2024年11月

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複雑化した業務を効率化し、個人の生産性をアップするためにAIができること ~AIアシスタント「IBM watsonx Orchestrate」とは~

私たちは日々の業務の中で様々なシステムや複数のアプリケーションを活用し、多数の自動化ツールを使って業務をこなしています。しかし、複数のツールが独立して存在しシステム間の連携に負担を強いられているのであれば、本当の意味での業務の効率化とはいえません。

今回は、業務効率化に対して AI ができることとは何か、その効果について解説するとともに、自然言語処理を使用し従業員の意図を理解して作業をサポートすることで複雑な作業を自動化・効率化する、IBM の AIアシスタント「IBM watsonx Orchestrate」をご紹介します。

「部分最適」が従業員の業務効率化を阻む

1990年代以降、世界は PC の誕生および普及とともにコンピューターの歴史上大きな転換点となった「オープンシステム全盛時代の自動化」に突入し、PC とオープンシステム、インターネットの登場と普及は事務処理の速度や柔軟性を向上させました。

オープンシステム全盛時代の自動化では、ジョブ管理や資産管理、インシデント管理、データ活用など、それぞれのエリアに対する最適化を目指し、業務のシステム化およびアプリケーション・パッケージによる自動化が行われました。しかし、同時にそれは「部分最適」であるがために、システムが追加されるごとに人手による業務が発生し、実際に運用する従業員の業務を増加させました。

例えば、様々なシステムやアプリケーションを導入した結果、社内に複数の自動化ツールが乱立するようになり、従業員がそれらの扱いを理解するための負担や操作の手間が増えて思うように生産性を上げられないといったケースがあります。

社内に次々と導入される新たなシステムによる様々な自動化ツールが従業員の負担を増し、それが効率化を阻む要因にもなっていたのです

企業内に残された自動化されていない業務

”業務の自動化”は、企業が取り組むべき課題の上位にランクインしています。

2022年8月に公開された ITR のホワイトペーパー『業務自動化に向けた国内企業の現状と展望』*1 によれば、業務自動化をテーマにした国内大企業(年商規模500億円以上)の部長級以上の役職者に対するアンケート調査の結果、”業務の自動化” を最重要事項と認識している回答者の割合は45%と、”コミュニケーション/コラボレーションの高度化” に次ぐ2番目に高い値を示しています。

DXテーマの重視度(最重要課題と認識している割合)
図1. DXテーマの重視度(最重要課題と認識している割合)

*1. 出典:ITRプレスリリース「ITRがホワイトペーパー『業務自動化に向けた国内企業の現状と展望』を発行 – 目的に即した自動化テクノロジの選定アプローチを解説」(2022年8月18日)

一方で、自動化から取り残されている業務もあります。

例えば、定常的に行わない処理や例外処理、さまざまな認証情報の管理やログイン、システム間でのデータのコピー、反復的な作業など、手作業中心のプロセスや紙・Eメール・表計算ソフトなどからなっている業務、複数システムが必要で処理が煩雑な作業などがそれに当たります。

これらは本来、もっとも自動化したい中位・低位のスキルやリソースで対応可能な業務が自動化から取り残されている要因の1つとして、RPA をはじめとする既存の自動化技術の決定的な弱点である「柔軟性の欠如」があります。
状況によって判断が必要な業務の自動化を事前定義するのは、一定の ITスキルがあっても難しいことです。加えて、たとえ複雑な処理を定義して業務を自動化できたとしても、得られるメリットとコスト・手間を比較した時、それらは「費用対効果が低い」と評価されがちです。

そのような理由で、自動化されないまま企業内のあちこちに残ってしまっている業務が数多く存在します。

複数のアプリによる「部分最適」な自動化を「全体最適」する「エージェント型AI」

企業における業務の自動化を実現する方法として注目されている手法に、ハイパーオートメーションがあります。

ハイパーオートメーションとは、RPA、AI、機械学習(ML)、ローコード/ノーコードプラットフォームなど、様々なテクノロジーとツールを組み合わせてビジネスプロセスやタスクを実行し、複数の部署にまたがるものも含めた業務プロセス全体を自動化・最適化する概念です。
RPA よりも高度で範囲の広い業務の自動化が可能なため、組織の効率化や俊敏性の向上、イノベーションの加速、ビジネス成果の改善を目指す包括的なプロセス改善において、その効果が期待されています。

