2018年02月

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AIに怯えず積極的な活用と人の武器を磨いてみよう!

AIは怖い?怖くない?

AI がトッププロ棋士に勝利し、AI 時代を踏まえ、大手銀行が大規模なリストラを発表したのは、記憶に新しいかと思います。

AI が仕事を奪う、AI が暴走する…

テスラ社の最高経営責任者であるイーロン・マスク氏は、急速に発達する AI に対し“人工知能(AI)が人類文明の存在を根本から脅かす” と警鐘を鳴らしています。

心理学では、ある人が自分の状態を自分で認識している場合、「洞察(insight)」という用語を当てはめる。(中略) 大多数の人間が持ち、動物が持たない能力だ。そして、AI が本当に人間並みの認識力を備えるかどうか確かめるもっとも優れた方法は、この種の洞察を実行できると示すことだと、私は確信している。・・・・・(中略)
スタートアップ企業文化の精神は、文明破壊 AI の設計図になる可能性がある。かつて Facebook は、「素早く動いて破壊せよ」というモットーを掲げていた。その後「安定したインフラとともに素早く動け」に変わったものの、維持するのは自分たちが構築したインフラであり、他者のインフラなどでないとしている。自分たち以外の世界を、自分の食べるオムレツに必要な卵と見なして割るような態度は、AIから見ると“終末をもたらせ”という最優先命令になりうる。・・・・・
出典:『シリコンバレーが警告するAIの恐怖、その本質を
「メッセージ」原作者が分析』BuzzFeed News

AI の急速な発展に恐怖を抱く方も多いのかも知れません。しかし、日進月歩のこの世界において、怖いからと言って耳を塞いで、身を潜めることで解決されるものではありません。ましてや、IT に関わる業界においては、避けては通れないテーマであることは間違いないでしょう。

先にご紹介の記事で”超高度 AI の恐怖をあおる行為を策略した”首謀者の 1 企業として挙げられていた Google 社の AI 部門のトップは反対に人びとは汎用の人工知能に対して心配しすぎだ” と語っています。

“今はAI に関して大量の誇大報道がある。多くの人が、汎用 AI の勃興をめぐって、いわれのない不安を抱えている”、と Giannandrea は語る。“機械学習や人工知能はきわめて重要であり、産業に革命をもたらすだろう。Google は検索エンジンのような、そのための建設工具を作って、生産性を高めようとしている”。

出典:『GoogleのAIのトップは曰く、人工知能という言葉自体が
間違っている、誇大宣伝を生む温床だ』Techcrunch

AI 分野の最先端を行く、Google のトップが「誇大報道」だとし、「AI という言葉自体間違っている」と話しています。

“人工知能(AI)” に対し賛否両論が唱えられてはいるものの、AI の発展は更に加速されると予想されます。そのような中で、我々はどのように AI と向き合い、付き合っていけば良いのでしょうか。実際の事例を参考にして考察を進めていきましょう。

 

AI 活用を失敗事例から学ぶ

AI との付き合い方について、積極的に AI を業務に取り入れる取り組みをしている企業を見てみましょう。

Pepper でおなじみのソフトバンク社は積極的な AI 導入推進企業の1社ですが ・・・
昨年イベントで、商談に必要な情報が引っ張り出せたり、提案に対してアドバイスをもらえたり、必要な社内手続きが簡単に済ませたりできる IBM “Watson“をベースにした社内 AI “Softbank Brain“をいち早く導入するも、3ヶ月もたつと誰も使わなくなってしまった、という苦い経験を紹介されていました。

