サイバーセキュリティ専門家の人材不足が一層深刻化し、優秀な人材の確保および定着がこれまで以上に重要になっています。
今回は、これらサイバーセキュリティ専門家の人材不足がもたらす企業のセキュリティ対策の課題と、その解決策となる次世代型セキュリティスイート「IBM Security QRadar Suite」をご紹介します。
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ランサムウェアをはじめとした身近に迫るセキュリティ脅威
独立行政法人情報処理推進機構(IPA)のセキュリティセンターは、毎年前年に発生したセキュリティ事故や攻撃の状況などから IPA が脅威候補を選び、その中より企業の実務担当者などからなる約200名のメンバーが選出する「情報セキュリティ10大脅威」を発表しています。
2023年3月に発表された「情報セキュリティ10大脅威 2023」*1 によれば、「組織の脅威候補」の1位は前年に続き「ランサムウェアによる被害」でした。
ついで前年3位から2位に浮上した「サプライチェーンの弱点を悪用した攻撃」、前年2位から3位に落ちた「標的型攻撃による機密情報の窃取」と続いています。
順位の変動はあっても、この上位3つの脅威は依然として不動です。
特にランサムウェアの脅威は継続しており、システム停止やサプライチェーン全体への影響を与えるようなインシデントが発生し続けています。
また、昨今はクラウドサービスの利用も一般的になってきています。
サイバー攻撃の多様化に加え「クラウドの停止」「クラウドの仕様変更」など、クラウドサービスへのサイバー攻撃を想定したオンプレミス環境+α のセキュリティ対策も必要となります。
*1. 出典:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)セキュリティセンター「情報セキュリティ10大脅威 2023」
高度なスキルと専門性を持った「サイバーセキュリティ専門家」の不足
セキュリテイ対策のさらなる強化が必要となる中で、企業や組織はセキュリティチームのスキル不足に直面しています。
つまり、高度なスキルと専門性を持った「サイバーセキュリティ専門家」の不足です。
サイバーセキュリティ専門家資格の非営利団体である ISC2 が毎年実施しているグローバルサイバーセキュリティ人材調査「ISC2 Cybersecurity Workforce Study」の2023年版「Cyber Workforce Study 2023」*2 によれば、2023年の世界のサイバーセキュリティ労働力の規模は2022年からは8.7%増加し(日本は、前年比 24% という急速な成長)、過去最高水準となるおよそ550万人に上るものの、同時にさらに400万人の高度なスキルと専門性を持った「サイバーセキュリティ専門家」が必要になると推定しています。
一方、日本国内の ISC2会員を対象に2023年4月に実施した2023年版「サイバーセキュリティ人材に関するパルスサーベイ」*3 の調査結果では、66%の回答者が脅威のランドスケープの現況は過去5年間で最も厳しいものと認識しています。
また、回答者の約半数(48%)が、不安定な経済状況下において自身の所属する組織のサイバーセキュリティチームが持つ企業・組織の安全を維持するための能力に懸念を示唆しています。
これらの回答者が組織におけるスキルギャップが存在すると感じている分野の上位には、「クラウドコンピューティングセキュリティ」「リスク評価・分析・管理」「脅威インテリジェンス分析」「デジタル・フォレンジック、インシデントレスポンス」「AI」が挙がっています。
また、急激に普及する人工知能(AI)によって、導入すべきソリューションと直面する脅威の両方が変化する状況もこれに拍車をかけています。それにもかかわらずサイバーセキュリティチームおよびサイバーセキュリティのリーダーや専門家は、人員削減や予算削減の施策にも対応を強いられているのが現状です。

*2. ISC2 CYBERSECURITY WORKFORCE STUDY「How the Economy, Skills Gap and Artificial Intelligence are Challenging the Global Cybersecurity Workforce 2023」
ダウンロード(PDF 3.3MB)*3. 出典:PR TIMES「ISC2、サイバーセキュリティ人材の需給ギャップに関する調査結果を発表:日本のサイバーセキュリティ人材が48万人強に増加した一方、未だ11万人に及ぶ記録的な人材不足に陥っていることが明らかに」
複雑なIT環境が脅威の迅速な把握と封じ込めを困難に
DX の推進や新型コロナへの対応によるワークスタイルの変化はクラウドサービスの利用を急拡大させるとともに、複数の異なるコンピューティング環境を組み合わせて利用するハイブリッドクラウドや IoT によるネットワークを通じたモノとの相互の情報交換などが入り組んだ複雑な IT環境を作り出しています。
そこでは従来のように社内外のネットワークの境界で脅威の侵入を食い止めようとする方法が通用せず、脅威の迅速な把握と封じ込めを困難にしています。
サイバー攻撃はそこに付け込み、攻撃対象をテレワーク環境下のエンドポイントやクラウド、さらに関係会社や関連会社を含めたサプライチェーン全体にまで拡大しています。
手法もフィッシングや不正ログイン、脆弱性を突いた不正侵入など、巧妙化が増す一方です。
