2023年12月

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「watsonx」が切り拓くAIの新時代

生成AI の利用や導入が進む中、日本でも業務効率化や生産性の向上、課題解決、成長につなげられるなど、様々なメリットをもたらす AI活用の重要性が認識されるようになってきました。

そこで今回は、生成AI の利用における現状と課題に対して有効な解決策となるエンタープライズ向けの AIモデルの利用サイクルにおいて、データの準備、モデルのチューニング、信頼性やパフォーマンス監視にいたる範囲をカバーする企業向けの AIモデル作成・運用プラットフォーム「IBM watsonx(ワトソンエックス)」を紹介します。

生成AIを取り巻く世の中の動向

ChatGPTの急速な広がり

OpenAI から2022年11月30日にリリースされた大規模言語モデル「ChatGPT」は、従来の大規模言語モデルよりも高度な会話を行うことができるその性能の高さから、全世界で「異次元のAI」として話題となりました。

リリース時の ChatGPT は GPT-3 および GPT-3.5 をベースとし、ユーザーが入力したテキストに AI が返答をするというシンプルなツールでしたが、それでも爆発的な勢いで世界中に普及し、リリースからわずか2ヵ月でユーザー数は1億人に到達しました。
改良版の GPT-4 は高度な論理的思考力を持ち、その精度の高さはアメリカの司法試験に合格できるレベルに達するとされているだけではなく、日本語をはじめとする多くの言語にも対応しており、GPT-3.5 を英語で利用する場合の精度を凌駕しています。

2023年11月に発表された GPT-4 Turbo では、従来の16倍となる300ページを超える長い文書を扱えるほかトークンの料金も引き下げられ、連携するソフトが作りやすくなっています。

ChatGPT の利用は日本でも急速に広がり、生成AI の驚異的な進化が、私たちの生活だけでなくビジネスの仕組みさえも変えようとしています。

AIはデータを燃料に競争優位性を確立するためのエンジン

大量のデータを学習することにより要約や分析、提案などの業務で高い能力を発揮する生成AI は、今後ビジネス予測や調整・問題解決・テクノロジーデザイン・プログラミングなど、分野を問わず様々なスキルに影響をおよぼすことが見込まれています。

経済産業省のデジタル時代の人材政策に関する検討会がまとめた「生成AI時代のDX推進に必要な人材・スキルの考え方(令和5年8月)」*1 では、以下の様に述べられています。
“ゴールドマン・サックスの調査によると、今後、米国の業務の 1/4 は AI により自動化される可能 性があると予測されている。また Access Partnership の調査によると、今後、日本の全労働 力のうち、約 70%の労働人口層が AI の影響を受けると予測されている”

これらの予測が示すように、企業視点で見る生成AI は DX推進を後押しするとともに企業全体の価値を高め、データを燃料に競争優位性を確立するためのエンジンとしてビジネスでの活用が期待されているのです。

Icon

*1「生成AI時代のDX推進に必要な人材・スキルの考え方(令和5年8月)」(経済産業省/デジタル時代の人材政策に関する検討会)

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企業における生成AI活用の課題

大規模言語モデルは時に“嘘”をつく

ビジネス活用でも大きく期待されている生成AI ですが、解決しなければならない大きな課題があります。

その1つが、ChatGPT に代表される大規模言語モデル(LLM)が、時に幻覚を見ているかのようにもっともらしい “嘘” をつく(事実に基づかない情報を生成する)「生成AIの幻覚(ハルシネーション)」と呼ばれる現象です。

LLM は「言葉と言葉のつながり」を学習し、その学習結果に基づいてある単語に続く単語を確率として算出し、可能性が高い「つながりそうな」単語(正確には「トークン」と呼ばれる文字のつながりを細かく区切ったもの)を続けます。

この仕組みにおいては個々の単語が持つ意味は考慮されません。
そのため、LLM のハルシネーションが発生してしまいます。

これが、LLM の生成する回答の信頼性に「検証が必須」とされる理由でもあります。

生成AIのセキュリティ・コンプライアンスリスク

生成AI を企業が活用する上で解決しなければならない課題はもう1つあります。
それは「生成AI経由の情報漏えいリスク」です。

例えば、ChatGPT による情報漏えいリスクには「入力内容(機密情報)がAIの学習に利用され、第三者に情報が渡ること」が挙げられます。

また、生成AI の学習に使われているデータ(具体的には、著作物を無断で学習データとして利用している場合)にもリスクの考慮が必要です。
このケースでは生成AI でのアウトプットに著作物が含まれてしまい、そのまま利用すると著作権違反に繋がってしまいます。

入力内容(社内情報)の利用

ChatGPT の開発企業である OpenAI社は、プライバシーポリシーに以下の目的での個人情報利用の可能性を明記しています。

  • 本サービスの提供、管理、維持、分析
  • 本サービスの改善・調査
  • お客様とのコミュニケーション
  • 新しいプログラム及びサービスの開発
  • 本サービスの詐欺、犯罪行為、不正使用を防止し、当社(OpenAI)のITシステム、アーキテクチャ、及びネットワークのセキュリティ確保
  • 事業譲渡
  • 法的義務及び法的手続の遵守、当社および当社の関連会社、お客様またはそのほかの第三者の権利・プライバシー・安全・財産の保護

ChatGPT に入力した機密情報が社外サーバーに保存されるだけでなく、他のユーザーが ChatGPT を利用した際に機密情報が返答に使われる可能性も否定できません。
また法律上の要請のほか特定の条件下では、顧客への通知なしに第三者に個人情報を提供する可能性があることも明示されています。

