こんにちは。2019年7月4日(水)に大手町プレイスカンファレンス・センタービルで開催された「IBM i World 2019 東京」 に、高橋・河野の2名で参加してきました。
約400人収容の会場は満席、会場参加以外にも LIVE 配信で約200人が聴講との事で、IBM i World への関心度の高さが見受けられます。2019東京のアジェンダは AI にフォーカスしており、IBM i の方向性が示されていると感じました。
アジェンダ
- I (アイ=わたし=お客様ご自身)、AI、IBM i。基幹業務にAIを実装するための最適解とは
- 【お客様講演】検証!AI認識画像は基幹システムを強化できるのか
- 【お客様講演】全社員参加によるデータ分析の実現!データxAIによるDXの実現に向けて
- 【パネルディスカッション】『RPG vs .Java』より快適なビジネスアプリ開発言語は
I (アイ=わたし=お客様ご自身)、AI、IBM i。基幹業務にAIを実装するための最適解とは
セッション開始時に、毎度のことながら、IBM 久野さんによる IBM i に関する聴講者のイメージ調査があり、「堅牢性」、「継承性」、「信頼性」、「手間いらず」等が上位ワードとして浮かび上がっておりました。従来からの IBM i のイメージ通りですが、最終講演でどのように変わるのか、あるいは変わらないのか、といった点が毎度の楽しみでもあります。
当講演のキーワードは”アジリティ”です。IBM i は、その特長である、HW+OS+DB+Application の垂直統合に加え、リアルタイムで AI /モバイル/ DB / Application の水平連携を通じてシステムをアジャイル開発することで、精度を高めつつスピードアップした対応を実現させます。さらに Application では既存資産を活かしつつ機能強化を図れるのが、IBM i です。
【お客様講演】
検証!AI認識画像は基幹システムを強化できるのか
お客様講演の1つ目は、コンビニ向け食品や冷凍総菜等の食品製造の会社です。
コンビニでの商品の入れ替えは年間1000品目以上あり、さらに今後も増え続けていくことは確実で、それに伴った労働力不足の問題がますます深刻化することが懸念されています。また、不良品の発生は経営に多大な影響を及ぼすため、検品・検査の強化が経営課題でもあります。
そこで検品・検査業務への AI 活用を検討しましたが、社内には AI の知識を持った人材がおらず、メンバーとして加入している IBM ユーザー研究会に相談してみましたが、研究会メンバーにも AI に精通した人材がいなかったため、研究会の研究テーマとして取り上げてもらい検討を進める事となりました。
その活動の中で、データサイエンティストなしでディープラーニングが可能であり、学習データの加工、ディープラーニング学習モデルの作成、推論と表示を GUI で誰でも実行できる PowerAI Vision であれば今回のニーズにマッチするのではないかとの推論に基づき、PowerAI Vision を用いての検証を進めることになりました。
「サンドイッチ製造の最終検品作業で画像解析を用い、NG 商品を検出して作業員により最終確認を行う」というのが命題でしたが、NG となるべき状態が検知できずに OK となるケースがあり、改善が必要でした。
そこで、精度を高める施策として「画像判定コンテスト」を実施しました。コンテスト参加者が競い合い試行錯誤した結果、チューニングの勘所として特徴的な NG 画像の学習データ化、一つの画像データを角度を変えて枚数を増やし、学習データを増やす(学習データ数が多いほど、ディープラーニングは精度が高まる)、色を付けずモノクロにする(色の判断要素は、今回のケースでは無駄な要素になるため無くす)等様々なアイデアが生まれ、精度向上に繋がりました。
AI では「100%の精度ではなく、80%を目指して最後は人間が判断する」という完全自動化ではなく、支援システムの位置づけとした事が成功につながった要因とのことでした。
今回得られた知見を参考に、今後は IBM i の基幹システムと AI の連携を深め AI 活用の領域を拡げていく予定とのことです。
講演者も、「AI 活用がどこまで会社全体の生産性向上に寄与できるか」ということを期待されていました。
【お客様講演】全社員参加によるデータ分析の実現!
