2022年03月

11

運用の課題解決へ導くオンプレサーバーの従量課金プログラム「Dynamic Capacity」

クラウドファースト時代といえども、セキュリティやコスト上の理由から、リフト&シフトできないシステムは多いものです。
オンプレミスサーバーにはまだまだ活躍してもらわなければなりませんが、こちらはこちらで運用課題が山積しています。

そうした中注目したいのが、さらに進化した Dynamic Capacity です。
このサービスを活用することで、サーバー運用の課題が解決し DX の推進スピードも大きく加速するかもしれません。

本記事では、先進的なサーバー運用手法としての Dynamic Capacity の概要と実装方法を紹介いたします。
 

Index


 

サーバーを取り巻く様々な運用課題

ビジネスには繁忙期と閑散期があります。
経営と IT が不可分である今日、困るのは繁忙期の時間で、これがサーバーに「バースト負荷」と呼ばれる圧迫を与えます。
これが第一の運用課題です。

「バースト負荷」が発生するのは、日次・月次処理時や繁忙期、キャンペーン期間です。
1日分、1ヵ月分の全データの集計処理が走る際や受付が始まる初日などには、サーバーに大きな負荷がかかります。

データ分析もまた注意すべき業務です。
データベースがデータ全件を1行ずつチェックするような操作を走らせると、CPU やメモリーの使用率が格段に高くなり、他の業務を行うユーザーの生産性に影響を及ぼしてしまいます。

第二の運用課題は「増加するサーバーの管理」です。

よほど入念に事前計画をしておかないかぎり、サーバーは増えることになります。
最近は仮想化基盤の構築でサーバーを集約するケースが増えていますが、仮想化基盤といえども無限に仮想マシンを配置できるわけではありません。
ビジネス環境の成長や変化により、1台2台と増えていくサーバーの煩雑な管理に運用担当者は立ち向かうことになります。

ここで、何が最も大きな問題といえるでしょうか。

それは「運用エンジニアの不足」です。
不穏な動きを見せたら介入したり、新しい機材を調達したり、サーバーの危機は人による運用でカバーしなければならないことが数多くあります。
少人数の IT部門であれば、運用にかかりきりになるあまり本来取り組むべき戦略立案や企画業務が後回しになってしまいます。

 

積年の運用課題に応えるDynamic Capacity

そうした IT部門の悩ましい運用課題に対して、IBM は Power Systems で Dynamic Capacity という従量課金プログラムを提唱しています。
正式名称を「Power Private Cloud with Dynamic Capacity」といいます。

これは、複数のサーバーでプールを構成し、そのプール内でシステム資源の容量 (キャパシティ) を共有できるという機能です。
また、各サーバーは将来のバースト利用に備えて多めにコアを搭載して待機させておきます。複数のサーバーで合算したシステム資源でも対応できなくなったら、待機コアの出番です。
このコアの使用分は分単位の従量課金で計算され、これは事前に購入しておいた容量クレジットと呼ばれるもので支払います。

この従量課金プログラムでうれしいのは、「バースト負荷」への対応が楽になることです。

あるサーバーの負荷が一時的に上がっても、まずは複数サーバーのプールで構成した総合力でカバーすることができます。
そして、複数サーバーすべてでバーストが起きたら、そのときは待機コアが活躍してくれます。

こうして二段構えになるため、運用担当者のハラハラする場面を格段に減らせます。

また、運用も簡素化されます。
Dynamic Capacity を利用したサーバーのリソース使用状況は、Hardware Management Console (HMC) 経由でクラウド上の IBM Cloud Management Console (CMC) で、自席にいながら統合的にモニタリングできます。

Dynamic Capacity は、POWER9 の E980/E950、S924/S922 の Gモデル (S924/S922 に関してはメモリーの共有と一時的増強が不可) と、Power10 の間でプールを構成できます。
また、将来的には、IBM Power Virtual Server との連携も予定されており、クラウドへのシフト&リフトを目指した DX推進への道も開けてきます。

そして何より、コスト削減が実現できます。

Dynamic Capacity を採用しない場合、例えば、12コアを搭載すれば常にそれらは起動するものと見なされるため、12コア分のプロセッサー関連コストが発生します。
しかし、採用する場合はこのうち5コア分を baseコア、7コア分を待機コアなどとすることができます。

プロセッサー関連コストは baseコアだけにかかるため、通常時の利用が5コアの範囲に収まるのであれば少なくないコスト削減効果が得られます。

 

