2022年12月

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可用性を高める機能が満載!ストレージの付加価値が高まる「IBM Spectrum Virtualize」

IBM FlashSystem は、高いパフォーマンスや強固なセキュリティを求めている組織にとって理想的なオールフラッシュ・ストレージです。

NVMe に対応し独自技術IBM FlashCoreテクノロジー搭載により、きわめて優れた処理能力でデータからの価値創造に貢献します。
お客様満足度も高く、大手B2Bピアレビュープラットフォームである TrustRadius の「エンタープライズ向けフラッシュ・アレイ・ストレージ・ソリューション」部門で2022年もトップ評価賞を獲得しています。

FlashSystem には IBM Spectrum Virtualize という柔軟性の高いストレージ・ソリューションが搭載されており、HyperSwap(可用性)、データ保全(データコピー)、データ移行(無停止でのボリューム移動)、ストレージ仮想化、ストレージ効率化(EasyTier、データの削減・圧縮)など、多くの機能が実装されています。
これらを活用することで、オンプレミス/オフプレミス、またはその両方の組み合わせで新しいワークロードと従来のワークロードに対応するブロック・ストレージ・サービスを迅速に展開することができます。

今回は「もっと活用したいIBM Spectrum Virtualize」をテーマに、カギとなる機能とお客様にお勧めする理由を解説します。

シンプルかつスマートにストレージの可用性を高めるHyperSwap

高性能なストレージは、高可用性を求められる状況で採用されるケースが多いものです。
障害、災害、サイバー攻撃に遭ったとしても、ビジネスを止めることは許されない。そのような場合には、ストレージにおいても万一の場合でも稼働を継続できる工夫が必要です。

ストレージの高可用性を実現する手段は様々あります。
例えば、OS やアプリケーションの持つデータ二重書き機能を活用することです。
ただし、二重書き機能を持つ OS やアプリケーションは限られるため、冗長化できないデータも出てきます。また、この方法はサーバのリソースを消費するとともに、OS とアプリケーションソフトウェアそれぞれの二重書き機能を利用するとすれば管理が複雑になります。

もう1つの方法として、ストレージ・レプリケーションを活用する方法もあります。
しかし、AストレージがダウンしたときにBストレージに自動的に切り替えるようにするには、スクリプトの作りこみが必要です。また、切り替え時にはダウンタイムが発生します。

このように、メリットもあるがデメリットもあるという従来のストレージ高可用性ソリューションに対して、IBM Spectrum Virtualize では真に堅牢なストレージ基盤を構築するためのソリューションを提供しています。

それが、HyperSwap です。
HyperSwap はアクティブ-アクティブの HA構成で、片系統に障害が発生してもダウンタイムなしにデータへのアクセスを継続できます。

もう少し具体的に見ていきましょう。

HyperSwap

HyperSwap では、4ノード、2 I/Oグループでストレージクラスターを構成します。

グループ0のストレージには、Aサーバ向けのプライマリデータボリュームとBサーバ向けのセカンダリデータボリュームを持ちます。逆にグループ1のストレージには、Aサーバ向けのセカンダリデータボリュームとBサーバ向けのプライマリデータボリュームを持ちます。

つまり、データをたすきがけに持つことで片系統の障害発生に備えます(図1)。

HyperSwapによるストレージクラスター構成
図1:HyperSwapによるストレージクラスター構成

グループ0とグループ1の間には、外部ディスク装置あるいは IP Quorum というストレージの死活監視役を置きます。
これは、グループ0とグループ1から定期的に発信される “正常に動いています” という信号を仲介します。

外部ディスク装置の場合は両方の信号がここに蓄積されるため、グループ0とグループ1それぞれでその信号を確認します。

IP Quorum の場合はグループ0から来た信号はグループ1へ、グループ1から来た信号はグループ0へと相手方へ送信します。
この信号が途絶えたら相手方がダウンしたと判断し、自分の持つデータボリュームをプライマリに昇格させて動かします。

