2016年06月

14

「IBM Watson Summit 2016」に参加してみた ~近未来が現実に、コグニティブソリューションの実態とは?~

皆さま、こんにちは。 企画部のWebサイト運営担当です。

今回は、5月25日、26日にグランドプリンスホテル新高輪で開催された「IBM Watson Summit 2016」の参加レポートをお届けします。
IBM主催の当イベントは全体で140以上ものセッションがありましたが、その中より、弊社の精鋭メンバー5名が出席したセッションを中心に、全般的な感想、体験内容を聞き、ブログ形式でまとめました。
 

総括

  • 全体的に事例とVIDEOを多用したセッションが多く、わかりやすく面白かった。
  • 充実した良いイベントである分、セッション数が多く、参加する際に興味分野に絞り込んでも時間が足りないのが残念だった。
  • コグニティブの世界が進展すると、この先には人の仕事が取って代わる時代になる怖さもあるが、今はその手前でイベントでは導入事例が多く、近未来が絵空事でないことをを実感!
  • 事例は国内様々な業界の先進モデルがあり、同業のお客様(エンドユーザー)は刺激になったであろう。

 

ユーザー企業による国内先進事例をピックアップ!

パネルディスカッションを含む基調公演では国内の事例が多く、その中でもメンバーの印象に残った事例をピックアップしました。

株式会社かんぽ生命保険

  • 保険の支払査定担当は通常10年くらいの経験が必要。年間200万件の対応があり担当者は2,000人いるが、ひとりあたり1日に5件が平均対応数であり、処理しきれない。
  • Watsonに過去の事例や保険の支払い条件などを勉強させることで人間が対応する件数は半分くらいに減らせそう。また、経験の若い人でも査定ができる。

東京大学医科学研究所

  • 遺伝子構造の解析からガン治療の研究をしている。
  • 人間の遺伝子が30億個。スパコンを利用することで100個のがん遺伝子まで絞り込むことが可能だが、更に絞り込むのは処理時間的に現実的ではない状況。ガンなどの医療論文を勉強したWatsonを利用すると、100個から可能性の高い6つの遺伝子に絞り込んで治療薬も含めて提示してくれる。実験段階ではなく、皮膚科等で難易度の高いがんの検診にすでに実用化している。

富士重工業株式会社

  • スバル自動車の運転支援システム「アイサイト」は自動ブレーキなどの効果により、人身事故を60%減らせた。さらに残りの40%を減らすべく、IBMと協業してWatson IoTのオートモーティブを活用していく 。

ソフトバンク株式会社

  • 自社内でWatsonを利用して、業務処理時間を半分に、生産性を倍にする「ソフトバンクブレイン」というプロジェクトを開始。
  • 一部コールセンターで効果を実証できたので、社内のシステムに導入していく。
  • 米国のジョージア工科大学の学生がWebの応答システムはWatsonとは気づかなかった。

みずほ銀行

  • ペッパー君がお客様の質問に対してデータを分析して、「当行のお客さま全体ではこのくらいの期間で繰り上げ返済してますよ」というアシストをしていた。
  • みずほ銀行の八重洲口で実際に動いている。

 

参加メンバーにインタビュー
「近未来を実現するコグニティブソリューションに何を感じたか?」

企画担当:皆様に聞きます。ユーザー事例を通して印象的だったことは何でしょうか?

 

コミュニケーションを通じて人を支援するコグニティブ

Kさん:かんぽ生命や東京大学の話を聞いて、スキルワーカーの負担軽減に繋がるソリューションでより良いサービスに繋がるという期待感がありました。しかし、同時に人間の仕事(職)が減ることにもなります。ただ、その怖さよりも具体的に、例えばガン治療の現場で役立っているという実益による可能性を感じました。

企画担当:そうですね。Kさんはまだ若いですからこれからの変革を見ていく世代としても感じることはあったと思います。

Kさん:はい。近年、ビッグデータ、IoTというデータの扱いに関するテクノロジーに着目され、そして機械学習、人工知能という人間の頭脳の領域に関するテクノロジーが融合し、その延長上にコグニティブがあるかもしれません。その先はどうなるのか。コグニティブに関しては、人工知能による自動化というよりも、コミュニケーションを通じて人間を支援する存在、システムであると感じました。

 

Watson IoTの存在

Hさん:IoTという切り口では、スバル自動車の取り組みが、Watson本体だけでなく、 Watson IoTを活用していくという印象だった。

企画担当:どうしてですか?