Dynamic Capacityの実装法を具体例で解説

それでは、Dynamic Capacity の実装法をもう少し詳しく説明します。

図1. Dynamic Capacityの実装例

図1 をご覧ください。

ある企業では、業務用途別に3台のサーバーを調達することにしました。
システムA, B, Cともにコアはそれぞれ64個搭載するのですが、baseコアは10, 16, 4と個別に設定してサーバーを購入します。
そして、将来のリソース不足に備えて不足しそうな容量をサーバー3台分のコア合計192以下で見積り、”容量クレジット” を事前購入しておきます。

サーバーが稼働を始めるとプールが形成され、baseコア分の30コアまで、システムA, B, Cはリソースを融通しあいます。
基本容量を超えたら取得している容量クレジットの範囲で待機コアを利用し、キャパシティを拡張できます。
分単位の従量課金であるため、一時的なバースト負荷ならコストも安価に収まります。
継続的に容量クレジットが必要なら、追加購入することも可能です。

図2. IBM Cloud Management Console管理画面例

図2は、CMC の管理画面の一例です。

ここでは、コア使用量が OS ごとに色分けされた棒グラフとして示されています。
これを見れば、プール全体でキャパシティが今どの程度使用されているかを一目で把握することができます。

日本IBM が Dynamic Capacity の有効性を測る見積りツールを提供しています。
コスト削減効果を具体的な数値で確認してみたいという方は、エヌアイシー・パートナーズまでご連絡ください。

 

利用要件に注意しつつ、前向きに検討を

様々なメリットが期待できる Dynamic Capacity ですが、いくつか利用要件もあります。

最も重要なのは、サーバーの種類やスペックはある程度そろえる必要があるということです。
POWER9 と Power10 が対象ですが、限定されたモデルでの適用となります。また、複数台のサーバーでプールを構成することを前提としており、1台を基本容量で購入はできません。

もう1つ、サポートしているのは共有プロセッサー、メモリー の区画のみです。占有プロセッサー、メモリーに関しては対象となりません。

このように、うまく利用するために理解しておくべき点はありますが、システムの柔軟性向上の面でもコスト削減の面でも、Dynamic Capacity は前向きに検討したいプログラムです。

 

エヌアイシー・パートナーズがお手伝いします

私たちエヌアイシー・パートナーズは、IBM Power Systems に関して豊富なナレッジ、ノウハウを有していると自負しています。

最適なシステムをアドバイス可能であるというだけでなく、Dynamic Capacity についても、様々な角度からお客様の立場にたってケースごとにシミュレーションしながら構成作成をお手伝いします。

取り扱い製品も多いことから、システム全体を俯瞰した提案支援も可能です。

IBM Power Systems や従量課金プログラムを検討してみたいという際には、ぜひ、エヌアイシー・パートナーズへお声がけください。

 


この記事に関するお問い合わせ

エヌアイシー・パートナーズ株式会社
企画本部 事業企画部

この記事に関するお問い合せは以下のボタンよりお願いいたします。

 

 

その他の記事

2025年09月03日

レノボのファンレス常温水冷サーバーって?