HyperSwap を利用すると、ストレージ筐体全体がダウンしてしまったというときにも問題なく業務を継続できます。
また、ストレージ側で自動切り替えを実施するため処理の作りこみが不要、さらに、サーバ側に専用ソフトや特別な設定は不要で、マルチパス・ドライバーさえ導入されていれば構築可能です。

Remote Copyは機能が改善されIBM Global Data Platformへ

一方、業務によってはそこまで業務継続性にこだわる必要はないというケースもあるかもしれません。

データさえどこかに確保できていれば体制を整えてからそのデータを持って立ち上がればよい。そのような発想のシステムに適しているのが、Remote Copy機能です。

これは、文字どおり離れた場所に設置したストレージにデータをコピーするというものです。
具体的に2つの方法があり、1つが Fibre Channel経由のレプリケーションで、もう1つがネイティブIPレプリケーションです(図2)(図3)。

Fibre Channel経由のレプリケーション
図2:Fibre Channel 経由のレプリケーション
ネイティブIPレプリケーション
図3:ネイティブIPレプリケーション

Fibre Channel経由のレプリケーションの場合、コピーを実行したい2台のストレージの間に FCIP(Fibre Channel over IP)変換装置をそれぞれ設置します。
これがデータ圧縮を実施し、リモートサイトのストレージへデータを転送します。
FCIP は TCP/IP上に Fibre Channel を流すプロトコルで、長距離接続の場合に利用します。

ネイティブIPレプリケーションの場合は、FCIP変換装置は不要です。ストレージ自身がデータを圧縮して転送します。

これまで Remote Copy では、データを転送するストレージとデータを受信するストレージの両方に同じ設定が必要でした。
すなわち、データを転送する側の設定を変更したら受信する側も同じように設定変更が必要でした。

しかし、新しく登場した次世代データ基盤 IBM Global Data Platform(GDP)のアーキテクチャに従えば、データ転送側のストレージ設定を変えると受信側の設定も自動的に変更されます。
また、一定の割合で発生していたデータ転送エラーの割合も改善されています。

これらにより、運用現場では管理負荷を軽減することができます。

さらに、これまでハードウェア上の要件が厳しく受信側でのレスポンスタイムが 10mm/sec までしか許容されていなかったものが、GDP で 80mm/sec にまで緩和されました。

これにより、WAN回線がそれほど高品質でなくても適用可能になります。
海外拠点あるいは遠隔の自社拠点間に災害対策用データを置きたいが、専用線は敷設していない。といった条件でも、Remote Copy を検討できるようになります。

ストレート内に聖域を設けるセーフガード・コピー

サイバー攻撃もまた、企業の事業継続を脅かす大きなリスクの1つです。

IBM Spectrum Virtualize では、ランサムウェア攻撃によるデータ暗号化に備えてセーフガード・コピーという機能を提供しています。
これは、ストレージ上のデータが論理的に破壊されることや、変更または削除されることを防ぐ機能です。
利用するには FlashCopy と Copy Service Manager(以下 CSM)のライセンスが必要ですが、これにより堅牢なデータバックアップ運用が実現します。

CSM はセーフガード・コピーの自動化に関わる機能です。
クライアントが提供する仮想マシンや x86サーバ上で動作する外部ソフトウェアで、コピー・スケジュールとバックアップの保存期間管理を受け持ちます。

IBM Spectrum Virtualize がセーフガード・ポリシーを作成すれば、CSM はそれを自動的に発見しそのポリシーにしたがって動作します。
まさに IBM Spectrum Virtualize と CSM が連携して動くイメージです。

セーフガード・コピーがデータを守るしくみは、下記のようなものになります(図4)。

セーフガード・コピーでデータを守るしくみ
図4:セーフガード・コピーでデータを守るしくみ

ストレージのデータは、ポリシーにしたがって定期的にセーフガード・コピー・プールと呼ばれる保護された子プールにスナップショットが作成されます。
その時間間隔はデータの特性によって自由に設定可能です。1分ごとにバックアップしたいものもあれば、1日に1回でよいというケースもあるかもしれません。

セーフガード・コピー・プールには最大15,864個のオブジェクト、256世代のバックアップを置くことができます。
また、セーフガード・コピー・プールに置かれるコピーデータはイミュータブル(その状態を変えることのできないもの)です。どのサーバやアプリケーションからもアクセスできません。

