普段の製品・ソリューション紹介だけでは聞き出せない情報を「実際のところはどうなんだろう?」という素人視点で、専門家に聞いてみるシリーズです。
題して「実際どうでしょう」。。。どうぞ、ご覧ください。
<高田さんの話は技術ではなく、BIを通じてお客様との信頼関係から学んだ貴重な内容でした。これはセミナーでも聞けません。 (*´ω`*) >
今回は、弊社のBIの担当営業から「BIに関してはIBMの高田さんの話を一度聞いたほうがいいよ。すごく楽しいし、わかりやすいよ」という情報を入手して、早速アプローチしました。
ご本人いわく、「インタビューを受けるなんて始めて」とのことでしたが、真摯にお客様と向き合い、豊富な経験がある高田さんのお話はある意味人生を悟ったかの如く、私もたくさんの気付きをいただけました。 (インタビュアー:重山)
PROFILE
・日本アイ・ビー・エム株式会社 高田 和広 さん
ソフトウェア事業 ビジネス・アナリティクス事業部 Cognos テクニカルセールス&ソリューションズ
シニアITスペシャリスト
■SEとして生産管理のプログラムに携わり、ERPプリセールス経験を積みながら 2004年にCognosに入社。その後IBMブランドとなり、現在に至る。
MERITひろば事務局 重山 勝彦 (インタビュアー)
・日本情報通信株式会社。MERITひろば事務局。入社3年目にてMERITひろばの運営、コンテンツ全般を担当。
※2013年4月時点のプロフィールです。
—– 本日(インタビュー実施日は3月末)は締めの時期にお時間いただいて恐縮です。 (重山)
高田: いえいえ、それよりもインタビューなんて始めてですが、私でええのでしょうか?
—– あれ、高田さんは関西弁なのですね、ご出身は大阪ですか?
高田: そうです。生まれも育ちも大阪市内です。インタビューは標準語が必要ですか?
—– いえ、そんなことはありません。私も大阪出身です。・・・・(この後の二人のローカルトークは省略。以降はテキストコンテンツの便宜上、標準語にしています)
BI導入は結婚生活によく似ている
—– ずっと、生産管理やERP(Enterprise Resource Planning:企業資源計画)ソフトウェアの分野でエンジニアリング活動をされていて、BIのスペシャリストになられた訳ですね。
高田: はい。大福帳のERPを作ろうという時代です。大福帳と言っても今の若い方にはピンと来ないでしょうか(笑) とにかく、BIという言葉が浸透していない時代から、「データが集まったら何が見えるんかなぁ?」ということをしておりました。ところで、今日は何をお話しすれば良いでしょうか。
—– 興味があるのは失敗例です。すばらしい成功事例は他のWebサイトでも参照できますが、失敗から学ぶことを聞く機会はなかなかありません。言いづらいこともあるかと思いますが、お願いします。
高田: 沢山ありますよ(笑)
—– BIは過去に何度かブームの波がありますが、今回のビッグデータブームで改めて注目されていると思います。こんどこそ失敗しないBI導入という視点でお話いただきたいです 。
高田: かしこまりました。いきなり結論を言いますが、BIの導入は「結婚生活」に似ています。
—– け、けっこん? 結婚生活ですか。ITの仕事をしていて結婚が例えなのは初めてです(笑)
高田: 結婚相手を探すとき、つまりBI導入前に見た目の美しさだけで決めてしまうは、その後うまくいかないこともあります。また、マルバツつけて年収(価格)や家柄(ブランド)だけで決めてしまうのもよくないですよね。
—– なるほど、そういう意味ですね。私は未婚なので、導入前の例えはわかる気がします。
高田: また、結婚後、つまりBI導入時や運用の際のプロジェクトは山あり谷ありで必ずしも順風満帆ではありません。これは、業務のメンバーとITのメンバーがお互いを信頼、尊敬をしながらも意見を言い合うのは生産的ですが、相手や道具の批判ばかりしていては、うまくいかないですよね。
帰宅して「俺(わたし)は仕事で疲れてるんだよ。」「わたし(俺)だって、家事が大変なのに!」と言い合っている夫婦と同じ状況です。
結婚前にお互いに結婚生活をどう過ごしたいか?という事をしっかり話しあい、共有されていれば、共同作業も順調にいくはずです。相手の尊重があってこそのプロジェクトであり、結婚生活です。
—– なるほど。勉強になります。
高田: こんな偉そうな事を言って、大丈夫かな。このインタビュー公開されても、奥さんには内緒にしないといけないなぁ。(笑)
—– でも深い話ですね。(笑)ここまでITの話はほとんど出ていませんが、このまま進めさせて下さい。
子供のテストが60点。それが良いのか悪いのかは数字だけではわからない
高田: はい。例えば、基幹システムはスタートを切る時に完璧に動かないといけないですよね。BIの導入もそう思われがちですが、スタート時のハードルを下げて、楽しみながら進めるといいと思います。実際そのようなプロジェクトの方がうまくいくケースがあります。
—– ハードルを下げるとは?