Hさん:自動車だけでなく、数十億にわたるデバイスやセンサーなどのモノが相互に接続し連携したIoTの世界では、その膨大なデータを意味のある、役に立つデータにするために即時に解析する仕組みが必要で、そこにコグニティブソリューションが期待されます。さらにクラウド側で処理する仕組みとしてWatson IoTにスバル自動車は期待しているのだと思いました。

 

今後のIT部門は大変?

Jさん:セキュリティとコグニティブの相性は良いが、聞いていて辛い世界になるなと思った。

企画担当:辛い世界ですか?

Jさん:IT部門は大変だという意味です。何故ならば、セキュリティは社内だけを考えていてはダメでクラウド、APIという社外との連携も考えて対応しなければならないのです。この対応は運用として一度はじめると止めることができないため、情報管理者の立場で考えると大変だなと思いました。

企画担当:どんな大変さがあるのでしょうか。

Jさん:あるセッションでIBMのスピーカーが、中外製薬様はセキュリティ事故が置きた場合の避難訓練(シミュレーション)を実施しており、IBMでも実施していきたいと話していました。
例えば、社員のPCがマルウェアに感染してしまい、アラートが上がった、そのとき、他の社員はどう対処すべきかなどは訓練しておかないと行動に移せないかもしれませんね。

Jさん:同様にデプロイ(開発)の現場も難しくなります。オンプレ、クラウド両方のデプロイシステムの整合性、そのプログラム(のバージョン管理等)を人が管理する限界を超えてきている。そこでIBMはアーバンコードという製品をIBMは買収した。

企画担当: IBM UrbanCode、アプリケーションのリリースを自動化するソフトウェアですね。今後はこういった製品も注目ですね。

 

人間と寄り添う

企画担当:最後の質問です。人間とWatsonのコミュニケーション、インターフェースについてどのように感じましたか?

Jさん:Watsonは最近テレビCMも放映されていますね。渡辺謙さんとWatsonが会話しているCMをみました。

企画担当:私もあのCMは好きです。ただ、Watson側はモニターのようなデバイスじゃないですか、あれだとやはりコンピューターと会話しているんだなと思ってしまします。

Aさん:パネルディスカッションで話していた、ジョージア工科大学の学生全員がWeb上で会話している相手が人間だと思っていたという点がすごいですね。また、みずほ銀行の話では、住宅ローン窓口にWatsonと繋がったペッパー君がいて、お客さまの応対するというドラマ・CMのようなストーリーがある動画が印象的でした。

企画担当:人間とのインターフェースという点では今後、もっともっといろいろなアイデアが出てきそうですね。皆様ありがとうございました。

 

トレンドウォッチ:気になった用語を解説!

Watson Summitでは様々な用語が出てきましたが、その中でもIBMのメッセージとつながる、気になった用語について解説します。
注)用語の解説内容はイベント内での意味を含め、エヌアイシー・パートナーズ(株)メンバーの独自の解釈です。

Open for Data
天気予報、X(旧称:Twitter)のデータをIBMが公開。開発のエコシステムに参加しているビジネス・パートナーが持っているDataも提供し合う。そして分析手法もエコシステムでオープンに扱われる。

Digitization(ディジティゼーション)
従来型のデータを集める、ITでビジネス強化する取り組み

Digitalization(ディジタリゼーション)
分析も含めて意味のあるデータに価値を創造する取り組み。データに基づく知性を担うのがコグニティブソリューション。「ポール与那嶺氏はゼネラルセッションでこれらの用語を数回つかっていた(Sさん)」

Watson SummitにおけるWatsonという用語の位置づけ
今後のIBM製品のストラテジーにおいて、その製品の裏に追加していく機能として存在する”Watson”と解釈すると分かりやすかった。

Data Lake
ただ集まっただけのデータ。「セッションではデータレイクとカタカナ表記だったこともありピンとこなかった」「EMCが使い始めた言葉だが最近は用語として広まってきている」