ランサムウェア攻撃を受けデータに侵害があったことが、ある時点で判明したとします。
ここで次に起こすアクションは、セーフガード・コピー・プールでコピーデータの世代をさかのぼって、まだ侵害を受けていない時点のコピーデータを見つけ出すことです。

求めるコピーデータが見つかったらCyber Vault

システムとして作成したリカバリーボリュームにリストアします。
そこでリストアされて初めて、サーバやアプリケーションからデータにアクセスできるようになります。

ストレージ内にセーフガード・コピー・プールという “聖域” を設けることによってデータを守るという仕組みは、外部脅威がますます高度化・凶悪化している今日、企業に大きな安心をもたらします。

もちろんヒューマンエラーやハードウェア障害、広域災害によって失われたデータを取り戻す際にも、セーフガード・コピーは有効に働きます。
また、定期的な分析で問題を早期に発見するためのデータ検証や、侵害が判明した際にリカバリーアクションを決定するためのデータフォレンジックにも活用できます。
バックアップシステムを別途構築する必要がなくサーバ運用を簡素化できる、という意味でもお勧めの機能です。

さらに別システムとの連携にはなりますが、データに生じた異常を常時監視するプロアクティブモニタリングを実現することも可能です。
何かあればすぐにアラート通知が送られてくるため、それをフックに健全なコピーをただちに見つけリストアに入るといった、より機敏なアクションを取れるようになります。

まとめ – エヌアイシー・パートナーズがSpectrum Virtualize活用提案をサポート

エヌアイシー・パートナーズではリセラー様における Spectrum Virtualize活用提案について、潜在ニーズを含めたシステム構成支援を始めとして様々な技術的アドバイスが提供可能です。
また取り扱い製品が多岐にわたることから、FlashSystem や Spectrum Virtualize にとどまらず、システム全体の提案支援も行っています。