しかも攻撃側は組織化し、高度な知識とスキルを備えた多数のハッカーと最先端のサイバー攻撃ツールでサイバー攻撃の手法を進化・洗練化させているため、サイバー攻撃では攻撃側が圧倒的に優位なことも攻撃を防ぐのを難しくしています。
一方防御側である企業や組織は、対策に割ける人材や資金に限りがあるだけではなく技術面での対抗や怪しいメールの開封防止など、人為的なリスクにも対応しなければなりません。
これはまさに反撃の方法がないワンサイドゲームで、ひとたび不正侵入されれば密かに攻撃の足場が築かれ、そこから情報流出が継続する恐れもあります。
企業や組織は、社会的な信頼やブランド価値の損失、賠償の発生、原因追及や対応のための事業の停止など、甚大な被害を想定してセキュリティ対策に臨む必要があるといえるでしょう。
その打開に向けて重要となるのが「脅威の侵入を前提としたセキュリティ対策」です。
統制された最新セキュリティスイート「IBM Security QRadar Suite」
高度なセキュリティ分析と即時の対応を実現し、迅速かつ正確、そして効率的に脅威を発見し企業を守ることに特化することでセキュリティ担当者を支援するのが、統合型セキュリティ・インテリジェンス・ソリューション(脅威検知・対応スイート製品)「IBM Security QRadar Suite(以下 QRadar Suite)」です。
QRadar Suite は、管理GUI を提供する共通コンポーネント「Unified Analyst Experience(UAX)」を中枢に以下の機能を提供しています。
- エンドポイントエコシステム全体の状況を詳細に把握できる「QRadar EDR」
- 膨大な量のログやイベントを一元的に管理しリアルタイムに分析し脅威を発見する「QRadar SIEM」
- セキュリティインフラ全体の自動化とオーケストレーションを支援する「QRadar SOAR」
- 統合的にログ管理を行いそのログを高速検索することでセキュリティ・アナリストの作業負荷を軽減する「QRadar Log Insights」
QRadar Suite を活用することで、リアルタイムの脅威検知や膨大なデータの効率的な解析、自動化された対応、セキュリティイベントの可視化など、効果的なセキュリティ運用を支援して企業のセキュリティリスクを大幅に低減できます。
図1. IBMの脅威対策ソリューションQRadar Suite
SoCにおけるセキュリティインシデント対応を効率化する統合ログ検索ソリューション「UAX」
セキュリティインシデントの調査を自動化し推奨する対処の内容も提示することで、人材不足に対応するとともに複雑な環境でもログを集約せず迅速に情報を収集できるのが、統合ログ検索ソリューション「Unified Analyst Experience(UAX)」です。
UAX は、QRadar Suite にバンドルしスイートを構成する各種ツールに共通する統合ログ検索ソリューションとし、SoC *4 におけるセキュリティインシデント対応を効率化します。
セキュリティ分析担当者の声を反映して機能強化した分析のアウトプットは、相関分析から脅威を検出して優先度を提示するだけではなく SOAR と連携することで、これまで人力で行っていた調査と対応を自動化し推奨する対処の内容も提示します。
*4. SoC(Security Operation Center):
24時間365日体制でネットワークやデバイスを監視し、サイバー攻撃の検出や分析、対応策のアドバイスを行う企業内に設置されたセキュリティ部門やチーム。
脅威の早期発見およびインシデント対応を自動化する「SIEM/SOAR」
QRadar SIEM
ネットワーク機器や UTM などのセキュリティ機器で発生する膨大な量のログを一元的に管理しリアルタイムに分析をすることで、巧妙に潜んだサイバー攻撃の可能性を可視化するのが「QRadar SIEM」(セキュリティ情報イベント管理)です。
QRadar SIEM は収集しながら分析を行う専用の「相関分析」エンジンを持っており、リアルタイムで異常な行動や攻撃を検出できるのが大きな特長です。
また UBA(User Behavior Analytics:ユーザー行動分析)や NTA(Network Traffic Analysis:ネットワークトラフィック分析)など、機械学習に対応した検知エンジンを App Exchange から追加ライセンス費用なしで提供しており、ルールでは見つけにくい内部関係者やなりすましの脅威に対応するための検知ロジックを利用することも可能です。
QRadar SOAR
セキュリティ管理者を忙殺している定型的なタスクを自動処理するとともにセキュリティインフラ全体のオーケストレーションを可能にし、サイバーセキュリティ対策の人材不足を解消し、生産性を向上させるのが「QRadar SOAR」(セキュリティ運用自動化)です。
QRadar SOAR は SIEM が特定した高精度のアラートへの対応を編成して自動化し、脅威の是正に関する洞察を提供します。
インシデント対応ワークフローの自動化およびオーケストレーションを支援し、プロセスを最適化して測定可能な方法で実行されるようにすることで、脅威の見逃しやミスを防ぎます。
その結果、処理できるインシデント数が増えるだけではなく重要性の高い問題のより深い調査も可能になり、組織全体のセキュリティ体制を広く強化することができます。
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