ChatGPT を利用する際には、Opt Out すると共にリスクの低いデータを使うことが、情報漏えいリスクを低減するための対策の一つとなります。

※出典:プライバシーポリシー(https://openai.com/ja/policies/privacy-policy)

企業のユースケースやコンプライアンス要件を満たす「IBM watsonx」

エンタープライズ向け次世代AIプラットフォーム「IBM watsonx」

単なる AI の使用だけにとどまらず、AIモデルの学習、調整、展開を管理し、それらが生み出す価値すべてを企業が保有し、ビジネスへの活用を可能にするのが「IBM watsonx」です。

先進のオープン・テクノロジーで様々な AIモデルが作成可能な AI基盤を提供します。
企業のユースケースやコンプライアンス要件を満たし、基盤モデル(ファウンデーションモデル)ベースでの企業固有AIモデルの作成を支援します。

watsonx は企業向けのビジネス分野を対象とした AIモデル作成・運用プラットフォームで、「AI学習・生成・チューニング」「学習データ管理」「ライフサイクル管理」の3つの機能で構成されています。
これらを組み合わせることで、ユーザーによる AIモデルのトレーニング、チューニング、デブロイを支援し、データがある場所に関係なくワークロードのスケーリングとより信頼できる AIワークフローを設計できるだけではなく、AI を業務に取り入れる際の課題を解消します。

さらに、学習済みの汎用の基盤モデルには IBM の信頼できるデータ・セットに基づいて学習しているモデルも用意しているため、透明性が高く責任ある AI 実現のために担保すべきガバナンスも備えており、法律、規制、倫理、不正確さに関する懸念も排除できます。

ビジネスでの AI活用を想定して設計された watsonx は、単なる AI の使用にとどまらず、AI の価値を創出するエンタープライズ向けの次世代AIプラットフォームと言えるでしょう。

基盤モデルをはじめとしたAIモデルを活用・構築し、企業独自の価値創造を支援する「watsonx」
図1. 基盤モデルをはじめとしたAIモデルを活用・構築し、企業独自の価値創造を支援する「watsonx」

watsonxの3つの機能

watsonx は次の3つの機能により、「AIモデルの利用サイクルにおけるデータの準備」「モデルの開発やチューニング」「信頼性やパフォーマンス監視」にいたる範囲をすべてカバーします。

これらの AI支援機能によって、カスタマー・サービスの自動化やコードの生成、人事などの主要ワークフローの自動化など、様々なビジネス・プロセスやアプリケーション開発において、専門知識がなくても業務の遂行が可能になります。

AI作成スタジオ(AI学習・生成・チューニング)「watsonx.ai」

watsonx を構成する3機能の中核をなすのが、AIモデルのトレーニングや検証、チューニングを担う AIモデル作成スタジオ「watsonx.ai」です。

watsonx.ai は、IBM独自のファウンデーションモデルを活用した AI構築のためのオープンな企業向けスタジオ(ツール・機能群)で、企業独自の競争力と差別化を保持するために基盤モデルを活用・構築することができます。

IBM が作成したファウンデーションモデル「Granite」もしくは Hugging Face *2 ライブラリーからのオープンソースモデルで使用を開始し、学習、評価、チューニング、展開にわたり、基盤モデルや生成AIビジネスでの本格利用を支えます。
また独自のデータで追加学習する機能により、カスタマイズされた独自のファウンデーションモデルの構築も可能です。

自社固有モデルを開発し利用できるため、共有モデルと比べセキュリティリスクは大幅に低減できます。

Granite は、モデルの学習に使用されたすべてのデータ・セットが IBM内で定義されたガバナンス、リスク、コンプライアンス(GRC)のレビュー・プロセスを経た監査可能な信頼できるモデルであるため、企業向けとして最適です。

さらに、後ほど紹介するライフサイクル管理ツール「watsonx.governance」と連携し、AIライフサイクルにわたる統制やリスク・コンプライアンス管理を含めた維持・運用を実現します。

*2. Hugging Face(ハギングフェイス):
機械学習モデルを「構築」「トレーニング」「デプロイ」できる開発プラットフォーム。
AI研究者や開発者が機械学習リファレンスオープンソースを活用して、機械学習モデルの「訓練」「共有」「利用」を容易にするためのツールやライブラリを提供している。

企業固有データの管理プラットフォーム(学習データ管理)「watsonx.data」

AI をビジネスのあらゆる領域で活用するために加工する仕組みを提供するのが、IBM の次世代型データ・ストア(データ管理プラットフォーム)「watsonx.data」です。

watsonx.data は、散在する企業の固有データを一元管理し複数のクエリエンジンとストレージ層に対するワークロードを最適化するとともに、自社の業務用途に合わせた AIモデルを watsonx.ai で作る際に必要となる自社固有の学習データ(基盤モデルに対する少量の追加学習データなど)を供給します。

watsonx.data はオープン・レイクハウス・アーキテクチャー上に構築されています。
データレイクの柔軟性にデータウェアハウスのパフォーマンスを組み合わせることで、オープンでハイブリッド、ガバナンスに対応したデータ・ストアとして、あらゆるデータを分析しあらゆる場所に AIワークロードを拡張することが可能です。

