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2017年09月29日

【てくさぽBLOG】いまさら聞けない「InfiniBand」

こんにちは。てくさぽBLOGメンバーの佐藤です。 最近 AI やディープラーニング基盤がブームとなっています。 そんな中弊社にも「1台では処理能力が不足するため、サーバー同士を接続してクラスタリングしシステムの処理能力を高めたい」との相談があります。 その際ポイントとなるサーバー同士を接続するネットワーク基盤として、InfiniBand か 10Gbps~40GbpsEther との比較で悩まれる方が多いかと思います。 InfiniBand はよくわからないから Ether でと選択される方もなかにはいらっしゃるのではないでしょうか? InfiniBand はメリットがありますが、残念ながら Ether ほど普及はしていないため資料も非常に少なく、何なのかよくわからない方も多いと思います。 そこで今回は「InfiniBand」について解説していきます。   InfiniBandの歴史 デビューは2000年となり、歴史はかなり古いです。 当初は Intel が PCI-X の次世代規格として超強力に推進していましたが、結果 PCI-Expless が主流となり目論見が外れ Intel は早々に撤退、Microsoft も WindowsServer2003 でネイティブサポートしないことを発表したりと冬の時代が続きます。 最近では、2012年に Intel が Qlogic から InfiniBand 事業を買収して再参入といった動きがあります。 なお、WindowsServer2012 以降では標準ドライバが付属しますので、現在では安心してお使いいただけます。   InfiniBandのコンセプト (理想) InfiniBand の基本コンセプトは “Bandwidth Out of the Box” です。 抄訳すると「PCI-Express のような内部の広帯域バスをそのまま外部接続用のポートとして使用する」となります。 内部バスという数十cm という短距離から SAS のような周辺機器系との数~10m程度の接続、Ether のような 10km といった長距離通信まですべてを賄うという野心的な規格でした。(当初の計画では…)   InfiniBandの用途 (現実) さて、InfiniBand の現実ですが、歴史でもふれたように内部接続については PCI-Express に奪われてしまい頓挫しました。 現実には内部接続で採用された例はありません。 また、周辺機器系との接続についても USB や SAS、FC が主流となっており、IBM Flash900 のような一部の例を除いて InfiniBand の出番はありません。 当然のように長距離通信については Ether が主流となっており、こちらも出番がありません。 InfiniBand が活躍する場面は IBM の A9000 や EMC の VMAX といった Storageコントローラと Storageコントローラ、もしくは Storageコントローラと Storageドロワー間を超高速で接続するといった用途や、HPC のノード間接続 (サーバ同士の接続) に利用されています。 市販されている製品でも結構採用はされていますが、エンドユーザーの気づかないところに使われていることが多いです。   InfiniBandのメリット では何が InfiniBand の何が、メリットでしょうか? わかりやすく言うと、以下の3点です。 超高速 低レイテンシ 低価格   1.超高速 以下に InfiniBand の規格を並べます。 SDR DDR QDR FDR EDR 1X 2Gbps 4Gbps 8Gbps 14Gbps 25Gbps 4X 8Gbps 16Gbps 32Gbps 56Gbps 100Gbps 12X 24Gbps 48Gbps 96Gbps 168Gbps 300Gbps 1X、4X、12X というのはチャンネル数で複数を束ねることにより高速化を実現します。 通常一般的に販売されている HCA (Etherカードのようなもの)やスイッチは4Xタイプのものなので、4X を基準として見るとわかりやすいかと思います。 現行世代は EDR となり、100Gbps になります。 なお、2017年中に次世代の HDR が登場予定です。速度は 4X で 200Gbps となります。 「100Gbps なら Ether もあるではないか」と思われる方もいると思いますが、次に記載する2と3の理由からメリットがあります。   2.低レイテンシ InfiniBand は低レイテンシです。*1 理由は複数ありますが、TCP/IP と比較してもともと高速にやり取りするために設計されていること、高速にやり取りするためのプロトコルが実装されていることが挙げられます。 その一つに、最近は Ether でも実装されていますが、RDMA があります。 RDMA は、ものすごくおおざっぱに説明すると宅配BOX のような仕組みです。 TCP/IP だと、配達先の住人の有無の確認、荷物の受け渡し、印鑑の授与が必要で、すべてにおいて受取人 (CPU) を介する必要がありますが、RDMA だと、配達先の宅配BOX (メモリ) の空きを確認するだけで、後は BOX に配達して完了通知して終了となり、CPU をほとんど介さずにデータ転送することが可能です。   *1. InfiniBandパフォーマンス : http://jp.mellanox.com/page/performance_infiniband   3.低価格 InfiniBand は速度のわりに超低価格です。 なぜか?ベンダーである Mellanox が長年頑張ってきたのも理由の一つですが、SDR~EDR すべての世代においてメタルケーブルを標準供給してきたのが非常に大きいです。 残念ながら EDR では最大長が 3メートルとなってしまいましたが、ラック内配線としては十分です。 光ケーブルだと長距離配線が可能ですが、トランシーバーモジュールの価格が非常に高価になりますので価格が吊り上がります。 スイッチについても、FCスイッチと比較すると半額以下、しかも1台で済んでしまいます。 比較するメーカーによりますが、100GbpsEtherスイッチと比較しても相当に安価な価格で提供されています。 なお、3M以上の配線を行いたい場合は光ケーブルの用意もありますのでご安心ください。 必要なところのみ光ケーブルで配線してもらえればと思います。   参考 : Mellanox MCP1600-E003 Passive Copper Cable IB EDR up to 100GbpsQSFP LSZH 3m 26AWG mellanox.com 参考価格210ドル - 100Gbpsでメタルケーブルは驚異的!26AWGなので取り回しはかなり固そうです。 Mellanox MFA1A00-C100 Active Fiber Cable Ethernet 100GbE 100Gb/s QSFP LSZH 100m  mellanox.com 参考価格3057ドル - こちらはファイバの100mケーブル、トランシーバー内蔵しています。100mなので特に高額ですが、ファイバタイプだとこういう価格帯になります。   まとめ InfiniBand は同一ラック内といった短距離接続であれば比類なき速度と低価格を実現します。 IBM でも純正オプションとして供給しており、Storage では Flash900、サーバーでは Minsky等の PowerSystem に搭載可能です。 供給ベンダも実質 Mellanox がほとんどで一部 Qlogic (Intel) といった状況ですので、相性問題も皆無です! 知名度が高いわけではありませんが、これを機にぜひ活用していただければと思います。   お問い合わせ この記事に関する、ご質問は下記までご連絡ください。 エヌアイシー・パートナーズ株式会社 技術支援本部 E-Mail:nicp_support@NIandC.co.jp  

2017年09月28日

【てくさぽBLOG】Lenovo新ブランド「ThinkSystem」登場!

皆さま、こんにちは。てくさぽBLOGメンバーの岡田です。 今年7月にインテル社が新しいサーバー用CPU「Xeon Processor Scalable Family(以下、Xeon Scalable)」を発表し、各サーバーメーカーからこの新型CPUを搭載したサーバーが発表されました。HPE社はGen9→Gen10、Dell EMC社は13G→14Gと順当な名称変更でしたが、Lenovo社はこれを機にサーバー、ストレージおよびネットワーク製品の新ブランドである「ThinkSystem」を発表しました。 まず全体像ですが、今回Lenovoエンタープライズ製品群は以下の3つのブランドに分けられることになりました。管理系の「XClarity」とソフトウェア・デファインド製品群の「ThinkAgile」、そしてサーバー・ストレージ・ネットワークスイッチを統合した「ThinkSystem」になります。 今回のブログでは、このうちのサーバー・ストレージ・ネットワークの「ThinkSystem」の特長について説明していきます。 1.2つのサーバーブランドの統合 これまでLenovoは旧IBM 系の「System x」と旧Lenovo系の「ThinkServer」の2種類がありましたが、今回統合され「ThinkSystem」サーバーとなりました。これまで「System x」と「ThinkServer」の使い分けに悩むこともあったかもしれませんが、今回、整理統合されたことで分かりやすくなりましたね。 以下が「ThinkSystem」サーバーのラインナップ一覧になります。「System x」と「ThinkServer」のラインナップが最新CPUのXeon Scalableを搭載してマージされました。 ・ラック型2ソケットサーバーのラインナップ拡大 今回新たにラック型サーバーに2U2ソケットの「SR590」、1U2ソケットの「SR570」が追加されています。 これまでLenovoの2ソケットラック型サーバーと言えば1Uの「x3550 M5」か、2Uの「x3650 M5」のどちらかでしたので、あまり選択肢がなく1Uか2Uかでモデルを決めていたのですが、今回、「バリュー」「バリュープラス」「メインストリーム」の3種類それぞれに1Uと2Uが並び、計6種類となりました。各サーバーの違いは搭載可能なCPU、メモリ、ディスク本数などが異なる点です。拡張性があまり必要でない場合に「バリュー」や「バリュープラス」のモデルを選択できるなど、要件に対してこれまで以上に柔軟にモデル選定ができるようになりますね。 ・その他サーバー タワー型、ブレード型サーバー、高密度サーバー、ミッション・クリティカルサーバーはそれぞれの現行モデルからの後継ThinkSystemサーバーがあるので、大きなラインナップ変更はありません。 ・1ソケットサーバーは「ThinkSystem」ではありません 今回、1ソケットサーバーはThinkSystemに統合されずにこれまでの名称のまま販売されます。System xでは1Uラック型の「System x3250 M6」、ThinkServerでは1Uラック型の「RS160」、タワー型の「TS150」「TS460」の計4種類が該当します。 ・サポートOSに注意 ThinkSystemサーバーではWindows Server 2008R2やESXi 5.5など、System x がサポートしている一部の古いOSをサポートしていません。ですので、これらのOSを利用する必要がある場合は、System x での導入を検討ください。 *サポートOSの詳細は各サーバーのシステムガイドをご確認ください。   2.ストレージ DSシリーズ/DBシリーズ ・Lenovo StorageはSシリーズ2種類(S2200/S3200)がこれまで販売されていましたが、ThinkSystemサーバーと合わせて更新され、DSシリーズとして新たに3種類(DS6200/4200/2200)が発表されました。 また、SANスイッチもこれまでのBシリーズ(16Gbps対応)からDBシリーズという32Gbps対応のSANスイッチにラインナップが更新されました。 大規模向けSANダイレクターのDB400D/800DはBシリーズ時にはなかったラインナップで、今回新たに追加されました。 なお、ストレージVシリーズ(V3700v2、V5030、V5030F)は今回、ThinkSystemに統合されていませんので、引き続き併売されます。 3.ネットワークスイッチ NEシリーズ ・ThinkSystemのネットワークスイッチはNEシリーズとして計5種類が発表されました。 これらのスイッチには、CNOS(Cloud Networking Operating System )という新しいネットワークOSが搭載されています。 このCNOSは、スケール性、簡単さ、オープン性、各種スクリプトによる自動化の実現に向けて開発されました。 まとめ いかがでしょうか。IBM時代からおなじみの「System x」サーバーはこれまで順当にM2→M3→M4→M5と名前を更新し続けていましたが、1種類を残しとうとう無くなります。昔から関わっていた者としては寂しいですが、1つに統合されてラインナップも拡充したThinkSystemは、お客様の選択肢も大きく広げてくれると期待しています。1ソケットサーバーやストレージのVシリーズなどThinkSystemに含まれなかったものもありますので、少し分かりづらいと思われるかもしれません。選定に迷ったら弊社までぜひご相談いただければデザインからモデル選定など幅広くご支援させていただきます。   この記事に関する、ご質問は下記までご連絡ください。 エヌアイシー・パートナーズ株式会社 技術支援本部 E-Mail:nicp_support@NIandC.co.jp