Dark Web
いわゆる裏稼業においてハッキングした情報の取引をしている世界。「例えば、カルテの情報が1件60$で売買されており、クレジットカードの情報より高くなっている。犯罪であるが、市場の情報価値としてみると、今までと違う時代の象徴でもある。」
 

Watsonをビジネスに活用する立場として

IBMはコグニティブによって、「このような世界になるよ」と提示しており、ベンダーはエコシステムの参加によるビジネスモデルを提唱しています。IBMのビジネスパートナーはどのようにトランスフォーメーションすれば良いかを考えるきっかけになるイベントだったと言えます。

 

編集後記

筆者はイベントに参加できなかったのですが、参加メンバーの話を聞いているとIT業界のイベント・セミナーの感想よりも、近未来のSF映画を見たあとの興奮が伝わってくるような話が多く、人の感情を揺さぶるソリューションとしてコグニティブには今後も目が離せないと感じました。

最後までお読みいただきありがとうございました。

Watsonに関連したページ
sc_merit baner02.375_500psd
特集 IBM Watson 「コグニティブシステムによる意思決定、質問応答の仕組みを知る」

 

IBM Watson Summit 2016 のイベントサイトはこちら

IBM、IBMロゴ、ibm.com、IBM Watson、POWERおよびPower Systemsは、世界の多くの国で登録されたInternational Business Machines Corporationの商標です。他の製品名およびサービス名等は、それぞれIBMまたは各社の商標である場合があります。