公開日:2025-09-03 こんにちは。ソリューション企画部 柳澤です。 みなさま「水冷サーバー」と一言聞いて、何を思い浮かべますか? オフィスに置いてあるドリンク用ウォーターサーバーを思い浮かべる方もいらっしゃいますでしょうか? 弊社のお客様のみなさまはIT業界の皆様ですので、水冷サーバーというとサーバーを特殊な液体のタンクで冷やす「液浸」を思い浮かべる方も多いかと思います。 しかし、この液浸は、タンク設置場所の確保やサーバーを重ねられないといった課題があり、大規模な投資や、床面積の拡大を避けられませんでした。 そこで、液体をサーバー内部の管に通して冷却する「直接液冷」が近年注目されています。 今日のサーバーはかつてないほどの計算能力を要求されており、人工知能(AI)、機械学習(ML)、高性能コンピューティング(HPC)といったワークロードの台頭は、より強力なサーバーと、それに伴うより高度な冷却ソリューションの必要性を浮き彫りにしています。 この状況を受け、各メーカーは水冷サーバーに注力し始めており、今後のサーバー選択において冷却効率が新しい基準として加わることになりそうです。 本日ご紹介するレノボのファンレスの常温水冷サーバーは、革新的な水冷技術を搭載しており、その冷却効率が注目されています。 目次 レノボのファンレス常温水冷サーバーとは 水冷サーバーの導入を検討するお客様の例 関連情報 お問い合わせ レノボのファンレス常温水冷サーバーとは レノボの水冷は「直接液体冷却」技術を採用しています。これらのソリューションは、GPUやCPUのような発熱量の多いコンポーネントを直接冷却しています。 サーバートレイ、シャーシにはファンがない設計なので、とても静かなサーバーです。またファンがないことで電力消費量を削減することにも役立っています。 採用されている液体は99%の純水で、ほぼサラサラの液体となり、環境にもやさしい設計です。 また、この液体が常温から45度の温水でも排熱効果を発揮するので、液体を氷のように冷たくはしなくても効果を発揮する設計になっています。 主な製品と特徴 レノボの水冷サーバーのシリーズのLenovo Neptune™ は、HPC、ミッションクリティカルサーバーはもちろんのこと、従来のラック型サーバーに加え、エッジコンピューティングなどの筐体でも構成できる柔軟な構成オプションが準備されています。 そのためお客様の特定のニーズに合わせてカスタマイズや拡張ができます。 水冷サーバーの導入を検討するお客様の例 Lenovo Neptune™ は、以下のようなお客様にご利用いただくことで特に大きな価値を発揮します。 高性能コンピューティング(HPC):科学研究、シミュレーション、モデリングなど、膨大な計算能力を必要とするHPC環境では、水冷が不可欠です。 人工知能(AI)と機械学習(ML):AIトレーニングや推論は、GPUに大きな負荷をかけるため、効率的な冷却はパフォーマンスを維持するために重要です。 高密度データセンター :限られたスペースに多くのサーバーを詰め込む必要がある場合、水冷は高密度化を可能にします。 エネルギー効率の重視 :持続可能性と運用コストの削減を重視する企業にとって、水冷は魅力的な選択肢です。 エッジコンピューティング :コンパクトで効率的な冷却ソリューションが必要なエッジ環境でも、水冷の利点は大きいです。 どうでしょうか。レノボの水冷サーバーのイメージが変わりましたでしょうか。 ここまでざっと簡単にレノボの水冷サーバー製品をご紹介させていただきましたが、もっと詳しく知りたい、などのご興味ございましたら、ぜひ弊社へお問い合わせいただければと思います。 関連情報 Lenovo サーバー/ストレージ 製品(NI+C Pサイト) 【参加レポート】Lenovo TechDay @ Interop Tokyo 2025(NI+C Pサイト) 第6世代のLenovo Neptune液体冷却が AI 時代を牽引(Lenovoサイト) 【AI電力消費40%削減事例も】レノボの「直接水冷」Lenovo Neptune™(YouTube) お問い合わせ エヌアイシー・パートナーズ株式会社E-mail:voice_partners@niandc.co.jp   .bigger { font-size: larger; } .highlighter { background: linear-gradient(transparent 50%, #ffff52 90% 90%, transparent 90%); } .anchor{ display: block; margin-top:-20px; padding-top:40px; } .btn_A{ height:30px; } .btn_A a{ display:block; width:100%; height:100%; text-decoration: none; background:#eb6100; text-align:center; border:1px solid #FFFFFF; color:#FFFFFF; font-size:16px; border-radius:50px; -webkit-border-radius:50px; -moz-border-radius:50px; box-shadow:0px 0px 0px 4px #eb6100; transition: all 0.5s ease; } .btn_A a:hover{ background:#f56500; color:#999999; margin-left:0px; margin-top:0px; box-shadow:0px 0px 0px 4px #f56500; } .table { border-collapse: collapse; border-spacing: 0; width: 100%; } .td { padding: 10px; vertical-align: top; line-height: 1.5; } .tbody tr td:first-child { font-weight: bold; width: 20%; } .tbody tr td:last-child { width: 80%; } .ul { margin: 0 !important; padding: 0 0 0 20px !important; } .ol { margin: 0 !important; padding: 0 0 0 20px !important; } .tr { height: auto; } .table { margin: 0; } *, *:before, *:after { -webkit-box-sizing: inherit; box-sizing: inherit; } .html { -webkit-box-sizing: border-box; box-sizing: border-box; font-size: 62.5%; } .btn, a.btn, button.btn { font-size: 1.6rem; font-weight: 700; line-height: 1.5; position: relative; display: inline-block; padding: 1rem 4rem; cursor: pointer; -webkit-user-select: none; -moz-user-select: none; -ms-user-select: none; user-select: none; -webkit-transition: all 0.3s; transition: all 0.3s; text-align: center; vertical-align: middle; text-decoration: none; letter-spacing: 0.1em; color: #212529; border-radius: 0.5rem; } a.btn--orange { color: #fff; background-color: #eb6100; border-bottom: 5px solid #b84c00; } a.btn--orange:hover { margin-top: 3px; color: #fff; background: #f56500; border-bottom: 2px solid #b84c00; } a.btn--shadow { -webkit-box-shadow: 0 3px 5px rgba(0, 0, 0, .3); box-shadow: 0 3px 5px rgba(0, 0, 0, .3); }