2017年09月21日

【てくさぽBLOG】「IBM Notes/Domino Day 2017」に参加してみた

皆さんこんにちは。てくさぽBLOGメンバーの佐野です。 9/19(火)に御茶ノ水ソラシティにて開催された「IBM Notes/Domino Day 2017 -今日と未来のコラボレーション」に参加してきました。 そのイベント内でいくつか参考になりそうな情報がありましたので共有します。 1.Domino Applications on Cloud 今まで、クラウドを検討したけれど、Notes DBだけがどうしてもオンプレ環境に残ってしまうんだよね・・・とクラウド移行を断念してしまっていた方には朗報です。自社開発のNotes DBもクラウド環境で利用できるサービスが10月から開始になります。 その名も「Domino Applications on Cloud」です。 詳細な内容が判明するGA(発表)は10月ということなので、料金は不明ですが、現時点で以下のことが判明しています。 ・課金は.nsf単位の月額課金 ・利用は最低10DBから ・PassportAdvantageとしての提供 ・BYOL(Bring Your Own License)モデル ←自分で購入したライセンスを持ち込むということです ・初期契約期間は最低1年間 ・PaaS(といいつつほぼSaaSに近い形)での提供 ・提供する環境はDocker上のDominoサーバー ・オンプレミスと同じ組織認証者を使用可能 ・オンプレ環境と複製することが可能 ・Notesクライアント、Webブラウザ、ICAAから利用可能(IMAPやPOPクライアントからはアクセス不可) ・保存データは暗号化される ・1DBあたり最大25GBの容量 ・月次レポートの提供 etc... これらのこと以外にも、Dominoサーバーのバージョンアップは勝手に行われますし、DAOSの有効化などもオプションで提供されるようです。 1点注意が必要なのは、Dominoサーバーの管理自体はIBM(サービス提供元)が実施します。オンプレではサーバーの設定を自身で変更することができましたが、このサービスでは、設定変更ができません。 細かいセキュリティ設定をしたい!とか、細かいログを取得して参照したい!ということができなくなります。 逆に良い点は、10月のサービス開始時点からデータセンターとして日本が選択できますので、国外にデータを持ち出す必要がなく、安心して使えるということがあります。初期は3拠点(アメリカ、日本、ドイツ・オランダ)のみですが、今後中国やオーストラリアにも拡大予定があるということなので、お客様拠点に近いDCにDBを配置することもできそうです。 これまではIBMとしてはメールのSaaSサービスしかなかったので、Notes/Dominoを使っているお客様のサービス利用の検討が活発化していくのではないでしょうか。   2.Notes/Dominoアップデート Notes/Dominoは2016年からバージョンを9.0.1から9.0.2に変えるというようなFixPackの提供ではなく障害修正と機能追加を行う「Feature Pack」というものを提供する形式に変わりました。 例えば、最新版だとFeature Pack 9が提供されており、バージョン情報としては「Domino 9.0.1 FP9」という書き方になります。 この変更によって、バージョンを変えずに新機能を利用できる環境となりました。実際に、IBM Cloud上でしか提供されていなかった「IBM Verse」をオンプレミスで利用できるように機能拡張していたり、ADFS3.0のサポートのように新しい機能へのサポートも追加されています。 次に予定されているFP10では以下のアップデートが予定されているということです。 ・DominoサーバーのDockerサポート ・JVM 1.8への対応 ・Eclipse/OSGi 4.6.2へのアップグレード ・Domino REST APIの拡張 DominoサーバーのDockerサポートは、Domino Applications on Cloudでも利用している技術ですが、一般的にどういう利用シーンが想定されるのかが気になりますね。 また、基調講演の中で、今後のNotes/Dominoについて、Globalの責任者であるEd Brillさんが「2018年にはDominoの新しいバージョン(9.0.2か10になるかは分からないけれど)について発表があるかもね」と言っていました。 Notes/Domino 9.0.1は現時点では最低でも2021年9月まではサポートをすると明示的に宣言していますが、後続バージョンが出てくれば、更に長期的なサポートが期待できるので、安心してご利用頂ける環境になってきますね。 ちなみに、Notes/Domino 8.5.xは2018年9月30日でサポート終了の発表がされていますので、該当バージョンをご利用の方は9.0.1へのバージョンアップと共にクラウド化というのも是非ご検討下さい。   3.まとめ 今回のイベントの目玉は間違いなくDomino Applications on Cloudの発表です。Office 365にメールは移行したけれど、アプリケーションだけはどうしてもオンプレで残ってしまった、というお客様は十分検討する価値があるサービスだと思います。 また、次バージョンについても示唆していたので、9.0.1でNotes/Dominoが終わってしまうということは無さそうです。 REST APIもどんどん拡張が進んでいるので、他システムからDominoのデータを呼び出すということもできる環境が整ってきています。 まだまだ進化するNotes/Dominoはこれからも楽しみですね。   この記事に関する、ご質問は下記までご連絡ください。 エヌアイシー・パートナーズ株式会社 技術支援本部 E-Mail:nicp_support@NIandC.co.jp

2017年09月07日

【てくさぽBLOG】最近のHCIまとめ [2017年9月版]

