こんにちは。てくさぽBLOGメンバーの山田です。
今年も「IBM Think」に参加しました。
昨年同様、IBM 独自の Watson Media を利用したデジタル開催でしたが、今年はアジア地域の時間帯に合わせた配信や機械翻訳に加え日本語同時通訳付きセッションもあり、年々参加しやすくなっています。
6月23日まで Think 2021 オンデマンドでセッションが視聴可能です。
「Think 2021 / Partner Experience at Think (IBMサイト)」(※IBM IDが必要となります)
AIは、驚異的な量のデータの意味を理解できる唯一の方法
昨年4月に CEO に就任後初めて本格的に昨年度の成果や次の方針を伝える場となるクリシュナ氏の基調講演では、昨年から方針は変わらず、キー・テクノロジーであるハイブリッド・クラウドと AI へ更に注力し、より具体的な新しいソリューションとして以下の発表がありました。
- IBM Watson Orchestrate
- AutoSQLのICP4Dへの組み込み
- Project CodeNet
昨年はバンキング・ヘルス・テレコムなどインダストリー色の強い発表が多くありましたが、今年は製品・サービスでの発表が色濃いとという印象でした。
クリシュナ氏のメッセージは、
“工場や機械に電力が供給されてきたように、あらゆるソフトウェアに AI を活用したインテリジェントが組み込まれていく、そして、依然としてスキルと専門知識の欠如が AI採用の障壁となっている状況に対する解決策を IBM は提供していく”
というものでした。
エンドユーザの活動を自動化・省力化するソリューション
「IBM Watson Orchestrate」
IBM Watson Orchestrate は、IBM としては珍しい、エンドユーザの活動を自動化・省力化するインタラクティブな AIソリューションとして発表されました。
IBM が Watson として培った自然言語処理をベースとした AIテクノロジーにより、Salesforce、SAP、Workday などの一般的なビジネスアプリケーションや、チャット、カレンダー、メールなどの標準的なコラボレーションツールと連携可能で、最大50%の時間を取り戻すことができると言います。
会議スケジュール調整や承認などの日常業務で、AI が適切なアラートや分析結果を指示し、提案書作成などまさに個人の生産性を向上させることが具体的にイメージできるソリューションです。
これは、昨年の Think で発表された、汎用的に AI を適用し易い IT運用の自動化にフォーカスしたソリューションであった IBM Watson AIOps に対し、よりオフィスワークへ AI適用範囲を拡大し、営業や人事・オペレーションなど、日常業務のあらゆる自動化へ組み込めるテクノロジーを提供することで、よりパートナー様がイメージできるソリューションであると感じました。
図1:IBM Watson Orchestrate の概念
単なるチャットボットやデジタルアシスタンスとは違うことは、デモ*をみていただいた方がイメージが沸くと思います。
デモページ:「Watson Orchestrate Demo (IBMサイト)」
上記のデモは日本語字幕がありませんが、Thinkオンデマンドのセッションでは日本語字幕もありお勧めです。
Thinkオンデマンド セッション:「Think 2021 (IBMサイト)」
Watson Orchestrate は、OpenShiftベースの IBM Cloud Pak for Business Automation の一部として未だプレビュー中ですが、2021年度中に提供開始予定です。
速度は8倍、コストは半分。 データ管理ソリューション「AutoSQL」
次に、AIベースのソリューション「AutoSQL」の紹介がありました。
AI の採用を拡大する際の課題の1つは、機械学習に必要なデータの管理です。
企業は、貴重な洞察につながる可能性があるデータを大量に保有していますが、パブリッククラウド、プライベートクラウド、オンプレミスなど複数の場所に分散されており、実現には膨大な労力とコストが掛かるのが現実でした。
実際 Cloud Pak for Data においても、日本のお客様からの要望の多くがデータカタログ化にあり、IBM は Information Management領域での知見を惜しみなく IBM Cloud Pak for Data に取り込んでいます。
今回発表された AutoSQL は、自動的にデータカタログを作成する「AutoCatalog」と合わせて活用されることが想定されますが、この実現により複数の場所に保管されているデータウェアハウスやストリーミングデータなど、異なるデータソースを移動させることなく同じクエリーで検索することができる高性能のユニバーサルクエリエンジンとなります。
IBM からの発表によれば、「以前の8倍の速度で、他の比較されたデータウェアハウスのほぼ半分のコスト」の効果があるそうです。
AutoSQL は、IBM Cloud Pak for Data の機能追加として提供される予定です。
OpenShiftが大きな鍵を握る、オープンへのこだわり
IBM President であるハースト氏は、”より企業が競争に打ち勝つにはイノベーションが必須であり、オープンであることは戦略的なビジネス上の決定である” と語りました。
オープンとはオープンソースという意味に閉じず、オープンスタンダード、オープン組織、オープンカルチャーなど多岐にわたりますが、多くの場所で実行可能な「オープン」の実現には Red Hat OpenShift のテクノロジーがベースとなると述べています。
これは、IBM のハイブリッド・マルチクラウド戦略や、フォーカス製品である IBM Cloud Paks からも明確にメッセージされていますし、IBM は引続き OpenShift を軸にテクノロジー戦略を推し進める事に何も変わりはなく、ブレのない姿勢を強く印象付けたメッセージだったと感じました。
そのほか、量子コンピューティング IBM Quantum用コンテナ・サービスである Qiskit Runtime のスピード向上や、AI にソースコードを学習させるための大規模データセットである Project CodeNet のリリースなどが発表されました。
特に、Project CodeNet により、コードの別言語への翻訳や異なるコード間の重複と類似性の特定が可能となり、レガシーなコードから最新のコードへの移行などが期待できます。
パートナー・エコシステムへの更なる投資
パートナー・エコシステムへの取り組みについても、大きな発表としてメッセージされました。
IBMテクノロジーをわかりやすくお客様に届けるには、パートナー様との協業・共創が必要で、10憶ドルもの投資を行うとの発表がありました。従来型の販売(再販)に加え、ビルド、サービスといったパートナータイプが追加され、ISV・CSP といったソリューションベンダーへの支援プログラムもより拡大されるようです。
特に、クラウドエンゲージメントファンド (CEF) は、お客様のワークロードをハイブリッドクラウド環境に移行するのに役立つ重要な技術リソースとパートナー向けのクラウドクレジットへの投資です。
Think後の日本IBM の中でもこの発表は強く認識されており、IBMグローバルとして、よりパートナー協業を強く推し進める姿勢であり、支援を強化する動きが活発化していると感じます。
さいごに
今までにない経験であったこの1年で、10年分のデジタル革命が起きたと言われています。
そしてこれからも続くであろうこの進化を、引き続きパートナーの皆様へお届けしていきたいと思います。