エンドユーザーの抱える課題を解決するための方策を、弊社はリセラーの皆様とともに考え導き出していきます。

ぜひ、お気軽にご相談ください。

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2025年08月04日

【てくさぽBLOG】IBM watsonx OrchestrateのADKを使ってみた

こんにちは。 てくさぽBLOGメンバーの高村です。 早速ですが、今年5月に開催されたIBMの年次イベント「Think2025」で、watsonx Orchestrateの新機能が発表されました!その中の一つとして、開発者向けの「Agent Development Kit(以下、ADK)」があります。今回はこのADKを活用し、watsonx Orchestrate環境への接続やエージェントの追加といった操作を行い、その使用感をご紹介します。  なお、watsonx Orchestrateについては、今年2月、3月に公開した「watsonx OrchestrateやってみたBLOG」でご紹介しておりますので、是非こちらもご一読ください。 【てくさぽBLOG】IBM watsonx Orchestrateを使ってみた(Part1) 【てくさぽBLOG】IBM watsonx Orchestrateを使ってみた(Part2) 目次 はじめに ADKとは? ADK使ってみた さいごに お問い合わせ はじめに Think2025で発表された新機能は、6月に環境へ追加されました。それ以前の環境とは、メニュー構成や操作方法、機能名称に変更があります。 例えばこれまで「Skill」と呼ばれていたものが「Tool」へと名称変更されています。 アップデート後の環境につきましては、別ブログにて改めて詳しくご紹介させていただく予定ですので、ぜひご期待ください! ADKとは? まずはADKについてご紹介します。ADKとは開発者向けにwatsonx OrchestrateのAgentやToolをスクラッチ開発するための開発キットになります。ローカル端末などに導入し、pythonベースで開発を行うことができます。 また、ADKとは別に、watsonx Orchestrate Developer Editionをローカル端末に導入することで、ADKで開発したAgentやToolのテストが可能になります。なお、watsonx Orchestrate Developer EditionはDockerコンテナ上で動作し、現時点のハードウェア要件はCPUは最小8コア、メモリは最小16GBが必要です。詳細はInstalling the watsonx Orchestrate Developer Editionをご確認ください。   ADKとwatsonx Orchestrate Developer Editionを利用することで、コードの迅速な作成・修正や柔軟なカスタマイズに加え、環境へのデプロイ前にローカルでテスト・修正が可能となり、作業効率の向上が期待できます。 ADK使ってみた 前述ではADKでAgent開発し、watsonx Orchestrate Developer Editionで動作確認、SaaS watsonx Orchestrateへインポートする構築の流れをお話しましたが、今回の検証における動作確認は検証環境として利用しているIBM Cloud 上のwatsonx Orchestrate利用します。よって前述したwatsonx Orchestrate Developer Editionは利用せず、ADKからwatsonx Orchestrate検証環境へAgentとToolを直接インポートし、動作確認を行いたいと思います。また、ADKのインストール先は自分の端末ではなく、IBM Cloud上に構築したUbuntuのVirtual Server Instance(以下、VSI)を使用します。検証環境の構成イメージは下記の図の通りです。 尚、ADKのインストール要件はPython 3.11以上、Pip、そして仮想環境(以下venv)が必要です。詳細については、Getting started with the ADKをご確認ください。 それでは早速使ってみましょう! VSIのプロビジョニング まずはADKをインストールするVSIをプロビジョニングします。本ブログではプロビジョニング方法について詳しく記載いたしませんが、手順は「【てくさぽBLOG】IBM Power Virtual ServerのAIX環境とIBM Cloud Object Storageを接続してみた(Part1)」のVSI for VPCの作成をご参考ください。 OSはUbuntu 22.04 LTS Jammy Jellyfish Minimal Install、リソースは2vCPU,4GB RAMで作成しました。VSI作成時にSSH鍵が必要なるので作成を忘れないようにしてください。 作成すると数分で起動します。端末からSSHログインするため浮動IPが必要になります。赤枠で囲った浮動IPを作成しインスタンスに紐づけします。以上でVSIの作成は完了です。 Ubuntuの設定 ターミナルを開きsshでUbuntuにログインします。私はWindowsのコマンドプロンプトを使用しました。Ubuntuユーザでログイン後、rootパスワードを設定し、スイッチできるようにします。 ubuntu@nicptestvsi:~$ sudo passwd root New password: Retype new password: passwd: password updated successfully ubuntu@nicptestvsi:~$ su - pythonのバージョンを確認したところ3.10.12でした。ADKの要件は3.11以上ですので、バージョンアップが必要になります。最初は3.13にバージョンアップしてみたのですが、後続作業と最新バージョンではパッケージが合わなかったのかうまく動かず…仕切り直して3.11を利用することにしました! root@nicptestvsi:~# apt install python3.11 バージョンアップ後、デフォルトバージョンとして3.11を指定します。 root@nicptestvsi:~# sudo update-alternatives --install /usr/bin/python3 python3 /usr/bin/python3.10 1 sudo update-alternatives --install /usr/bin/python3 python3 /usr/bin/python3.11 2 sudo update-alternatives --config python3 update-alternatives: using /usr/bin/python3.10 to provide /usr/bin/python3 (python3) in auto mode update-alternatives: using /usr/bin/python3.11 to provide /usr/bin/python3 (python3) in auto mode There are 2 choices for the alternative python3 (providing /usr/bin/python3).Selection Path Priority Status ------------------------------------------------------------ * 0 /usr/bin/python3.11 2 auto mode 1 /usr/bin/python3.10 1 manual mode 2 /usr/bin/python3.11 2 manual modePress <enter> to keep the current choice[*], or type selection number: 2 root@nicptestvsi:~# root@nicptestvsi:~# python3 --version Python 3.11.13 次に下記コマンドを実行して任意のvenvを作成します。 