ライフサイクル管理ツール「watsonx.governance」

日常のワークフローへの AI導入が進むほど、ビジネス全体で責任ある倫理的な意思決定を推進するための「事前対応型ガバナンス」の必要性が高まります。
AIモデルのライフサイクルを管理し、データと AI双方のガバナンスを保つためのツールキットが「watsonx.governance」です。

watsonx.governance はサード・パーティー製のモデルに対しても、ソフトウェアによる自動化でデータサイエンス・プラットフォームの変更にともなう過剰な費用負担なしに、リスクの軽減や規制要件の管理、倫理的懸念への対処能力を強化します。

これにより、「どのようなデータを学習させたのか」「誰がデプロイしたのか」など各種のメタデータを管理し、AI のライフサイクルを統制します。

さらに、実際に本番で使っている AIモデルの挙動を監視することで、AIモデルの精度や公平性を確認できます。

基盤モデルで迅速かつ容易にカスタマイズ

従来の AI開発のアプローチは、翻訳や分類などの目的ごとのタスクに対し、これらに応じたターゲットの回答がすでにわかっている「ラベル付きの学習データ」を大量に集め学習させそれぞれの用途に応じた AIモデルを作るため、別の用途に転用できずコストがかかっていました。

watsonx はファウンデーションモデルを用意しており、これをベースに追加学習でチューニングすることで、ゼロから機械学習モデルを作成するよりも迅速かつ容易にカスタマイズして用途ごとの AIモデルを作成できます。

さらに、1つの基盤モデルで多様なタスクに適応できるため大幅に工数と期間を削減し、学習の負荷やコストが大きいという従来の問題を解消します。

まとめ:企業経営の最適化を目指すIBMの「AI+」データ/AI戦略

昨今、様々なベンダーが企業の業務やサービスのデータに AI要素を追加する「+AI」(AIファースト)を支援し始めています。

IBM においては、お客様の「業務・サービスの自動化」「業務・サービスの見直し」「企業のコア業務改善」などの課題を AI+ で解決しています。

企業経営の最適化を目指す AI+ の戦略を体現する IBM watsonxシリーズは、AI の活用を進める企業に最適なソリューションだと言えるでしょう。

エヌアイシー・パートナーズにお任せください

エヌアイシー・パートナーズは、IBMソフトウェア/ハードウェアの認定ディストリビューターとして、watsonxシリーズをはじめとする IBM製品に関するパートナー様のビジネスを強力にサポートいたします。

「お客様のニーズや要件に合わせてIBMのSWとHWを組み合わせた最適な提案がしたい」
「IBM製品の機能や適用方法についての問い合わせに適切に対応したい」
「IBM製品の特長や利点を活かしたお客様ビジネスへの最適な提案をしたい」

といったお悩みをお抱えの方は、お気軽にエヌアイシー・パートナーズへご相談ください。

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2025年06月09日

安定の裏に潜む意外な悩み?HCLに聞く「HCL Domino」のバージョンアップにおける課題と意義(後編)