その他の記事

2025年07月11日

【参加レポート】Domino Hub 2025

公開日:2025-07-11 みなさまこんにちは。ソリューション企画部 松田です。 2025年6月19日・20日と2日間に渡って開催された「Domino Hub 2025」に参加しました。これは HCL Ambassador有志が企画・実行する Dominoコミュニティイベントです。去年に続き、今回が3回目の開催となります。 昨年同様、今回もエヌアイシー・パートナーズはスポンサーとしてご支援させていただき、両日参加いたしました。そのレポートをお送りします。 目次 イベント概要 セッション内容 - Domino 14.5 リリース 特徴的機能とライセンス改定 -ロードマップ -お客様事例:曽根田工業様 最後に 関連情報 お問い合わせ イベント概要 「Domino Hub」は、HCL Ambassadorが主宰となり、Dominoの利用者、開発者、ソリューションベンダーが一堂に会するコミュニティイベントです。今回は1日目がオンライン、2日目はオンサイトのみの開催でした。 特に2日目は参加率が非常に高かったとのことで、会場も大変盛況でした。結婚式場としても使われている今回の会場は、中庭から陽の光が差し込み、解放感があるラグジュアリーな空間で、一般的なビジネスミーティングよりも上質な雰囲気が感じられました。 併せて展示ブースも設置され、Dominoアプリケーションがスマートフォンやブラウザで使えるようになる「HCL Nomad」などのHCL製品とともに、様々なビジネスパートナー様の多彩な関連製品が数多く展示・紹介されていました。 セッション内容 2日間で全22セッションが行われました。セッションはHCLをはじめ、HCL Ambassadorから、様々な開発ベンダー、製品ベンダー、エンドユーザーからの事例紹介などのセッション、そしてパネルディスカッションがありました。まずHCLからのセッション内でのトピックをお伝えします。機能のみならずライセンスまわりで大きなニュースもありました。 Domino 14.5 リリース 特徴的機能とライセンス改定 Domino Hubの2日前、2025年6月17日にリリースされました。 Domino IQ 特徴的な機能で最も注目すべき、今回もご説明に時間を割かれていたのが「Domino IQ」です。 一言で言えば「Domino内にローカルでLLMを持たせ、蓄積されてきたDominoアプリ内の情報も取り込み、セキュアな環境で生成AIを用いた業務を実現する」ものです。 企業内業務で生成AIをどのように実装し利用していくかは今、皆様の大きな関心事項であられると思います。自社のDomino環境内で、Dominoアプリケーションを用い、Notesクライアントからそれが実現できることになります。 (画像クリックで拡大) Nomad for Web COM対応 またNomad for WebがCOMに対応したことにより、これまではNotesクライアントだけでしかできなかったExcelやPowerPointを埋め込んだDiminoアプリもブラウザから利用できるようになりました。 ライセンスダッシュボード:DLAUの統合 これまでGitHubからダウンロードしてセットアップしていたDomino License Analysis Utility (DLAU)がDomino内にデフォルトで統合され、The Domino License Administration (DLA) となりました。 (画像クリックで拡大) ライセンス改定 そしてライセンスにも大きなベネフィットが付加されました。CCB Termライセンスにはこれまで「Domino Leapで5アプリケーションまで開発・利用が可能」という権利が含まれていましたが、2025年7月1日からその制限がなくなりました。すなわち「2025年7月1日以後有効なCCB Termライセンスをお持ちのお客様は、Domino Leapのフル機能が利用できる」となります。 同時に、Domino Leapライセンスの利用範囲であるHCL Enterprise Integrator(HEI)の利用権利も含まれます。これでCCB Termライセンスのみで、追加費用なく「ブラウザによるノーコード/ローコード開発」「基幹業務とDominoアプリケーションの連携」が可能になります。 さらにCCB Termで利用できるSametime Chatで添付ファイルと画像添付も可能になりました。 ロードマップ Domino、Notes、Verse、Nomadなど各ソリューションについてのロードマップも紹介されました。