python3 -m venv /path/to/nicpse/project/your-venv-adktest <環境のパスを指定 venvを活性化してログインします。下記コマンド結果のようにvenvに入れましたらUbuntuの設定は完了です。 root@nicptestvsi:~# source /path/to/nicpse/project/your-venv-adktest/bin/activate (your-venv-adktest) root@nicptestvsi:~# ADKのインストール 以下コマンドを実行してADKをインストールします。ADKは6月時点で1.5.1が最新バージョンです。 (your-venv-adktest) root@nicptestvsi:~# pip install ibm-watsonx-orchestrate Collecting ibm-watsonx-orchestrate Downloading ibm_watsonx_orchestrate-1.5.1-py3-none-any.whl.metadata (1.4 kB) Collecting certifi>=2024.8.30 (from ibm-watsonx-orchestrate) Downloading certifi-2025.6.15-py3-none-any.whl.metadata (2.4 kB) Collecting click<8.2.0,>=8.0.0 (from ibm-watsonx-orchestrate) Downloading click-8.1.8-py3-none-any.whl.metadata (2.3 kB) Collecting docstring-parser<1.0,>=0.16 (from ibm-watsonx-orchestrate) Downloading docstring_parser-0.16-py3-none-any.whl.metadata (3.0 kB) Collecting httpx<1.0.0,>=0.28.1 (from ibm-watsonx-orchestrate) Downloading httpx-0.28.1-py3-none-any.whl.metadata (7.1 kB) ----中略---- (your-venv-adktest) root@nicptestvsi:~# orchestrate --version ADK Version: 1.5.1 ADKの環境設定 次にADKの環境設定を行います。watsonx OrchestrateのインスタンスIDが必要になるため、watsonx OrchestrateのSetting画面に入り確認します。下記画面をご参考にしてください。 環境設定コマンドはこちらになります。-nの後はvenv名を指定し、-uの後はインスタンスIDを指定します。 (your-venv-adktest) root@nicptestvsi:~# orchestrate env add -n <仮想環境名> -u <環境のインスタンスID> [INFO] - Environment 'my-name' has been created [INFO] - Existing environment with name 'nicpse' found. Would you like to update the environment 'nicpse'? (Y/n)y [INFO] - Environment 'nicpse' has been created 以下コマンドを実行して、IBM Cloud上のwatsonx Orchestrateと認証設定をします。APIキーの取得方法は「【てくさぽBLOG】IBM watsonx.aiを使ってみた(Part2)」のAPIキーの取得をご確認ください。尚、リモート環境に対する認証は2時間ごとに期限切れになります。期限が切れた場合は再度認証する必要があります。 (your-venv-adktest) root@nicptestvsi:~# orchestrate env activate nicpse --apikey <APIキー> [INFO] - Environment 'my-ibmcloud-saas-account' is now active [INFO] - Environment 'nicpse' is now active 下記コマンドを実行してCLIから利用できる環境のリストを表示します。IBM Cloud上のwatsonx Orchestrateがactiveとなっていました! (your-venv-adktest) root@nicptestvsi:~# orchestrate env list nicpse https://api.us-south.watson-orchestrate.cloud.ibm.com/instances/XXXXXXXX (active) local http://localhost:XXXX Toolとagentのインポート 次にToolとAgentのインポートを行います。ToolとはAgentがタスクを実行する際に利用する機能です。今回は、IBM様より共有いただいたyfinanceを活用したToolおよびAgentのコードを、ADKを用いてインポートします。なお、yfinanceはヤフーファイナンスから株価などの金融データを取得するためのPythonライブラリです。 最初にToolのインポートを行います。下記の様に、scpなどでToolファイルとrequirements.txtをディレクトリにアップロードしておきます。requirementsファイルは他のモジュールと依存関係がある場合使用します。 (your-venv-adktest) root@nicptestvsi:~/orchestrate_tool/py/source_02# ls -l total 12 -rw-r--r-- 1 root root 0 Jun 24 04:42 __init__.py drwxr-xr-x 2 root root 4096 Jun 24 04:38 __pycache__ -rw-rw-r-- 1 ubuntu ubuntu 8 Jun 24 03:02 requirements.txt -rw-rw-r-- 1 ubuntu ubuntu 1778 Jun 24 02:46 yfinance_agent.py 下記コマンドを実行してToolファイルとrequirementsファイルをインポートします。