「AI に限った話ではないが、IT の社内導入には3つの壁がある。順に『検討の壁』『構築の壁』『導入の壁』、中でも AI 導入で一番のポイントになるのが、最初の検討の壁だ」と強調(中略)「とりあえずAI を入れろというお客さまはいまだに多いが、無理に導入しても、やはり2~3カ月で使わなくなってしまう。AI には『定着の壁』という大きな壁がある」
「この1年で特に分かったことは、AI はユーザーを含めてみんなで育てていくものだということ。AI は例えるとエンジンであり、我々が手がける通信回線は道路であるが、エンジンを載せる車体やガソリンがないとユーザーは利用できない。そこで何が必要なのか。ソリューションが車に相当するもので、パートナー企業とタッグを組んで多彩な車(AIソリューション)を市場に提供しているのが現状だ」
出典:『ソフトバンクもAI導入で失敗していた――
「3+1の壁」を突破した今だからこそ言えること』ITPro

リンクの ITPro の記事によると、ソフトバンク社には、AI 関連プロジェクトが多々あり、大小様々な失敗から日々学び、改善を行っているそうです。企業が失敗について話すことは少ない中、失敗談を語っていただけることは、大変ありがたいですね。また、この「失敗」や「最初から完全を目指さない」ということが AI プロジェクトにとって重要ということがよく伝わってきます。

事例の詳細については、記事をご参照いただければと思いますが、AI の活用に関して、我々はまだまだ何をどのようにすれば活用できるか手探りの状態であり、小さく産んで改善して育てることが重要、成功への鍵となるのです。

人の仕事を奪う、という考えではなく、いかにユーザーの利便性や生産性を上げ、本来の仕事に集中させるかにポイントが置かれます。これは、以前に特集したデザイン思考につながるアプローチです。

ウォーターフォール型のプロジェクトに代表される、利用用途や要件を全て決めてから始める、ということではなく、ある程度の完成度でトライ・アンド・エラーで改善していくアプローチが重要です。また、準備に時間をかけ過ぎず、始めることも外せないポイントでしょう。

自社で使うにせよ、お客様に提案するにせよ「何でも良いから AI を使う」ということではなく、ユーザーに共感し、仮設を立て、課題解決のアプローチを小さい形で始められる環境作りからスタートさせることが、最善の策といえるのではないでしょうか。

 

AI に対抗する人としての武器とは?

では、AI 時代に太刀打ちできる?人間が持ち得る最強の武器とは何でしょうか。

SankeiBiz の記事『グーグルが人間同士の対話を重視するワケ「仕事が奪われる」AI時代に最も重要なスキルは何か』 の冒頭で、立教大学ビジネススクールの田中道昭教授は、“AI とは『人工知能』ではなく、『異星人的知性』の略である”という主張を紹介されています。

“AI”という言葉は、人工知能(Artificial Intelligence) という言葉ではなく、人間とはまったく違う発想をする知能として、異星人的知能(Alien Intelligence) の略と考えるべきだろう

“AI”が人間の仕事を奪うか否かという議論に時間を費やすのではなく、われわれの仕事は違った考え方をするマシンを作り、異質な知性を創造することなのだ

“AI”は答えることに特化し、人間はよりよい質問を長期的に生み出すことに力を傾けるべきだ

出典: 『これからインターネットに起こる「不可避な12の出来事」』

元々 AI は、我々、人間にとって代わるものではない、”AI に仕事を奪われる” と怯えることなどないのだと ・・・
では、AI の導入では実現できない、”人”ならではの強みを発揮できるのは、どんなことなのでしょう。

AI 時代だからこそ、本来人が重視すべき「人と人との対話」で AI との棲み分けを…

前述の Google が重視する、「力」について注目してみましょう。SankeiBiz の記事によると、Google 社の人事責任者、ラズロ・ボック氏は、人材育成や評価について、『ワーク・ルールズ!』(東洋経済新報社)で、下記のように説かれています。

「つねに発展的な対話を心がけ、安心と生産性につなげていく」
「(上司は部下に)あなたがもっと成功するために、私はどんな手助けができるかという心がけで向き合う」
「目標を達成する過程で発展的な対話を促す」
「発展的な対話とパフォーマンスのマネジメントを混同しない」
出典:『グーグルが人間同士の対話を重視するワケ「仕事が奪われる」AI時代に最も重要なスキルは何か』Sankeibiz