Domino が誕生してから35年以上が経過し、IBM から HCL に移管されて丸6年が経ちました。 Domino は、高い開発生産性と堅牢性を兼ね備えたアプリケーション基盤で、長きにわたり企業の業務効率化を支えてきた歴史ある製品です。一方、重ねてきた実績の分だけ、バージョンアップに対する課題も垣間見えます。 今回は、エイチシーエル・ジャパン株式会社 HCLSoftware のテクニカルリードである松浦光様に HCL Domino のビジネス状況や今後の展開など、多岐にわたり話を伺いました。(本ページは後半です[前半も公開中]) 対談者 【ゲスト】 エイチシーエル・ジャパン株式会社 HCLSoftware テクニカルリード 松浦 光 様 【インタビュアー】 エヌアイシー・パートナーズ株式会社 技術企画本部 ソリューション企画部 松田 秀幸 ※対談者情報は2025年6月9日時点 新バージョン V14.5 が刻む新たな一歩 生成AI を Domino の中に ── この夏に新バージョンの出荷が予定されていますね。 松浦: はい、2025年6月にバージョン V14.5 の出荷が予定されています。 ── V14.5 のポイントは何でしょうか? 松浦: 目玉の1つとして、Domino の中に AI を持つ「Domino IQ」 という機能がリリースされます。 なぜ、わざわざ自社で生成AI を持たなければいけないか、と思われる方もいると思いますが、理由の1つはセキュリティです。 Domino と生成AI の統合「Domino IQ」 自社のベストプラクティスを得られる ── 「Domino IQ」は、どのようなものでしょうか? 松浦: 完全にローカルで生成AI を持つことで、機密度が高い自社の情報についても問い合わせできるようになります。 加えて、自社の Domino を20~30年使い続けているお客様は結構多く、その積み重ねた情報に注目しています。そこで、今まで溜め込んだナレッジを生成AI に教え込み、ベテランの方が持つナレッジや自社のベストプラクティスを回答する生成AI を作っていく 流れですね。 このような利用も考えて、Domino IQ を開発しています。 ── 生成AI のモデルは、HCL で作っているのですか。 松浦: HCL で開発しているわけではなく、オープンソースの LLM を使っています。今ベータ版で使えるのは、Meta社の Llama3.2 などです。 ゼロから HCL で作ったものではなく、もう既に賢く育てられた LLM を使える点が大きな強みの1つだと思います。RAG を使って LLM に足りない情報を学習させられるようになるので、自社のデータベースで蓄えていた情報を AI が活用できるようになります。 Domino による生成AI の活用方法 ── RAG による拡張はキーになりそうですね。 松浦: Domino に溜まっている色々な情報やデータを社外や国外の生成AI に出さなくても、Domino IQ で新しい使い方が可能です。 ── Domino と生成AI の組み合わせで業務効率も向上しそうですね。 松浦: Domino は、業界用語や社内用語なども扱える 『生き字引き』のような人に代わる存在になっていき、皆さんの業務を支えられる のではないかと考えています。 REST API による効率的なシステム間の連携 ── フロントエンドの作り込みはどうでしょうか。例えば、チャットボット以外の入口を作る必要はありますか? 松浦: フロントエンドは何でもいいと考えていて、様々な Web やモバイルアプリに組み込むこともできますし、Notesクライアントが好きであれば Notesクライアントでもいいですし、Nomad Web でもいいと思います。Nomad Mobile というスマホやタブレット向けの Notesクライアント相当のものもあるので、それを使ってもいいですね。 ── 他社システムとの連携はどうでしょうか? 松浦: 前半でも少し触れたディレクトリサービスの連携だけではなく、REST API で他社システムと繋ぐことも想定しています。例えばフロントエンドとしては、チャットボットはもちろん、それ以外にも様々なシステムから入力してもらうこともできます。 Domino IQ 用に設定された Domino Server は、Dbserver プロセスから推論エンジンを起動する。(画像クリックで拡大)(出典:HCL Software|Configuring / Configuring users and servers / Domino IQ) 松浦: オープンソースの LLM を Dominoサーバーのデータディレクトリの下にインストールし、アプリケーションからの参照は、簡単な Lotus Script の読み込み・書き込みという2つのメソッドで問い合わせる仕様です。 先程も触れましたが、既存の LLM を使える点は大きな強みだと思います。 バージョンアップの鍵は互換性の安心感 新旧バージョンの互換性は移行チェックツールで担保する ── 互換性を気にされる方が多いと思いますが、いかがでしょうか? 松浦: 12.0.1 については 64bit対応、Open Java への変更があり、10 から 14 のタイミングで足回りをアップデートしました。その対応も含めて確認したところ、アプリケーションの互換性に関しては問題はありませんでした。 それでも互換性に懸念をお持ちのお客様には、NotesConsortium(ノーツコンソーシアム)で会員特典として利用できる移行チェックツールの使用も検討していただきたいと思います。 NotesConsortium(ノーツコンソーシアム) Domino に関する様々な知識やノウハウを交換、蓄積して会員同志で共有するユーザーコミュニティ 引用 以前のバージョンの環境で動作していたプリケーションの互換性(@関数/LotusScriptのみ) をチェックするツール、アプリケーションコードチェッカー(NDACC)をご提供しています。 カンタン移行判定ツールもご利用頂けます。 引用元:NotesConsortium「会員の特典」|移行支援ツールの提供 移行チェックツールとその効果 ── 実際に 9、10 から、V14、V14.5 へのバージョンアップは、移行チェックツールで試した場合の非互換はどれぐらいでしょうか。 松浦: 非互換はほとんどありません。 一言で非互換といっても、インパクトの程度は異なります。少し見た目が変わってしまうといった軽微なものから、挙動が変わってしまうという大きなものまであります。 移行チェックツールも過去20年以上の歴史があり、インパクトが小さい内容もチェックする仕組みでしたが、今はインパクトが小さい内容はチェックから外せるようになりました。 ── 非互換性の影響が少なく、迅速かつ正確な対応が可能であれば、安心してバージョンアップできますね。 