その中において、これまで手がつけ難かった個人の業務を効率化するツールとして注目されているのが、「エージェント型AI(Agentic AI)」です。

エージェント型AI は、ユーザーが目標をインプットすることでルールベースのアルゴリズムや機械学習モデルを用いて意思決定を行い、適切な行動を選択し、人間の介入なしに特定のタスクを実行することが可能な自律型インテリジェントシステムです。
例えば、反復的なタスクを AIエージェントに任せることにより、仮想労働力として仕事を補強して人の作業負荷を軽減し組織全体の生産性を向上させ、個々人がよりコアな業務に集中することを可能にします。

Gartner社は、2025年の戦略的テクノロジのトップ・トレンド*2 における3つのカテゴリの一つとしてこの「Agentic AI」を取り上げています。

*2. 出典:Gartner社サイト「Gartner、2025年の戦略的テクノロジのトップ・トレンドを発表」(2024年10月28日)

複雑な作業を自動化・効率化するAIアシスタント「IBM watsonx Orchestrate」

生成AI を活用して業務をサポートし、複雑な作業を自動化・効率化するのが、IBM の AIアシスタント(エージェント型AI)「watsonx Orchestrate」です。

watsonx Orchestrate は、自然言語を用いてユーザーと様々なシステムやアプリケーションの間に入り、事前定義された「スキル」と呼ばれる自動化のタスクで外部の API を呼び出し、これまで人間にしかできなかった柔軟な処理を実行してシステム化の対象外だった日常業務を支援します。コンシェルジュのように様々な業務の相談に対応し、ユーザー一人ひとりの「アシスタント」として一緒に仕事を進めてくれます。

そのプロセスは、

  1. 相互作用する:
    ユーザーがwatsonx Orchestrateのチャット機能で対話すると、watsonx Orchestrateがユーザーの意図や要求を理解し、業務を把握する上で必要な情報を把握する
  2. 考える:
    把握した意図の実現に必要なプロセスを自動的に考える
  3. 実行する:
    必要な処理の流れを自動的に判断して実行する

というもので、自動化で求められる「相互作用する」「考える」「実行する」という人間の認知能力を watsonx Orchestrate が代替します。

watsonx Orchestrateの仕組み
図2. watsonx Orchestrateの仕組み

watsonx Orchestrateの特長とその効果

watsonx Orchestrate の特長を3つにまとめてご紹介します。

1. 自然な対話形式で操作が可能

1つ目のポイントは「自然な対話形式」です。

watsonx Orchestrate は、関連キーワードや口語を入力することで簡単にスタートさせることができます。人と話すようにチャットするだけで操作でき、ユーザーと相互作用することで双方向に対話し、必要な処理の呼び出しや次に行う処理を提案してくれます。

例えば、”経費精算をしたい” ”営業日報・議事録を作成したい” といったことをチャットで指示するだけで、watsonx Orchestrate が「業務における疑問に対して解決策を提案」し「業務を代行」してくれます。

対話型AI とオートメーション機能を備え、仕事のやり方を変革しながら生産性向上やコスト削減、アジリティ向上を実現し、大切な業務により多くの時間を割くことが可能になります。

2. 多様なアプリとの連携が可能

2つ目のポイントは、多様なアプリとの連携が可能であることです。

基幹システム、ERP、外部サービスなどに対する操作を、watsonx Orchestrate に登録した「スキル」を呼び出すことで実行します。watsonx Orchestrate では標準機能として Salesforce や Box のような「業務アプリ」がスキル・カタログに「プリビルド・スキル」として登録されているため、導入後すぐに利用することができます。
現在40のアプリケーションと1000以上のスキルを利用でき、今後も順次ラインナップの強が予定されています。

これらのスキルを組み合わせてフローとして構成したものを「スキルフロー」と呼び、スキルを組み合わせて1つの一連のスキルとして利用することができます。

また、スキルとして生成AI を呼び出すことにより、メールや申請書、議事録の文章の要約や作成などの様々な処理も実行してくれます。watsonx Orchestrate に搭載された IBM の生成AI は AI for Business を念頭にオープンソースでライトな LLM(大規模言語モデル)となっており、ビジネスユースに最適化されています。