企業情報を取得するstock_infoと株価を取得するstock_quoteの2つのToolがインポートされました。 (your-venv-adktest) root@nicptestvsi:~/orchestrate_tool/py/source_02# orchestrate tools import -k python -f "./yfinance_agent.py" -r "./requirements.txt" [INFO] - Using requirement file: "./requirements.txt" [INFO] - Tool 'stock_info' imported successfully [INFO] - Tool 'stock_quote' imported successfully listコマンドを実行するとインポートされたToolを確認できます。 (your-venv-adktest) root@nicptestvsi:# orchestrate tools list ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┳━━━━┳ ┃ Name ┃ Description ┃ Permission ┃ Type ┃ Toolkit ┃ App ID ┃ ┡━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╇━━━━╇ │───────────┼────────────┼── │ send_mail_brevo │ send a meil using Brevo. │ write_only │ python │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ ├─────────────────────────────────┼──── │ stock_quote │ 企業のTickerSymbolを用いて株価… │ read_only │ python │ │ │ ├─────────────────────────────────┼──── │ Untitled_6160RC │ No description │ read_only │ openapi │ │ │ ├─────────────────────────────────┼──── │ stock_info │ 企業のTickerSymbolを用いて企業… │ read_only │ python │ │ │ └─────────────────────────────────┴──── 次にAgentをインポートします。下記コマンドを実行します。 (your-venv-adktest) root@nicptestvsi:~/orchestrate_tool/py/source_02# orchestrate agents import -f ./yfinance_agent.yaml agent listコマンドでインポート済みのAgentを確認できました。Agentが使用するToolも表示されています。 (your-venv-adktest) # orchestrate agents list ┏━━━━━━━━━━━━━━━┳━━━━━━━━━━━━━━━┳━━━━━━━━ ┃ Name ┃ Description ┃ LLM ┃ Style ┃ Collaborators ┃ Tools ┃ Knowledge Base ┃  ┡━━━━━━━━━━━━━━━╇━━━━━━━━━━━━━━━╇━━━━━━━━ │ yfinance_age… │ 企業の会社情… │ watsonx/meta- │ react │ │ stock_info, │ │ │ │ │ llama/llama-3 │ │ │ stock_quote │ │ ││ │ │ -2-90b-vision ││ │ -instruct │ │  IBM Cloud上のwatsonx Orchestrateで動作確認 インポートしたAgentとToolをIBM Cloud上のwatsonx Orchestrateで確認します。 watsonx Orchestrateへログインし、BuildからAgent Builderを選択します。 yfinanceエージェントが表示されているので、クリックします。 クリックすると、Agent作成画面に入ります。UIから基盤モデルを変更したり、Agentの振る舞いなど変更することができます。 スクロールして、Toolsetを確認するとADKからインポートしたToolが登録されています。 右のPreviewからAgentの動きを確認することができます。今回はDeployせずPreviewで確認します。入力欄には「IBMの株価は?」と質問してみます。しばらくすると本日の株価が回答されました。Show Reasoningを開くと推論過程を確認することができます。株価を取得するTool「stock_quote」を使用し、AIがユーザの入力から自動的にTicker symbolを入力していることがわかります。 次に「IBMの企業情報」と質問をします。しばらくするとAIがユーザの入力からTicker symbolを入力し、Tool「stock_info」を利用して企業情報を取得、回答されました。ユーザの入力内容からAgentが使用するToolを選択し、実行していることがわかります。   さいごに ADKのご紹介とADKを使ってToolとAgentのインポートを行いました。 ADKのインストールおよび設定について、Pythonバージョンの設定やvenvの作成でつまずく部分はありましたが、venvが作成できればその後の設定はスムーズに進められました。 今回はVSI上のUbuntuサーバにADKをインストールしましたが、ご自身の端末に導入することで、より気軽にAgent開発を行えるかと思います。なお、今回は検証対象外でしたが、watsonx Orchestrate Developer Editionを利用する場合は、インストール要件としてやや高めのスペックが必要になる点にご注意ください。 検証時のADKのバージョンは1.5.1でしたが、7月末では1.8.0が最新バージョンとなっています。比較的頻繁にアップデートされますので適宜Release Notesをご確認ください。バージョンアップでコマンドオプションも変更される場合があるため、マニュアルを確認するかコマンドに`--help`を付与してパラメータを確認することをおすすめします。   お問い合わせ この記事に関するご質問は以下の宛先までご連絡ください。 エヌアイシー・パートナーズ株式会社 技術企画本部 E-mail:nicp_support@NIandC.co.jp   .anchor{ display: block; margin-top:-20px; padding-top:40px; }