皆さんこんにちは。てくさぽBLOGメンバーの佐野です。 1年前ほど前と比べて、最近HCIを提供するベンダーが増えてきましたね。よい頃合いだと思いますので、現時点でのHCIについてまとめてみます。   Nutanix(Nutanix NXシリーズ及びOEM製品) HCIといえばNutanix。と言われるほどの存在になったのではないでしょうか。過去の記事で詳細をお伝えしているので、機能的なことはそちらをご参照ください。(ハイパーコンバージド製品のNutanixを解説!、ハイパーコンバージド製品のNutanixを解説! vol2、ハイパーコンバージド製品のNutanixを解説! vol3) 最近のNutanixはHCIという枠組みを飛び出した発表を多数行っています。 例えば、「Xi Cloud Services」というパブリッククラウド上でNutanixのソフトウェアスタックを稼働させてIaaSとして提供するサービスがあります。当初はGoogle Cloud Platformでのみ稼働し、DR用途限定で開始のサービスです。 HCIと言えばオンプレミスに設置する専用ハードウェアというイメージがありますが、Nutanixはハイブリッドクラウドへの対応を進めています。 他にもNutanix Calmという機能でマーケットプレイスからプログラムを半自動で導入する機能も発表になっています。 これらの最新のサービス・機能は6月末のNutanixのイベントで発表になったもので、リリースはされていないため詳細が不明ですが、Nutanixが向かっている方向がHCIの枠にとらわれていないことが分かると思います。 他社の製品には無いのが、vSphereだけではなくHyper-VやXenServer、自社開発したAcropolis Hypervisorなど多くの種類のハイパーバイザーサポートです。 また、いろいろな会社の製品上でのサポートもあり、DellやLenovo製品上ではOEMとしての提供を、HPEやCiscoUCSでの稼働を「勝手にサポート」するなどしています。 極めつけは、IBM PowerSystem上での稼働もサポートしています。 HCIという枠組みを超えてどんどん進化するNutanixですので、「変わらないこと」を要件とするような環境にはもしかしたら向かないのかもしれませんね。   Dell EMC(VxRAIL) ハイパーバイザーとしては圧倒的なシェアを誇るVMwareが提供するvSANを使ったHCIがVxRAILです。管理はVxRAIL Managerから行います。(もちろんvCenterによる管理もあります) 特徴としてはNutanixと同じぐらいの製品ラインナップがあること、同梱ソフトウェアにEMCのRecoverPoint for VMやCloudArrayが含まれる事があります。 特にRecoverPoint for VMはRPOを数秒で設定できるので、仮想マシンをほぼ任意の時点に復旧することが可能となります。 CloudArrayは、クラウドにデータを逃がす機能ですが、この機能があるのはVxRAILとNutanixだけです。 x86サーバー向けのハイパーバイザーであるvSphereで有名なVMwareが提供するvSANがストレージ部分なので、VxRAILは今後も採用実績を伸ばしていくのではないかと想像します。   HPE(SimpliVity 380 with OmniStack) 今年の1月にHPEが買収したSimpliVityという会社の製品をProLiant上で稼働させるようにしたのが「SimpliVity 380 with OmniStack」です。 この製品の最大の特徴は、ストレージの機能を補うためのハードウェアアクセラレータを搭載しているという点です。 他のHCIはストレージをソフトウェアで定義していますが、SimpliVityはストレージの処理をこのアクセラレータに任せることで重複排除や圧縮の処理を他社よりも粒度のサイズを小さく処理でき、より高いデータ削減効果を得られるようにしています。 ディスクに書き込みデータ到達する前にデータ容量や書き込み回数が減るので、その分パフォーマンスが上がる効果もありそうです。 個人的に気になるのは、HPEらしくディスクの保護はRAIDを採用している点です。現時点ではAll Flashモデルだけなのであまり気にしなくてもよいのですが、HDDモデルが出てくると当然大容量HDDを搭載することになります。RAIDによる保護の欠点は障害時のリカバリが容量に比例して遅くなる点にあり、復旧処理中に二次障害が発生するとデータ全損となる恐れもあります。 SimpliVityでは他のノードに同じデータをコピーして保護するのでさすがにデータが飛んでしまうような状況は無さそうですが、今後1台あたりのHDD容量が増えてくると(HCIかどうかに関わらず)注意が必要となります。   Cisco(HyperFlex) 過去のブログ記事で詳細を書いていますので、詳しくはそちらをご参照頂きたいと思います。 上記のブログにも記載がありますが、Blade型ノードが使えるのがHyperFlexの特徴の一つとなります。 しかし、UCSファブリックインターコネクト(以下FI)というネットワークポートと管理機能が一体になった製品が別途必要になるというところが注意点です。 FIの存在がCisco UCSの強みではありますが、HyperFlexを導入する際にもFIは必須の機器になります。   NetApp 詳細情報があまり出ていませんが、SolidFireをベースにしたAll FlashのHCIです。ストレージ部分はSolidFireでONTAPではないようです。 概要としては2U4ノードのシャーシにストレージノードとコンピューティングノードを混載する構成で、最小で2シャーシからになります。また、ストレージとコンピュート部分が完全に分離しています。 All Flashストレージなので当然高パフォーマンスが期待できますが、その分価格に反映されるのが懸念事項です。 いかんせんこれ以上の詳細な情報が無いので、現時点では何とも言えないところです。この絵だけ見ると、これってHCIなの?と思うのですが。。。   まとめ 各社それぞれ特徴があるので、ケースバイケースでどの製品を採用するのか、適材適所での採用となることが多くなりそうです。 国内での実績ではNutanixやVxRAILが多いですが、SimpliVityもこれから伸びてきそうです。 ご紹介した5つの製品は全て弊社からご提案することもできますので、何かありましたらお気軽にお問い合わせください。   この記事に関する、ご質問は下記までご連絡ください。 エヌアイシー・パートナーズ株式会社 技術支援本部 E-Mail:nicp_support@NIandC.co.jp

2017年08月25日

クラウドとデザイン思考 Vol.2 ~何がデザイン思考導入を難しくするのか~

前回の Vol.1 ~そもそも最近よく聞くデザイン思考って何?~ では、デザイン思考とは、そしてクラウドとデザイン思考の関係について考えてみました。 IBM のクラウド戦略、そして、その根幹である Bluemix がデザイン思考を元に生まれた製品だと、お伝えしました。また、IBM を始めとする IT ジャイアント各社が、かなりの勢いで、デザイン思考を担う「デザイナー」を採用していることもお伝えしました。 さて、そのデザイン思考ですが、日本での盛り上がりもある一方、デザイン思考の採用が難しい現実も見え隠れしています。 前回の特集では、IBM における成功事例として、Bluemix を挙げました。今回は失敗事例というわけではありませんが、デザイン思考の導入を難しくするものについて、考察を深めてみたいと思います。   デザイン思考、その前に...   前回もデザイン思考の効果的な実践は難しいかも、ということについて触れました。 日本の多くの企業は、成功を前提に(成功事例を基に)ビジネス展開を考えることが多いのではないでしょうか。この「成功」という意味も広いのですが、"成功を前提に"と言うのは、"失敗しないことを前提に"とも言い換えられます。計画を練り、リスクを排除し、とにかく"失敗しないように"プロジェクトを進めます。しかし、デザイン思考の場合、失敗を前提に(できるだけ小さい失敗を重ね失敗から学びながら)、をコンセプトとして、プロジェクトを進めるのです。 このプロジェクトの進め方は今までのものとは対照的あり、"失敗しないようにする"ことに慣れているチームや担当者が急に「失敗前提」でと言われても、なかなかリスクに飛び込めないものです。デザイン思考への移行には、"失敗しない前提"の他にも以下のような課題があります。 