さらに、OpenAPI に準拠したサービスと接続できるため、OpenAPI の定義ファイルを作成しインポートすればスキル・カタログに登録が無い外部アプリも「カスタム・スキル」として容易に取り込むことができ、これまで使ってきたアプリも簡単に watsonx Orchestrate上で操作することが可能です。

3. ローコード・ノーコードで簡単設定

3つ目のポイントは、「ローコード・ノーコード」で簡単に設定が可能なことです。

watsonx Orchestrate では自動化する業務プロセスを定義する際、コーディングを行うことなく処理を組み込むことができます。

例えば、複数の手続きやその変更、関連部署への連携を行うためには、複数システムの連携による業務の自動化が必要ですが、これに対してもwatsonx Orchestrateは、スキルの選択から、情報の抽出、関連部署の担当者へのメールの作成・送信まで、各業務処理の一連のワークフロー設定をすべてグラフィカルな設定画面で行うことができ、ノーコードで編集可能な GUI となっています。

わかりやすい設定画面から最小限の編集を行うことで、様々な業務処理を自動で実行するワークフローを構築することができます。

また、スキルと自動化機能を構築するための「スキル・スタジオ」を使用すれば、部門の専門家が独自のカスタム・スキルとワークフローを迅速かつ容易に構築でき、さらにカスタマイズ版の AIアシスタントを作成できるため、人事や財務、営業、調達など、企業の様々な職務に役立ちます。

まとめ

エヌアイシー・パートナーズは IBM ソフトウェアおよびハードウェアの認定ディストリビューターとして、watsonx Orchestrate だけではなく、watsonx.ai をはじめとした watsonxシリーズの支援が可能です。

お客様のニーズや要件に合わせて IBM の SW と HW を組み合わせた最適な提案へのカスタマイズを支援するとともに、IBM製品の特徴や利点をわかりやすく説明し、お客様・パートナー様のビジネスに最適な提案をサポートいたします。

「お客様に業務自動化を勧めたい」
「watsonx Orchestrateについて詳しく知りたい」
「watsonx Orchestrateをはじめとしたwatsonxシリーズを絡めたセールスを支援してほしい」