Google や Amazon が AI を研究、導入するよことにより、人を軽視するようになったとは、聞いたことがありません。世の中が効率化され便利になる中で、やはり重要なのは人と人とのコミュニケーションであり、その心構えです。

景気や業績が厳しい中、部下との発展的な対話は難しいように思えます。しかし、AI 時代において、AI の先端企業が重要視する力、「発展的な対話力」なくしては、起死回生のイノベーションも起こりませんし、発展はないのかも知れません。

AI に仕事を奪われることを心配したり嘆いたりせず、まずは、小さいことから AI の活用を試しはじめながら、発展的な対話力を磨いてみるのはいかがでしょうか。コミュニケーション能力は才能ではなく、筋肉のように鍛えることができるといわれているのですから。

次回は、実際の AI 活用の効果的な進め方について、ベースとなるデザイン思考も絡め、考察を深めてみたいと思います。公開は2018年3月中旬頃を予定しています。

 

IBM Watson 関連情報

今回の記事では、AI に抱かれるイメージやその実態、特に失敗事例からの学びに着目し、AI 時代にこそ重要な人の能力、という観点で話を進めました。

今後 AI をビジネスに活用するために AI の活用例やビジネスのための AI プラットフォームである IBM Watson の概念などをぜひご参照ください。

 