高田: はい。BIだからといって完璧にしようとか、難しく考え、身構える必要はないのです。
とにかく、「今まで見ている数字をどのように見たいのか?」を大事にしてください。
例えば、子供が学校のテストで60点の結果だからってそれが良いのか悪いのかは数字だけではわからないですよね。全員が30点以下なのに60点なのか、平均点が90点のテストで60点なのか。
このように、全体からの位置づけ見る、平均を見る、前回のテストからの変化を見たいでしょう。
—– 実際に、高田家ではどう評価されているのですか?
高田: 私はクラスや学年での順位を指標に、前回からの変化、比較を重要視しています。例えば、順位が落ちたとしたら、それには理由が有るはずです。直前に風邪を引いた 、勉強を怠ったなど。その原因を見つけ出し、改善していく事を子どもと話しています。
—– 数字を見る側に確固とした考えが必要なのですね 。
高田: はい。しかし高田家では順位と比較ですが、重山家では平均点との比較でも良いわけ言い訳です。企業も同じ「利益率」 を見ても企業の戦略や戦術の考え方から、A社とB社ではものさしの単位や見せ方が違う訳ですね。その違いから競争点があり、差別化戦略がうまれるのです。
止めた時文句を行ってくる人は普段見ている証拠だ
—– そのような高田さんがお客様とプロジェクトで良い関係を築き上げているのですね。
高田: 私はいつもお客様に教えていただいてばかりです。
例えば、Cognosのバージョンアップのプロジェクトの話です。そのお客様は分析・レポートが200パターン導入されていました。バージョンアップのプロジェクトですから、ベンダー側としては当然200を前提に進めるわけです。しかし、お客様は200のうち、実際によく使われている20だけに絞ってバージョンアップすることにしました。
—– 残りの180パターンはどうされるのですか?切り捨てですか?
高田: 当然、そう思いますよね。お客様は「誰か怒って文句をいってきたら、そのレポートは必要としている人がいたとわかるので、その時点で対応していきます」とおっしゃいました。つまり文句を言って行ってくる人は普段見ている証拠だと。これは言われてみれば非常に合理的なのですが、実際はなかなか実施できないことだと思います。
—– できないですね。システムのバージョンアップの場合は、既存の環境をすべて活かすのが前提だと思い込んでいますから。
高田: そうですね。他の例ですが、営業の数字をみるBI導入プロジェクトであえて仕様書を作らなかったお客様がいらっしゃいました。
そのご担当者は「3年も同じ指標の見方をしているのは、会社が成長していないことになる。だから硬直化の要因になる仕様書は不要」というお考えでした。
財務会計の項目は基本的に普遍ですが、管理会計、営業情報の指標、項目は環境に合わせて変化していくのは当然です。
—– うかがった2つの事例は担当者に余裕というか自らのビジネスやビジョンを中核にされているので導入・運用に柔軟さがあるのですね。冒頭の「ハードルを下げる」ということですね。
高田: はい。システムの導入が目的化されてしまっているプロジェクトが多いのも事実です。数百×数百の項目をBIツールで無理やり処理しようと躍起になっているケースもよくあります。
時には他の方法を考えることや、BIツール以外で補足していく など、柔軟な発想が必要です。
あるお客様は原価管理シートを1ヶ月かけて作成し、報告していた
—– 「システム導入が目的化される」・・・耳が痛いです。渦中にいると頑張ってしまいますね。
ところで、数百項目と聞いて思うのが、BI導入までも導入後でもExcelを利用しているお客様は多いのではないでしょうか。