といったご要望があれば、いつでもお気軽にエヌアイシー・パートナーズへご相談ください。

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2025年07月11日

【参加レポート】Domino Hub 2025

公開日:2025-07-11 みなさまこんにちは。ソリューション企画部 松田です。 2025年6月19日・20日と2日間に渡って開催された「Domino Hub 2025」に参加しました。これは HCL Ambassador有志が企画・実行する Dominoコミュニティイベントです。去年に続き、今回が3回目の開催となります。 昨年同様、今回もエヌアイシー・パートナーズはスポンサーとしてご支援させていただき、両日参加いたしました。そのレポートをお送りします。 目次 イベント概要 セッション内容 - Domino 14.5 リリース 特徴的機能とライセンス改定 -ロードマップ -お客様事例:曽根田工業様 最後に 関連情報 お問い合わせ イベント概要 「Domino Hub」は、HCL Ambassadorが主宰となり、Dominoの利用者、開発者、ソリューションベンダーが一堂に会するコミュニティイベントです。今回は1日目がオンライン、2日目はオンサイトのみの開催でした。 特に2日目は参加率が非常に高かったとのことで、会場も大変盛況でした。結婚式場としても使われている今回の会場は、中庭から陽の光が差し込み、解放感があるラグジュアリーな空間で、一般的なビジネスミーティングよりも上質な雰囲気が感じられました。 併せて展示ブースも設置され、Dominoアプリケーションがスマートフォンやブラウザで使えるようになる「HCL Nomad」などのHCL製品とともに、様々なビジネスパートナー様の多彩な関連製品が数多く展示・紹介されていました。 セッション内容 2日間で全22セッションが行われました。セッションはHCLをはじめ、HCL Ambassadorから、様々な開発ベンダー、製品ベンダー、エンドユーザーからの事例紹介などのセッション、そしてパネルディスカッションがありました。まずHCLからのセッション内でのトピックをお伝えします。機能のみならずライセンスまわりで大きなニュースもありました。 Domino 14.5 リリース 特徴的機能とライセンス改定 Domino Hubの2日前、2025年6月17日にリリースされました。 Domino IQ 特徴的な機能で最も注目すべき、今回もご説明に時間を割かれていたのが「Domino IQ」です。 一言で言えば「Domino内にローカルでLLMを持たせ、蓄積されてきたDominoアプリ内の情報も取り込み、セキュアな環境で生成AIを用いた業務を実現する」ものです。 企業内業務で生成AIをどのように実装し利用していくかは今、皆様の大きな関心事項であられると思います。自社のDomino環境内で、Dominoアプリケーションを用い、Notesクライアントからそれが実現できることになります。 (画像クリックで拡大) Nomad for Web COM対応 またNomad for WebがCOMに対応したことにより、これまではNotesクライアントだけでしかできなかったExcelやPowerPointを埋め込んだDiminoアプリもブラウザから利用できるようになりました。 ライセンスダッシュボード:DLAUの統合 これまでGitHubからダウンロードしてセットアップしていたDomino License Analysis Utility (DLAU)がDomino内にデフォルトで統合され、The Domino License Administration (DLA) となりました。 (画像クリックで拡大) ライセンス改定 そしてライセンスにも大きなベネフィットが付加されました。CCB Termライセンスにはこれまで「Domino Leapで5アプリケーションまで開発・利用が可能」という権利が含まれていましたが、2025年7月1日からその制限がなくなりました。すなわち「2025年7月1日以後有効なCCB Termライセンスをお持ちのお客様は、Domino Leapのフル機能が利用できる」となります。 同時に、Domino Leapライセンスの利用範囲であるHCL Enterprise Integrator(HEI)の利用権利も含まれます。これでCCB Termライセンスのみで、追加費用なく「ブラウザによるノーコード/ローコード開発」「基幹業務とDominoアプリケーションの連携」が可能になります。 さらにCCB Termで利用できるSametime Chatで添付ファイルと画像添付も可能になりました。 ロードマップ Domino、Notes、Verse、Nomadなど各ソリューションについてのロードマップも紹介されました。