その他の記事

2025年08月04日

【てくさぽBLOG】IBM watsonx OrchestrateのADKを使ってみた

こんにちは。 てくさぽBLOGメンバーの高村です。 早速ですが、今年5月に開催されたIBMの年次イベント「Think2025」で、watsonx Orchestrateの新機能が発表されました!その中の一つとして、開発者向けの「Agent Development Kit(以下、ADK)」があります。今回はこのADKを活用し、watsonx Orchestrate環境への接続やエージェントの追加といった操作を行い、その使用感をご紹介します。  なお、watsonx Orchestrateについては、今年2月、3月に公開した「watsonx OrchestrateやってみたBLOG」でご紹介しておりますので、是非こちらもご一読ください。 【てくさぽBLOG】IBM watsonx Orchestrateを使ってみた(Part1) 【てくさぽBLOG】IBM watsonx Orchestrateを使ってみた(Part2) 目次 はじめに ADKとは? ADK使ってみた さいごに お問い合わせ はじめに Think2025で発表された新機能は、6月に環境へ追加されました。それ以前の環境とは、メニュー構成や操作方法、機能名称に変更があります。 例えばこれまで「Skill」と呼ばれていたものが「Tool」へと名称変更されています。 アップデート後の環境につきましては、別ブログにて改めて詳しくご紹介させていただく予定ですので、ぜひご期待ください! ADKとは? まずはADKについてご紹介します。ADKとは開発者向けにwatsonx OrchestrateのAgentやToolをスクラッチ開発するための開発キットになります。ローカル端末などに導入し、pythonベースで開発を行うことができます。 また、ADKとは別に、watsonx Orchestrate Developer Editionをローカル端末に導入することで、ADKで開発したAgentやToolのテストが可能になります。なお、watsonx Orchestrate Developer EditionはDockerコンテナ上で動作し、現時点のハードウェア要件はCPUは最小8コア、メモリは最小16GBが必要です。詳細はInstalling the watsonx Orchestrate Developer Editionをご確認ください。   ADKとwatsonx Orchestrate Developer Editionを利用することで、コードの迅速な作成・修正や柔軟なカスタマイズに加え、環境へのデプロイ前にローカルでテスト・修正が可能となり、作業効率の向上が期待できます。 ADK使ってみた 前述ではADKでAgent開発し、watsonx Orchestrate Developer Editionで動作確認、SaaS watsonx Orchestrateへインポートする構築の流れをお話しましたが、今回の検証における動作確認は検証環境として利用しているIBM Cloud 上のwatsonx Orchestrate利用します。よって前述したwatsonx Orchestrate Developer Editionは利用せず、ADKからwatsonx Orchestrate検証環境へAgentとToolを直接インポートし、動作確認を行いたいと思います。また、ADKのインストール先は自分の端末ではなく、IBM Cloud上に構築したUbuntuのVirtual Server Instance(以下、VSI)を使用します。検証環境の構成イメージは下記の図の通りです。 尚、ADKのインストール要件はPython 3.11以上、Pip、そして仮想環境(以下venv)が必要です。詳細については、Getting started with the ADKをご確認ください。 それでは早速使ってみましょう! VSIのプロビジョニング まずはADKをインストールするVSIをプロビジョニングします。本ブログではプロビジョニング方法について詳しく記載いたしませんが、手順は「【てくさぽBLOG】IBM Power Virtual ServerのAIX環境とIBM Cloud Object Storageを接続してみた(Part1)」のVSI for VPCの作成をご参考ください。 OSはUbuntu 22.04 LTS Jammy Jellyfish Minimal Install、リソースは2vCPU,4GB RAMで作成しました。VSI作成時にSSH鍵が必要なるので作成を忘れないようにしてください。 作成すると数分で起動します。端末からSSHログインするため浮動IPが必要になります。赤枠で囲った浮動IPを作成しインスタンスに紐づけします。以上でVSIの作成は完了です。 Ubuntuの設定 ターミナルを開きsshでUbuntuにログインします。私はWindowsのコマンドプロンプトを使用しました。Ubuntuユーザでログイン後、rootパスワードを設定し、スイッチできるようにします。 ubuntu@nicptestvsi:~$ sudo passwd root New password: Retype new password: passwd: password updated successfully ubuntu@nicptestvsi:~$ su - pythonのバージョンを確認したところ3.10.12でした。ADKの要件は3.11以上ですので、バージョンアップが必要になります。最初は3.13にバージョンアップしてみたのですが、後続作業と最新バージョンではパッケージが合わなかったのかうまく動かず…仕切り直して3.11を利用することにしました! root@nicptestvsi:~# apt install python3.11 バージョンアップ後、デフォルトバージョンとして3.11を指定します。 root@nicptestvsi:~# sudo update-alternatives --install /usr/bin/python3 python3 /usr/bin/python3.10 1 sudo update-alternatives --install /usr/bin/python3 python3 /usr/bin/python3.11 2 sudo update-alternatives --config python3 update-alternatives: using /usr/bin/python3.10 to provide /usr/bin/python3 (python3) in auto mode update-alternatives: using /usr/bin/python3.11 to provide /usr/bin/python3 (python3) in auto mode There are 2 choices for the alternative python3 (providing /usr/bin/python3).Selection Path Priority Status ------------------------------------------------------------ * 0 /usr/bin/python3.11 2 auto mode 1 /usr/bin/python3.10 1 manual mode 2 /usr/bin/python3.11 2 manual modePress <enter> to keep the current choice[*], or type selection number: 2 root@nicptestvsi:~# root@nicptestvsi:~# python3 --version Python 3.11.13 次に下記コマンドを実行して任意のvenvを作成します。 