先々の計画は出てこないものですが、このようにHCLから明確に提示されることにより、Dominoをお使いのお客様はこれからも安心して利用を継続していただけると思います。 Dominoのロードマップ(画像クリックで拡大) Notesのロードマップ(画像クリックで拡大) Nomad, VerseといったエンドユーザーのUI部分が短期間でバージョンアップされていく。(画像クリックで拡大) お客様事例:曽根田工業 様 Dominoユーザーの有限会社曽根田工業 代表取締役 曽根田 直樹 様より、Domino事例のご講演がありました。曽根田様は2001年に静岡県磐田市で個人で起業され、切削機械の刃物を製造されています。曽根田様のお話で非常に興味深かった部分を抜粋致します。 "独立・起業するにあたり、前職で使っていたNotes/Dominoを自社でも使うことにした。現在は大手メーカーからの発注依頼や過去に作った品番の再発注など数多く受けており、当時のCAD/CAMのデータや販売管理データなどをDominoに入れて運用している。 オンプレミス環境のリスクやセキュリティ、IT技術のトレンドに合わせてクラウド化を検討した場合、Dominoからは離れたほうがいいのではないか?と思い、他社SaaS製品も検討しトライアルで利用登録をした。 しばらく触れずにいたところ、アカウント情報に登録していた支払い口座から利用料の引き落としがされていなかったためアカウントが凍結、さらに保存していたデータも突然消去されてしまっていた。支払いが滞っただけで中身まで削除されてしまうようなシステムには会社の大事な資産であるデータを載せられないので、「Dominoを『やめることを止める』判断」をした。" Dominoから他製品への移行を検討され断念されるお客様は多く、その理由は「Dominoの業務アプリケーションを、サービス内容を落とさずに別プラットフォームに移行することがはなはだ困難である」ということをよくお聞きしますが、この点にも意外な理由が潜んでいました。 最後に 初の2年連続開催となった今年のDominoHubは、コミュニティの力を象徴するかのような盛り上がりを見せました。14.5のリリース、生成AIの実装、ライセンス強化など、今後のDominoの発展を確信させる要素が数多く披露されたほか、実際のユーザー事例も非常に示唆に富むものでした。加えてロードマップの提示による未来への安心感も得られました。 DominoHubは単なる情報共有の場に留まらず、技術、コミュニティ、そしてビジネスの未来を交差させる特別な場となっています。これからもこのような取り組みが継続していき、多くのDominoユーザー、デベロッパー、そして販売パートナーが更なる価値を引き出していけることを楽しみにしています。これからもDominoと私たちの未来を築いていきましょう。 関連情報 「Domino Hub」大阪開催 Domino Hubは、2025年9月18日に大阪でのオンサイト開催が決定致しました。詳細およびお申し込みについては、こちらのリンクからご確認ください。 お問い合わせ エヌアイシー・パートナーズ株式会社E-mail:voice_partners@niandc.co.jp   .highlighter { background: linear-gradient(transparent 50%, #ffff52 90% 90%, transparent 90%); } .anchor{ display: block; margin-top:-20px; padding-top:40px; } .btn_A{ height:30px; } .btn_A a{ display:block; width:100%; height:100%; text-decoration: none; background:#eb6100; text-align:center; border:1px solid #FFFFFF; color:#FFFFFF; font-size:16px; border-radius:50px; -webkit-border-radius:50px; -moz-border-radius:50px; box-shadow:0px 0px 0px 4px #eb6100; transition: all 0.5s ease; } .btn_A a:hover{ background:#f56500; color:#999999; margin-left:0px; margin-top:0px; box-shadow:0px 0px 0px 4px #f56500; } .bigger { font-size: larger; } figcaption { color: #7c7f78; font-size: smaller; }