2025年08月21日

【イベントレポート】watsonx Orchestrate テクニカルワークショップ第一回 開催しました

公開日:2025-08-21 こんにちは。てくさぽブログメンバーの佐野です。 2025年7月17日に「watsonx Orchestrate テクニカルワークショップ」第一回を開催しました。 2024年12月にもwatsonx Orchestrate(以下wxO)のハンズオンセミナーを開催しておりますが、6月にwxOの大幅なアップデートが入り使い方・作り方が大きく変更になったため、最新情報と基本的な使い方をいち早くお届けするべく企画・開催しました。 また、ハンズオンだけでなくワークショップの時間を設け、wxOがどのように使えるのかを参加者同士でディスカッションし、最後に各チーム毎に発表・共有をすることでwxOの理解を進めるとともに参加者同士のコミュニケーションを図りました。 本ブログではこのテクニカルワークショップについて簡単ですがご紹介します。 目次 watsonx Orchestrate概要 watsonx Orchestrateハンズオン ワークショップ まとめ お問い合わせ watsonx Orchestrate概要 旧wxOと比べて新wxOはAgentの開発方法が変わっています。画面が変わったのはもちろんのこと、エージェントで実行部分を示す用語も「Skill」から「Tool」へ変更となっています。他に大きく変わったのは以下の点になります。 新しく「Knowledge」機能が追加され、Agent内にファイルを添付することができ、簡易的なRAGの構成をNo-Codeで実現 Agent内で定義しているToolを呼び出す際に、LLMが自動でチャットに入力されたテキストから必要な情報を抜き出し、Toolへ渡す Agentから他のAgentを呼び出せる(wxO以外のAgentも呼び出せる)Multi-Agent Orchestration機能 「Behavior」に日本語で返答させたりAgentの挙動を定義 人事業務や購買業務、営業業務といった特定業務向けの事前定義Agentを提供 AgentやToolをPythonで実装するためのAgent Development Kit (ADK)および開発者向けのDeveloper Editionを提供 モニタリング機能でAgent処理履歴のトレース情報を参照可能 自社で開発したエージェントを提供する”Agent Connect”というAIエージェントのエコシステム上でマーケットプレイス環境 wxOの各エディション内の機能の変更と課金対象の変更 このように大きな機能追加や使い方の変更が入ったことをご紹介し、理解頂きました。 watsonx OrchestrateでAgentを作成する時の主な設定項目は以下のようなものがあります。 watsonx Orchestrateハンズオン 概要でお伝えしたように、用語も変わった上に画面も新しくなっています。 そのため、AI Agentを動作させるための以下の基本的な操作をハンズオンで体験頂きました。 wxO環境の説明や基本的な操作 Agentの新規作成 Toolの作成・利用 Knowledgeを利用した簡易的なRAG Agent Tool Builderを利用しFlowやCodeblockの作成 Agentから他のAgentを呼び出し これらのハンズオンはCodeblockを除きNo-CodeでWebブラウザ上の操作で実行できるため、プログラミングやシステム開発の知識・経験が無くてもAI Agentを動かすことができます。Codeblock機能はAgentの動作・処理順を定義する”Flow”の中でPythonを使ってデータを操作するための機能であり、簡易的なETLを実現するものです。 今回のハンズオンでは、サンプルとその手順をご用意したので、参加者の方々が一通りのことを体験頂くことができました。実際にハンズオンで体験頂いた内容のサンプルをいくつかご紹介します。 Agentのサンプル1:都市名からお天気情報を返答するAgent APIで他サービスを呼び出し、都市名を入力すると天気と気温を回答してくれます。 複数の都市名を入力し、表形式で回答してもらうこともできます。 Agentのサンプル2:簡易的なRAG Agent ファイルを添付し、そのファイルの内容から回答をしてくれる機能です。 ハンズオンではIBMの2024年度の年次レポートを添付し、その内容を元に財務パフォーマンスのサマリーを回答させました。 ファイルの該当箇所が参照できるので、根拠を確認できるのがよいところです。 ファイルは事前にAgentに添付しておくこともできますし、ユーザー自身がファイルを添付する使い方もできます。 ワークショップ 今回、ハンズオンだけでなくwxOを自社または自社のお客様がどのように利用すると効率化できるか?という観点でチームに分かれてワークショップを行いました。 1チーム4人の合計3チームに分かれてNI+C Pメンバーがファシリテートしながらアイディア出し・ディスカッションを行いました。 最後に各チームのディスカッション結果を発表いただき、「こんなことできたらいいな」というアイディアを全員で共有し合いました。 ワークショップで上がった意見の中からいくつかピックアップします。 