python3 -m venv /path/to/nicpse/project/your-venv-adktest <環境のパスを指定 venvを活性化してログインします。下記コマンド結果のようにvenvに入れましたらUbuntuの設定は完了です。 root@nicptestvsi:~# source /path/to/nicpse/project/your-venv-adktest/bin/activate (your-venv-adktest) root@nicptestvsi:~# ADKのインストール 以下コマンドを実行してADKをインストールします。ADKは6月時点で1.5.1が最新バージョンです。 (your-venv-adktest) root@nicptestvsi:~# pip install ibm-watsonx-orchestrate Collecting ibm-watsonx-orchestrate Downloading ibm_watsonx_orchestrate-1.5.1-py3-none-any.whl.metadata (1.4 kB) Collecting certifi>=2024.8.30 (from ibm-watsonx-orchestrate) Downloading certifi-2025.6.15-py3-none-any.whl.metadata (2.4 kB) Collecting click<8.2.0,>=8.0.0 (from ibm-watsonx-orchestrate) Downloading click-8.1.8-py3-none-any.whl.metadata (2.3 kB) Collecting docstring-parser<1.0,>=0.16 (from ibm-watsonx-orchestrate) Downloading docstring_parser-0.16-py3-none-any.whl.metadata (3.0 kB) Collecting httpx<1.0.0,>=0.28.1 (from ibm-watsonx-orchestrate) Downloading httpx-0.28.1-py3-none-any.whl.metadata (7.1 kB) ----中略---- (your-venv-adktest) root@nicptestvsi:~# orchestrate --version ADK Version: 1.5.1 ADKの環境設定 次にADKの環境設定を行います。watsonx OrchestrateのインスタンスIDが必要になるため、watsonx OrchestrateのSetting画面に入り確認します。下記画面をご参考にしてください。 環境設定コマンドはこちらになります。-nの後はvenv名を指定し、-uの後はインスタンスIDを指定します。 (your-venv-adktest) root@nicptestvsi:~# orchestrate env add -n <仮想環境名> -u <環境のインスタンスID> [INFO] - Environment 'my-name' has been created [INFO] - Existing environment with name 'nicpse' found. Would you like to update the environment 'nicpse'? (Y/n)y [INFO] - Environment 'nicpse' has been created 以下コマンドを実行して、IBM Cloud上のwatsonx Orchestrateと認証設定をします。APIキーの取得方法は「【てくさぽBLOG】IBM watsonx.aiを使ってみた(Part2)」のAPIキーの取得をご確認ください。尚、リモート環境に対する認証は2時間ごとに期限切れになります。期限が切れた場合は再度認証する必要があります。 (your-venv-adktest) root@nicptestvsi:~# orchestrate env activate nicpse --apikey <APIキー> [INFO] - Environment 'my-ibmcloud-saas-account' is now active [INFO] - Environment 'nicpse' is now active 下記コマンドを実行してCLIから利用できる環境のリストを表示します。IBM Cloud上のwatsonx Orchestrateがactiveとなっていました! (your-venv-adktest) root@nicptestvsi:~# orchestrate env list nicpse https://api.us-south.watson-orchestrate.cloud.ibm.com/instances/XXXXXXXX (active) local http://localhost:XXXX Toolとagentのインポート 次にToolとAgentのインポートを行います。ToolとはAgentがタスクを実行する際に利用する機能です。今回は、IBM様より共有いただいたyfinanceを活用したToolおよびAgentのコードを、ADKを用いてインポートします。なお、yfinanceはヤフーファイナンスから株価などの金融データを取得するためのPythonライブラリです。 最初にToolのインポートを行います。下記の様に、scpなどでToolファイルとrequirements.txtをディレクトリにアップロードしておきます。requirementsファイルは他のモジュールと依存関係がある場合使用します。 (your-venv-adktest) root@nicptestvsi:~/orchestrate_tool/py/source_02# ls -l total 12 -rw-r--r-- 1 root root 0 Jun 24 04:42 __init__.py drwxr-xr-x 2 root root 4096 Jun 24 04:38 __pycache__ -rw-rw-r-- 1 ubuntu ubuntu 8 Jun 24 03:02 requirements.txt -rw-rw-r-- 1 ubuntu ubuntu 1778 Jun 24 02:46 yfinance_agent.py 下記コマンドを実行してToolファイルとrequirementsファイルをインポートします。