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こんにちは。
ソリューション推進部の村上です。
2023年10月31日と11月1日の2日間、久しぶりにオンサイト(ベルサール東京日本橋)で IBM の Bigなテクノロジーイベント「IBM TechXchange Conference Japan」が開催されました。
セッション数は100を超え、IBM製品のテクノロジーに関する最新情報がふんだんに盛り込まれていました。
見所としては、デモの数々が挙げられます。参加者は最新の IBMテクノロジーを直接目の当たりにし、その操作感や性能をチェックすることができました。
またハンズオンの場も提供され、テクノロジーに触れながら学べる環境も整っていました。
TechXchange はただ情報を吸収する場というだけではなくコミュニティ形成も大切にされていることから、IBM技術者との交流の場も用意されており、気鋭の技術者から新たな知識や視点を得ることができる貴重な機会となりました。
今回エヌアイシー・パートナーズからは10名程度の社員が本イベントに参加しました。
以下に、参加者から寄せられたコメントをブランド別にピックアップしご紹介いたします。ぜひご覧ください。
目次 |
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ブランド・カテゴリ別レポート
Business Automation
「第一生命におけるIBM BAWとODMの導入上の設計課題と対策」セッションに参加しました。
第一生命様の情報システム子会社である第一生命情報システムの方が登壇されていました。
保険業務について全く詳しくないのですが、保険の種類の多さやその支払い条件に関わるルールが15,000以上もあるということにまず驚きました。
重要な処理はメインフレームを使っているので、ODM のシステム構成としてもパフォーマンスと運用性を考慮して選択したということが説明されていました。
確かにメインフレームの中だけで完結する処理のルールエンジンを外部で実行したらパフォーマンスに影響することは容易に想像できます。
それを実験しながらパフォーマンスを担保できるような構成にした、ということが勉強になりました。
また、ルールエンジンである ODM の導入期間が1年程度だったのに対し、ワークフローエンジンである BAW の導入期間が3年にも及んだと説明されていました。
効果として、いずれも開発期間や情報が届くまでの期間の短縮が挙げられています。
新しい施策を素早く実施するためには現場で使えるようになるまでの期間を短縮することが必要なので、ユーザー視点でもメリットがある導入だったと理解を深めることができました。
Data Management & watsonx.data
IBM Watson の最新情報に関するセッションに参加しました。
その中で印象に残ったのは、watsonx Assistant と Watson Discovery を組み合わせたコールセンターシステムの導入事例でした。
紹介されていた事例では、コールセンターの業務負担の増加や新人研修の増加に対応するため、2020年1月から watsonx Assistant と Watson Discovery を組み込んだ AIシステムの運用を開始したそうです。
その結果、オペレーターの対応時間が短縮し管理者の業務負担が軽減され、さらに品質も向上したとのことで、AI の導入効果を強く実感できました。
特に印象的だったのは、ユーザーとオペレーターの会話をリアルタイムにテキスト化し警戒すべきワードを抽出する機能や、自動生成する評価シートで管理職の負担を軽減している点です。
通話テキストを抽出し翌営業日にフィードバックを得ることで業務改善を図っているところも、現場レベルでの AI活用の秀逸な事例だと感じました。
今後は生成AI の導入を検討しているとのことで、watsonx.ai と組み合わせたシステムのさらなる可能性を感じることができました。
Power
「オンプレ環境でas a Serviceを実現するには」セッションに参加しました。
IBM Powerシステムはオンプレミス環境に「as a Service」を提供することで、使った分だけのコストでクラウドの利便性を享受しセキュリティを強化させることを可能にしています。
これはオンデマンド容量の提供により予測不可能なビジネス環境下でも迅速な対応を可能にし、コスト削減と効率的なリソース管理を実現します。
また、デモシミュレーションを通じて投資効果を具体的に示し、ハイブリッドクラウドのトレンドに対応します。
新しいコンセプト「Power Private Cloud with Shared Utility Capacity」は、プライベートクラウド内で使った分だけ支払うというクラウドのメリットを実現。
これにより、企業は必要な時に必要なリソースを使用し、余剰コストを削減できます。
さらに、簡易見積ツールやアセスメントサービスを提供し、運用の最適化をサポートします。
このように、Powerシステムはまだパブリッククラウドには抵抗があるユーザーにもオンプレでクラウドを疑似体験しやすい環境であることを、改めて実感できました。
AIOps
「Turbonomic×クラウドコスト最適化事例紹介 FinOpsの実践に向けて」セッションに参加しました。
登壇者の山崎さんは別のセミナーでは Instana についてのお話をされていましたが、今回は Turbonomic という ARM(Application Resource Management)製品を FinOps の観点でお話されていました。
”FinOps” というまだ馴染みのない単語を事例を交えながら話をしてくれたので、どのようなことを指しているのかが非常にイメージしやすかったです。
セッションの中でもあった「「無駄」なのか「備え」なのか、それが問題だ」という言葉がインフラコストの最適化を難しくしていることを端的に表現しており、私としても判断が難しいところだなぁと考えさせられました。
「最適化」をいざ始めようとしても「どこから着手してよいのか?」が分からず、手探りで闇雲に実施することになります。
それを Turbonomic を使って可視化するところから始め、最適化についてもこのツールの支援をもらいながら人間が判断して実施していくことでより無駄を省くことができる、ということが理解できたよいセッションでした。
Apptio
Apptio 田中さんと IBM 上野さんが登壇された「Apptio社との統合戦略と製品のご紹介」セッションの参加レポです。
Apptio Inc. は、2023年8月に IBM に戦略的買収がなされた IT投資の最適化ソリューションのリーダー的企業です。11月1日から正式に IBM に加わることになったそうです。