2025年06月30日

APMとARMのシームレスな連携で効率的な統合アプリケーション運用管理を実現する ~Instana+Turbonomicのシナジー~

公開日:2025-06-30 ワークロードが変化しつづけるハイブリッド・クラウド環境下においては、アプリケーションスタックが複雑化し、分散され、流動的となり、それがアーキテクチャーと、正しい設計および変化する需要に対応できる十分なリソースの提供を難しくしています。 複雑化したIT環境で、システムの正常性やパフォーマンスリスクに対応するためには、アプリケーションの運用管理において、アプリケーションとインフラ両方の情報を一元管理します。そして、統合的に参照することができ、システムの変調を見逃さない高度な可観測性を実現するアプリケーションの運用の高度化が重要となります。 本コラムでは、アプリケーションパフォーマンス監視(APM)ツール「IBM Instana Observability」(以下 Instana)とアプリケーション・リソース管理(ARM)ソリューション「IBM Turbonomic」の連携で生まれる、統合アプリケーション運用管理の相乗効果について紹介します。 目次 1. 複雑化したIT環境に求められるAPMによる可視化とアプリケーションの運用高度化 2. アプリケーションリソース管理の課題を解決するARMの活用 3. APMとARMの統合が可能にするアプリケーションの運用管理の効率化 4. InstanaとTurbonomicの連携による、一元的な管理の相乗効果 5. InstanaとTurbonomicの連携による、統合的なアプリケーションの運用管理の価値 6. まとめ お問い合わせ 1. 複雑化したIT環境に求められるAPMによる可視化とアプリケーションの運用高度化 アプリケーションの稼働環境がオンプレミスだけでなくクラウド環境へ拡大しています。クラウド上では様々なクラウドネイティブなサービスが稼働しており、それを利用することはコスト面・スピード面で必然となっています。しかし、クラウドネイティブ環境が増え続けることで複雑化しがちであり、そのような複雑なクラウドネイティブ環境の運用監視をいかに効率的に行うか、がビジネスにおいて大きな課題となっています。 システムを構成するハードウェアとソフトウェアが正常に稼動しているかについて、個々の状態を把握することに主眼がおかれた従来型モニタリングは、ハードウェアの障害やソフトウェアの異常を素早く検知することに役立つ一方で、ハードウェアの故障やサービスの停止をともなわないアプリケーションの性能低下などが検知することが難しく、原因の特定に非常に多くの時間がかかります。 また、従来型モニタリングの多くは、各環境で利用されている言語やプログラムにあわせた事前の導入と構成・設定が必要なだけではなく、サービス間の依存関係が把握できず、固定の閾値を超えたかどうかの確認しかできないため、ダイナミックに変化しつづけるクラウドネイティブ環境に追随していくことは困難です。 これに対して、アプリケーションのパフォーマンスを監視し、問題が発生した際に迅速に検知し、解決するのが、アプリケーションパフォーマンス管理(Application Performance Management: APM)による「アプリケーションの運用高度化」です。 APMにより、アプリケーションが本番環境で正常に動作していることをモニタリングして、システムやアプリケーションが利用者に提供している「サービスの品質」と「システムの状態」を可視化し、トランザクションのパフォーマンスの状態を測定するのが可能になります。 IBMのAPMツール「Instana」は、「自動化」「コンテキストの把握と解析」「インテリジェントなアクション」の特長を持ち、デジタルプラットフォームの効率的な管理および迅速な障害個所の特定など、クラウドネイティブ環境の可視化を実現しアプリケーションの可用性向上に貢献します。 2. アプリケーションリソース管理の課題を解決するARMの活用 一方、アプリケーションが安定したパフォーマンスを提供し続けるには、アプリケーションがユーザからのリクエストを処理するため必要なリソースを確保することが前提条件となります。 そのためには、適切なリソースを割り当て、必要に応じて増減させる管理をする必要があります。その上で、利用者の要望を実現する高度な機能とストレスのない使いやすいUX/UIの提供、24時間365日無停止での安定したサービスの継続、急激なアクセスの増加にも耐える拡張性や俊敏性が求められます。さらには、システム上で実行されるアプリケーションが、事前に定義されたセキュリティポリシーやルールに完全に適合していなくてはなりません。 しかし、アプリケーションスタックが複雑化し、ワークロードが変化しつづけるハイブリッド・クラウド環境下で、従来のインフラ中心のアプローチや手動ツールを使った人手主体の管理や監視手法だけで24時間365日アプリケーションリソースを維持管理し、適切なリソースを予測し確保し続けることは非常に困難です。 また、リソース不足にならないように、必要以上の余剰な CPU/メモリ/ディスクなどのサーバリソースを持たせることは、コスト面で大きな負担となります。さらに、多頻度のリリースに対応しうる高速・高効率で、継続的な品質担保に対応することが求められる一方で、高スキルのIT人材が、慢性的に不足していることも現状の管理体制の大きな負担となっています。 これに対して、コンピュートリソースの不足を早期に把握し、最適化を行い人手をかけずに適切な意思決定を適切なタイミングで行うことで、アプリケーションのレスポンスを維持するのが、アプリケーションリソース管理(Application Resource Management : ARM)です。 IBM の AI駆動型ARMソリューション「IBM Turbonomic ARM」は、アプリケーションからインフラまでをフルスタックで可視化し、アプリケーションが必要とする ITリソースを最適化します。そして、AI を用いてアプリケーションパフォーマンス、コンプライアンスおよびコストの継続的な管理を可能にします。 3. APMとARMの統合が可能にするアプリケーションの運用管理の効率化 アプリケーション運用管理の効率化は、宣言的に定義されたシステムのあるべき状態にシステムを制御する各種のオーケストレータによって、APMとARMを活用し徹底して自動化することで実現できます。ただし、システムで現在起きている問題のリアルタイムでの監視や、オーケストレータを介した問題へ自動に対処することはもちろん、あるべき姿へ迅速に回帰する「クローズドループサイクル(循環生産)」型のプロセスを実現することが不可欠となります。 このプロセスにおいて、APMとARMをそれぞれ独立した状態で活用するだけでは、目的に応じた画面の切り替えやツールごとの設定・操作などに非常に手間が掛かります。 