企業情報を取得するstock_infoと株価を取得するstock_quoteの2つのToolがインポートされました。 (your-venv-adktest) root@nicptestvsi:~/orchestrate_tool/py/source_02# orchestrate tools import -k python -f "./yfinance_agent.py" -r "./requirements.txt" [INFO] - Using requirement file: "./requirements.txt" [INFO] - Tool 'stock_info' imported successfully [INFO] - Tool 'stock_quote' imported successfully listコマンドを実行するとインポートされたToolを確認できます。 (your-venv-adktest) root@nicptestvsi:# orchestrate tools list ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┳━━━━┳ ┃ Name ┃ Description ┃ Permission ┃ Type ┃ Toolkit ┃ App ID ┃ ┡━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╇━━━━╇ │───────────┼────────────┼── │ send_mail_brevo │ send a meil using Brevo. │ write_only │ python │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ ├─────────────────────────────────┼──── │ stock_quote │ 企業のTickerSymbolを用いて株価… │ read_only │ python │ │ │ ├─────────────────────────────────┼──── │ Untitled_6160RC │ No description │ read_only │ openapi │ │ │ ├─────────────────────────────────┼──── │ stock_info │ 企業のTickerSymbolを用いて企業… │ read_only │ python │ │ │ └─────────────────────────────────┴──── 次にAgentをインポートします。下記コマンドを実行します。 (your-venv-adktest) root@nicptestvsi:~/orchestrate_tool/py/source_02# orchestrate agents import -f ./yfinance_agent.yaml agent listコマンドでインポート済みのAgentを確認できました。Agentが使用するToolも表示されています。 (your-venv-adktest) # orchestrate agents list ┏━━━━━━━━━━━━━━━┳━━━━━━━━━━━━━━━┳━━━━━━━━ ┃ Name ┃ Description ┃ LLM ┃ Style ┃ Collaborators ┃ Tools ┃ Knowledge Base ┃  ┡━━━━━━━━━━━━━━━╇━━━━━━━━━━━━━━━╇━━━━━━━━ │ yfinance_age… │ 企業の会社情… │ watsonx/meta- │ react │ │ stock_info, │ │ │ │ │ llama/llama-3 │ │ │ stock_quote │ │ ││ │ │ -2-90b-vision ││ │ -instruct │ │  IBM Cloud上のwatsonx Orchestrateで動作確認 インポートしたAgentとToolをIBM Cloud上のwatsonx Orchestrateで確認します。 watsonx Orchestrateへログインし、BuildからAgent Builderを選択します。 yfinanceエージェントが表示されているので、クリックします。 クリックすると、Agent作成画面に入ります。UIから基盤モデルを変更したり、Agentの振る舞いなど変更することができます。 スクロールして、Toolsetを確認するとADKからインポートしたToolが登録されています。 右のPreviewからAgentの動きを確認することができます。今回はDeployせずPreviewで確認します。入力欄には「IBMの株価は?」と質問してみます。しばらくすると本日の株価が回答されました。Show Reasoningを開くと推論過程を確認することができます。株価を取得するTool「stock_quote」を使用し、AIがユーザの入力から自動的にTicker symbolを入力していることがわかります。 次に「IBMの企業情報」と質問をします。しばらくするとAIがユーザの入力からTicker symbolを入力し、Tool「stock_info」を利用して企業情報を取得、回答されました。ユーザの入力内容からAgentが使用するToolを選択し、実行していることがわかります。   さいごに ADKのご紹介とADKを使ってToolとAgentのインポートを行いました。 ADKのインストールおよび設定について、Pythonバージョンの設定やvenvの作成でつまずく部分はありましたが、venvが作成できればその後の設定はスムーズに進められました。 今回はVSI上のUbuntuサーバにADKをインストールしましたが、ご自身の端末に導入することで、より気軽にAgent開発を行えるかと思います。なお、今回は検証対象外でしたが、watsonx Orchestrate Developer Editionを利用する場合は、インストール要件としてやや高めのスペックが必要になる点にご注意ください。 検証時のADKのバージョンは1.5.1でしたが、7月末では1.8.0が最新バージョンとなっています。比較的頻繁にアップデートされますので適宜Release Notesをご確認ください。バージョンアップでコマンドオプションも変更される場合があるため、マニュアルを確認するかコマンドに`--help`を付与してパラメータを確認することをおすすめします。   お問い合わせ この記事に関するご質問は以下の宛先までご連絡ください。 エヌアイシー・パートナーズ株式会社 技術企画本部 E-mail:nicp_support@NIandC.co.jp   .anchor{ display: block; margin-top:-20px; padding-top:40px; }