松浦: もちろんインパクトの大小に関わらずチェックすることもできるので、気になる方は互換性に関するすべての内容を把握できます。すべてを確認していただいても、大きな影響を及ぼすような非互換はほとんどない と思います。 バージョンアップ vs 他社製品への移行 バージョンアップはしないが、移行もしない ── 前半にも話があったとおり、Domino の旧バージョンを利用されているお客様は多いようですね。 松浦: はい、旧バージョンのまま利用されているお客様も多いです。やはり、「バージョンアップをしなくても現状で満足」というのが理由 だと思います。 ── 一方で Domino から別製品への移行を検討されるお客様の声も聞きます。他製品への移行が検討される理由についてはいかがでしょうか。 松浦: DX を旗印に企業の形を大きく変えたいと思われた時に、エンドユーザーが日々使う情報系システムを刷新するのは象徴的だと思います。特に社外から新しい CIO が来たという様なケースだと顕著です。 引用 DX推進の際の障壁としては、「投資するための予算確保が少ない」が最も多くなっており、今後DXをさらに推進していく上で、約4割が「IT投資にかかる予算の増加」に取り組みたいと回答しました。 引用元:一般社団法人 中小企業個人情報セキュリティー推進協会「アンケート調査レポート」|「DX推進に成功している経営者」の実態調査アンケートの結果について ── DX の観点はひとつの肝かもしれませんね。 松浦: Web対応やモバイル対応、AI対応への再投資に対して、もっと価値を出していけるのではないかと考えています。 ── ただ、基幹的な情報系システムだと、気軽に移行するわけにはいかないですよね。 松浦: 他社ツールへのスイッチングコストの中には教育費を含め色々なものが発生するので、それだけお金をかける価値があるのかということに悩みながら検討されていると感じます。 やはりコストが大きいということで、移行ではなく共存で落ち着く ことがかなり多いですね。 HCL Domino の運用事例 内製化で自社の強みを生かしたDXを実践(日経XTECH) 20年で培ったデジタルカイゼンの文化 エームサービスの現場とIT部門をつなぐNotes(ZDNET Japan) 結論!バージョンアップが最適解 ── 他社製品への移行リスクや未知のコストも考えると、Domino を利用し続けるのがよさそうですね。 松浦: 異なる基盤でも併用して共存でき、互換性も担保されている ので最新バージョンアップでの利用をお勧めします。 ── ここまでの話以外で、他社製品への移行が検討される理由はありますか? 松浦: お客様から、Notesクライアントの強力な機能は変わらずご評価いただきながらも、そのインストールやセットアップなどの運用管理はやはり大変だ、という声もいただいております。 ── 最新バージョンでも同様でしょうか? 松浦: 最新バージョンでは改善されています。具体的には、V14 では ブラウザベースで Notesクライアントとほぼ同じようなことができる「HCL Nomad」という機能があります。特長は、専用Notesクライアントのインストールが必要ない点と、ブラウザベースなので複数の端末から使っていただける点です。 ── 「今までNotesクライアントでしかできなかったことが、Web でもできるようになる」ということでしょうか? 松浦: 例えば、Excelマクロを使った帳票の集計業務などですね。これまでは、Notesクライアント内でオフィス系のアプリケーションを起動するようなものは、ブラウザのセキュリティ制限によりブラウザからの利用ができませんでした。 しかし、2025年6月に出る新バージョン V14.5 は「HCL Nomad Web」が COM をサポートするのが目玉機能の1つで、Nomad Web から Excel や Word や PowerPoint を起動してマクロ実行などができるようになります。 ── V14.5 における進化の1つですね。 松浦: はい、バージョンアップの利点ともいえます。 すでに、以前から使用されているお客様がトライアルを始めている という状況です。 バージョンアップを推奨する理由 新旧バージョンの互換性を担保している。 コミュニケーション基盤が別製品でも、Domino を併用できる。 Domino IQ の実装/HCL Nomad Web の COMサポート HCL Domino について問い合わせる 今後の戦略 V14.5 は 描いたロードマップの答え合わせになるバージョン ── 今後の HCL の Domino のロードマップ、戦略はどのようになっているでしょうか。 松浦: この夏に出荷予定の V14.5 では実行環境のアップデートやスマホ・Web対応の進化や生成AI連携など、HCL になってから大きく描いたロードマップの答え合わせになるバージョンです。 アプリケーションを作り、うまく使ってもらう というのが、Domino の軸になっていると思います。Notesクライアントで動くアプリケーションから Webブラウザやモバイルで動くアプリケーションまで、様々なものがあります。それらを支えていくというのが Domino の DNA です。 ── 確固たる理念と設計思想があるのですね。支えるためには、Web対応や生成AI連携なども見越した拡張性も重要だと。 松浦: 作成したアプリケーションを拡張していくという方向性として API連携が挙げられます。Domino だけで全ての業務が回るとは考えていないので、周辺の製品サービスとの連携が簡単にできる というのがポイントの1つです。 兄弟製品に繋げる二段構えの展開 ── バージョンアップ以外での、ビジネス戦略は何かありますか? 松浦: アーキテクチャは異なりますが、開発環境の観点も含めれば兄弟製品といえるものがあります。 例えば Volt MX という製品には、モバイルOS を含む様々なプラットフォームのネイティブアプリケーションを作る機能があり、単一の開発環境で作成できます。 ── 開発するアプリケーションによって、戦略の幅が広がりますね。 松浦: Volt MX は一例ですが、プラットフォームを問わず使っていただけるような 本格的なアプリケーションについては兄弟製品 に繋げていく、という二段構えの戦略を考えています。 ── 兄弟製品への横展開…Domino が秘めるビジネスの可能性といえそうですね。 松浦: 今後のロードマップは、我々が描いた V14.5 の評価をユーザーから得ながらアプリケーションの軸はぶらさずに兄弟製品と補完しながら作っていく予定です。 ── Volt MX 以外に、どのような兄弟製品がありますか? 松浦: Nomad Web Designer、Domino Leap という製品があり、どちらもブラウザで動きます。 Domino Leap は、エンドユーザー様が『ITの専門知識を必要とせずに簡単にアプリケーションを作成したい』というローコードの需要を補完できるツールとして位置づけています。 