市役所の窓口業務を実施するAI Agent チャットだけでなく音声対応もできる 個別業務を処理するTool/Agentと情報参照のRAGを併用してユーザーへの問い合わせへ回答 ブログを書いてくれるAI Agent 過去のブログを参考にして文体や言い回しを自分流に ドラフト書くAgent、推敲Agent、ファクトチェックAgentなど組み合わせ 薬局の在庫予測や自動発注にAI Agentを活用 まとめ 新しくなったwxOのハンズオンを1か月とちょっとで実施するというチャレンジングなワークショップでしたが、無事終えることができてホッとしています。 ご参加頂いた方々からのアンケートで「最新情報を知り、その環境で動作させられたのがよかった」とご意見を頂いており、準備した甲斐があったと嬉しく思っております。 wxOテクニカルワークショップの第二回も企画しておりますし、他の製品についても企画中ですので、この記事をご覧の皆様のお役に立てるよう、今後も企画・実現していきます。 「こんなことやって欲しい」というご意見ありましたら是非ご意見お願いいたします。 お問い合わせ この記事に関するご質問は以下の宛先までご連絡ください。 エヌアイシー・パートナーズ株式会社技術企画本部E-mail:nicp_support@NIandC.co.jp   .bigger { font-size: larger; } .highlighter { background: linear-gradient(transparent 50%, #ffff52 90% 90%, transparent 90%); } .anchor{ display: block; margin-top:-20px; padding-top:40px; } .btn_A{ height:30px; } .btn_A a{ display:block; width:100%; height:100%; text-decoration: none; background:#eb6100; text-align:center; border:1px solid #FFFFFF; color:#FFFFFF; font-size:16px; border-radius:50px; -webkit-border-radius:50px; -moz-border-radius:50px; box-shadow:0px 0px 0px 4px #eb6100; transition: all 0.5s ease; } .btn_A a:hover{ background:#f56500; color:#999999; margin-left:0px; margin-top:0px; box-shadow:0px 0px 0px 4px #f56500; } .table { border-collapse: collapse; border-spacing: 0; width: 100%; } .td { padding: 10px; vertical-align: top; line-height: 1.5; } .tbody tr td:first-child { font-weight: bold; width: 20%; } .tbody tr td:last-child { width: 80%; } .ul { margin: 0 !important; padding: 0 0 0 20px !important; } .ol { margin: 0 !important; padding: 0 0 0 20px !important; } .tr { height: auto; } .table { margin: 0; } *, *:before, *:after { -webkit-box-sizing: inherit; box-sizing: inherit; } .html { -webkit-box-sizing: border-box; box-sizing: border-box; font-size: 62.5%; } .btn, a.btn, button.btn { font-size: 1.6rem; font-weight: 700; line-height: 1.5; position: relative; display: inline-block; padding: 1rem 4rem; cursor: pointer; -webkit-user-select: none; -moz-user-select: none; -ms-user-select: none; user-select: none; -webkit-transition: all 0.3s; transition: all 0.3s; text-align: center; vertical-align: middle; text-decoration: none; letter-spacing: 0.1em; color: #212529; border-radius: 0.5rem; } a.btn--orange { color: #fff; background-color: #eb6100; border-bottom: 5px solid #b84c00; } a.btn--orange:hover { margin-top: 3px; color: #fff; background: #f56500; border-bottom: 2px solid #b84c00; } a.btn--shadow { -webkit-box-shadow: 0 3px 5px rgba(0, 0, 0, .3); box-shadow: 0 3px 5px rgba(0, 0, 0, .3); }