高田: Excelは便利ですが、どうしても属人的になってしまいます。共有がうまくいかない。マクロを作った担当者が不在になり、メンテナンスできない。マクロ(VBA)プログラムの仕様書がないために読み取りコストがかかる。などです。これらの問題解決に加えて、 Excel運用からBI移行の メリットの一つは 「レポート作成の時間短縮」だと思います。
高田: あるお客様は原価管理シートを1ヶ月かけて作成し、報告していました。今日が3月末なら4月末の経営会議に提出されるわけです。その1ヶ月の間に為替もかわる時代に、1ヶ月遅れの情報で経営判断しなければならないのです。経営判断にはもっとリードタイムを縮めないといけないですよね。
—– そうですね、しかしながら、そのようなExcelヘビーユーザの現場の方が「ビジネス・インテリジェンス・ツールを導入します」と言われると身構えてしまいそうです。
私を驚かせるために使い方を工夫しいるお客様がいます
高田: そのようなお客様にはIBM Cognos Insight(コグノス インサイト)から始めるといいでしょう。いわゆるデスクトップBI、パーソナルBIと言われる製品で、業務担当者のご自身のPCで 利用できます。もちろんExcel等のスプレッドシートからのインポート、エクスポートもサポートしています。参考価格は5万円台(2013年3月時点での価格)です。
—– 結婚の話から、やっと製品の話にたどり着きましたね(笑)
よく聞かれるかも知れませんが、競合他社のBI製品との違いは何でしょうか。
高田: 一言で言うと我々の製品は「アーキテクチャの底辺が統一されている」ため、機能拡張や開発の仮定で矛盾が発生しないことです。他にも(バージョン)10.2からはインメモリ型の高速分析が強化されています。Cogonosは自社のPureData System for Analytics(Netezza)やDB2、他の会社製品のDBも使えるし、同時にインメモリにも対応しているという点で非常に心が広い製品です。いや、八方美人なのかな(笑)
—– では最後にCognos製品のテクニカルセールスをしていた良かったなぁと思うことを教えて下さい。
高田: この製品は営業も導入も運用も長い時間が必要なため、確かに大変ですが、その分お客様との関係も深く、長くなるので、楽しいです。
私は導入後のお客様を定期的に訪問するのですが、あるお客様は私を驚かせるために行く度に新しい使い方をしており、得意げに説明してくださるのです。「高田さん、この使い方はどうでしょう?」と笑顔で私に言ってくれるのです。もうこれだけでもこの仕事をしていて良かったと思います。
また、他のお客様との会話で「高田さん、新規営業の行動指標(項目)は何だと思いますか?」と聞かれました。そうしたら、「名刺消費(名刺発注率)だ」とそのお客様はおっしゃって、目からウロコでした。
難しく考えずに、足元をみれば指標はころがっていることを教えてくださいました。
BIはお客様と根底を築きあげていく仕事なのでやりがいがある仕事です。
いようですね。(笑)
—– すごく素敵な話です。私はBI導入も営業もしたことがないのですが、大変な業務だろうという漠然とした感覚しかありませんでした。高田さんのお話を聞いていたら、BIの営業も経験してみたくなりました。
高田: 今から一緒に営業にいきましょうか? (笑)
—– ありがとうございます。しかし、このインタビュー記事を仕上げて、MERITひろばの皆様に高田さんのお話をお伝えする義務があるので、またの機会にお願いします。(笑)
インタビューも第2弾をお願いしてもいいでしょうか。
高田: もちろんです。こんな話でよければいつでもどうぞ。
高田さんのお話は経験豊富なお坊さんのお説法を聞いているような、心に響く内容でした。実はインタビューでは、BI製品を販売するセールスパーソン向けの生々しい話が沢山ありました。それらの内容はビジネスパートナー向けサイトでご紹介しております。 (重山)