Nomad Web Designer は今まで Windows PC でしか提供されなかった Domino Designer を MacOS でも同じように使えるようにしたイメージです。 ── いくつもの製品があり今後の展開も楽しみですが、まずは V14.5 からですね。 松浦: 旧バージョンをご利用中のお客様においては、まず他社製品との連携までかと思っています。 今は塩漬けの状態で、Domino の中だけで流通している情報があると思うので、それを他のシステムにも流通させてもらいたいですね。 1つの製品内だけでは情報の流れが停滞することもあると思います。業務の活性化のためにも、他社製品やAIとうまく連携し Domino を『情報の流れを淀ませないような解決策』という位置づけ に持っていきたいという思いもあります。 HCL 様からのメッセージ 過去にとらわれない新たな事例でアプローチ ── 長年 Domino を販売されているパートナー様に、特にお伝えしたいことはありますか。 松浦: HCL に移ってから使っていただいてるお客様から、「色々なツールを使っているが、やはり Domino は凄く良い製品だよね」という声をいただくことがとても増えている気がします。 お客様がやりたいことに耳を傾けると、今までにない新しい使い方 もどんどん出てきます。 弊社サイトで公開しているお客様事例にも掲載しているので、Domino を長らく販売していただいているパートナー様はもちろん、Domino の販売に興味をお持ちの企業様にも、ぜひご覧いただければ嬉しいです。 Domino はかゆいところに手が届く業務アプリを作るには最適なツールだと思うので、そこを強みとしてどんどんビジネスを仕掛けて欲しいと思っています。 インフラの観点においても、堅牢でパフォーマンスのいい製品に仕上がっていますし、他の SaaS製品との連携も充実しているので、「今までの Domino ってこうだよね」という枠の中だけで考えずに 販売していただきたいと思います。 V14.x を避けて V12 にする意味はない ── では最後に、Dominoユーザー様、パートナー様へのメッセージをお願いします。 松浦: Domino に限らず、バージョンアップの際は『どのバージョンにするか』を迷われるケースがよくあります。 今回のバージョンアップは V14.5 と刻まれたバージョンなので、V14 や V12 という実績があるバージョンを検討したいと思われるお客様もいるかと思いますが、この度 V14.0 の非互換検査をしたところ、12.0.1以上であればアップデートされたプラットフォームとして動作が変わらないことが分かりました。つまり、『14.5 もしくは 14 を避けて V12 にする意味はない』 ということなので、ぜひ最新バージョンを検討していただきたいと思います。 14.5 も新機能を使わなければ 14 と同じような挙動なので、保守期間が残っている新バージョンを使っていただいて、興味のある新機能にトライしていただくのが良いのかなと考えています。 ── 本日はありがとうございました。 HCL Domino について問い合わせる まとめ ここまで HCL Domino の新バージョンや今後の展開など、多岐にわたり HCLSoftware 松浦様にお伺いしてきました。 最後に、前半の話を含め HCL Domino の特長となる強みとバージョンアップを推奨する理由をまとめます。 HCL Domino の強み 高い開発生産性と堅牢性 簡潔で迅速なアプリケーションの開発。 長期的に使用されることに適した、運用の安定性。 優れた互換性と柔軟性 チェックツールにより、新旧バージョンの互換性を担保している。 古いバージョンのデータやアプリケーションも最新バージョンで動作可能。 コミュニケーション基盤が別製品でも、Domino を併用できる。 新バージョン V14.5 の新機能「Domino IQ」 セキュリティを確保しながら自社データを活用した生成AI の活用が可能。 過去のナレッジを活用し、業務改善を支援。 Domino の現状とバージョンアップを推奨する理由 Domino の現状 Domino は35年以上にわたり利用されている製品で、現在も市場は活況。 ユーザー数は多く、旧バージョンのまま利用される「塩漬け運用」も多い。 バージョンアップを推奨する理由 サポートが終了したテクノロジーへの脆弱性対応として必要。 新旧バージョンの互換性を担保している。 Domino は他社製品との共存が可能。 新バージョンは V14.5で、新たな機能が追加された。 (本ページは後半です[前半も公開中]) HCL Domino について問い合わせる このページを見ている人におすすめのページ 安定の裏に潜む意外な悩み?HCLに聞く「HCL Domino」のバージョンアップにおける課題と意義(前編) HCL Domino 製品紹介ページ Com-PASS Cloud|Domino Notes アプリのお預かりサービス .recommend-list{ margin-top: 0px; } ol.recommend-list li { color: #9b9b9b; } #recommend{ font-family: "Noto Sans Japanese"; font-size: 16px; font-weight: 700; color: #9b9b9b; border: none; padding: 0; margin-bottom: 10px; } .highlighter { background: linear-gradient(transparent 50%, #ffff52 90% 90%, transparent 90%); } .anchor{ display: block; margin-top:-20px; padding-top:40px; } .btn_A{ height:30px; } .btn_A a{ display:block; width:100%; height:100%; text-decoration: none; background:#eb6100; text-align:center; border:1px solid #FFFFFF; color:#FFFFFF; font-size:16px; border-radius:50px; -webkit-border-radius:50px; -moz-border-radius:50px; box-shadow:0px 0px 0px 4px #eb6100; transition: all 0.5s ease; } .btn_A 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2025年06月09日