2025年08月04日

【てくさぽBLOG】IBM watsonx OrchestrateのADKを使ってみた

こんにちは。 てくさぽBLOGメンバーの高村です。 早速ですが、今年5月に開催されたIBMの年次イベント「Think2025」で、watsonx Orchestrateの新機能が発表されました!その中の一つとして、開発者向けの「Agent Development Kit(以下、ADK)」があります。今回はこのADKを活用し、watsonx Orchestrate環境への接続やエージェントの追加といった操作を行い、その使用感をご紹介します。  なお、watsonx Orchestrateについては、今年2月、3月に公開した「watsonx OrchestrateやってみたBLOG」でご紹介しておりますので、是非こちらもご一読ください。 【てくさぽBLOG】IBM watsonx Orchestrateを使ってみた(Part1) 【てくさぽBLOG】IBM watsonx Orchestrateを使ってみた(Part2) 目次 はじめに ADKとは? ADK使ってみた さいごに お問い合わせ はじめに Think2025で発表された新機能は、6月に環境へ追加されました。それ以前の環境とは、メニュー構成や操作方法、機能名称に変更があります。 例えばこれまで「Skill」と呼ばれていたものが「Tool」へと名称変更されています。 アップデート後の環境につきましては、別ブログにて改めて詳しくご紹介させていただく予定ですので、ぜひご期待ください! ADKとは? まずはADKについてご紹介します。ADKとは開発者向けにwatsonx OrchestrateのAgentやToolをスクラッチ開発するための開発キットになります。ローカル端末などに導入し、pythonベースで開発を行うことができます。 また、ADKとは別に、watsonx Orchestrate Developer Editionをローカル端末に導入することで、ADKで開発したAgentやToolのテストが可能になります。なお、watsonx Orchestrate Developer EditionはDockerコンテナ上で動作し、現時点のハードウェア要件はCPUは最小8コア、メモリは最小16GBが必要です。詳細はInstalling the watsonx Orchestrate Developer Editionをご確認ください。   ADKとwatsonx Orchestrate Developer Editionを利用することで、コードの迅速な作成・修正や柔軟なカスタマイズに加え、環境へのデプロイ前にローカルでテスト・修正が可能となり、作業効率の向上が期待できます。 ADK使ってみた 前述ではADKでAgent開発し、watsonx Orchestrate Developer Editionで動作確認、SaaS watsonx Orchestrateへインポートする構築の流れをお話しましたが、今回の検証における動作確認は検証環境として利用しているIBM Cloud 上のwatsonx Orchestrate利用します。よって前述したwatsonx Orchestrate Developer Editionは利用せず、ADKからwatsonx Orchestrate検証環境へAgentとToolを直接インポートし、動作確認を行いたいと思います。また、ADKのインストール先は自分の端末ではなく、IBM Cloud上に構築したUbuntuのVirtual Server Instance(以下、VSI)を使用します。検証環境の構成イメージは下記の図の通りです。 尚、ADKのインストール要件はPython 3.11以上、Pip、そして仮想環境(以下venv)が必要です。詳細については、Getting started with the ADKをご確認ください。 それでは早速使ってみましょう! VSIのプロビジョニング まずはADKをインストールするVSIをプロビジョニングします。本ブログではプロビジョニング方法について詳しく記載いたしませんが、手順は「【てくさぽBLOG】IBM Power Virtual ServerのAIX環境とIBM Cloud Object Storageを接続してみた(Part1)」のVSI for VPCの作成をご参考ください。 OSはUbuntu 22.04 LTS Jammy Jellyfish Minimal Install、リソースは2vCPU,4GB RAMで作成しました。VSI作成時にSSH鍵が必要なるので作成を忘れないようにしてください。 作成すると数分で起動します。端末からSSHログインするため浮動IPが必要になります。赤枠で囲った浮動IPを作成しインスタンスに紐づけします。以上でVSIの作成は完了です。 Ubuntuの設定 ターミナルを開きsshでUbuntuにログインします。私はWindowsのコマンドプロンプトを使用しました。Ubuntuユーザでログイン後、rootパスワードを設定し、スイッチできるようにします。 ubuntu@nicptestvsi:~$ sudo passwd root New password: Retype new password: passwd: password updated successfully ubuntu@nicptestvsi:~$ su - pythonのバージョンを確認したところ3.10.12でした。ADKの要件は3.11以上ですので、バージョンアップが必要になります。最初は3.13にバージョンアップしてみたのですが、後続作業と最新バージョンではパッケージが合わなかったのかうまく動かず…仕切り直して3.11を利用することにしました! root@nicptestvsi:~# apt install python3.11 バージョンアップ後、デフォルトバージョンとして3.11を指定します。 root@nicptestvsi:~# sudo update-alternatives --install /usr/bin/python3 python3 /usr/bin/python3.10 1 sudo update-alternatives --install /usr/bin/python3 python3 /usr/bin/python3.11 2 sudo update-alternatives --config python3 update-alternatives: using /usr/bin/python3.10 to provide /usr/bin/python3 (python3) in auto mode update-alternatives: using /usr/bin/python3.11 to provide /usr/bin/python3 (python3) in auto mode There are 2 choices for the alternative python3 (providing /usr/bin/python3).Selection Path Priority Status ------------------------------------------------------------ * 0 /usr/bin/python3.11 2 auto mode 1 /usr/bin/python3.10 1 manual mode 2 /usr/bin/python3.11 2 manual modePress <enter> to keep the current choice[*], or type selection number: 2 root@nicptestvsi:~# root@nicptestvsi:~# python3 --version Python 3.11.13 次に下記コマンドを実行して任意のvenvを作成します。 