APMであるInstanaとARMであるTurbonomicを連携することで、「統合的なアプリケーションの運用管理」を実現し、運用管理作業効率を向上することで以下のような効果を発揮します。 (1)ワンストップでインフラやアプリUXなどのパフォーマンスを統合管理できる (2)素早く問題の発生を検知し原因を特定できる (3)新規の監視対象を自動で認識でき個別の作業が不要となる (4)メンテナンスに工数がかからない 4. InstanaとTurbonomicの連携による、一元的な管理の相乗効果 InstanaとTurbonomicを連携させ、双方向の統合を設定することで、画面を切り替えることなく、1ヵ所・1画面の一元化された操作で、効率的に統合的なアプリケーションの運用管理を行うことが可能です。 InstanaとTurbonomic の連携による相乗効果には、次のようなものか挙げられます。 (1)アプリケーションレベルからインフラレベルまで統一管理できる TurbonomicにInstanaの情報を連携することにより、1つの画面でインフラからアプリケーションレベルまでアプリケーション・スタック全体を統合的に可視化し、操作もシームレスに連携することで、パフォーマンスのリスクを把握しリソースを最適化するための積極的な推奨策を得るとともに、リスクの軽減や迅速な判断をすることが可能になります。 (2)故障が発生する前に予兆を検知して事前に対応できる アプリケーション視点でのパフォーマンス・障害分析とインフラ観点でのリソース分析と最適化を同時に行うことで、障害の発生を未然に防ぐための対策を実施できるようになるため、アプリケーションの可用性を向上することができるようになります。 そのため、リソースの輻輳を最小限に抑えることができ、その効果として、平均修復時間(MTTR)と平均故障間隔(MTBF)を改善し、機会損失を最小限に抑えます。 (3)パフォーマンスに影響するリソースを理解し対応ができるようになる Instanaは、Turbonomicの実行したアクションと監視対象アプリケーションのパフォーマンスへの影響について、履歴の記録を得ることができます。また、Turbonomicによって提供されるリソース自動最適化機能を統合し、IT環境全体の集約された性能を最適な状態に維持します。これにより、ユーザは、単一の場所から一元的にアプリケーションを監視し、リアルタイムのデータと需要に基づいた状況に合わせて、需要に則したリソース割りあて・確保の決定を実行することができます。 InstanaとTurbonomicの統合によって、クラウド環境やKubernetesのリソース費用を正確に把握できるようになるため、十分に活用されていないリソースやオーバープロビジョニングされたリソースを最適化するための推奨案が得られます。これを元に、ハイブリッド(セルフ・マネージド)やクラウドネイティブ、Kubernetesのワークロードのパフォーマンス改善、効率化、コンプライアンス対応、コスト削減を促進し、クラウドの無駄を削減するとともに、その効果を向上させることが可能になります。 5. InstanaとTurbonomicの連携による、統合的なアプリケーションの運用管理の価値 このようにInstanaとTurbonomicを連携させることで、お客様は、インフラ・アプリケーションを統合的に可視化できるようになるだけでなく、アプリケーションのパフォーマンスリスクに素早く対応することが可能になります。 また、Turbonomicと連携できるAPMはInstanaだけではなく、お客様が、現在お使いになっているAPMとも連携することも可能です。さらには下図のロードマップのように、APM+ARMだけでなく、他のソリューションとも連携させることで、お客様のアプリケーションの運用高度化をさらに進め、ビジネスにより大きな価値をもたらすことができます。 図1:InstanaとTurbonomicの連携によるアプリケーションの運用高度化 6. まとめ このように、InstanaとTurbonomicを連携させた一元的な操作によって、複雑化したIT環境においても、ワンストップでインフラやアプリUXなどを監視・管理し、リソースの無駄やクラウド費用の増加なしに、アプリケーションに最適なリソースを動的に割りあてることができます。これにより、効率的なアプリケーションの管理の実現と、期待どおりのパフォーマンスを発揮して顧客のニーズを満たすことが可能になります。 エヌアイシー・パートナーズ株式会社は、IBMソフトウェア(SW)とハードウェア(HW)の認定ディストリビュータとして、InstanaおよびTurbonomicに関する支援が可能です。 お客様のニーズや要件に合わせて、IBMのSWとHWを組み合わせた最適な提案やカスタマイズの支援、IBM製品の特長・利点をお客様にわかりやすく説明し、お客様・パートナー様のビジネスに最適な提案でサポートいたします。 「シナジー効果の高いInstanaおよびTurbonomicに絡めたセールスをサポートしてほしい」といったご要望があれば、いつでもお気軽にお問い合わせ・ご相談ください。 お問い合わせ この記事に関するお問い合せは以下のボタンよりお願いいたします。お問い合わせ   .highlighter { background: linear-gradient(transparent 50%, #ffff52 90% 90%, transparent 90%); } .anchor{ display: block; margin-top:-20px; padding-top:40px; } .btn_A{ height:26px; } .btn_A a{ display:block; width:100%; height:100%; text-decoration: none; background:#eb6100; text-align:center; border:1px solid #FFFFFF; color:#FFFFFF; font-size:16px; border-radius:50px; -webkit-border-radius:50px; -moz-border-radius:50px; box-shadow:0px 0px 0px 4px #eb6100; transition: all 0.5s ease; } .btn_A a:hover{ background:#f56500; color:#999999; margin-left:0px; margin-top:0px; box-shadow:0px 0px 0px 4px #f56500; } .bigger { font-size: larger; }

back to top