安定の裏に潜む意外な悩み?HCLに聞く「HCL Domino」のバージョンアップにおける課題と意義(前編)

Domino が誕生してから35年以上が経過し、IBM から HCL に移管されて丸6年が経ちました。 Domino は、高い開発生産性と堅牢性を兼ね備えたアプリケーション基盤で、長きにわたり企業の業務効率化を支えてきた歴史ある製品です。一方、重ねてきた実績の分だけ、バージョンアップに対する課題も垣間見えます。 今回は、エイチシーエル・ジャパン株式会社 HCLSoftware のテクニカルリードである松浦光様に HCL Domino のビジネス状況や今後の展開など、多岐にわたり話を伺いました。前半では「Domino の現状」を中心に、後半では「新バージョンの登場と互換性」をテーマにバージョンアップについてより具体的に語っていただきました。(本ページは前半です[後半も公開中]) 対談者 【ゲスト】 エイチシーエル・ジャパン株式会社 HCLSoftware テクニカルリード 松浦 光 様 【インタビュアー】 エヌアイシー・パートナーズ株式会社 技術企画本部 ソリューション企画部 松田 秀幸 ※対談者情報は2025年6月9日時点 HCL Domino の現状 製品の変遷と現在のビジネス状況 ── Domino が誕生してから35年以上が経過し、IBM から HCL に移管(2019年7月)されてからも丸6年が経ちました。今、HCL としての Domino のビジネス状況はいかがでしょうか。 松浦: 現在も利用していただいているユーザーも多く、市場としては活況です。 見た目や使い勝手も含めた新機能が多く実装されてきた点、バージョンアップのサイクルが非常に良いペース で進んできている点が、ユーザー様、パートナー様から製品投資として評価をいただいてます。 一方、Domino のクラウドに対する対応が SaaS としてではなく Amazon や Google などのクラウドキャリアとの協業による提供に主眼をおいているので、その点が他の SaaS型コミュニケーションツールと比べてもう少しなんとかならないかという声は未だにいただいている状況です。 ── Domino のクラウドに対して、SaaS型コミュニケーションツールとしても期待もされているということですね。 松浦: 運用に関する負荷を下げたいということだと思います。 加えて人材確保やノウハウ継承などの課題に対し、生成AI との連携など新しい領域へのチャレンジがトレンドになっています。 旧バージョンでの利用も多い ── バージョンアップのサイクルといえば、多く利用されているバージョンは何でしょうか? 松浦: お陰様で現時点の最新バージョンである V14 が順調に立ち上がっています。ただ実は、特定のバージョンでいわゆる『塩付け運用』をされているお客様も多くいます。 そのような状況の中で1点、昨年末にあったケースについてお話しさせてください。 2024年12月13日に重要障害が発生し、多くのお客様と関係者の皆様にご迷惑をおかけいたしました。大変申し訳なく思っております。この場を借りて、お詫び申し上げます。 対応として修正モジュールの適用をお願いしておりますが、実はこの障害は35年前のコードに含まれていたもので、Domino のすべてのバージョンで発生していました。 そのような中で、Domino の塩漬け運用をされているお客様、他社移行の事例記事になっており HCL とまったくお取引がないお客様からもお問い合わせをいただいています。 ── 古いバージョンのまま Domino を利用され続けているユーザー様もまだまだ多くいらっしゃる、ということが分かったのですね。 松浦: はい、良くも悪くも先ほどお話したような状態で、HCL と最近お付き合いがないお客様からもお問い合わせをいただくケースがありました。 古いバージョンを利用する際の注意点 ── 古いバージョンのまま利用することへの懸念は何でしょうか? 松浦: Java など サポートが終了したテクノロジーへの脆弱性対応 が懸念されます。 また、旧バージョンでは DXに対して十分な役割を果たせるとは言い難いです。新バージョンでは Web対応やモバイル対応、AI対応での活用もイメージしています。 例えば、新バージョンである V14.5 には、Domino と生成AI を統合した機能もあります。 ──『塩付け運用』をされた場合、サポート面はどうでしょうか。 松浦: 多くの塩漬け運用されているお客様からの声をお聞きすると、サポートが終了したバージョンで安定運用ができていたというのが Domino に対する今までの理解だったと思いますが、今回のようなことだけでなく、脆弱性対応も必要になるので、やはり サポートを受けられるバージョンの必要性 を意識していただけたのではないかと考えています。 Domino が選ばれ続ける理由 情報系基幹システムとしての性能と安定性 ── 旧バージョンでの利用も含め、Domino が利用され続ける理由は何でしょうか? 松浦: 情報系の基幹システムとして必要十分な機能を備えている点が大きいですね。 Domino が誕生した当初から兼ね備えており、「バージョンアップをしなくても現状で満足」というユーザーがいらっしゃる理由になっています。 ── Domino が古いまま使用されるのはなぜか、この点をより詳しくお聞かせください。捨てられないけれどバージョンアップもしない、というのは、なぜでしょうか? 松浦: 例えば、四半世紀前のデータがそのまま最新バージョンでも読み込めるなど、下位互換、上位互換性が非常に高い。動いてしまうがゆえに、使えてしまう。 便利に使っていただけるのはいいことなのですが、やはり15年前、20年前に作ったアプリケーションなので、見た目が古くなってくるというのは当然あります。 Domino でのアプリ開発の優位性 ── 一般的な市場感として Domino はすでに別製品に移行されてしまったという風潮もありますが、いかがでしょうか? 松浦: Domino はアプリケーションの開発生産性が非常に高い製品 だというのは、市場の評価として強くあります。 同じようなアプリケーションを、例えば SaaS型の Webベースの他製品、ノーコードの製品やローコードの製品に切り替えることにチャレンジされているお客様はいらっしゃると思うのですが、なかなかうまくいかないということを伺っております。 ── うまくいかないというのは? 松浦: その製品が悪いとか機能が足りないという話ではなく、Domino だと簡単にでき過ぎてしまうということで、エンドユーザーの満足度を得られないというのが1つの原因だとお客様はおっしゃっています。 他社製品と共存できるメリット ── メールはもう SaaSメールに移行しているという話はよく聞きますが、アプリケーションについては Domino の利用を続けているということでしょうか? 松浦: コミュニケーション基盤に関しては、在宅勤務やリモートワークが一般的になったので、好みの Web会議サービスに付帯したものへ切り替えたというお客様はいらっしゃると思います。 