python3 -m venv /path/to/nicpse/project/your-venv-adktest <環境のパスを指定 venvを活性化してログインします。下記コマンド結果のようにvenvに入れましたらUbuntuの設定は完了です。 root@nicptestvsi:~# source /path/to/nicpse/project/your-venv-adktest/bin/activate (your-venv-adktest) root@nicptestvsi:~# ADKのインストール 以下コマンドを実行してADKをインストールします。ADKは6月時点で1.5.1が最新バージョンです。 (your-venv-adktest) root@nicptestvsi:~# pip install ibm-watsonx-orchestrate Collecting ibm-watsonx-orchestrate Downloading ibm_watsonx_orchestrate-1.5.1-py3-none-any.whl.metadata (1.4 kB) Collecting certifi>=2024.8.30 (from ibm-watsonx-orchestrate) Downloading certifi-2025.6.15-py3-none-any.whl.metadata (2.4 kB) Collecting click<8.2.0,>=8.0.0 (from ibm-watsonx-orchestrate) Downloading click-8.1.8-py3-none-any.whl.metadata (2.3 kB) Collecting docstring-parser<1.0,>=0.16 (from ibm-watsonx-orchestrate) Downloading docstring_parser-0.16-py3-none-any.whl.metadata (3.0 kB) Collecting httpx<1.0.0,>=0.28.1 (from ibm-watsonx-orchestrate) Downloading httpx-0.28.1-py3-none-any.whl.metadata (7.1 kB) ----中略---- (your-venv-adktest) root@nicptestvsi:~# orchestrate --version ADK Version: 1.5.1 ADKの環境設定 次にADKの環境設定を行います。watsonx OrchestrateのインスタンスIDが必要になるため、watsonx OrchestrateのSetting画面に入り確認します。下記画面をご参考にしてください。 環境設定コマンドはこちらになります。-nの後はvenv名を指定し、-uの後はインスタンスIDを指定します。 (your-venv-adktest) root@nicptestvsi:~# orchestrate env add -n <仮想環境名> -u <環境のインスタンスID> [INFO] - Environment 'my-name' has been created [INFO] - Existing environment with name 'nicpse' found. Would you like to update the environment 'nicpse'? (Y/n)y [INFO] - Environment 'nicpse' has been created 以下コマンドを実行して、IBM Cloud上のwatsonx Orchestrateと認証設定をします。APIキーの取得方法は「【てくさぽBLOG】IBM watsonx.aiを使ってみた(Part2)」のAPIキーの取得をご確認ください。尚、リモート環境に対する認証は2時間ごとに期限切れになります。期限が切れた場合は再度認証する必要があります。 (your-venv-adktest) root@nicptestvsi:~# orchestrate env activate nicpse --apikey <APIキー> [INFO] - Environment 'my-ibmcloud-saas-account' is now active [INFO] - Environment 'nicpse' is now active 下記コマンドを実行してCLIから利用できる環境のリストを表示します。IBM Cloud上のwatsonx Orchestrateがactiveとなっていました! (your-venv-adktest) root@nicptestvsi:~# orchestrate env list nicpse https://api.us-south.watson-orchestrate.cloud.ibm.com/instances/XXXXXXXX (active) local http://localhost:XXXX Toolとagentのインポート 次にToolとAgentのインポートを行います。ToolとはAgentがタスクを実行する際に利用する機能です。今回は、IBM様より共有いただいたyfinanceを活用したToolおよびAgentのコードを、ADKを用いてインポートします。なお、yfinanceはヤフーファイナンスから株価などの金融データを取得するためのPythonライブラリです。 最初にToolのインポートを行います。下記の様に、scpなどでToolファイルとrequirements.txtをディレクトリにアップロードしておきます。requirementsファイルは他のモジュールと依存関係がある場合使用します。 (your-venv-adktest) root@nicptestvsi:~/orchestrate_tool/py/source_02# ls -l total 12 -rw-r--r-- 1 root root 0 Jun 24 04:42 __init__.py drwxr-xr-x 2 root root 4096 Jun 24 04:38 __pycache__ -rw-rw-r-- 1 ubuntu ubuntu 8 Jun 24 03:02 requirements.txt -rw-rw-r-- 1 ubuntu ubuntu 1778 Jun 24 02:46 yfinance_agent.py 下記コマンドを実行してToolファイルとrequirementsファイルをインポートします。