2025年07月11日

【参加レポート】Domino Hub 2025

公開日:2025-07-11 みなさまこんにちは。ソリューション企画部 松田です。 2025年6月19日・20日と2日間に渡って開催された「Domino Hub 2025」に参加しました。これは HCL Ambassador有志が企画・実行する Dominoコミュニティイベントです。去年に続き、今回が3回目の開催となります。 昨年同様、今回もエヌアイシー・パートナーズはスポンサーとしてご支援させていただき、両日参加いたしました。そのレポートをお送りします。 目次 イベント概要 セッション内容 - Domino 14.5 リリース 特徴的機能とライセンス改定 -ロードマップ -お客様事例:曽根田工業様 最後に 関連情報 お問い合わせ イベント概要 「Domino Hub」は、HCL Ambassadorが主宰となり、Dominoの利用者、開発者、ソリューションベンダーが一堂に会するコミュニティイベントです。今回は1日目がオンライン、2日目はオンサイトのみの開催でした。 特に2日目は参加率が非常に高かったとのことで、会場も大変盛況でした。結婚式場としても使われている今回の会場は、中庭から陽の光が差し込み、解放感があるラグジュアリーな空間で、一般的なビジネスミーティングよりも上質な雰囲気が感じられました。 併せて展示ブースも設置され、Dominoアプリケーションがスマートフォンやブラウザで使えるようになる「HCL Nomad」などのHCL製品とともに、様々なビジネスパートナー様の多彩な関連製品が数多く展示・紹介されていました。 セッション内容 2日間で全22セッションが行われました。セッションはHCLをはじめ、HCL Ambassadorから、様々な開発ベンダー、製品ベンダー、エンドユーザーからの事例紹介などのセッション、そしてパネルディスカッションがありました。まずHCLからのセッション内でのトピックをお伝えします。機能のみならずライセンスまわりで大きなニュースもありました。 Domino 14.5 リリース 特徴的機能とライセンス改定 Domino Hubの2日前、2025年6月17日にリリースされました。 Domino IQ 特徴的な機能で最も注目すべき、今回もご説明に時間を割かれていたのが「Domino IQ」です。 一言で言えば「Domino内にローカルでLLMを持たせ、蓄積されてきたDominoアプリ内の情報も取り込み、セキュアな環境で生成AIを用いた業務を実現する」ものです。 企業内業務で生成AIをどのように実装し利用していくかは今、皆様の大きな関心事項であられると思います。自社のDomino環境内で、Dominoアプリケーションを用い、Notesクライアントからそれが実現できることになります。 (画像クリックで拡大) Nomad for Web COM対応 またNomad for WebがCOMに対応したことにより、これまではNotesクライアントだけでしかできなかったExcelやPowerPointを埋め込んだDiminoアプリもブラウザから利用できるようになりました。 ライセンスダッシュボード:DLAUの統合 これまでGitHubからダウンロードしてセットアップしていたDomino License Analysis Utility (DLAU)がDomino内にデフォルトで統合され、The Domino License Administration (DLA) となりました。 (画像クリックで拡大) ライセンス改定 そしてライセンスにも大きなベネフィットが付加されました。CCB Termライセンスにはこれまで「Domino Leapで5アプリケーションまで開発・利用が可能」という権利が含まれていましたが、2025年7月1日からその制限がなくなりました。すなわち「2025年7月1日以後有効なCCB Termライセンスをお持ちのお客様は、Domino Leapのフル機能が利用できる」となります。 同時に、Domino Leapライセンスの利用範囲であるHCL Enterprise Integrator(HEI)の利用権利も含まれます。これでCCB Termライセンスのみで、追加費用なく「ブラウザによるノーコード/ローコード開発」「基幹業務とDominoアプリケーションの連携」が可能になります。 さらにCCB Termで利用できるSametime Chatで添付ファイルと画像添付も可能になりました。 ロードマップ Domino、Notes、Verse、Nomadなど各ソリューションについてのロードマップも紹介されました。先々の計画は出てこないものですが、このようにHCLから明確に提示されることにより、Dominoをお使いのお客様はこれからも安心して利用を継続していただけると思います。 