期間や予算の予想が通常のプロジェクトとは異なる 複雑な承認プロセスが短期、繰返し型のプロジェクトの足かせとなる 縦割りの組織や、パートナー企業を含む複雑なプロジェクト推進体制もネックに 組織を横断した、また外部からの人選が重要 プロジェクトの評価方法や人事考課が減点方式となると、失敗前提の評価が難しい う~ん、こう考えると暗い気持ちになってきます。何だか日本には向いていない思考法なのかも... と思われたかもしれません。   いいえ、そんなことはありません。デザイン思考には日本の製造業を中心としたモノづくりの方法やアイデアもふんだんに取り入れられています。もちろん、デザイン思考は万能なものではありませんが、イノベーションに悩む日本企業にとって、その方法を学んだり、試したりする価値はあるはずです。   デザイン思考教育の現状   前回の特集を読まれた方で、不思議に思った方も多かったかも知れません。IT  ジャイアント企業の求人で、なぜそんなに「デザイナー」が募集されているのかと。日本でもデザイン思考を導入するのであればさっさと雇ってしまえば良いのではと... しかし、そう簡単ではない現状があります。 まず、デザイン思考に積極的に取り組んでいる海外の大学や大学院を見てみましょう。 Stanford University d.School Illinois Institute of Technology Institute of Design MIT Integrated Design & Management Harvard MS/MBA Aalto University Integrated Design Business Management (Helsinki)   日本では、 京都大学デザインイノーべションコンソーシアム 東京大学 i.school 千葉工業大学 創造工学部 慶応義塾大学大学院メディアデザイン研究科 などがあります。   もちろん、日本の大学でもデザイン思考を学ぶことはできるのですが、現在、世界のデザインスクールとして上位にランキングされている大学は見受けられないのが現状です。そもそも学部やデザイン・スクールで学べる人の数が少ない、実質的に外部や社会人に開かれていない、学部横断ではない、などがその理由として考えられます。 海外では、スタンフォード大学を例にとると、d.School など学部横断型の組織を持つところも多く、企業での盛り上がりを機に、新たにデザインスクールや学部を設けるところも増えているようです。   また、『デザイン思考家が知っておくべき39のメソッド -the d.school bootcamp bootleg- 』に出てくる、デザインプロセスを進めるにあたって必須のスキルを学ぶ体制が整っているか?ということもあります。それは、インタビューの方法であったり、様々なブレーンストーミングの方法であったりします。 日本人に聞き慣れない例でいえば、『デザイン思考家が知っておくべき39のメソッド』の一つにインプロ( Improvisation : 即興演劇/即興コメディ、またその教育手法)があります。欧米では、Google、Facebook、Pixar など多くの企業でインプロを使ったワークショップが実施されています。 即興の教育手法を使い、高度なコミュニケーション能力や発想力を養い、チームビルディングを実現しています。 スタンフォード大学の起業家育成コースでは、1学期を通したインプロのクラス受講の必須としています。これは専属のインプロの先生が指導し、起業家に必須の能力のひとつとして、また、デザイン思考に必要なメソッドとして学んでいます。 このように、デザイン思考そのものだけではなく、そのための予備知識やスキルを学ぶ体制が整っていることもデザイナーを多く輩出できる要因ではないかと考えられます。 更に、重要な点ですが、学生の受け皿である企業が「デザイン思考」を重視しているか?ということも大きいように思います。   IBM の取り組み   以前に IBM が主催するデザイン思考に関するセミナーに参加しました。様々な学びがありましたが、その中でも某航空会社での事例の話は大変興味深いものでした。 その事例の航空会社は、伝統的なウォーターフォール型の開発手法を行っており、IBM が提供するデザイン思考を取り入れたサービスプログラムを実施した際、いったん反発(Resistance)にあったという非常に親近感のわく内容でした。 米国においても歴史のある企業や業界、またその企業文化や企業内の中心的となる年代、世代によって、デザイン思考やアジャイル開発への抵抗感や順応性は異なるようです。   では、IBM ではそのような企業にどのようなアプローチを行っているのでしょうか。   IBM には、IBM Bluemix Garage というデジタル・トランスフォーメーションをサポートするサービスがあります。 前述の某航空会社での事例では、航空会社のエンジニアと IBM のエンジニアがペアになって開発を進めるなど、単純にコンサルタントが助言するイメージではないのが特長的です。 デザイン思考、リーンスタートアップ、アジャイル開発、DevOps など Bluemix 上で短期間にプロトタイプを開発する支援サービスは、非常に体験的なものであり、"助言し実施する"、というより "一緒に実践する" というものであることがわかります。 ウォーターフォール型に慣れ親しんだ企業であってもこのような体系的、かつ体験的なサポート(一緒にやってみせること)により、プロトタイプ開発を一通り経験することができるようです。 IBM Bluemix Garage のメニュー とは言っても、当セミナーでの本音トーク部分では、「現場は選ぶ」と話されていました。デザイン思考に向いている開発現場は、 内製化されている ビジネスと開発が密接に関わっている 失敗を許す文化がある のがポイントになるようです。 また、日本の典型的な IT 現場である、「サイロ化や SIer が絡む」、といった部分も上手くいかない原因になり得てしまう、とのことでした。 やはり、デザイン思考を取り入れていく中で、プロジェクトの規模やテーマ、メンバー選定、さらにサービスに至るまでの準備やマインドセット...等々 高度にコミュニケーションできて、創造的にアイデアを出し合えて、さっさとプロトタイプ開発できるような前準備が大事ポイントとなるのだと、と感じました。   デザイン思考は、プロセスから能力へ   最後に本質的な課題を一つ。実はイノベーションが出てこないことやその枯渇が問題ではなく、そもそも製品企画や開発の「プロセス」が問題、となることがあります。このような場合、一通り、コストをかけてデザイン思考のプロセスを回してみても「何も生まれなかった、平凡なアイデアしか生まれなかった」となることが多々あります。 実はまず課題解決すべきは、製品やサービスの「イノベーション」の部分ではなく、その発生プロセスである場合が多いのです。このイノベーション・プロセスをデザイン思考を通じて立て直していく、再構築するということが、「イノベーション」への遠いようで近道となるのかもしれません。 そこで重要になるのが、「何のためにツールを使うのか」という目的設定であり、縦割りではなく組織を横断的に、時には外部にも広げられる柔軟さではないでしょうか。   デザイン思考の世界的広がりの中心であるスタンフォード大学での今の流れを説明した記事を引用して終わりにしたいと思います。 デザインのやり方にお手本はない 現代はとかく忙しいものです。でも何かを究めるには時間と忍耐と実践が必要です。時には初心者にプロセスに従ったデザインを勧めるのも理解できますが、そのプロセスは絶対的でもお手本でもないことをしっかりと理解して下さい。それによって少しはできるようになった気がするかもしれません。デザインは常に進化し続け、多かれ少なかれプロジェクトにポジティブなインパクトを与える洗練された触媒なのです。しかし、そこに至る道には決まりきったプロセスなどないのです。 Medium Japan「デザイン・プロセスの話はもうやめよう」、Carissa Carter (2016年11月19日)   もはや、d.School では、型通りのプロセス(レシピ)を重視しておらず、料理で言えばそのレシピ通りではないオリジナリティあふれる料理を生む「能力」を重視しているとのことです。   当然と言えば当然なのですが、ここに「デザイン思考」の難しさというか、面白さがあるのではないでしょうか。 次回は、本特集の最終回、デザイン思考の事例として IBM Studios Tokyo を訪ね、いろいろお話をお聞きしたいと思っています。  