企業情報を取得するstock_infoと株価を取得するstock_quoteの2つのToolがインポートされました。 (your-venv-adktest) root@nicptestvsi:~/orchestrate_tool/py/source_02# orchestrate tools import -k python -f "./yfinance_agent.py" -r "./requirements.txt" [INFO] - Using requirement file: "./requirements.txt" [INFO] - Tool 'stock_info' imported successfully [INFO] - Tool 'stock_quote' imported successfully listコマンドを実行するとインポートされたToolを確認できます。 (your-venv-adktest) root@nicptestvsi:# orchestrate tools list ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┳━━━━┳ ┃ Name ┃ Description ┃ Permission ┃ Type ┃ Toolkit ┃ App ID ┃ ┡━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╇━━━━╇ │───────────┼────────────┼── │ send_mail_brevo │ send a meil using Brevo. │ write_only │ python │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ ├─────────────────────────────────┼──── │ stock_quote │ 企業のTickerSymbolを用いて株価… │ read_only │ python │ │ │ ├─────────────────────────────────┼──── │ Untitled_6160RC │ No description │ read_only │ openapi │ │ │ ├─────────────────────────────────┼──── │ stock_info │ 企業のTickerSymbolを用いて企業… │ read_only │ python │ │ │ └─────────────────────────────────┴──── 次にAgentをインポートします。下記コマンドを実行します。 (your-venv-adktest) root@nicptestvsi:~/orchestrate_tool/py/source_02# orchestrate agents import -f ./yfinance_agent.yaml agent listコマンドでインポート済みのAgentを確認できました。Agentが使用するToolも表示されています。 (your-venv-adktest) # orchestrate agents list ┏━━━━━━━━━━━━━━━┳━━━━━━━━━━━━━━━┳━━━━━━━━ ┃ Name ┃ Description ┃ LLM ┃ Style ┃ Collaborators ┃ Tools ┃ Knowledge Base ┃  ┡━━━━━━━━━━━━━━━╇━━━━━━━━━━━━━━━╇━━━━━━━━ │ yfinance_age… │ 企業の会社情… │ watsonx/meta- │ react │ │ stock_info, │ │ │ │ │ llama/llama-3 │ │ │ stock_quote │ │ ││ │ │ -2-90b-vision ││ │ -instruct │ │  IBM Cloud上のwatsonx Orchestrateで動作確認 インポートしたAgentとToolをIBM Cloud上のwatsonx Orchestrateで確認します。 watsonx Orchestrateへログインし、BuildからAgent Builderを選択します。 yfinanceエージェントが表示されているので、クリックします。 クリックすると、Agent作成画面に入ります。UIから基盤モデルを変更したり、Agentの振る舞いなど変更することができます。 スクロールして、Toolsetを確認するとADKからインポートしたToolが登録されています。 右のPreviewからAgentの動きを確認することができます。今回はDeployせずPreviewで確認します。入力欄には「IBMの株価は?」と質問してみます。しばらくすると本日の株価が回答されました。Show Reasoningを開くと推論過程を確認することができます。株価を取得するTool「stock_quote」を使用し、AIがユーザの入力から自動的にTicker symbolを入力していることがわかります。 次に「IBMの企業情報」と質問をします。しばらくするとAIがユーザの入力からTicker symbolを入力し、Tool「stock_info」を利用して企業情報を取得、回答されました。ユーザの入力内容からAgentが使用するToolを選択し、実行していることがわかります。   さいごに ADKのご紹介とADKを使ってToolとAgentのインポートを行いました。 ADKのインストールおよび設定について、Pythonバージョンの設定やvenvの作成でつまずく部分はありましたが、venvが作成できればその後の設定はスムーズに進められました。 今回はVSI上のUbuntuサーバにADKをインストールしましたが、ご自身の端末に導入することで、より気軽にAgent開発を行えるかと思います。なお、今回は検証対象外でしたが、watsonx Orchestrate Developer Editionを利用する場合は、インストール要件としてやや高めのスペックが必要になる点にご注意ください。 検証時のADKのバージョンは1.5.1でしたが、7月末では1.8.0が最新バージョンとなっています。比較的頻繁にアップデートされますので適宜Release Notesをご確認ください。バージョンアップでコマンドオプションも変更される場合があるため、マニュアルを確認するかコマンドに`--help`を付与してパラメータを確認することをおすすめします。   お問い合わせ この記事に関するご質問は以下の宛先までご連絡ください。 エヌアイシー・パートナーズ株式会社 技術企画本部 E-mail:nicp_support@NIandC.co.jp   .anchor{ display: block; margin-top:-20px; padding-top:40px; }

back to top