先々の計画は出てこないものですが、このようにHCLから明確に提示されることにより、Dominoをお使いのお客様はこれからも安心して利用を継続していただけると思います。 Dominoのロードマップ(画像クリックで拡大) Notesのロードマップ(画像クリックで拡大) Nomad, VerseといったエンドユーザーのUI部分が短期間でバージョンアップされていく。(画像クリックで拡大) お客様事例:曽根田工業 様 Dominoユーザーの有限会社曽根田工業 代表取締役 曽根田 直樹 様より、Domino事例のご講演がありました。曽根田様は2001年に静岡県磐田市で個人で起業され、切削機械の刃物を製造されています。曽根田様のお話で非常に興味深かった部分を抜粋致します。 "独立・起業するにあたり、前職で使っていたNotes/Dominoを自社でも使うことにした。現在は大手メーカーからの発注依頼や過去に作った品番の再発注など数多く受けており、当時のCAD/CAMのデータや販売管理データなどをDominoに入れて運用している。 オンプレミス環境のリスクやセキュリティ、IT技術のトレンドに合わせてクラウド化を検討した場合、Dominoからは離れたほうがいいのではないか?と思い、他社SaaS製品も検討しトライアルで利用登録をした。 しばらく触れずにいたところ、アカウント情報に登録していた支払い口座から利用料の引き落としがされていなかったためアカウントが凍結、さらに保存していたデータも突然消去されてしまっていた。支払いが滞っただけで中身まで削除されてしまうようなシステムには会社の大事な資産であるデータを載せられないので、「Dominoを『やめることを止める』判断」をした。" Dominoから他製品への移行を検討され断念されるお客様は多く、その理由は「Dominoの業務アプリケーションを、サービス内容を落とさずに別プラットフォームに移行することがはなはだ困難である」ということをよくお聞きしますが、この点にも意外な理由が潜んでいました。 最後に 初の2年連続開催となった今年のDominoHubは、コミュニティの力を象徴するかのような盛り上がりを見せました。14.5のリリース、生成AIの実装、ライセンス強化など、今後のDominoの発展を確信させる要素が数多く披露されたほか、実際のユーザー事例も非常に示唆に富むものでした。加えてロードマップの提示による未来への安心感も得られました。 DominoHubは単なる情報共有の場に留まらず、技術、コミュニティ、そしてビジネスの未来を交差させる特別な場となっています。これからもこのような取り組みが継続していき、多くのDominoユーザー、デベロッパー、そして販売パートナーが更なる価値を引き出していけることを楽しみにしています。これからもDominoと私たちの未来を築いていきましょう。 関連情報 「Domino Hub」大阪開催 Domino Hubは、2025年9月18日に大阪でのオンサイト開催が決定致しました。詳細およびお申し込みについては、こちらのリンクからご確認ください。 お問い合わせ エヌアイシー・パートナーズ株式会社E-mail:voice_partners@niandc.co.jp   .highlighter { background: linear-gradient(transparent 50%, #ffff52 90% 90%, transparent 90%); } .anchor{ display: block; margin-top:-20px; padding-top:40px; } .btn_A{ height:30px; } .btn_A a{ display:block; width:100%; height:100%; text-decoration: none; background:#eb6100; text-align:center; border:1px solid #FFFFFF; color:#FFFFFF; font-size:16px; border-radius:50px; -webkit-border-radius:50px; -moz-border-radius:50px; box-shadow:0px 0px 0px 4px #eb6100; transition: all 0.5s ease; } .btn_A a:hover{ background:#f56500; color:#999999; margin-left:0px; margin-top:0px; box-shadow:0px 0px 0px 4px #f56500; } .bigger { font-size: larger; } figcaption { color: #7c7f78; font-size: smaller; }