2017年07月28日

【Watson基礎】ビジネスに活かせる「AI」「ディープラーニング」とは?

座談会:画像認識だけじゃない!ディープラーニングの「使いどころ」とは?   AI、ディープラーニングが注目を集めているが、AI のビジネス活用は、「何ができるのか」から、具体的に「何をするか」という実践のフェーズに入ってきた。とはいえ、多くの企業は必要性は感じつつも、「使いどころ」が明確にイメージできていないのが現状だろう。 そこで今回は「ディープラーニング」にフォーカスし、日本IBM の ITスペシャリストの藤岡 英典 氏、頼 伊汝(らい・いる)氏とエヌアイシー・パートナーズの久田 修央 氏に、ビジネスのユースケースや活用のポイントについて聞いてみた。 右から日本アイ・ビー・エム システムズ・ハードウェア事業本部 先進テクノロジー・センター 頼 伊汝氏、藤岡 英典氏、 エヌアイシー・パートナーズ 企画本部 企画推進部 久田 修央氏、ビジネス+IT編集部 松尾 慎司氏 ディープラーニングは「人間の認識レベル」を超えている   まず、AI の現状について、企業における認識の変化などで感じることを教えてください。 藤岡氏:我々がお客さま先に訪問して感じるのは、「AI で何ができるのか」「何に使えるのか」がまだ明確になっていないケースです。AI は注目されているものの、自社の業務にすぐに活用できるというイメージを持っている企業はまだまだ多くないと感じます。 久田氏:AI という言葉が社会に浸透してきて、企業は取り組む必要性を感じています。一方で、高かった期待値の反動というか、「自分たちに今できることは何か」を冷静に見極めようと考える企業が多いように感じます。 では、AI で何ができるのかについて、改めて現状を整理してください。 頼氏:人工知能は「汎用型人工知能」と「特化型人工知能」に分かれます。汎用型は、人と同じような知能を備えた人工知能で、残念ながらこれはまだ実現できていません。 一方、特化型は、ある特定の領域、分野において人間より優れた知能を持ったテクノロジーのことです。コンピューター囲碁や将棋、自動運転、画像認識といった先端事例を目にする方も多いでしょう。 ルールが決まっている、プログラミングできる特定の領域で、大量のデータを学習することで、人間よりも高いパフォーマンスで正解を導き出そうというテクノロジーといえます。 AI というと、テクノロジーの変化が早く、また、マーケットにはさまざまな用語が飛び交い、そこが混乱を招いている側面もあります。そのあたりを整理していただけますか。 頼氏:人工知能は、1960 年代に提唱され、人間の知能を再現するためのソフトウェアや、ロボティクスなども含む幅広い学問の分野です。その中の 1 つのテクノロジーが機械学習。これは大量のデータからパターンをみつけて、未来を予測していくものです。そして、機械学習の 1 つの手法がディープラーニングで「IBM Watson」(Watson)は、機械学習とディープラーニングの双方にまたがっています。 AI 関連の用語の整理 Watson は PaaS としての「IBM Bluemix」上で動作し、自然言語処理、画像認識などの技術を用いて、様々な機能を API として提供しています。ディープラーニングは Watson の基礎技術の 1 つです。  ディープラーニングについて、もう少し詳しく教えてください。 藤岡氏:次の写真を見て欲しいのですが、この中で、写っているのが「唐揚げ」でないのはどれだか分かりますか? 唐揚げでないのはどれか? ぱっと見たところでは難しいですね。どれも唐揚げに見えます。 藤岡氏:実は、唐揚げでないのは【2】なのです。写っているのは犬(トイプードル)ですが、このように人が誤認識してしまうかもしれない画像を、正しく認識できることが期待されています。 最先端の画像認識技術を競う世界的なコンテストがありますが、2011 年までは、画像認識のアルゴリズムは機械学習のロジックを用いるのが主流で、誤認識率は 25 % あたりが限界値だと思われていました。 これが、2012 年のコンテストでディープラーニングが登場し、一気に 15 % くらいまで、誤認識率が 10 % ほど改善したのです。その後、さらにテクノロジーが洗練され、2015 年の段階で、誤認識率は 5 % 未満に達しました。 人間の誤認識率は平均で 5 % といわれます。すでにディープラーニングは人間の認識レベルを超えるところまで進化しているのです。 AI のがそう認識率は人間を越えている   すでに製造業の工場や、サービス業などでディープラーニングの活用事例が出てきた   では、実際に、ディープラーニングで何ができるのか、もう少し詳しく教えてください。 藤岡氏:AI のゴールは「人間の知能の代わりになること」にあり、特に、知覚、ビジュアルに関する領域でユースケースが広がってきています。たとえば、画像や映像の中に何が映っているかを検出し、それをカテゴリー分けする技術などがあります。 人が物体を見て「何か」を認識、判断するプロセスは、それまで経験してきた膨大なデータ(記憶)から照らし合わせて判断しています。これが 1 つの学習です。AI も同じで、膨大な画像データから、ものの色や大きさ、形状などさまざまな要素を照合し、「これが リンゴ である」と区別しています。 また、画像の一部が欠損している場合に、人間は頭の中で「そこに何が写っているか」を補うことができますが、機械も同じようなことができます。 そうしたことが実現できると、どんなメリットがあるのですか。 藤岡氏:これまでの機械学習は、たとえば、「目が 2 つあって鼻と口があるのは人間ですよ」というように、正解(特徴)を人間が定義する必要がありました。正解を人が機械に教える必要があるという意味で、これを「教師あり学習」といいます。ディープラーニングはそれをしないで、人工知能自身が記憶を洗練させていくことができる特徴があります。 頼氏:これまでの機械学習とディープラーニングの大きな違いは、扱えるデータ量です。従来の機械学習な得意な領域は数値データ。たとえば、小売店でこういう商品が売れた、その傾向から、このお客さまにはこの商品も売れるのではないか、と予測することです。 過去のデータから予測するので、入力する特徴量がシンプルなのです。 一方、ディープラーニングは、画像や音声、テキストといった非構造化データを扱うことが得意です。たとえば、画像は同じ犬の写真でも、複雑で、1 つとして同じ画像がありません。そうしたデータから正解を予測するのは難しく、上述した通り、これまでは誤認識率が高かったのです。 ディープラーニングにより、煩雑なデータに対しても、高い正解率が期待できるようになりました。 では、実際の事例について教えてください。 頼氏:画像認識については、ディープラーニングを用い、半導体などの製造ラインで、傷やゴミ、汚れなどを判別し、不良品を検出する事例や、工場に限らず、高層ビルやダムなど、人が立ち入りにくい場所にある構造物のひび割れなども、ドローンなどと組み合わせることで、より高精度で効率よく検出できるような事例が出てきています。 実際に、国内企業でディープラーニングの取り組みは進んでいるのですか? 藤岡氏:国内でも徐々に事例が出てきました。ある損保企業では、自動車保険を乗り換える顧客が保有するさまざまな保険証、車検証などを画像データでもらい、色んな会社の書式をディープラーニングで学習することで、契約時の手入力を省力化する業務効率化のツールとして活用しています。 別の会社では、人の視覚を肩代わりして、熟練したエンジニアの作業を代わりに行うとか、熟練エンジニアの作業を学んで、スキル移転のツールに使うといった事例もあります。 企業にディープラーニング活用を提案する立場として感じることはありますか? 久田氏:ディープラーニングには大きな可能性を感じます。今は代表的な分野として画像認識に注目が集まっていますが、ビッグデータの時代に、データの組み合わせで色々な発想、可能性が広がってくるでしょう。 ユーザー企業に提案する立場としては、お客さまのビジネスに今、何が求められているかを考えることが、AI のユースケースを広げていくことにつながると考えます。 導入には「正しい教師データ」が不可欠。ハードウェアの整備とあわせて進めたい。 では、企業がAI活用をうまく進めていくためのポイントはどこにありますか? 頼氏:正しい教師データがあるかどうかがポイントです。一般的な数値データであれば、既存の機械学習の手法で、いいスコアが出ることが期待できます。しかし、ディープラーニングは、先のクイズの"唐揚げ"のような画像や動画といったこれまで分析対象ではなかった非構造化データが必要です。 教師データを整備するには、大量の非構造化データをどう溜め、整理するかという課題もあります。 頼氏:分析の精度に関わるのはデータ量で、画像であれば枚数が多ければ多いほどよいです。 久田氏:そう考えると、データを溜める「器」が重要で、サーバやストレージといったデータセンターの整備が欠かせません。 ディープラーニングを取り入れるに際して、導入ステップというか、環境作りをどう進めるかを教えてください。 頼氏:サーバやストレージの他にはポイントは 3 つ あります。 1 つ は「GPU マシン」で、ビッグデータ解析が可能なコンピューティングパワーが必要です。 2 つ目は「フレームワーク」。ここでいう「フレームワーク」とは、ディープラーニングの分析モデルをパーツ化したもので、これを組み合わせる知識が必要です。そして、3 つ目はそのための「プログラミング」スキルです。 最近は、サービス化されたフレームワークも出てきており、分析モデルを指定してデータを投入すれば、学習結果を出力してくれるサービスが出てきています。その意味で、昔に比べると非常に環境構築はやりやすくなりました。 とはいえ、導入のハードルはかなり高いように感じます。 藤岡氏:IBM では、上述したフレームワークを使いこなせるスキルがなくても、画像を入れれば学習結果を返してくれるサービスを開発しています。これが、ノンプログラミングで、既成の学習パターンで学習してくれるサービス「AI Vision」です。これは「データの準備」「モデルの作成」「モデルの学習」「モデルの利用」の 4 ステップで活用できます。 今はディープラーニングも簡単に活用できる! 画像をアップロードして、学習モデル(例えば、鳥の画像を分類するというような「タスク内容」)を作成すれば、学習結果が得られ、さらにそれを API として利用できるようになるものです。 API は Web で広く使われているREST API に対応しており、例えば、モバイルアプリと連携することも可能です。 ハードウェアのコスト感はどの程度でしょうか? 藤岡氏:IBM では、GPU を積んだディープラーニング専用のハードウェアを推奨しており、ディープラーニング用のサーバとして「Minsky」を用意しています。 ディープラーニング用のサーバー「Minsky」 GPU を搭載し、画像等のデータを大量に処理する場合に、GPU と RAM の通信を高速化する「NVLink」に対応しています。提供価格 400 万円からで、Minsky と相性のいいストレージ」「ESS (Elastic Storage Server)」を組み合わせれば、並列に分散処理を行う環境を構築することもできます。 「Minsky」と相性の良いストレージ 最後に、今後、AIやディープラーニングはどう進化していくと思いますか? 藤岡氏:画像以外の領域としては、IoT のセンサーデータから機器のメンテナンスタイミングを予測する予兆分析などにディープラーニングが活用されるようになるでしょう。 あるいは、音声データから文章を要約、テキストを自動生成することや、広告のキャッチコピーを学習して、コピー文案を考えるといった領域での活用が期待されます。 頼氏:これまではロボティクスと AI を結びつけるのは難しいことでした。今後は、例えばディープラーニングの画像認識でモノを認識し、そのモノにあったつかみ方を判断することで、ロボットアームが最適なピッキングをする、というように、AI が現実世界に対してインタラクションするケースが増えてくるでしょう。 久田氏:こうした先端事例が増えていく中で、まずは「AI Vision」のように、お客さまにはディープラーニングに実際に触れる体験をしていただき、弊社でも新しい技術、製品に習熟していくことで、パートナーと一緒に、お客さまのビジネスに最適な提案、ユースケースを考えていきたいです。   本日は、貴重なお話をありがとうございました。   当セミナーの”動画”は、以下にて公開中です。あわせてご視聴ください。 [ダイジェスト動画公開] 7月13日【NI+C P主催】Webセミナー「Watson の基礎技術 今のビジネスに活かせる AI / ディープラーニング とは?」 ~ 繰り返しますが”今”です ~ [動画・資料公開]7月13日【NI+C P主催】「Watson の基礎技術 今のビジネスに活かせる AI / ディープラーニングとは?」~ 繰り返しますが”今”です ~(MERITひろば) ※ビジネスパートナー専用サイト(MERITひろば)のコンテンツです。ログイン or  新規会員登録が必要となります。   ご参考情報 ◆製品発表情報 【新製品発表】 HPC 用 Linux モデルIBM Power System S822LC (8335-GTB) ◆技術情報 "Minsky" POWER8 NVLink Server (日本情報通信株式会社サイト)