2025年07月11日

【参加レポート】Domino Hub 2025

公開日:2025-07-11 みなさまこんにちは。ソリューション企画部 松田です。 2025年6月19日・20日と2日間に渡って開催された「Domino Hub 2025」に参加しました。これは HCL Ambassador有志が企画・実行する Dominoコミュニティイベントです。去年に続き、今回が3回目の開催となります。 昨年同様、今回もエヌアイシー・パートナーズはスポンサーとしてご支援させていただき、両日参加いたしました。そのレポートをお送りします。 目次 イベント概要 セッション内容 - Domino 14.5 リリース 特徴的機能とライセンス改定 -ロードマップ -お客様事例:曽根田工業様 最後に 関連情報 お問い合わせ イベント概要 「Domino Hub」は、HCL Ambassadorが主宰となり、Dominoの利用者、開発者、ソリューションベンダーが一堂に会するコミュニティイベントです。今回は1日目がオンライン、2日目はオンサイトのみの開催でした。 特に2日目は参加率が非常に高かったとのことで、会場も大変盛況でした。結婚式場としても使われている今回の会場は、中庭から陽の光が差し込み、解放感があるラグジュアリーな空間で、一般的なビジネスミーティングよりも上質な雰囲気が感じられました。 併せて展示ブースも設置され、Dominoアプリケーションがスマートフォンやブラウザで使えるようになる「HCL Nomad」などのHCL製品とともに、様々なビジネスパートナー様の多彩な関連製品が数多く展示・紹介されていました。 セッション内容 2日間で全22セッションが行われました。セッションはHCLをはじめ、HCL Ambassadorから、様々な開発ベンダー、製品ベンダー、エンドユーザーからの事例紹介などのセッション、そしてパネルディスカッションがありました。まずHCLからのセッション内でのトピックをお伝えします。機能のみならずライセンスまわりで大きなニュースもありました。 Domino 14.5 リリース 特徴的機能とライセンス改定 Domino Hubの2日前、2025年6月17日にリリースされました。 Domino IQ 特徴的な機能で最も注目すべき、今回もご説明に時間を割かれていたのが「Domino IQ」です。 一言で言えば「Domino内にローカルでLLMを持たせ、蓄積されてきたDominoアプリ内の情報も取り込み、セキュアな環境で生成AIを用いた業務を実現する」ものです。 企業内業務で生成AIをどのように実装し利用していくかは今、皆様の大きな関心事項であられると思います。自社のDomino環境内で、Dominoアプリケーションを用い、Notesクライアントからそれが実現できることになります。 (画像クリックで拡大) Nomad for Web COM対応 またNomad for WebがCOMに対応したことにより、これまではNotesクライアントだけでしかできなかったExcelやPowerPointを埋め込んだDiminoアプリもブラウザから利用できるようになりました。 ライセンスダッシュボード:DLAUの統合 これまでGitHubからダウンロードしてセットアップしていたDomino License Analysis Utility (DLAU)がDomino内にデフォルトで統合され、The Domino License Administration (DLA) となりました。 (画像クリックで拡大) ライセンス改定 そしてライセンスにも大きなベネフィットが付加されました。CCB Termライセンスにはこれまで「Domino Leapで5アプリケーションまで開発・利用が可能」という権利が含まれていましたが、2025年7月1日からその制限がなくなりました。すなわち「2025年7月1日以後有効なCCB Termライセンスをお持ちのお客様は、Domino Leapのフル機能が利用できる」となります。 同時に、Domino Leapライセンスの利用範囲であるHCL Enterprise Integrator(HEI)の利用権利も含まれます。これでCCB Termライセンスのみで、追加費用なく「ブラウザによるノーコード/ローコード開発」「基幹業務とDominoアプリケーションの連携」が可能になります。 さらにCCB Termで利用できるSametime Chatで添付ファイルと画像添付も可能になりました。 ロードマップ Domino、Notes、Verse、Nomadなど各ソリューションについてのロードマップも紹介されました。先々の計画は出てこないものですが、このようにHCLから明確に提示されることにより、Dominoをお使いのお客様はこれからも安心して利用を継続していただけると思います。 