2025年06月30日

APMとARMのシームレスな連携で効率的な統合アプリケーション運用管理を実現する ~Instana+Turbonomicのシナジー~

公開日:2025-06-30 ワークロードが変化しつづけるハイブリッド・クラウド環境下においては、アプリケーションスタックが複雑化し、分散され、流動的となり、それがアーキテクチャーと、正しい設計および変化する需要に対応できる十分なリソースの提供を難しくしています。 複雑化したIT環境で、システムの正常性やパフォーマンスリスクに対応するためには、アプリケーションの運用管理において、アプリケーションとインフラ両方の情報を一元管理します。そして、統合的に参照することができ、システムの変調を見逃さない高度な可観測性を実現するアプリケーションの運用の高度化が重要となります。 本コラムでは、アプリケーションパフォーマンス監視(APM)ツール「IBM Instana Observability」(以下 Instana)とアプリケーション・リソース管理(ARM)ソリューション「IBM Turbonomic」の連携で生まれる、統合アプリケーション運用管理の相乗効果について紹介します。 目次 1. 複雑化したIT環境に求められるAPMによる可視化とアプリケーションの運用高度化 2. アプリケーションリソース管理の課題を解決するARMの活用 3. APMとARMの統合が可能にするアプリケーションの運用管理の効率化 4. InstanaとTurbonomicの連携による、一元的な管理の相乗効果 5. InstanaとTurbonomicの連携による、統合的なアプリケーションの運用管理の価値 6. まとめ お問い合わせ 1. 複雑化したIT環境に求められるAPMによる可視化とアプリケーションの運用高度化 アプリケーションの稼働環境がオンプレミスだけでなくクラウド環境へ拡大しています。クラウド上では様々なクラウドネイティブなサービスが稼働しており、それを利用することはコスト面・スピード面で必然となっています。しかし、クラウドネイティブ環境が増え続けることで複雑化しがちであり、そのような複雑なクラウドネイティブ環境の運用監視をいかに効率的に行うか、がビジネスにおいて大きな課題となっています。 システムを構成するハードウェアとソフトウェアが正常に稼動しているかについて、個々の状態を把握することに主眼がおかれた従来型モニタリングは、ハードウェアの障害やソフトウェアの異常を素早く検知することに役立つ一方で、ハードウェアの故障やサービスの停止をともなわないアプリケーションの性能低下などが検知することが難しく、原因の特定に非常に多くの時間がかかります。 また、従来型モニタリングの多くは、各環境で利用されている言語やプログラムにあわせた事前の導入と構成・設定が必要なだけではなく、サービス間の依存関係が把握できず、固定の閾値を超えたかどうかの確認しかできないため、ダイナミックに変化しつづけるクラウドネイティブ環境に追随していくことは困難です。 これに対して、アプリケーションのパフォーマンスを監視し、問題が発生した際に迅速に検知し、解決するのが、アプリケーションパフォーマンス管理(Application Performance Management: APM)による「アプリケーションの運用高度化」です。 APMにより、アプリケーションが本番環境で正常に動作していることをモニタリングして、システムやアプリケーションが利用者に提供している「サービスの品質」と「システムの状態」を可視化し、トランザクションのパフォーマンスの状態を測定するのが可能になります。 IBMのAPMツール「Instana」は、「自動化」「コンテキストの把握と解析」「インテリジェントなアクション」の特長を持ち、デジタルプラットフォームの効率的な管理および迅速な障害個所の特定など、クラウドネイティブ環境の可視化を実現しアプリケーションの可用性向上に貢献します。 2. アプリケーションリソース管理の課題を解決するARMの活用 一方、アプリケーションが安定したパフォーマンスを提供し続けるには、アプリケーションがユーザからのリクエストを処理するため必要なリソースを確保することが前提条件となります。 そのためには、適切なリソースを割り当て、必要に応じて増減させる管理をする必要があります。その上で、利用者の要望を実現する高度な機能とストレスのない使いやすいUX/UIの提供、24時間365日無停止での安定したサービスの継続、急激なアクセスの増加にも耐える拡張性や俊敏性が求められます。さらには、システム上で実行されるアプリケーションが、事前に定義されたセキュリティポリシーやルールに完全に適合していなくてはなりません。 しかし、アプリケーションスタックが複雑化し、ワークロードが変化しつづけるハイブリッド・クラウド環境下で、従来のインフラ中心のアプローチや手動ツールを使った人手主体の管理や監視手法だけで24時間365日アプリケーションリソースを維持管理し、適切なリソースを予測し確保し続けることは非常に困難です。 また、リソース不足にならないように、必要以上の余剰な CPU/メモリ/ディスクなどのサーバリソースを持たせることは、コスト面で大きな負担となります。さらに、多頻度のリリースに対応しうる高速・高効率で、継続的な品質担保に対応することが求められる一方で、高スキルのIT人材が、慢性的に不足していることも現状の管理体制の大きな負担となっています。 これに対して、コンピュートリソースの不足を早期に把握し、最適化を行い人手をかけずに適切な意思決定を適切なタイミングで行うことで、アプリケーションのレスポンスを維持するのが、アプリケーションリソース管理(Application Resource Management : ARM)です。 IBM の AI駆動型ARMソリューション「IBM Turbonomic ARM」は、アプリケーションからインフラまでをフルスタックで可視化し、アプリケーションが必要とする ITリソースを最適化します。そして、AI を用いてアプリケーションパフォーマンス、コンプライアンスおよびコストの継続的な管理を可能にします。 3. APMとARMの統合が可能にするアプリケーションの運用管理の効率化 アプリケーション運用管理の効率化は、宣言的に定義されたシステムのあるべき状態にシステムを制御する各種のオーケストレータによって、APMとARMを活用し徹底して自動化することで実現できます。ただし、システムで現在起きている問題のリアルタイムでの監視や、オーケストレータを介した問題へ自動に対処することはもちろん、あるべき姿へ迅速に回帰する「クローズドループサイクル(循環生産)」型のプロセスを実現することが不可欠となります。 このプロセスにおいて、APMとARMをそれぞれ独立した状態で活用するだけでは、目的に応じた画面の切り替えやツールごとの設定・操作などに非常に手間が掛かります。 