2017年07月19日

【AIビジネス】今こそBluemixでWatson日本語版を使うべき4つの理由

この記事のポイント Watson API によって、急速に成長する 第3次 AI (人工知能)ブームの波に乗り遅れることなくビジネスに参入できる機会が広がっています。 当ブログは、企画部の担当が改めて Watson ビジネスについてその可能性を考え、「今だからこそ利用するタイミングである」と判断した理由について記載します。 主に営業、企画、マーケティングやマネージャークラスの方を対象として記述しております。 内容は担当者の個人的な見解が含まれております。また、急成長している市場とテクノロジーですので、最新の情報はリンクのソースを見て確認いただきますよう予め了承ください。   先に結論:「今こそ、Bluemix で Watson 日本語版を使うべき4つの理由」 1.IBM Watson の日本語環境は7月から、大きな縛りがなくなり、より利用しやすくなった 2.Watson は、コグニティブ・システムを実現するための要素を Web API  として提供している 3.API エコノミーは 260 兆円を超える市場に成長する予測がある 4.Bluemix はクラウドサービスのデパートのような存在でありながら、すぐに利用開始可能である 上記4つの理由によって、技術者だけでなく、ビジネスを拡大させるミッションの営業、企画、マーケティングの方も Bluemix を評価・利用しない理由が見当たらないという結論に至りました。 1.4.については、弊社のビジネスパートナー様向けに、"MERITひろば" にて詳細をご紹介しています。   日々進展するWatson API(日本語対応)ここをチェックしよう   「え?12 個でしょ?13 個なの?」 弊社の企画部のリサーチメンバーにおいても、今日(2017年7月1日)現在での Watson API の日本語環境リリースは 13 個か?12 個か?で意見がわかれていました。 正解は 12 個。IBM Bluemix カタログの Web サイトで公開されています。ログインしなくとも見ることができるのでまずはページを開いて俯瞰してみましょう。     13 個だと認識していたメンバーは IBM WatsonのDeveloper Cloudのサイトを見ていました。   前者は IBM Bluemix のサイト、後者は IBM マーケットプレイスのサイト。マーケットプレイスはリリースされて間もないのですが、ある API は IBM 以外の会社が開発し、カタログとして掲載しているので数に違いが出ました。 今後、マーケットプレイスの API は増えていく見込みです。   12個どころではない、実は以前からフル機能使えていたBluemix   英語 Web サイトではもっと多くの APIs が公開されており、英語アレルギーが無い人々、開発者などはフル機能の恩恵、先行者利益を得ていたことでしょう。 しかし、焦らなくとも大丈夫です。この市場はまだまだ今後成長することが予想されており、この記事を読んでからすぐに「まずはやってみよう」という気持ちで進めてください。 手順や契約など不明な点がある方はお気軽にお問い合わせフォームからご連絡ください。弊社ビジネスパートナー様は担当がご説明差し上げます。 日本語の IBM Bluemix サイトに掲載されている API もまだ完全に日本語対応していないのですが、日々進展しております。   260兆円市場? そもそも API(エーピーアイ)とは?   アプリケーションプログラミングインタフェース(API、英: Application Programming Interface)とは、ソフトウェアコンポーネントが互いにやりとりするのに使用するインタフェースの仕様である。(出典:Wikipedia) この API はWeb API のことを示しており、ソフトウェアの一部を Web 上に公開することによって、誰でも外部から利用することができる仕組みです。 例えば、Instagram (インスタグラム)のアカウントを作成するときに、Facebook アカウントでそのまま利用することができますが、他のアプリ、サービスのアカウントで認証する仕組みも API を使っているのです。アプリケーション同士が連携でき、開発側は API を使うことでその機能を自社で開発する必要がないという大きな利点があります。 この API を提供する側の市場は「APIエコノミー」と呼ばれ、2018年には 260 兆円市場に成長するという予測もあります。     では、API 提供者しか利益を享受出来ないのかと言えばそうではありません。 API を組み合わせる、データを提供する、新たなサービスを作るといった”付加価値”をつけることで新たなビジネスを創出できる点が重要なのです。 海外で人気の API をローカライズ(翻訳)してサービス提供するだけでも立派なモデルとなり得ると思います。 また、この2年ではチャットボットを使った会話形のサービスも数多く生まれてきましたが、 Conversation という Watson API の日本語版を使うことでチャットボットの開発は効率化され、貴社の資産(データ)があらたなビジネスにつながる可能性が高まっています。 スタートアップや Web 系のベンチャーは当たり前のように使っている API を是非、貴社のビジネスに取り入れてみてはいかがでしょうか。   2017年7月版 APIを使ったデモサイトを見てみよう!   百聞は一見にしかず、実際に Watson API デモを見てみましょう。12個の API から今回は 2 つの API デモサイトをご紹介。   その1:画像から意味を検出しちゃう! 「Visual Recognition」   この API はその名のとおり、画像を判別する機能で、ユーザ独自の画像判別モデルを手軽に作成できます。 Web 上で公開されているいくつかのデモの中で、日本情報通信株式会社の Bluemix デモサイト に記載されている記事を紹介します。     「ハッピーターン」と「ばかうけ」を判別することが出来る? 日本人にピッタリの良いデモですね(笑)。判定させるために、ハッピーターンとばかうけの画像をWatsonに学習させています。   また、技術サイト Qiita では、X(旧称:Twitter)で話題になった「ラブラドールとフライドチキン」の画像を Visual Recognition API で判定させてみたブログもありす。   そこで、私も使ってみました。デモサイトは英語版ですが、画像系なので抵抗ありません。 エンジニアではないため、試しに画像を Upload しただけ、10 分で体験しました。 サイトは冒頭で紹介した IBM Watson Developer Cloud の英語版サイト。   サンプルの画像をクリックするか、自分で画像をアップロードしてみよう!とのことで、この画像をアップロードすることにします。   そうです、MERITひろば のロゴです。 学習をさせていない Watson に判定さてみます。ロゴ画像を指定し、待つこと5秒。結果がこちら。   Watson が MERIT ひろば のロゴから読み取った意味は「Jobcentre」 0.57、「Office」 0.57と続きます。Watsonは正解に対する確信度を0~1の数字で表しているので、0.5をちょっと超えていますがが「うーん、たぶんJobcentre?」という感じでしょうか。 ハッピーターンの時のように学習させてませんから無理もありません。 ところで、jobcentre とは何でしょうか。どうやら、イギリス版ハローワークのようです。   Google は似ている画像を検索していますが、Visual Recognition API はネット上を検索するのではなく、その画像の意味を考えたのですね。 今後は「あの MERITひろば でしょ?」と Watson に言わせたいと思いました。   その2:テキストから筆者の性格を推定しちゃう「Personality Insights」   次は、言語分析をして、文章を書いた人の思考や性格を推定する API です。   では、早速このブログ記事のここまでの文章をコピペして診断します。・・・約 3,400 文字ですが、待つこと2秒で結果がでました。   かなり攻めの姿勢がある人物ですね(笑) 右上に記載されている「下記のような傾向がありそうです」については、具体的ですのでわかりやすく、正直あたっていると思います。 X(旧称:Twitter)アカウントを入力すると過去のツイートから性格判断をしてくれます。 さて、この API をビジネスに展開するにはどのようなアプローチが考えられるでしょうか。 例えば、人事・採用の現場で SNS のデータから人物の特性を見る・・・というのは序の口で、特定の著者の文章を学習させ、校閲をWatsonが実施し、「この著者はこのような表記を使わない。もしかして◯◯では?」という示唆をしてくれるかも知れません。 もちろん、商品のマーケティングで SNS を分析して消費者の反応を解析するのにも役に立ちます。「これヤバくない?」がどちらの意味のヤバイなのかは前後の会話や状況、その人の過去のヤバイの使い方によって反対できるのかも知れません。   自社でどのように Bluemix 、Watson API を検証し、ビジネスにつなげていけばよいか   ここまではテクノロジーの可能性を見てきましたが、いざ自分たちのビジネスにつなげるにはどのようなアプローチが必要でしょうか。 使ってみる!という最初の一歩を踏み出すには、まずは自分(自社)の得意な領域で評価してみるのが良いと思います。 例えば、IBM の特約店など、旧来から IBM 製品を販売してきた企業の場合を考えてみます。 会社では Notes を利用していますが、Notes に蓄積されている文書データの解析に Watson を利用してみることを検討したとします。そうです、共有 DB などの膨大な文書が存在しているはずです。 これらは、カテゴリに分けて整理されていると思いますが、探す時だけでなく、文書を作成し登録する際にも「どのカテゴリが適しているか」に悩んだことはありませんか? テキスト解析を活用すれば、ユーザは文章を Notes に放り込むだけで、Watson が文書の中身をみて、適切なカテゴリに配置してくれるという仕組みが考えれます。 これによって、社員の生産性があがる可能性があります。 このようなナレッジを社内に作ることで、自社の顧客の製造業に対して、製品の利用者のデータが膨大に集まっているが活用できていないケースを見つけ、サービスを構築することにつながるかも知れません。(もしくはデータを集めるビジネスモデルを提案できるかも知れません)     最後に   IBM Bluemix、IBM Watson API (日本語対応)について、2017 年は「まずは使ってみる」というビジネスの準備期間として取り組んでみてはいかがでしょうか。 この Web サイトを運営しているメンバーの一人が「日々投稿しているページのサムネイル画像の選択が大変なので、Watson に自動選定してほしい!」と言っていました。 今は人間がやっているが、自動化できるのではないか? 自動化されると助かる!という領域こそが Watson ビジネスの切り口になると思います。 若手のエンジニアや Web サービスを企画したい人に Watson API を使ったコンテストを実施し、その可能性を検証してみるものも良いでしょう。 API やクラウド、オープン系の技術をビジネスにつなげるきっかけは意外なところにあるかも知れません。 そのきっかけ作りをお手伝いします。お気軽に弊社までお問い合わせください。   ご案内 7月27日、8月31日に日本 IBM が主催となる IBM Watson 実践セミナーが東京で開催されます。ビジネスパートナー限定のセミナーです。 詳細はMERITひろばの案内ページをご覧ください。  

