社内の人事データ」であれば、リアルタイムに同期をとる必要はなく、月1回のバックアップデータを別拠点に保存する形で十分対応できるかもしれません。一方「ECサイトの受注データ」は前日のデータが残っていても不十分で、極力 RPO・RTO を短くする対策が必要になります。

どのシステムをどこまで対策するのか、コストとのバランスを見ながら検討すべきでしょう。

 

DRを実現する3つの方法

次に、こういった DR 対策を具体的に実現する方法を解説します。DR では、大きく3つの方法が挙げられます。

  1. バックアップメディアを遠隔地に保管

    バックアップデータを保存したメディアを遠隔拠点に運搬することで、データを守ります。メディアの種類も様々ですが、大容量データを長期保管する場合などは、比較的コストを抑えられるテープメディアが有効です。

  2. ネットワークを介した遠隔バックアップ、リストア

    ネットワークを経由し、クラウド(IaaS)や別拠点にバックアップデータを保存します。災害時には、バックアップ環境側で新たに環境を構築・リストアすることで、早期復旧が可能になります。

  3. データレプリケーション

    データを2拠点間でリアルタイムに同期し、障害発生時には、フェイルオーバーすることでダウンタイムを最小限に留めることができます。レプリケーション先でも本番環境と同等の環境が必要になるため、コストが割高になる傾向があります。

上記のうちどの方法が適しているのか、バックアップ先はクラウド・オンプレミスのどちらがいいのか、などは企業によって異なります。
また、つい「データをどこにバックアップするか」ばかり考えがちですが、データだけバックアップしてもアプリケーションなど含めたシステム環境が揃わなければ、業務で利用できるようにはなりません。

復旧時の手順や環境まで含めて、あらかじめ確認しておきましょう。

 

バックアップ製品などをうまく活用し、効率的なDR対策を

DR は運用コストなどを理由に二の足を踏む企業も少なくありませんが、ビジネスにおいてシステムやデータの重要度が高まり続けるなか、データを失うリスクを考えれば、コストをかける価値は大きいはずです。

DR 対策で活用するバックアップなどの製品は数多く登場していますが、特にネットワークを介したバックアップを行う場合は、データの転送効率も要チェック。

例えば、IBM Spectrum Protect は、「永久増分」という方法を採用し、転送するデータを最小限に留めます。さらに高速転送機能により、WAN 環境でも高品質回線並みの転送速度を実現します。
いざという時に、想定よりもバックアップ環境でリストアして利用できるまでに時間がかかり、大きな機会損失になった、なんていう事態を防ぐには最適なツールです。

DR 対策で大切なことは、保有するデータごとに自社の事業内容と優先度に合った環境を用意しておくことです。前述のとおり、3つの指標<RTO・RPO・RLO>を策定した上で、効率的な DR 対策を目指しましょう。

 
 


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