APMであるInstanaとARMであるTurbonomicを連携することで、「統合的なアプリケーションの運用管理」を実現し、運用管理作業効率を向上することで以下のような効果を発揮します。 (1)ワンストップでインフラやアプリUXなどのパフォーマンスを統合管理できる (2)素早く問題の発生を検知し原因を特定できる (3)新規の監視対象を自動で認識でき個別の作業が不要となる (4)メンテナンスに工数がかからない 4. InstanaとTurbonomicの連携による、一元的な管理の相乗効果 InstanaとTurbonomicを連携させ、双方向の統合を設定することで、画面を切り替えることなく、1ヵ所・1画面の一元化された操作で、効率的に統合的なアプリケーションの運用管理を行うことが可能です。 InstanaとTurbonomic の連携による相乗効果には、次のようなものか挙げられます。 (1)アプリケーションレベルからインフラレベルまで統一管理できる TurbonomicにInstanaの情報を連携することにより、1つの画面でインフラからアプリケーションレベルまでアプリケーション・スタック全体を統合的に可視化し、操作もシームレスに連携することで、パフォーマンスのリスクを把握しリソースを最適化するための積極的な推奨策を得るとともに、リスクの軽減や迅速な判断をすることが可能になります。 (2)故障が発生する前に予兆を検知して事前に対応できる アプリケーション視点でのパフォーマンス・障害分析とインフラ観点でのリソース分析と最適化を同時に行うことで、障害の発生を未然に防ぐための対策を実施できるようになるため、アプリケーションの可用性を向上することができるようになります。 そのため、リソースの輻輳を最小限に抑えることができ、その効果として、平均修復時間(MTTR)と平均故障間隔(MTBF)を改善し、機会損失を最小限に抑えます。 (3)パフォーマンスに影響するリソースを理解し対応ができるようになる Instanaは、Turbonomicの実行したアクションと監視対象アプリケーションのパフォーマンスへの影響について、履歴の記録を得ることができます。また、Turbonomicによって提供されるリソース自動最適化機能を統合し、IT環境全体の集約された性能を最適な状態に維持します。これにより、ユーザは、単一の場所から一元的にアプリケーションを監視し、リアルタイムのデータと需要に基づいた状況に合わせて、需要に則したリソース割りあて・確保の決定を実行することができます。 InstanaとTurbonomicの統合によって、クラウド環境やKubernetesのリソース費用を正確に把握できるようになるため、十分に活用されていないリソースやオーバープロビジョニングされたリソースを最適化するための推奨案が得られます。これを元に、ハイブリッド(セルフ・マネージド)やクラウドネイティブ、Kubernetesのワークロードのパフォーマンス改善、効率化、コンプライアンス対応、コスト削減を促進し、クラウドの無駄を削減するとともに、その効果を向上させることが可能になります。 5. InstanaとTurbonomicの連携による、統合的なアプリケーションの運用管理の価値 このようにInstanaとTurbonomicを連携させることで、お客様は、インフラ・アプリケーションを統合的に可視化できるようになるだけでなく、アプリケーションのパフォーマンスリスクに素早く対応することが可能になります。 また、Turbonomicと連携できるAPMはInstanaだけではなく、お客様が、現在お使いになっているAPMとも連携することも可能です。さらには下図のロードマップのように、APM+ARMだけでなく、他のソリューションとも連携させることで、お客様のアプリケーションの運用高度化をさらに進め、ビジネスにより大きな価値をもたらすことができます。 図1:InstanaとTurbonomicの連携によるアプリケーションの運用高度化 6. まとめ このように、InstanaとTurbonomicを連携させた一元的な操作によって、複雑化したIT環境においても、ワンストップでインフラやアプリUXなどを監視・管理し、リソースの無駄やクラウド費用の増加なしに、アプリケーションに最適なリソースを動的に割りあてることができます。これにより、効率的なアプリケーションの管理の実現と、期待どおりのパフォーマンスを発揮して顧客のニーズを満たすことが可能になります。 エヌアイシー・パートナーズ株式会社は、IBMソフトウェア(SW)とハードウェア(HW)の認定ディストリビュータとして、InstanaおよびTurbonomicに関する支援が可能です。 お客様のニーズや要件に合わせて、IBMのSWとHWを組み合わせた最適な提案やカスタマイズの支援、IBM製品の特長・利点をお客様にわかりやすく説明し、お客様・パートナー様のビジネスに最適な提案でサポートいたします。 「シナジー効果の高いInstanaおよびTurbonomicに絡めたセールスをサポートしてほしい」といったご要望があれば、いつでもお気軽にお問い合わせ・ご相談ください。 お問い合わせ この記事に関するお問い合せは以下のボタンよりお願いいたします。お問い合わせ   .highlighter { background: linear-gradient(transparent 50%, #ffff52 90% 90%, transparent 90%); } .anchor{ display: block; margin-top:-20px; padding-top:40px; } .btn_A{ height:26px; } .btn_A a{ display:block; width:100%; height:100%; text-decoration: none; background:#eb6100; text-align:center; border:1px solid #FFFFFF; color:#FFFFFF; font-size:16px; border-radius:50px; -webkit-border-radius:50px; -moz-border-radius:50px; box-shadow:0px 0px 0px 4px #eb6100; transition: all 0.5s ease; } .btn_A a:hover{ background:#f56500; color:#999999; margin-left:0px; margin-top:0px; box-shadow:0px 0px 0px 4px #f56500; } .bigger { font-size: larger; }

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