2017年07月14日

クラウドとデザイン思考 Vol.1 ~そもそも最近よく聞くデザイン思考って何?~

最近「デザイン思考」という言葉をよく聞くようになってきました。IBM社が大量のデザイナーを採用していると話題となっています。そんな中、そろそろ「デザイン思考」って何?自社も取り組むべきなの?と、疑問に思っている方も多いのではないでしょうか。 Wikipedia によると「デザイン思考」とは、 " デザイン思考(でざいんしこう、英: Design thinking)とは、デザイナーが デザインを行う過程で用いる特有の認知的活動を指す言葉である。" とのことですが、正直いいまして、私には全く理解できませんでした。 もう少しわかりやすい定義はないかと探してみますと、イノベーション創出サービスを提供する btrax の記事によると、 " 全てを “Why” から始め、最終的にイノベーションを創り出すプロセス" 出展: btrax, 「【やっぱりよくわからない】デザイン思考ってなに?」 とあり、問いを元にイノベーションを創出するための過程とのことで、おぼろげにその概要が見えてきました。 しかし、これでもデザイン思考とは何なのかを理解するにはなかなか難しいと感じました。 そこで、最近よく聞くこの「デザイン思考」について書いてみたいと思います。   ユーザー中心の思考法からイノベーションを生み出す   思考法としての起源は1960年代後半にさかのぼるようです。ビジネスへの応用は、スタンフォード大学で、後に IDEO を創業するデビッド・ケリーによって開始されたと言われています。 ※ IDEO :カリフォルニア州パロアルトに本拠を置くデザインコンサルタント会社 デザイン思考の「デザイン」とは、いわゆる、デザイナーが絵を描いたり、色を塗ったりすることではありません。デザインには、「新しい機会を見つける為の問題解決プロセス」という定義もあり、デザイン思考においては、この意味になります。 デザイン思考のビジネス応用の研究をスタートさせたスタンフォード大学には d.school という学科横断型のプログラムがあります。機械工学、コンピュータサイエンス、ビジネス、法律、文学など様々な学部学科から学生や教職員が集結、デザイン思考を学びながら、分野を越えてイノベーションを生み出していく力を身につけています。 その d.School 発行のデザインガイドによるとデザイン思考には、5つのステップがあります。 デザイン思考、人間中心の協調的問題解決アプローチ Step1: 共感(Empathize)    ・・・ 共感のためのヒアリング Step2: 問題定義(Define)    ・・・ 本当に解決すべき問題を定義する Step3: 創造(Ideate)       ・・・ 問題解決のアイデアを拡散させる Step4: プロトタイプ(Prototype) ・・・学びを得るために試行する Step5: テスト(Test)      ・・・ 解決策を改善し評価する ※ 上記のステップを繰り返し改善する これらを進め、繰り返していくことで、既成概念を排除し、ユーザーに焦点を当てた商品やサービス、またチーム全員が同じ方向を目指して、デザインすることが可能となります。 デザイン思考において最も重要なことは、「ユーザーに焦点を当てる」ということです。とにかく、デザイン思考は、ユーザー中心、ユーザー・ドリヴンな思考法ということがポイントです。   なぜいまデザイン思考なのか?   それでは、なぜ今、デザイン思考が注目されているのでしょうか。 現在、グローバルエコノミーにおける先進企業は、生き残りをかけ、イノベーションを生み出し続けなければならい状況にあります。日本では、優等生とされていた大企業の没落、海外企業への身売りなど、これまでのビジネスモデルや製品サイクルが急激に変化する状況にあります。 日本のみならず、全世界的に新興国発の企業、またベンチャー企業などから攻勢を受け、競争も激化し、大胆に収益モデルの転換を余儀なくされています。 また、スマートフォンを始めとするテクノロジーはどんどん進化するものの、成熟した社会におていては、ヒット商品が生まれにくい状況にあります。単なる性能強化や機能の充実では消費者を満足させ続けられなくなってきています。 このような状況下において、顧客が真に欲するもの、顧客すら気づいていないニーズを掘り起こす、「イノベーションを生み出し続ける」ユーザー中心の思考法としてデザイン思考が注目されているのです。   IT 業界と「デザイン思考」   さて、それでは我々の IT 業界でのデザイン思考の浸透度はどのようなものになっているのでしょうか。 日経ビジネスオンラインによると IBM 社はグローバルで、 "2012年には375人にすぎなかったIBMの社内デザイナーの数は、2015年には1100人にまで増加。さらに2017年には1500人に増やす計画だ。" 出展: 日経ビジネスオンライン, 「米IBM、2017年にはデザイナー1500人体制へ」, 2016年7月28日 としており、デザイン思考を現場で実践するためのデザイナーを相当な勢いで増やしています。 また、 "独ソフトウェア大手SAPも変革の手段としてデザイン思考を活用したグローバル企業です。直近5年で全世界の売り上げを1.4兆円から2.7兆円まで2倍近く伸ばした背景に、デザイン思考がありました。” 出展: Forbes, 「世界的企業は今、なぜ「デザインx経営」なのか?」, 2017年3月29日 とあり、SAP は、デザイン思考によって既に結果を出している企業の一つとのことです。余談ではありますが、スタンフォード大学の d.School は、SAP 創始者のハッソ・プラットナーの個人の寄付により設立されたことからも早い段階から SAP がデザイン思考に注目していたことがわかります。 Salesforce 社でも Ignite と呼ばれるデザイン思考の専門支援チームが、顧客のためのデジタル・トランスフォーメーションのビジョン作りを支援しています。 例を挙げるときりがないほど、多くの IT 企業でデザイナーが活躍し、デザイン思考が活用されていることがわかります。   以下は Techcrunch が、IT関連企業でのデザイナーの需要はこれまでになく高まっているとし、6社でのザイナーとディベロッパーの比率を割り出したもののまとめです。 明らかに、IT 関連大手企業でのデザイナーの採用が増えていることがわかります。 Atlassian Dropbox Intercom 2012年 2017年 1:25 → 1:9 2013年 2017年 1:10 → 1:6 2017年 1:5 LinkedIn Uber IBM 2010年 2017年 1:11 → 1:8 2017年 1:8 2012年 2017年 1:72 → 1:8 出典: Techcrunch, 「過去5年間でデザイナーの採用目標が倍増― ―大手6社のデータに見るデザイン人材の動向, 2017年6月2日     とは言ってもデザイン思考ってそんなに簡単なの?   それでは、デザイン思考を日本の IT 企業が実践していくことは、簡単なのでしょうか。 これは、「その会社による」としか言えません。   単純に「デザイナー」と呼ばれる方を社員として迎えたり、プロジェクトごとに配置したりすれば成功するようなものでもありません。前述の d.School がまとめた「デザイン思考に必要な39のメソッド」では、その題名だけからも 39 ものメソッドが必要というこで、その難しさを物語っています。 日本でもデザイン思考を大学で教えたり、研修が受けられるようになったりしてきました。しかし、短期研修ではなかなか上手く実践するところまで到達するのは難しく、また大学で勉強してきたとしても受け入れ側の態勢が整っていない、というのが現状のようです。   そこでまずは、自社が「デザイン思考」のメリットを享受しやすい文化にあるか?というところからチェックしてみるのはいかがでしょうか。 <デザイン思考のための社風チェック> 行動よりも先にリスクに目が行ってしまう 製品開発は、プロセスごとに縦割り、分業で、企画から製造までメンバーが共に創っている感覚がない ユーザーの声を傾聴するよりもコントロールすべきだと考えている ブレーンストーミングをやったことがない、やっても上手くいかない 会議ではいつも決まった人が発言している 上記に一つでも当てはまることがあれば、デザイン思考を実践する前に自社のマインドセットを切り替えに注目した方がよいかもしれません。   多くのデザイナーを採用している IBM 社であっても、デザイン思考の導入には以下のようなアプローチを踏んでいます。 " IBMは巨大かつ複雑な組織で、製品のテクノロジーも複雑です。デザイナーが入社後、それぞれのチームに入る前に“橋”をかけるようなサポートを行う必要がありました。現在、新たなデザイナーに対して3カ月のブートキャンプ・プログラムを実施していますが、私は、その設計と運営、管理を行いました。 また、このデザイナー向けのプログラムを実施していく中で、IBM全社員に対しても、デザイン及びデザイン思考について教育を行い、会社を変化させないといけないことがわかりました。なぜなら、全社員も、企業としてどのような方向に変化していくのかを知る必要がありますから。 そこで一人でも多くのIBM社員がデザイン及びデザイン思考を体験し理解するための教育プログラムをつくりました。デザイナー向けから全社員向けに、私の役割はここ数年でこうした変化を遂げてきました。" 出典: Forbes,  「IBMがデザイナーを1000人雇い、デザイン思考を推める理由」, 2017年3月24日   まずは、デザイン思考を知り、この思考法を社内で展開できる雰囲気か判断し、そうでなければまずは、その目的づけ、会議や打ち合わせのやり方、ユーザーとの接し方、縦割りのプロセスなどを見直すところから始めてみてはいかがでしょうか。 いきなり、「デザイン思考」ありきからスタートすると、単なる思考法マニュアルになってしまい、「デザイン思考でやってみたが何も起こらない」となってしまう可能性があります。 それでは、デザイン思考そのものの恩恵を十分享受し、真のイノベーションに到達することは難しいでしょう。   クラウドとデザイン思考   では、具体的に何か製品開発にデザイン思考を応用した例はないかと探してみると、身近な良い例がありました。それはBluemix です。Bluemix はデザイン思考を元に開発された製品なのです。 ”The Bluemix team used IBM Design Thinking to focus on users—not functions or capabilities—with the goal of letting developers focus on their work, rather than on infrastructure and configuration. 【抄訳】Bluemix チームは、IBM デザイン・シンキングを使用して、インフラやコンフィグではなく、開発者が自分の仕事に集中できるように、「ユーザー」~ 機能や能力ではない ~ に焦点を当てました。" 出展: IBM Design, 「Case study: IBM Bluemix」, 2014年7月17日 また、当プロジェクトでは、多くの人数と時間をユーザーとの時間に費やし、マネジメント、エンジニアリング、設計、マーケティングに至るまで、一同が関わり、共創することで、計画より半年以上前倒しして、Bluemix を完成させることができたとのことです。 ここでは、多くを触れませんが、このような形で、IBM 社のクラウド戦略の根幹をなす製品開発にデザイン思考が活用され、成果が出ていることがわかります。   Bluemix でのケーススタディでもわかる通り、イノベーションのプラットフォームとしてのクラウド活用が今後進んでいくことは間違いないでしょう。それは、Bluemix の特長を例にとると、 100以上のサービス連携が提供される これらの組み合わせで、より早く幅広いアプリケーションを作ることが容易 使用インスタンス等で課金されるため都度必要な分のコストで小さく始められる など、デザイン思考のような、プロトタイピングを重視する早期実行型の思考法にマッチしやすいと考えられるからです。 今後は、IT企業だけではなく、別業態からもクラウドを中心にイノベーションを進めていく企業がどんどん増えるはずです。これらの企業や迎え撃つ既存の IT企業の開発者は、サーバー構築や運用の労力にとらわれず、プログラミングに集中できるBluemix をベースに新たなサービスを模索したり、構築を進めたりすることは自然な選択ではないでしょうか。 更に、デザイン思考をベースに開発された Bluemix 上で、デザイン思考を活用し、イノベーションを実現する、これらは非常に相性の良い組み合わせかと容易に想像できます。   今後もデザイン思考の取り組みにも注目していただければ幸いです。次回は「デザイン思考導入を阻むもの」について考えてみたいと思います。  