データxAIによるDXの実現に向けて
お客様講演の2つ目は、ポリエチレン製ゴミ袋、食品保存袋、水切り袋、紙製ゴミ袋などの製造・販売の会社です。
本来の分析の目的とは、何が起きているのかを “早く知り”、“早く施策を打つ”事です。そのためには、「何のために分析を行うのか」、「現状の理解」、「目的の確認」、そして何と言っても「施策の実施」が重要であるということを強調されていました。
以前のシステムは基幹システムを IBM i で運用し、データ分析はバッチ処理でした。DWH サーバーは別途構築した専用のシステムで、IBM i のデータと連携していました。その結果、データ準備からバッチ計算で解析するまでの流れで大変時間がかかっていました。
そこで、データ準備から解析開始までのタイムラグによるデータの齟齬を発生させず、かつ、分析プログラム開発のためのスキルをカバーしてくれる Db2 Web Query for i を2010年に採用されました。筆者が素晴らしいと感じたのは、この分析システムに「ウェブQ」という愛称まで作り、社内の誰でも使えるところまでデータ分析業務を全社に展開・浸透されていたことです。そうした「全員参加によるデータ分析の実現」が、より高度なデータ分析業務へ進む原動力になったのであろうと納得いたしました。
次のステージである機械学習によるデータ分析は、ハードルが高かったものの、2019年5月 から1ヶ月間 H2O Driverless AI で検証を行ったことにより、月別販売数予測(時系列データ)で従来の経験者による予測を上回る結果を出せました。
30名の営業がそれぞれ、毎月、数日をかけて計算している予測業務のワークロードを削減し、かつ予測精度も向上するため、営業生産性の大幅な向上が期待されるとのことです。
今後は、2020年2月の本番稼働を目指してデータ整備等の準備を進めていくとともに、デジタル化のステップアップを続けていきたいという意気込みを感じました。
【パネルディスカッション】
『RPG vs .Java』より快適なビジネスアプリ開発言語は
パネルディスカッションは、RPG と Java のプロ同士による高質なデュエットのように味わい深いものでした。一方は、IBM iという閉じた世界の中で60年間使い続けられた RPG であり、一方は、オープン・システムの旗手として、あらゆるデバイスで稼働する命題をもった Java です。
しかし、どちらもアプリケーション開発の生産性向上とシステム安定性を追求し、どちらが優れているという競合ではなく、企業での開発アジリティを高めることに注目しているというディスカッションになっていきました。既存の RPG コードをすべて Java 化するのではなく、変わらない RPG の基幹系ロジック部分などはそのまま生かして利用し、新しい機能やユーザーインターフェース部分は Java 化するのが効率的ではないかとの結論で、双方言語のプロ同士で合意されていました。
これを老舗の温泉旅館のリノベーションに例えて、「古い部分を作り直すのではなく、よい良いところは残しつつ、現代的な空間や機能追加部分を建て増した方がより優れた旅館になるのでは」という説明に、多くの方が頷かれていました。
今後 DX と呼ばれるデジタルトランスフォーメーションが進むと、基幹系業務をクラウドやモバイルにて利用しなければならなくなります。そのようになったとき、「基幹系業務を一から作り直すのではなく、一部を取り込む方が生産性も安定性も高くなるだろう」というディスカッションは、IBM i ユーザーやパートナー企業の方々にとって朗報だったと思われます。
会場の皆さんは、食いつくように壇上の一挙手一投足に反応されていました。
最後に
全過程終了後、再び IBM 久野さんによる IBM i に関する再度のイメージ調査があり、上位キーワードは「アジリティ」や「温泉旅館」に変わっておりました。
IBM i の未来を会場の皆様と共有した、一体感を感じる今年の IBM i World でした。
※この記事は2019年7月5日時点の情報をもとに作成しています。
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