こんにちは。てくさぽBLOGメンバーの河野です。
今回は2019年6月26日(水)~28日(金)の3日間、日本アイ・ビー・エム株式会社本社にて開催されました「Power Systems テクニカル・ワークショップ 2019」に参加してきました。
このワークショップは年に1度 米国の IBM Power Systems の技術担当者が招聘され、最新情報だけではなく、IBMの今後の戦略と方向性を直接聞けるワークショップになります。今年は IBM ラボサービスから実際にお客様先でデリバリーを実施している技術者によるセッションもありました。複数の OS を統合する Power Systems の特徴などを米国の技術者から直接聞けるため、オーディエンスも多く、非常に盛り上がりました。このあたりからも、参加者の期待が伝わってきたワークショップでした。
3日間の内容は、以下の通りです。
Day 1 26日(水) |
【Cognitive/AI, High Availability】
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Day 2 27日(木) |
【Power Systems, AIX and IBM i】
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Day 3 28日(金) |
【IBM i】
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全体感としては、新製品発表などの目新しい情報はありませんでしたが、最新情報と Power Systems の進む方向性という点でハードウェアというより ソフトウェアを含めたクラウドを意識したメッセージを打ち出しており、今まで以上に クラウドを中心としたソリューションへの関心度を高くする必要があると感じました。また何よりも講師の方の説明に力が入っていたのが記憶に残っています。
以下、特にメッセージの強かった Day 1、 Day 3 のセッションについてお伝えします。
Day 1
Power Systems Software 最新情報では、クラウドへの移行を容易にするツールが増えている点が印象的でした。特に印象に残っているツールとしては、Private Cloud Management での PowerVC(プライベートクラウド向け管理ツール)や CMC(IBM Cloud Management Console)です。
PowerVCについて
PowerVC の説明では、サーバーや ストレージ 以外に VMware Cloud も管理可能 (VMware vRealise) なツールであり、ユーザーニーズに応じた Edition を揃えている、とのことでした。以下の1~3の内容からもクラウドの技術がベースになってきていることがわかりますし、今後ますます積極的に取り入れていく方針を打ち出していました。
PowerVCのEditionラインナップ
1 | Power VC Standard Edition | 数分で VM を Deploy、VM の自動回復など |
2 | IBM Cloud Power VC Manager | Power VC Standard Edition に加え 単一クリックによる展開 |
3 | IBM Cloud Power VC Manager for SDI | IBM Cloud VC Manager に加え IBM Spectrum Scale を包含 ※Data Management Edition 5.0 |
PowerVC バージョン1.4.3
先月にあたる6月21日にはバージョン 1.4.3 がリリースされ、バージョン1.4.3では 次の1~6の機能が提供されるなど、クラウド以外にもマルチベンダー(SW)を意識しています。
- 全 POWER9 エンタープライズサーバーをサポート
- 冗長化された HMC の自動フェールオーバーをサポート
- Dell EMC の PowerMAX のサポート
- 日立の GAD をサポート
- VMAX REST のアップグレード
- OpenStack Stein のサポート
上図のように、PowerVC は Software-Defined Network、Software-Defined Storage、Software-Defined Compute と連携され、機能拡張が可能な次世代のシステム基盤となります。
IBM Cloud Management Console (CMC)について
CMC は SaaS ベースの管理ツールであり、複数のシステム、地域、データセンターに跨った環境でも、統合ビューの提供を可能にするツールです。運用管理において クラウド環境の管理を可能にする機能が備わってきています。
その他のトピック
さらに POWER9 のリリースから PowerVM Enterprise Edition(Power VM EE) は必須機能となっており、これによりいつでも クラウドへの移行が可能となります。今後ますます多くなるワークロード(多くのワークロードを処理する必要がでてくる)を最適なリソースで対応していく基盤には、POWER9 をベースとしてクラウドや仮想化技術を取り入れる方向であることを打ち出していました。
Power HA for Linux/VMRM HA and DR では、VMRM (VM Recovery Manager) HA と VMRM DR を PowerHA の廉価版ソリューションとして発表されている点や、 PowerHA for Linux が AIX 版より廉価な点からも、今後のセリングでクラウドを意識した提案が多くなってくると考えます。(PowerHA に GUI のツールが備わっているというのは個人的には大きなニュースでした。)
また、データ量が増え続け、計算機能に強いインフラの必要性が増すことが予想されるため、業界の Hadoop デファクトである Hortonworks と IBM インフラ・AI ソリューションのコラボレーションに対する需要が高まるという説明がありました。一連のイメージとしては、まず IBM Cloud Private for Data をベースに、Watson Studio でベースモデルを構築します。次に Watson Machine Learning で、マシンラーニングやディープラーニングのモデルの管理・展開を実現します。最後に Watson OpenScale でモデルの監視・運用を実施する、という流れです。AI のポートフォリオの(リマインドの観点での)説明もあり、この説明でスッキリとソフトウェアの整理ができました。
Day 3
セッションでの注目は「アプリケーションのモダナイゼーション戦略」です。
IBM i のモダナイゼーションが注力しているのは、”アプリケーション”、”データベース”、”基幹データの分析”の3点でした。
ビジネスの迅速な変化に対応するためには、システム基盤の在り方も クラウドやモバイルへの対応を強化する必要があるとメッセージしています。また、 IBM i では多くのアプリケーションやツールをサポートしている点も強調しています。
RPG は IBM i では主力言語であり、パフォーマンスや性能が良くユーザー離れが極めて低いことを強みに昔から根強いファンがいます。一方で新しい技術者の育成という点では、なかなか若い世代を取り込めていないことが懸念されていましたが、RPG は進化してきており、従来のカラム指向が現在ではフリーフォーマットとなっている点など、新しい技術者にも触れ易い環境に進化しているとのことです。
RPG のモダナイゼーション化ツールとして ARCAD (5733-AC1 ARCAD RPG Converter for i) が提供されており、従来の RPG からフリーフォームの RPG への変換を可能にします。
また、 ILE によるモジュールやサービス・プログラムにより、迅速な環境提供だけでなく、機能単位でアプリケーションを切り出した構成であるため保守容易性の観点でも利点が多いとメッセージしています。
データベースに関しては、Db2 for i は多様なインターフェースを提供しています。従来の CL コマンドや API での手法から、簡単な SQL 文で済ませられることが可能となります。アプリケーションと同様に携わり易い環境に進化しており、パフォーマンスにも効果が表れてきていることもメッセージしていました。また基幹データ分析では、Db2 Web Query for i による機能拡張があり、進化していることを伝えています。
まとめ
Power Systems の戦略として、システム基盤へのクラウドの取り込みを積極的に推進するなど、ソフトウェアの機能を強化しています。IBM i の開発環境では”モダナイゼーション”というキーワードの元、RPG など従来の開発言語環境(オンプレミス)から、ハイブリッドクラウド環境を意識したサービス指向に向かっています。
数年前と比較して、ハイブリッドクラウドや Hadoop、IBM i のモダナイゼーションがリアル・ビジネスに向けたフェーズに移ってきていることを実感できるワークショップでした。
今後は IBM が打ち出している方向を意識しながら、提案の幅を広げて訴求していこうと考えます。
※この記事は2019年6月28日時点の情報をもとに作成しています。
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