ただ、先ほどの話にあったように、アプリケーションはなかなか切り替えるのが難しいというのがあります。アプリケーション利用のために Domino が残っているというケース、共存されているというケースなど、多々あると思います。 ── Domino 以外のコミュニケーション基盤とアプリケーション基盤としての Domino を併用し、いわば一つのシステムとして使えると。 松浦: はい、その通りです。コミュニケーション基盤は別の製品を、アプリケーション基盤としては Domino を使っている 事例を、弊社ホームページにも事例記事として掲載しています。 ── コミュニケーション基盤とアプリケーション基盤でそれぞれのいいいとこ取りをされているのですね。 松浦: Domino と他製品が共存ができることは、バージョンアップの観点でも大きなポイントだと思います。 ──「基盤が2つあると運用管理も2倍になるのか」という疑問も出そうですが、どのような運用が可能でしょうか。 松浦: コミュニケーション基盤では、例えば1人に1つメールアドレスを発行するのが一般的だと思います。その場合、そちらのディレクトリシステムをメインにし、Domino は二次ディレクトリとして運用することもできます。 また、LDAP(Lightweight Directory Access Protocol)参照で認証委託をさせることもできますし、Dominoディレクトリと他のディレクトリ…例えばAzure AD(Azure Active Directory)のようなディレクトリサービスと連携させて運用している事例も多くあり、各社のやりたいことと運用負荷のバランスを考えて様々な方法がとれます。 なぜ Domino のバージョンを上げないのか 高い互換性が仇になっている?「動いてしまう」ジレンマ ── 互換性が高いということは、バージョンアップの障壁が低いともいえますね。 松浦: 互換性の高さは、単に過去のデータが「動く」以上の価値を提供していると考えています。 もし他社製品に移行する場合、往々にしてデータ移行が膨大なコストや技術的課題を伴い、互換性の問題が原因で取り残されたデータが発生するケースも見受けられます。Domino の場合、こうした課題を意識することなく 過去の資産を活用し続けることが可能 であり、移行リスクや未知のコストを回避 できる点でも独自の競争力を持っています。 ── 一方で、見た目を新しくすることは、バージョンアップの動機にはならない。 松浦: 見た目を新しくする機能もリリースはしていますが、そこに手をつけるよりは塩漬けで使ってしまおう、その方がお金がかからずに済む、ということで、古いバージョンのまま使うという決断をするお客様もいるのかなと思っています。 ── 確かに Notesクライアントだけを見たら、そんなに大きく変わらないですよね。 松浦: アーキテクチャは変わらないですし、Windows で動いてしまえばクリティカルな障害もなければ、上げる理由も作れなかったというところです(笑)。 最新バージョンは、バージョンアップをする理由になるか ── 大きな障害がなく動かせる状況の中で、上げる理由は何かとなると「最新バージョン V14 で何ができるのか」でしょうか。 松浦: そうですね。お客様が最新バージョンに上げる理由としては DX が多い印象です。再投資をする際の Web対応やモバイル対応、AI対応があります。そのようなところで、もっと価値を出していけるのではないかと考えています。 ── V14.5 については、後半でさらに詳しくお聞かせください。 松浦: 最新バージョンには、Domino と生成AI を統合した機能もあります。V14.5 は、大きく進化した面もあるので是非語らせてください(笑)。 ── 楽しみにしています(笑)。後半では、新バージョン V14.5 の新機能やアップデート、互換性についてお聞かせください。 HCL Domino について問い合わせる まとめ ここまで Domino の現状について、HCLSoftware 松浦様にお伺いしてきました。 最後に、前半のまとめと後半のトピックをご紹介します。 前半のまとめ Domino の現状 Domino は35年以上にわたり利用されている製品で、現在も市場は活況。 ユーザー数は多く、旧バージョンのまま利用されるケースも多い。 長期的に利用される理由は、高い開発生産性と安定性。 利用され続ける理由 Domino は情報系基幹システムとして必要十分な機能を備えている。 高い下位互換性と上位互換性があり、古いデータやアプリケーションが最新バージョンでも問題なく動作する。 旧バージョンの課題 特定バージョンを使い続ける「塩漬け運用」が多く、安定性を理由にアップグレードしないユーザーが多い。 古いままでもシステムが動作するため、アップグレードの動機になりにくい。 見た目の改良も費用対効果が低いとして、アップデートしないケースが多い。 Domino のバージョンアップと他社製品への移行 Domino は他社製品との共存が可能。 新バージョンは V14.5で、新たな機能が追加された。 DX領域での価値提供が、バージョンアップの理由となる可能性を秘めている。 次回予告 後半では、より具体的に新バージョン、互換性についてお届けします。 新バージョン V14.5 の機能はもちろん、今後のビジネス戦略も語って頂きました。 新バージョン V14.5 が刻む新たな一歩 生成AI を Domino の中に Domino と生成AI の統合「Domino IQ」 自社のベストプラクティスを得られる Domino による生成AI の活用方法 REST API による効率的なシステム間の連携 バージョンアップの鍵は互換性の安心感 移行チェックツールとその効果 新旧バージョンの互換性は移行チェックツールで担保する バージョンアップ vs 他社製品への移行 バージョンアップはしないが、移行もしない 結論!バージョンアップが最適解 今後の戦略 V14.5 は 描いたロードマップの答え合わせになるバージョン 兄弟製品に繋げる二段構えの展開 HCL 様からのメッセージ 過去にとらわれない新たな事例でアプローチ V14.x を避けて V12 にする意味はない (本ページは前半です[後半も公開中]) HCL Domino について問い合わせる このページを見ている人におすすめのページ 安定の裏に潜む意外な悩み?HCLに聞く「HCL Domino」のバージョンアップにおける課題と意義(後編) HCL Domino 製品紹介ページ Com-PASS Cloud|Domino Notes アプリのお預かりサービス .recommend-list{ margin-top: 0px; } ol.recommend-list li { color: #9b9b9b; } #recommend{ font-family: "Noto Sans Japanese"; font-size: 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