Dominoのロードマップ(画像クリックで拡大) Notesのロードマップ(画像クリックで拡大) Nomad, VerseといったエンドユーザーのUI部分が短期間でバージョンアップされていく。(画像クリックで拡大) お客様事例:曽根田工業 様 Dominoユーザーの有限会社曽根田工業 代表取締役 曽根田 直樹 様より、Domino事例のご講演がありました。曽根田様は2001年に静岡県磐田市で個人で起業され、切削機械の刃物を製造されています。曽根田様のお話で非常に興味深かった部分を抜粋致します。 "独立・起業するにあたり、前職で使っていたNotes/Dominoを自社でも使うことにした。現在は大手メーカーからの発注依頼や過去に作った品番の再発注など数多く受けており、当時のCAD/CAMのデータや販売管理データなどをDominoに入れて運用している。 オンプレミス環境のリスクやセキュリティ、IT技術のトレンドに合わせてクラウド化を検討した場合、Dominoからは離れたほうがいいのではないか?と思い、他社SaaS製品も検討しトライアルで利用登録をした。 しばらく触れずにいたところ、アカウント情報に登録していた支払い口座から利用料の引き落としがされていなかったためアカウントが凍結、さらに保存していたデータも突然消去されてしまっていた。支払いが滞っただけで中身まで削除されてしまうようなシステムには会社の大事な資産であるデータを載せられないので、「Dominoを『やめることを止める』判断」をした。" Dominoから他製品への移行を検討され断念されるお客様は多く、その理由は「Dominoの業務アプリケーションを、サービス内容を落とさずに別プラットフォームに移行することがはなはだ困難である」ということをよくお聞きしますが、この点にも意外な理由が潜んでいました。 最後に 初の2年連続開催となった今年のDominoHubは、コミュニティの力を象徴するかのような盛り上がりを見せました。14.5のリリース、生成AIの実装、ライセンス強化など、今後のDominoの発展を確信させる要素が数多く披露されたほか、実際のユーザー事例も非常に示唆に富むものでした。加えてロードマップの提示による未来への安心感も得られました。 DominoHubは単なる情報共有の場に留まらず、技術、コミュニティ、そしてビジネスの未来を交差させる特別な場となっています。これからもこのような取り組みが継続していき、多くのDominoユーザー、デベロッパー、そして販売パートナーが更なる価値を引き出していけることを楽しみにしています。これからもDominoと私たちの未来を築いていきましょう。 関連情報 「Domino Hub」大阪開催 Domino Hubは、2025年9月18日に大阪でのオンサイト開催が決定致しました。詳細およびお申し込みについては、こちらのリンクからご確認ください。 お問い合わせ エヌアイシー・パートナーズ株式会社E-mail:voice_partners@niandc.co.jp   .highlighter { background: linear-gradient(transparent 50%, #ffff52 90% 90%, transparent 90%); } .anchor{ display: block; margin-top:-20px; padding-top:40px; } .btn_A{ height:30px; } .btn_A a{ display:block; width:100%; height:100%; text-decoration: none; background:#eb6100; text-align:center; border:1px solid #FFFFFF; color:#FFFFFF; font-size:16px; border-radius:50px; -webkit-border-radius:50px; -moz-border-radius:50px; box-shadow:0px 0px 0px 4px #eb6100; transition: all 0.5s ease; } .btn_A a:hover{ background:#f56500; color:#999999; margin-left:0px; margin-top:0px; box-shadow:0px 0px 0px 4px #f56500; } .bigger { font-size: larger; } figcaption { color: #7c7f78; font-size: smaller; }

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