本セッションの前半では TBM(Technology Business Management)の詳しい解説があり、企業が IT支出を管理・最適化し自動化を推進することの必要性を実感することができました。
TBM は奥が深い方法論ですが、じっくり読み込むととても面白いです。
後半は、ApptioOne が TBM の実現にどのように役立つ製品なのかの解説がありました。
ビジネスの中で IT の重要性は増すばかりで、企業は IT の具体的な財務価値や業務改革を実現することに注力してくるはずです。
このセッションを通じて、IBM が Apptio を戦略的に組織に加えることで、企業の IT運用の最適化と業務改革実現に向けた強力な支援体制を築き上げていることが伺えました。
Storage
セッション「DXを支えるAI&データ活用に必要不可欠なインフラ基盤とは?」に参加しました。
AI とデータ活用が日常業務に取り入れられるようになり非構造化データも増えていますが、その管理・活用が企業の大きな課題となっています。
ただデータが増えていくだけではなくあらゆるところに散在しているため、必要なときにすぐに利用できる状態にすることが求められています。
その解決の鍵を握るのが、データ中心の考え方と、一貫した統一されたデータ・サービス基盤の構築です。
なぜこの考え方が重要なのかというと、あらゆる拠点で大量のデータがリアルタイムに発生し、それを高速に柔軟に活用できるインフラが求められるからです。
非構造化データを一元管理する次世代データ基盤が「IBM Global Data Platform(GDP)ソリューション」です。
AI、分析、バックアップなど、あらゆるワークロードに柔軟に対応可能です。
その中で鍵となるのが「IBM Storage Scale」と「IBM Storage Discover」です。
データ配置を最適化し、スモール・スタートでも容易にデータを扱うことができます。
事例としては、車載センサーデータや動画データを一元管理し自動運転体験を実現している企業の例や、ヘルスケア分野で複雑な課題解決に役立てられている病院の例が紹介されました。
このセッションに参加して感じたのは、AI やデータ活用だけでなく、それらを支えるインフラ基盤の重要性です。
デジタル時代に向けて進む我々にとって、これからのデータ活用とそのインフラの重要性を再認識できたセッションでした。
Cloud
IBM Cloud では「生成系AIの基盤を支えるCloud Native Super Computer「Vela」の実態」のセッションが印象的でした。
「Vela」は、AI に最適化されたクラウドネイティブのスーパーコンピューターとして IBM が開発し、最新の GPU と Openshift AI が構成要素となります。
話題の製品「watsonx」もこの Vela を活用して開発されているそうです。
画像認識AI の Maximo Visual Inspection が IBM Cloud上の GPU で稼働できることは知っていましたが、AI のモデル開発にも利用できることを興味深く思いました。
AIモデルの開発には巨大な計算能力を持つ最新の GPU が必要不可欠ですが、一方で GPU は消費電力を膨大に使用してしまいます。
IBM Cloud上で稼働する Vela は GPU を利用しつつも、IBM Cloud が掲げている通り環境への負荷を軽減できているそうです。
本セッションを通して、クラウドネイティブなスーパーコンピューティングの時代が確実に到来していることを実感しました。
引き続き Vela の動きに注目していきたいと思います。
Mainframe
「メインフレーム技術者が元気になる!テクノロジー・アーキテクチャーとは何か」の参加レポートになります。
このセッションは、メインフレームの特長とそのアーキテクチャーについての理解を深めることを目的としています。
メインフレームの特長として、堅牢性、高スループット、高セキュリティ、オープン技術の取り込み、地球環境に優しい省エネと仮想化技術が挙げられています。
また、新たな特長として API対応とデータ連携ハブが追加されており、トランザクション処理やデータベース処理などのニーズに応える能力があります。
特に強調されているのは、2023年5月から z16全モデルに適用された「zIIP入れ放題」で、汎用CP(GCP)と zIIP の個数制限1:2を撤廃し、Java、Python、RESTful APIアクセス、DRDA など、様々なワークロードを汎用CP からオフロードすることが可能で、zIIP分のソフトウェア料金はかかりません。
これによりメインフレームを利用するコストを大幅に削減し、メインフレームの利活用を進めることができます。
全体を通して、メインフレームはこれからも多くのトランザクションを取り込もうという意志を感じました。
Security
多くのセキュリティ製品がセミナーで紹介されていました。
QRadar では、まず SOAR が紹介されました。
SIEM に集まる場合、そのパフォーマンスとキャパシティに影響があるため、一台の SIEM に集約せずとも各センサーから SOAR に集約して処理するという考え方です。
インテリジェントになっている EDR などは、確かに SOAR で処理させるのは良いと思います。
QRadar ではさらに UAS(Unified Analyst Experience)についても紹介されました。
各拠点に散らばった SIEM を横串で見る場合や SIEM のリアルタイム検知が不要な場合、複数の SIEM やログサーバを横串で見る場合には、UAX でも可能という方式です。
Trusteer では、サイバーアタックにおける三大侵入経路「脆弱点」「ウィルス」「なりすましログイン(不正ログイン)」と、その対策について紹介されていました。
「システムへ直接攻撃」「システムに関与する社員への間接攻撃」「サービス利用者になりすます」という課題があり、「サービス利用者になりすます」を防げるのが Trusteer だというわかりやすい説明がありました。
外部サービスを公開されている企業様には有効なソリューションだと思います。
IBM では、x-forceサービスをはじめ多くの知見を元に IBM Security製品が提供されていますので、ぜひご利用ください。
まとめ
以上のように、今回の TechXchange はテクノロジーコミュニティとの交流の場として、また、最新の IBM製品やテクノロジーについての学習の場として、大いに活用することができました。
次回の開催が待ち遠しいですね。
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※本ブログは参加者の主観や体験内容が中心であり、記載されている情報は正確性に欠ける場合があります。
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