2017年06月30日

【てくさぽBLOG】Cisco HyperFlex アップデート

皆さま、こんにちは。てくさぽBLOGメンバーの岡田です。 仮想インフラの提案が必要になった際に、ハイパーコンバージド・インフラストラクチャ(以下 HCI)を検討することも多くなってきたのではないでしょうか。Nutanixを始め各社からHCIが提供されていますが、Cisco社もCisco UCS(以下 UCS)をベースにしたHCIを提供しています。過去2回のCisco UCSブログに続き3回目の今回は、今年4月に発表になった、Cisco社のHCIであるHypertFlexとその最新アップデートの 2.0について紹介させていただきます。 (1回目)Cisco UCSってなんだ? (2回目)Cisco UCS Emulatorを触ってみよう!   1.そもそもHyperFlexとは 2.0を説明する前に、HyperFlexそのものについて説明します。 HyperFlex は2016年3月に発表されたUCSベースのHCI製品です。 ⇒ ここではHCIそのものの説明は割愛しますので、ご興味ありましたらこちらもご覧ください。(今注目の”ハイパー・コンバージド・インフラ”とは) ・ハードウェアの特長 ラック型の「HX220c」「HX240c」、Blade型の「B200 M4」があります。(ちなみにコンピュートノード用途限定ですがBlade型のHCIがあるのはHyperFlexだけです)。最初のリリースではディスク構成としてはSSD+HDDのハイブリッド構成しか選択できないことや、既にUCSサーバーとファブリックインターコネクト(以下、FIと省略)を持っていても、HyperFlexは専用のFIが必要なことが課題でした。 ・対応ハイパーバイザー 現時点vSphereのみで、管理はvSphere Web Clientから行います。 以下のようにvCenterからHyperFlexのクラスタを管理することができます。 ・統合管理 コンピューティング、ストレージに加え、ネットワークの管理も統合できます。これはUCSが持つ特長ですが、他のHCIと比べてHyperFlexの特徴でもあります。 ・共有ストレージ HCIはサーバーのローカルディスクをソフトウェアを利用して共有ストレージ化してハイパーバイザーに提供しています。これをSoftware Defined Storage(以下、SDSと省略)と言いますが、HyperFlexのSDS部分は仮想アプライアンス型でSpringPath社の製品をOEM利用しています。 このような特長を持つHyperFlexが進化したものがHyperFlex2.0になります。 2.HyperFlex 2.0とは このようなHyperFlexですが、今年4月に2.0が発表になりました。 2.0の新しいトピックは以下になります。 ・オールフラッシュノードの追加 これまではハイブリッドモデルのみでしたが、オールフラッシュモデルが追加されました。これによりハイブリッドモデルと比べて大幅なパフォーマンス向上が可能となりますので、高い性能要件が求められる案件でもHyperFlexを検討できますね。NutanixやVxRailでは既にオールフラッシュモデルが選択できましたので、HyperFlexも追いついたということですね。 ちなみに、気になる性能ですが、HyperFlexのハイブリッドモデルと比べて最大で6倍のIOPS、5分の1の遅延になるとのことです。 ・40 Gbpsファブリックインターコネクトへの接続の対応  UCSファブリックインターコネクト(以下、FIと省略)の第三世代モデルであるUCS6300シリーズに対応し、40Gbpsネットワークが利用可能になります。オールフラッシュモデルの対応と合わせて、より高い負荷に対応できるようになりました。 ・既存FIへのHyperFlexノード追加 これまではHyperFlex専用のFIが必要であることが運用面および費用面での課題でしたが、2.0からは既存FI環境にHyperFlexノードを追加して構成することが可能になります。これにより、既存のFIを有効活用してUCSサーバーとHyperFlexをUCS Managerから統合管理することが可能となります。既にUCSとFIをお持ちの環境では管理効率が良くなりますね。 ・HyperFlex Edge(ROBO)登場 リモートオフィス/ブランチオフィス(ROBO: Remote Office and Branch Office)向けに設計されたシンプルなソリューションで、HX220ハイブリッドモデル3ノード構成。FIなしで1Gbネットワークが利用可能。ただし、拡張はできません。 ROBO向けとはなっていますが、FIが不要ということもあり、小規模案件でも検討できるかもしれませんね。 ・ その他に、HTML GUIオプションの提供やRESTful APIのサポートといった操作性の向上に関連したアップデートも含まれます。   3.まとめ いかがでしょうか。HyperFlexも他のHCIと同様に継続的にアップグレードが行われて進化していることがご理解いただけたかと思います。HyperFlexを選択する一番のメリットは、FIとUCS Managerでの統合管理だと思いますので、既にUCS環境が導入済みのお客様には最適なHCIです。また、まだUCS・FI環境をお持ちでない場合もまずはHyperFlex+FIを導入して、その後に続くサーバー導入にもUCSを選択いただくことで同様に統合管理が実現できます。 ぜひHCI選択の候補にHyperFlexもご検討ください。 ==================================================================== <関連情報> MERIT広場には、以下のような関連の製品情報、サポート保守のサービスの情報が提供されております。あわせて、ぜひ、ご活用ください。 ※ビジネスパートナー専用サイト(MERITひろば)のコンテンツです。ログイン or 新規会員登録が必要となります。 10分でわかる『Cisco UCS 製品』まとめ IBMの技術員がサポートする「CISCO UCS IBM保守サービス」 ==================================================================== この記事に関する、ご質問は下記までご連絡ください。 エヌアイシー・パートナーズ株式会社 技術支援本部 E-Mail:nicp_support@NIandC.co.jp

2017年06月20日

【てくさぽBLOG】WASのバージョンアップでビジネスが拡がる!?

皆様こんにちは。ちょっとお久し振りのてくさぽBLOGです。 このコラムを読んでくださっている皆様の中には、アプリケーションサーバーの構築や販売経験をお持ちの方がたくさんいらっしゃると思います。 オンプレでもクラウドでも、B2BでもB2Cでも、Webシステムにアプリケーションサーバーは欠かせない存在ですが、その実行プラットフォームであるIBM WebSphere Application Server(以下 WAS)は、この競争が激しい市場で8年連続TOPシェアを誇る製品です。 WASは昨年2016年6月に最新バージョンであるV9.0が発表されていますが、保守サポートが終了しない限りSWのバージョンアップはしたくない・・というお客様が多いかもしれません。 でも、バージョンアップが保守サポートの制限だけでなくお客様にとって有意義であれば、是非ご提案したいですよね。今日はそんなバージョンアップのお話をしたいと思います。 1.Java SE 6はもうすぐサポート終了 WASにはJavaの実行環境が含まれていますが、Java SE(JDK) 6がサポート終了間近となっていることはご存じですか。 それって結構古いWASでしょ?うちのお客様はそんな古いバージョンは使ってないはず・・と思いきや、そうでもないかもしれません。 Java SEの最新バージョンは8ですので、下図のように古いバージョンのWASをお使いであれば、是非バージョンアップのご検討に入っていただきたいと思います。 2.バージョンアップの利点 とはいえ、Javaの保守サポート終了という理由だけでバージョンアップするのは・・・と躊躇されている皆さんに、是非このブログを参考にしていただきたいと思います。 最新バージョンのWAS V9.0は、Javaの最新仕様に対応しているだけでなく、お客様のビジネス傾向に合わせて以下の特長を持っています。 特長1.多様なクラウド環境への対応 特長2.マイクロサービスとAPIエコノミーへの参画を推進 特長3.従来のPVU課金モデルに加え、仮想コア・ベースの月額課金モデルのライセンス体系も登場  特長3の詳細はこちら(MERITひろばへ) WASは、基幹システムとエンドユーザーに近いシステム、いずれにも対応しています。 エンドユーザーに近いシステムは変化が激しく、素早い開発や継続的なデリバリーが必須要素となり、マイクロサービスアーキテクチャー型で、インフラもすぐに利用可能なクラウド環境が活用されます。 一方、基幹システムを中心とした安定したエンタープライズ・アプリケーションでは、オンプレ環境でのウォーターフォール型開発が依然として引き継がれていますが、基幹システムが保持している情報をエンド・ユーザーに素早く提供したいというニーズから、API公開する方法、マイクロサービス化といった検討も始まりつつあります。 そしてこれらの2極化したものを連携する仕組みとしてAPIが注目されています。 クラウドやAPIエコノミーへの対応など多様化する用途に対応できる最新バージョンでは、用途に応じたラインタイムが選べるようにもなっています。 3.Libertyランタイムの検討のタイミング 今後のクラウド展開を考えると、もっと軽量なランタイムが欲しいですよね。 先程用途に応じたラインタイムを選べると書きましたが、WASは軽量なLibertyラインタイムを提供しています。 また、従来のラインタイムに比べ、運用の自動化や新機能のいち早い利用も実現されています。 Libertyランタイムはたった5秒で起動でき、メモリー使用量60MB ディスク使用量100MBと軽量で、リソース使用量で課金されるクラウドの利用に適しています。また、構成ファイルはserver.xmlという1ファイルのみのため移行も簡単ですし、再起動なしで構成変更が可能です。 では、何故このような軽量化が実現できたのでしょう。 それはフィーチャーと呼ばれる必要な機能単位だけを柔軟に組み合わせて利用しているからです。使わないフィーチャーはメモリーにロードされないため、高速に起動できます。 また、新機能は新しいフィーチャーで提供され、従来のフィーチャーも使い続けることができるため、ランタイムの更新が不要です。このゼロ・マイグレーションという新しい概念により、既存構成やアプリケーションへの影響を最小化でき、最新ラインタイムへの移行が楽になります。 4.ランタイム選びは注意点もある 他にも、今回ご紹介できなかった多くの特長を持つLibertyランタイムですが、注意点もあります。 たとえば、LibertyはWAS V8.5以降から提供されたランタイムのため、従来の古いランタイムとはサポートしているJavaのレベルが異なるため、使用できない古いAPIが存在します。 また、プロセスの起動・停止方法やログの種類、アプリケーションのデプロイ方法など、運用の仕組みも変わってきます。 5.ほかのアプリケーション・サーバーも気になる!? もしかしたらWASのバージョンアップどころか、JBoss、WebLogic、Apache Tomcatなど他製品への切り替えが検討されている・・・どいうケースもあるかもしれませんね(涙)。 WASは8年連続TOPシェアを誇る製品ですので多くの特長を持っていますが、今回は軽量性と課金体系について比較してみました。 ・軽量性 起動時間とメモリー使用量(フットプリント)を比較した左グラフでは、LibertyランタイムはTomcatに少し劣っているものの、JBossやGlassfish(Weblogicのオープンソース版)の半分以下と非常に軽量です。 また、右のグラフでは、Libertyランタイムはどの製品よりも性能(スループット)が高く、Tomcatより20%も性能が高いことがわかります。 ・課金 WASにはランタイムが2種類ありますが、ラインタイムによらず課金体系が豊富です。 オープンソースはライセンス・フリーですが、エンタープライズのお客様には保守サポート付きのメーカー版を選択されているケースが多いのではないでしょうか。WASはご使用環境によって最適な体系を選択することができるよう、複数の課金体系が用意されています。 たとえば、大規模な仮想環境では、物理サーバー全体の性能で課金するとかなり高額になってしまいますね。 その場合には、アプリケーションが稼働しているサーバーの性能分だけ課金する、サブキャパシティ・ライセンス体系が用意されています。この課金体系はRedHat社のJBossでは提供されていません。 また、仮想コア数のみで課金計算できる体系も提供されています。パブリック・クラウドでは、物理サーバーのコア数などの情報を開示していないケースもありますので、コア数を数えるだけ見積もることができますし、もちろん月額課金も用意されています。 6.最後に 実はLibertyランタイムは最新バージョンではないバージョン8.5でも提供されています。しかしながら、是非WASのバージョンアップと共に、新しいLibertyランタイムの検討もお勧めしたいと思います。 この軽量なLibertyランタイムの無償評価版と日本語の技術情報がこちらからダウンロード可能ですので、是非お試しください。 http://ibm.biz/LibertyJPN この記事に関する、ご質問は下記までご連絡ください。 エヌアイシー・パートナーズ株式会社 技術支援本部 E-Mail:nicp_support@NIandC.co.jp

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