Dominoのロードマップ(画像クリックで拡大) Notesのロードマップ(画像クリックで拡大) Nomad, VerseといったエンドユーザーのUI部分が短期間でバージョンアップされていく。(画像クリックで拡大) お客様事例:曽根田工業 様 Dominoユーザーの有限会社曽根田工業 代表取締役 曽根田 直樹 様より、Domino事例のご講演がありました。曽根田様は2001年に静岡県磐田市で個人で起業され、切削機械の刃物を製造されています。曽根田様のお話で非常に興味深かった部分を抜粋致します。 "独立・起業するにあたり、前職で使っていたNotes/Dominoを自社でも使うことにした。現在は大手メーカーからの発注依頼や過去に作った品番の再発注など数多く受けており、当時のCAD/CAMのデータや販売管理データなどをDominoに入れて運用している。 オンプレミス環境のリスクやセキュリティ、IT技術のトレンドに合わせてクラウド化を検討した場合、Dominoからは離れたほうがいいのではないか?と思い、他社SaaS製品も検討しトライアルで利用登録をした。 しばらく触れずにいたところ、アカウント情報に登録していた支払い口座から利用料の引き落としがされていなかったためアカウントが凍結、さらに保存していたデータも突然消去されてしまっていた。支払いが滞っただけで中身まで削除されてしまうようなシステムには会社の大事な資産であるデータを載せられないので、「Dominoを『やめることを止める』判断」をした。" Dominoから他製品への移行を検討され断念されるお客様は多く、その理由は「Dominoの業務アプリケーションを、サービス内容を落とさずに別プラットフォームに移行することがはなはだ困難である」ということをよくお聞きしますが、この点にも意外な理由が潜んでいました。 最後に 初の2年連続開催となった今年のDominoHubは、コミュニティの力を象徴するかのような盛り上がりを見せました。14.5のリリース、生成AIの実装、ライセンス強化など、今後のDominoの発展を確信させる要素が数多く披露されたほか、実際のユーザー事例も非常に示唆に富むものでした。加えてロードマップの提示による未来への安心感も得られました。 DominoHubは単なる情報共有の場に留まらず、技術、コミュニティ、そしてビジネスの未来を交差させる特別な場となっています。これからもこのような取り組みが継続していき、多くのDominoユーザー、デベロッパー、そして販売パートナーが更なる価値を引き出していけることを楽しみにしています。これからもDominoと私たちの未来を築いていきましょう。 関連情報 「Domino Hub」大阪開催 Domino Hubは、2025年9月18日に大阪でのオンサイト開催が決定致しました。詳細およびお申し込みについては、こちらのリンクからご確認ください。 お問い合わせ エヌアイシー・パートナーズ株式会社E-mail:voice_partners@niandc.co.jp   .highlighter { background: linear-gradient(transparent 50%, #ffff52 90% 90%, transparent 90%); } .anchor{ display: block; margin-top:-20px; padding-top:40px; } .btn_A{ height:30px; } .btn_A a{ display:block; width:100%; height:100%; text-decoration: none; background:#eb6100; text-align:center; border:1px solid #FFFFFF; color:#FFFFFF; font-size:16px; border-radius:50px; -webkit-border-radius:50px; -moz-border-radius:50px; box-shadow:0px 0px 0px 4px #eb6100; transition: all 0.5s ease; } .btn_A a:hover{ background:#f56500; color:#999999; margin-left:0px; margin-top:0px; box-shadow:0px 0px 0px 4px #f56500; } .bigger { font-size: larger; } figcaption { color: #7c7f78; font-size: smaller; }

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